タイトル:新作レーザー兵装実験マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/05 15:18

●オープニング本文


 某所の訓練場。
 ドローム社が実験用としておいているS−01に、3.2cm高分子レーザー砲を装備させていた。そこから70m先にアンジェリカが一風変わった爪と、フレームを取り付けて立っていた。
「OKです」
 助手のコアーがパソコンを叩き、インカムで話す。
「実験スタートねぇ」
 アンジェリカに載っているのはエスティヴィア(gz0070)だ。試作段階の新兵装が出来たので程度を試そうとしてる。S−01にプロトン砲並みの威力を出せるわけがないため、KVには増幅装置やら外部装置にて非物理威力を上げていた。
「では実験スタート!」
 アンジェリカのコクピットと一部の関節がピンク色に光る。そのまま、3.2cmの3門砲撃がアンジェリカに放たれた!
 光の帯が、アンジェリカに直撃する。しかし、光っている部分がエネルギーを反らしている。その様をエスティヴィアだが、踏ん張る力が足りなかったため、徐々に足が後ろに退いていき‥‥。
「きっっつうううう!」
エスティのアンジェリカは、バスンと音を立てて、後ろに倒れ込んで轟音が響いた。
「しょちょお!」
「ああだいじょうぶよぉ。出力はそんなものよねぇ?」
 ゆっくり起きあがるアンジェリカから、元気な声が聞こえてきた。

 そしてラボに戻り、データを抽出したあと、
「性能的には良いけど、やっぱり、模擬戦とかがいいかなー」
 ペンで頭を掻きながらエスティヴィアは呟いた。
「4:4でレーザー兵装をつけて貰うってって言うのはどうでしょ?」
「実践投入出来ればいいけどねぇ。今試作品を出せる状態じゃないって、あいつが言ってるしなぁ」
 現地投入は一寸危険だと思っている。実弾での模擬戦のほうが安心ではないかと思った。
「まあ、可能ならあんまし改造してないのが良いよね。超改造機の人には悪いけど。データ撮りたいし」
 俗称『魔改造』機の人にも来て貰いたいが、前作の試作兵装の『どっちでダメージを減らしたのか分からない』現象は怖いのだ。データ取りが最優先案だから。数値上の理屈も必要だが使い勝手なども考慮する。

『新型レーザー兵装を装備し、実際に模擬戦にてデータ採取の協力求む。なお、兵装とアクセサリは1ないしそれ以上、装備外しておくこと』
 と、いう依頼を出すエスティヴィアであった。

●参加者一覧

熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
高坂聖(ga4517
20歳・♂・ER
守原クリア(ga4864
20歳・♀・JG
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER
長谷川京一(gb5804
25歳・♂・JG

●リプレイ本文

●机の下から
 ラボの裏に訓練場があった。色々ジャンク部品が転がっていた。
「相変わらず、惨状だな」
 水円・一(gb0495)が呟いた。
「エスティヴィアさんがいないのは、恐らく‥‥」
 エスティヴィア(gz0070)の研究に興味を持つ守原有希(ga8582)は推測する。
「机の下で眠っているんじゃないでしょうか?」
「ええ、また?」
「ハムスターかやっぱり」
 クリア・サーレク(ga4864)が苦笑と呆れ、一は溜息。
「風紀委員としては、早く起こさないと行けないです」
 熊谷真帆(ga3826)は足早にラボの中に入っていく。
「よほど疲れているのですね」
 高坂聖(ga4517)も苦笑し、後を続いた。
 エスティの寝床に向かう一行の足音が、廊下に響いていた。
「知覚兵器かー。生身ではともかく、KVの装備で使ったことはなかったね。勝手が違うかもしれないけど、お仕事だからがんばらないと」
 アーク・ウイング(gb4432)が呟いている。
「色々試行錯誤ありましたね。前回、あまり役に立てなかったので今度こそはとおもいます」
 長谷川京一(gb5804)が先日の会議の結果が芳しくなかったように感じていたらしい。浪漫を詰め込もうとすると、無理があるという経験をいかして、今回は更に頑張ろうと決意を新たにしている。
「別件でも開発に関わっていたからな、腕が鳴るってもんだぜ‥‥!」
 ちっさい体の少女、テト・シュタイナー(gb5138)は、楽しみで仕方ないらしい。浪漫兵装の一つだからだ。

 エスティがいるはずであろう部屋のドアが見えてきた。有希がノックをするが、返事がない。
「やっぱり机か。失礼します。エスティヴィアさん〜」
 彼がドアを開けると、又阿鼻叫喚の世界だった。
「研究より先に掃除じゃないのか?」
 一がため息を吐く。
 LANケーブルが蜘蛛の巣のように各種のPCに繋がっている。色々研究中のようだった。サーバーなのか演算支援なのかは不明だが、掃除は無理そうだと判断する。
「エスティヴィアさん〜」
 クリアが、机の下を覗くと、エスティは丸くなって、至福そうな笑顔で眠っていた。
「おきてー。おきてってばー」
「んあ? おはよう」
「おはよう、エスティヴィアさん。お久しぶり〜」
「おお、来るのはやかったねぇ」
 エスティは器用に転がってから起きあがり、背伸びする。
「みなごめんねぇ。ねむってたわぁ」
 照れ笑いしているエスティだった。
「おお、クリア。あいたかったよー!」
 親愛のハグが待っていた。クリアは少し驚くが、抱き返した。それを、有希がソワソワオロオロして見ていた。

●模擬戦による実験開始
 自己紹介と、今回のルールの説明を受けて、訓練場兼実験場に向かうことに。4対4の模擬戦である。
「ま、気楽にやって」
「エスティヴィアは楽しいか?」
「ん? 仕事だけど楽しいよ」
「そうか」
 一はそれ以降何も言わず、R−01に乗り込んだ。

 長谷川が大声で、班分けを読み上げる。
「A班、俺・長谷川(バイパー)、テトさん(フェニックス)、高坂さん(岩龍改)、熊谷さん(雷電)ですね」
「りょうかいなのですよ」
「B班、守原さん(イビルアイズ)、クリアさん(フェニックス)、アークさん(シュテルン)、水円さん(R−01)」
「はい」
「って、もうフェニックス持ちがいるんだな」
 長谷川が、テトやクリアをみて驚いている
「シート外したばかり、だったり」
 新規購入の人達は口をそろえて言う。実践前のなら試運転としては良いタイミングだっただろう。そして一行は、障害物などがある実験訓練に各自KVで移動し、エスティヴィアの号令をまった。
(「頑張って、良いデータをとれるようにしないと」)
 有希はそう思って操縦桿を握りしめる。期待に応えるだけでなく、隣に好意を寄せている女の子がいるから、ドキドキが止まらない。
『頑張ろうね! 守原さん』
『あ、は、はいい! が、がんばりゅましょう!』
 フェニックス開発に携わっていたクリアのことを思い出して、其れを手に入れた彼女の声は弾んでいる。守原は其れが嬉しい。しかし、いきなり声をかけられたので、噛んでしまった。
『?』
 クリアは首を傾げたが。コクピットがむき出しじゃないため、表情は分からない。

『模擬戦開始!』とエスティがマイクで叫んだ。

 KVの金属がコンクリートを踏みつける鈍い音だけが響く。各自は障害物に隠れて隙をうかがう。または、先行して視界内に誰が居るかを見極めてどう対応するかを見計らう。
「色々実験するのです」
 真帆は6パターンの行動を提案していた。其れを全員で採用・分担して試してみることに。高分子レーザーで狙いを定めて打ち合い、受け手はレーザーフィールドを展開した状態で、損害率を調べていった。
(「試作より上々かもしれないな」)
 何回か試作型を使った人間はおもった。
 さらには、高坂が試作型レーザーフィールドを装備していることにより比較しやすい。しかし、練力がきついので長期戦は無理だろう。
 一方、ファングシールドを使うメンバーは、フィールド展開しながら攻撃する。爪としての威力はホドホドであり、非物理攻撃を防ぐ事もでき、盾としての使い道が良いため、元から装備スロットの少ないKV所持者には嬉しい兵装である。
 実践さながらの模擬戦に移ったとき、フェニックスの独壇場になりそうであった。初期状態に近い機体とは家超高級機だ。テトと真帆がクリアのフェニックスを相手する。クリアの羅真人の一撃を、テトは何とかフィールドフレームで持ちこたえた。
「KV戦闘の経験は無ぇが。経験不足は頭脳で補ってやるぜっ」
「又、戦えるの!?」
 お互いフィールドを展開しながら鍔迫り合いのような状態になった。其処から真帆の援護射撃。クリアは一旦引くが、
「あぶない! クリアさん」
 有希のイビルアイズが割り込み、ファングシールドのフィールドを展開しつつ、テトのフェニックスと肉薄する。テトとしては、そのチャンスを待っていた。ファングシールドのフィールド越しから、高分子レーザーを放った。所謂、零距離射撃だ。
「内部ではどうだぁ!」
「しまっ!」
 2機は光つつまれ粒子が飛び散り大爆発。イビルアイズとフェニックスは10mぐらい吹き飛んでしまう。
「大丈夫?! 有希さん!」
 思わずクリアは、彼の『名前』を呼ぶ。
「だいじょうぶか?」
 A班、B班も心配になってチームメイトに、
『大丈夫ですけん』
『派手にやっちゃったけど、大丈夫だぜ』
 その声で安心した。
『一回休憩ね。20分』
 そこでエスティヴィアのタイムが入った。コアーが急いで超機械と救急セットを持ってくる。エスティヴィアもドリンクを持ってきてくれた。
 その後、 もう一度実験模擬戦を再開する。一や京一、高坂、アークは煙幕の中での、視界不良内の戦いや、不意打ちによる銃撃戦と近接を行った。アークのシュテルンは回避を高めて、距離を取りながら攻撃していき、援護に徹する。京一のフェニックスに近づくことはさける判断は正しい。クリアのやってのけた羅真人の一撃は怖かったのだ。
「くわばらくわばらだ」
「にがさないよー!」
 しかし、戦いは非情である。ブーストなど特殊能力全開で急接近したクリアのフェニックスが京一バイパーに急接近する。
「くるなー! こっちくんなー!」
 ブースト空戦スタビライザーをつかって距離をとっていく京一バイパー。そこで他の援護射撃などで、何とか危機は去るのである。データ解析の為の戦いも、慣れていくと楽しみながらの模擬戦となっていったようだ。
 殆ど非物理での攻撃が多かったため、エネルギーの帯が沢山飛び交い、アニメのロボットものさながらの爽快感があった。
「アニメの資料になるわぁ」
 エスティはウキウキしてビデオに収めている。
『はーい、実験終わりー。おつかれさーん』
 エスティが声をかけた。

 一寸ヒヤッとする事はあったが、模擬戦は終了し、少しの反省会を開く。
「ふむ、試作の物より使い勝手は良いな」
 という感想が多かったようだ。
 アークがエスティにこう訊ねる。
「フィールドフレームだけど、敵の攻撃に反応して自動でバリアを展開するように改良することはできませんか」
「其れは前のコンペで無理だって言ったのよぉ。ファランクスみたいなものにしないとだめなのぉ」
 落ち込むエスティヴィア。アクセサリではなく武装扱いになる可能性が高い。しかし、そうしたことで、其れが採用されるのかも難しいというのだ。OKを出すのは全て上のことなのだ。
「ああ、そうだったんですか。ごめんなさい」
 残念がるアークであった。
「しかし、店売りにするにはこのファングシールドは、性能良すぎやしないかな? 店売りを考えると、希望薄目になる」
 武器賭しても使える盾・ファングシールド。これは考慮がいるだろう現時点でショップにこうした武器は売っていない。扱いやすいとしても、大抵特別アイテムとしての販売になるだろう。ストライクシールドより使い易くするなど微調整がひつようだ。重量問題なる理由で銃器に取り付けると言うことも当てはまる。
 フィールド自体の性能と燃費は、試作機の其れより良好になっていることは分かったのである。なお、UK関係に装備する企画も訊ねる人が居たが、未定と言うだけで、深く話さなかった。

●クリアの青春
「さて、お仕事も終わったので!」
 クリアと守原が、お重を持ち出した。ラボの屋上でレジャーシートを広げてのピクニック気分。緑は少ないのだが、お日様がさんさんとして気持ちが良い。
「フェニックス発売記念で、なんと、鳥料理尽くしなんだよー!」
 お重からはチキンサンドをメインに龍田揚げやから揚げやらの鶏肉料理に、玉子焼にゆで卵なんかの卵料理。と豪勢だった。
「うちは、本日は山菜飯に東坡煮です。食後は茂木枇杷に苺のミルフィーユをどうぞ」
 守原も又豪勢な物を用意していた。
「わーい、2人とも大好きー!」
「わ、わあ!」
 クリアに抱きついて、頬摺りするエスティだった。
「いつもこうなのか?」
 テトが訊くと、守原と一はうんうん頷く。
「俺もご相伴にあずかるぜ」
 彼女は、『ぐきゅるるる』とお腹を可愛く鳴らして、にっこり笑った。

 殆どの人は、レーザーフィールドの改良案について色々語りながらクリアと守原の料理を摘む。関わった以上、店売りなどで世に出回って欲しいという要望が多かった。しかしそれは性能や価格を検討した後に決まることなので、何とも言えないわぁとエスティは答えるだけに止める。
 クリアは、エスティヴィアを呼び出し、みんなから少し離れた場所でこう訊ねる。
「あのね、あのね、エスティヴィアさん‥‥守原さんとどういう‥‥関係なのかな?」
 頬を真っ赤にして、恥ずかしながら、おずおずと、両手人差し指をつんつんしながら、という‥‥エスティには萌えの姿であった。
(「応援すると言ったからねぇ‥‥さて‥‥」)
 クリアは前の抱きつきの事で誤解したらしいと、分かった。
「あ、真っ赤になったのは女性に慣れてないからだと思うのよぉ。ほら、ハグは挨拶でしょぉ?」
「そ、そうなんですか?」
 ちょっと、オロオロしながら聞き返す。
「そうよ。クリア。心配しないでねぇ。弟みたいな感じかなぁ。かわいいし。ご飯おいしいし」
「はう」
「そうか。クリアも大好きなんだ?」
 にやりと笑う、エスティにクリアは、驚きの顔をする。
「‥‥っ!」
 いきなりのことで、心の整理が追いつかなくなり、クリアの頭から湯気が出た。パンクしたみたい。
「だ、だいじょうぶ!?」
 慌てるエスティが、クリアを抱き留めた。
 青春である。若さか。此が若さか。

 有る程度データが取れたことで、最後の詰めにはいることは、後々知らされたのであった。