タイトル:【横断】内陸の遭遇マスター:タカキ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/27 06:34

●オープニング本文


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●道中
 フィアナ・ローデン(gz0020)の北米横断ツアーは順調に見えた。キャラバンの車が整備されずにボロボロの道路をひた走る。車窓から戦場跡を見ることができる。キメラの死骸、KVの大破の後、ワームの破片‥‥。
 横断の旅は中盤にさしかかっていた。
 その間も、難民キャンプに立ち寄り、物資を提供し、歌い、交流を深めていく。
 規模は場所によって様々だった、体育館を借りられる時もあれば、木箱のステージだってあった。それでも、点在する(調査で分かって、計画に立てている)難民キャンプや集落に立ち寄り、キメラの襲撃、デスペアの暗躍をはね除けて、進んでいく。キャンプの人々の笑顔を見るたびに、フィアナはより一層歌うことに精を出していた。

 今のルートは、内陸部ではかなりの規模の難民キャンプであり、野盗に襲われることなど当たり前の危険区域になっていた。そのキャンプの近くに比較的大きな街がある。全員は気を引き締める。
「今度の目的地は此処よね?」
「ええ、到着し、支援物資を渡している間、高速移動艇が近くの広場に停まる事になっています。そして運び出して、街の広場に設置することになっています」
 この街とキャンプの混在地区は、競合地区からの逃亡者が多くなり、人口が増えてきた。そのためキャンプ用品も少なくなってしまい、仮設住宅などが必要とされていると言われる。人が多くなると、治安が悪くなっていくことはほぼ当然の結果だが、何らかの手助けをすれば、新しい町に発展するだろう。そのために衣食住が必要となっているのだ。
「野盗や、まだデスペアが動くから、気をつけよう」
 スタッフが言う。フィアナも頷いた。
 先行スタッフや一緒に護衛で来てくれている能力者達が安全を確認しながら、現地へと向かった。今度も大きなステージではない。彼女が歌うだけの広く、雨風が避けられる会場がないのだ。それでも彼女は歌うと言うだろう。

●デスペア
「さて、今度はどう動きますか」
 アキラが地図を見ながら考え込んでいた。
 時限催眠ではない、もっと強力な洗脳能力者を使うべきかと。
「上手く騙せば‥‥私の物となりますね‥‥あのとき、君にあったことには、何かの運命的な物を感じずにはいられない」
 彼はフィアナのCDを聴いていた。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
小森バウト(ga4700
30歳・♂・BM
皐月・B・マイア(ga5514
20歳・♀・FC
夜明・暁(ga9047
22歳・♀・DF
嵐 一人(gb1968
18歳・♂・HD
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD

●リプレイ本文

●遠く遠く
 キャンピングカーやトラックなどが土煙を上げて、走っている。周りにはバイクもあった。
「青い〜? 青く〜? どっちの方が良いカナ〜」
 車窓から景色を眺めながら葵 コハル(ga3897)が呟いていた。どうも新曲を考えているらしい。キャンピングカーの真ん中に設置されているテーブルには、地図が置かれていた。
『この先に危険はないぜ』
 嵐 一人(gb1968)と風雪 時雨(gb3678)が先行して、目的地周辺偵察から戻ってきた。AU−KVがあれば、こうしたことも可能だ。
「分かりました。では、そのまま予定通りに進んでください」
『了解』
 フィアナ・ローデン(gz0020)が無線で答える。
「フィアナちゃーん」
 アヤカ(ga4624)がフィアナに抱きついていて暫く離れていない。
「甘え猫さんですね」
「うにゃー」
 緊張感、不安を取り除くためのスキンシップであることは誰にだって分かる。コハルも「ねーねー、フィアナ〜」と構って欲しい猫の如く呼びかける。

(「フィアナを連れて行かせはしない‥‥絶対に!」)
 皐月・B・マイア(ga5514)窓の景色を見ながら思案に暮れていた。
 一緒にベル(ga0924)も銃の整備をして、次はどう動くのか考えていた。
「? ベル殿も一緒か?」
「‥‥はい‥‥」
 そんなやり取り。
 何かを決意したこと。
(「フィアナ(さん)を守るためなら、この手を穢してもいい‥‥」)
 その雰囲気を察知したのは、着物の青年水鏡・シメイ(ga0523)であった。
「水上さん、一寸」
「はい?」
 彼は、ベルの恋人である水上・未早(ga0049)を呼ぶ。
「彼は無茶しようとしています」
「‥‥そうですか」
 彼女は顔に影を落とす。
「たぶん、フィアナさんに申し訳ない事をしたのだと、ずっと思っているのです」
「‥‥ふむ」
「私もですが‥‥でも‥‥でも‥‥」
 必死の答えが出ない。
「‥‥そうですか。思い詰めることは良くないですが、気をつけておきます」
 シメイから顎に手をやって考えそう答えた
「ありがとうございます」
 未早はシメイにお礼を言った。

「ディジュリドゥは使う機会がないですよ? 軽音楽関係や、アコースティックギターなど世間で手に入りやすい楽器でやっているのですから」
「そうそう、だいたいマニアックすぎますよ」
「あ、訓練したんだけど。其れは残念です」
 小森バウト(ga4700)は、フィアナとスタッフのヨシダに突っ込まれた。
「そうだよ。こだわりすぎだよ。面白いけど」
 コハルが苦笑していた。

 街にたどり着くと、街の様々人が歓声を上げて出迎えてくれた。窓を開けてフィアナが手を振って応えると、一掃歓声が上がる。アヤカが「窓を開けているとスナイパーにやられるニャ」と言うと、「うん分かった」と窓を閉めた。

「フィアナの横断ツアーのキャンプ場所案内してくれる?」
 嵐が、自警団の一人と話をする。
「はい、こちらですよ、小さいお嬢さん」
「俺は女じゃない!」
「ええ?!」
 アジア系の人は幼く見えて、なおかつ嵐は女性的だったから仕方ないと言えば仕方ない。時雨も何度か女の子に見られていたこともあった。
「一寸ショックですね」
「いつものこととはいえ、な」
 ドラグーン2人は苦笑した。

●難民キャンプから
 一行は難民キャンプについても下見し、何か不審なものはないかと言う調査をするため、別方向には一人と時雨以外がフィアナと一緒に向かった。一人と時雨はバイクで周辺を探る。
 到着前後、高速移動艇が資材を運び終えていたため、キャンプと街の中間地点は賑わっていた。重機やトラックがひっきりなしに行き来している。再興の足音みたいに心地が良かった。
 大きな医療テントにダンデライオンの旗がはためいている。そこから。けったいな悲鳴が上がっていた。
「な? なに?」
「‥‥敵襲にしては、間の抜けている悲鳴ですね」
 ベルとマイアは一瞬警戒して覚醒したが、すぐに解いた。
 テントから出てきたのは黒髪の日本人女性であった。
「あうう、ごめんなさいですぅ。はう〜」
 着崩れた着物から、サラシが見え、一寸胸が見えそうだったので、フィアナと未早は、シメイとベルの目をふさぐか、後ろを向かせた。
「‥‥み、見えませんっ! というか見ません!」
「あの‥‥きゃああ!」
 胸が見えそうだったために着物の女性は直ぐに隠す。彼女が高速移動艇で運ばれる物資と一緒にやってきた夜明・暁(ga9047)である。
「物資運搬と共に来てくれた方ですか?」
「はいですぅ。皆様はじめまして、夜明・暁と申します。よろしくお願いします」
 着崩れを直してから、彼女はフィアナ達に挨拶した。
「いきなり本題だが。何かおかしな事はなかったか? 夜明殿」
 マイアが訊ねると暁は首を振っている。
「とくにはなかったですぅ」
「‥‥規模からすると、一人では難しいでしょうね‥‥」
「時雨殿や一人殿のほうも頑張ってくれると良いが」
 2人はフィアナとはあまり話はせず、周りを警戒していた。
 近寄ってくる人には警戒してくる。しかし、目の前にフィアナがいるためそう厳しくはしなかった。

●調査
 一行は、周辺の調査を開始する。能力者であることは隠せる者は隠し、ドラグーンの様な目立つ場合は護衛と言うことで、難民や市民とは距離を置くことに。移動力のあるドラグーンの二名はバイクで周辺を走って、何か不審な物の捜索や野盗がいないかを見張っていた。アヤカとコハルと未早はフィアナの護衛に回っている。シメイはメインゲートで見張りに付いていた。未早やコハル、アヤカは水くみの手伝いをしている。デスペアの目的はあくまで『フィアナを攫う』ことだ。なら、街を恐怖に貶めるような大がかりなことはしないだろう。未早は「彼はストーカーのような気がします」と言う事と、過去の行動からすれば推測できる。
 マイアやベル、暁は一度ダンデライオンや街の警備団に交渉し、暁が先行して交渉していたため、「フィアナの為に頑張りますよ」と、連携が組めることに安堵した。
「や、お役にたったでしょうかぁ?」
「ああ、ありがとう、夜明け殿。此で、協力してくれ無いという、不安要素は少なくなった」
「‥‥しかし気を許しては行けません‥‥」
「分かっている」
 バウトは、スタジオとテントの設置に忙しい。彼の笑みは怖いため、極力近づかない方がいいだろうと彼自身想っているからだ。一人芸で笑わせたいような気分もあるのだが。
「水持ってきました」
「ありがとう」
 スタッフ以外でも、能力者達が持ち寄った飲料や水筒に入れた水、くみ上げ作業で、かなり充分な水の補給が出来た。
「日本出身が多いので、やっぱりここはご飯なのニャ」
「肉じゃがつくれますよ」
「暁ちゃん、一緒に作ろうニャ!」
「はいです!」
 肉じゃが、みそ汁とカレーという献立になった。
「牛乳があるので、カレーに入れましょうか」
「はいニャ」
 アヤカと暁の2人は仲良く料理をする。

 マイアがフィアナの護衛を担当している未早達に、
「フィアナに避難誘導や、護衛などと称して近付こうとする見ず知らずの人間には気をつけてくれ」
 と、頼んだ。
「騙して攫うこともありますね。わかりました」
 未早にも分かる。マイアの決意が。それは未早自信も同じだ。
(「私は、彼女(フィアナ)の尊い意志を守りたい。共に歩み続けたい」)
 未早はそう思っていた。

 深夜の見張り。マイアが目を光らせていた。
「何もなかった?」
「‥‥ないですね‥‥」
 銃を持つ手に震えはない。
 灯りの向こうから、ダンデライオンと分かるパトロールが来る。簡単なサインだけを交わして去っていく。
「野盗も来ないのはどういうことだ?」
「規模的に、キメラを操れないと襲撃は無理なのでしょう。はい温めたコーヒーです?」
 シメイが、飲み物を持ってきてくれた。みんなで持ち寄った飲み物の1つである。
「ありがとう」
 2人は温かいコーヒーを飲む。春だが、内陸の夜はまだ寒い。芯から暖まってくる。吐いた息が白かった。
 星明かりだけの空、赤いあの星がなければ、綺麗であるのに‥‥。其れが惜しい。
「交代しましょう」
「交代にきました〜きゃあ!」
 バウトと暁がやってきた。暁が何もないところで転けてしまう。
「‥‥ドジッ娘ですか‥‥?」
 ベルが苦笑した
 この一日で分かったことは、野盗の襲撃もなく、不審人物や爆弾の発見もなかったことだった。しかし、安心してはいられない。

●生と死と
 ミニライヴが開かれる学校近くの広場に小さなステージを用意した。アコースティックギターでバウトが参加する。コーラスでアヤカとコハルがいる。
「さて、はじめましょうか」
「フィアナさんこっちですよ」
 何時もいるスタッフのヨシダに連れられる。しかし、目の前で顔の知らない男達が取り囲んだ。
「あなた達、誰ですか?」
 ヨシダが退くように言うが、男達は叫びながら襲いかかる!
「フィアナだ‥‥フィアナあっ!」
「どいて!」
 コハルと未早が割ってはいって、男達を吹き飛ばした。アヤカが直ぐにフィアナを抱きしめ、数歩下がった。

 一人、時雨はバイクで周りを走ると、遠くにキメラの群を発見した。その中には人間も数名いた。殆どが生気のない者もいるが、バスタードソードを持つ筋肉質で顔に傷のある男だけはまさしく違う。
「デスペアのために! かかれ!」
 その男が叫ぶと、群が突進してくる!
「洗脳者じゃない?!」
 緊急回線で仲間とダンデライオンに通達する。
「こいつら、デスペアの手の者か!」
 聞きつけたマイアや時雨、ベルやシメイも駆けつける。

 アヤカがフィアナを抱え、瞬速縮地でその場を離れようとしたが、
「見切っていますよ‥‥お嬢さん」
 後ろから声がした。
「あぶにゃ!」
 何とか身を翻して、フィアナを怪我しないように転がるが、声の主は直ぐに追いつき、アヤカを蹴る。彼女は思いっきり飛ばされて、うめいた。
「な、何者」
「まさか! アキラ?!」
 フィアナが、起きあがってその声の主を睨む。フード付マントで顔を覆われており、逆光で顔はよく分からないが、雰囲気から、アキラ・H・デスペアと分かった。
「その通りです。只の難民に変装すれば、簡単に潜り込めますよ。居住者リストも曖昧ですからね」

 シメイが弓を引いて放つ。キメラが一匹倒れていく。
「数は、おそらく時間稼ぎですね‥‥マイアさん、ベルさん!」
 シメイが叫ぶ。マイアとベルの様子が異常だと直ぐに気付いたからだ。
「お前達はフィアナの想いを捻じ曲げる。せめて‥‥見えない所で果てろ!」
 マイアが殺気を放ち、蛍火を振るい、キメラの群を屠っていく。時にはエネルギーガンで焼き殺した。
「必死になりすぎだ! マイア! 冷静になれ!」
 一人が叫ぶが彼女に届かない。
「デスペアのために!」
 敵の能力者が又叫ぶ。何人かの人間の声は生気がないのだが、傷の男だけは、彼自身の意思で言っているようだった。
「洗脳されているのか! 目を覚ませ!」
 時雨が叫ぶが、
「ふん、洗脳ではない! お前もフィアナという理想を守るために戦っているだろう! 俺もデスペアの理念を元に戦っている! 此は意思のぶつかり合いだ!」
 男は否定し叫び返した。
「‥‥あなたの意志は、間違っていますっ!」
 ベルは黒猫とシエルクラインをもって連射。襲ってくる犬キメラを蜂の巣にし、洗脳能力者の緩慢な動きをかわして、ボスに撃つが剣で弾かれた。
 丁度、マイアが直ぐに接近し、洗脳能力者に迫る。洗脳能力者も覚悟をしてバスタードソードを振りかざしす。インパクトの衝撃でお互い数m退く。しかし、隙が生まれた男にシメイの矢が肩に命中し、体勢を崩した。そこでマイアの横一文字の斬撃が決まった。
(「‥‥止めだ!」)
 そこで、マイアがもう一度振りかざすところで、
「‥‥殺せ。お前ら『意思』の勝ちだ」
 と、男が言った。
 一瞬戸惑う。今までキメラとなら戦っていた。しかし、マイアにとって敵であろうと生身の人間を殺すことは‥‥初めてであったのだ。一瞬戸惑う。しかし、既に瀕死の重傷の男は、刺せと言わんばかりに待っていた。そして‥‥マイアは声にならない叫びでそのまま鬼火を振りかざし‥‥男にとどめを刺した。
 その切っ掛けで、キメラが逃げていく。他の人間もそのまま気を失って倒れていく。暗示がとけたようだ。
 シメイ達がマイアの元に駆け寄った。彼女は、その場で呆然としていた。
「‥‥覚悟はあった。でも、これで、フィアナの手を握れ‥‥ない。もう、私は手を汚し‥‥」
「いいえ、それは違います。あなたは守るべき人を守った。そう、自分を責めないでください。そう悲しむなら、前を向いて行きましょう」
 シメイの言葉にマイアはだまって頷いた。

「む、向こうが死にましたか‥‥。おっと」
 アキラはフィアナを抱える。じたばたもがくフィアナだが全く動けない。彼が去ろうとするところ、バウトと未早が接近して、上手く抱えられずに手放してしまった。アヤカには暁が近寄って治療を施している。コハルは洗脳者を気絶させていた。
「フィアナさん!」
 未早が、アキラに向かって機械剣を振るが、アキラが避ける。しかし、彼の手に火傷がついていた。
「此は意思の力? やりますね。しかし、フィアナは諦めませんよ‥‥」
「まちなさい!」
 アキラは、あっという間に姿を消した。
「‥‥此処まで近くにくるとは‥‥」
 未早はこの瞬間に気を失っているフィアナを抱えて抱きしめた。

●歌う裏では
 フィアナは足に怪我をしたが、2時間ぐらいの延長で歌い始める。攫われかけたが、街の人は全く知らなかった。ほんの数分の出来事だったからであるし、キメラの群を撃退した能力者に注目が集まっていたとも言える。ダンデライオンの計らいにより、一行の怪我な完治しているが、ショックは隠しきれなかった。
 元気にしているフィアナは何も言わない。ただ「ありがとう」とのみだ。

 未早は、黙っているベルの隣に座って、何も言わず彼を抱きしめていた。
「‥‥未早さん‥‥?」
「‥‥何も言わないで」
 悔しさと、悲しさが入り混ざった感情が支配している。ベルは、黙って抱きしめ返していた。

「引き金が軽い。戦争に慣れるって‥‥あぁ、こういう事だったんだ」
 マイアが手を見て、一筋の涙を頬に伝わらせていた。

●早朝。
 時雨が一人で居たフィアナに声をかけた。
「あの、前の告白の答えを聞かせてくれませんか?」
 フィアナは戸惑った。
「‥‥あの、あたし、実は恋とか怖いんだ‥‥。歌には恋の歌は少ないのはそれ‥‥」
「‥‥」
 時雨はその言葉に黙ってしまう。
 フィアナは、真っ直ぐ時雨を見て、
「‥‥だから、まだ答えられないの。心の整理が付かなくて。ごめんなさい」
 と、あやまった。
「そうですか‥‥では、旅の終わりに答えを聞かせてください。約束です」
「‥‥わかりました」