●リプレイ本文
●ペットカフェで
ペット同伴可能のカフェで一行は集まった。流石に軍の基地に集まるような自体ではないためである。ジェームス・ブレスト(gz0047)が、ペットショップで買った籠にミニブタを入れていた。
「ジェームス、子供ができたのだって? それも双子と聞いたが、水臭いではないか。言ってくれれば祝いに来たのに。うん」
いつも黒い服を着ている謎の男、UNKNOWN(
ga4276)が何か企むような笑顔で、ジェームスに声をかけた。
「俺の子じゃない。捨てミニブタだ」
当然のツッコミが来るが、UNKNOWNは、花束を持ってゆっくりと話し続ける。
「ジェームス。ジョンの奴も爺さん、かね?」
「はっはっは、ラストホープのバレンタイン騒動で、俺はチョコのひとつも貰ってないぜ、はっはっは。俺は別に中止・促進どちらでもでもなかったからな。そんな余裕ねえっての」
笑いながら受け流した。
「ま、それも‥‥そうか、くっくっく。それにしても、捨てミニブタとは珍しい」
2人は笑ったが、UNKNOWNはこれ以上からかうのは止めて、ウェイトレスにコーヒーを頼んだ。
「ここかしら? あ、いたいた」
百地・悠季(
ga8270)がハードカバーを持って、ジェームスの所にやってきた。その後ろに橘川 海(
gb4179)、鳴神 伊織(
ga0421)と続いている。
「わあ、かわいいな! 抱っこして良い?」
「ああ、構わないぞ」
ジェームスは彼女にミニブタを渡すと、悠季は大事そうに抱きかかえた。
「ああ、かわいいなぁもう‥‥」
悠季はもうミニブタの愛くるしさにメロメロであった。
「あ、高性能カメラ持ってくればよかった。悠季の珍しいデレデレシーン収められたのに」
海が手持をみて、悔しがる。携帯があるし其れで良いかと、パシャリと撮ってみる。
「もう、癒し求めて何が悪いの?」
悠季は少女らしい拗ね顔になったが、ミニブタが首を傾げたので、そっちに「だんでもないでちゅよー」とあやし始めた。
「『義父さん』、この子いただけないかしら?」
「‥‥だから、俺の子じゃないと」
「冗談よ。色々事情があるようだし。あたしは飼おうと思えば飼えるから、里親を希望するわね」
と悠季は苦笑する。
「‥‥ありがたい」
悠季はジェームスが本当に困っていることを感じ取って、冗談を言わなくなった。結構真面目に考えているのだろう。と。
「伊織さん、みてみて、可愛いよ」
海ももう一頭を抱っこする。ぶひぶひ、ふごふご鳴いている。
「可愛いですね。捨てた子供を捜すべきでしょうか」
伊織は考える。
「そうだよね。事情聞いたら納得いくからね。図書館で借りようかな? ミニブタの飼育の仕方」
「買っておいたわよ」
「流石、悠季!」
3人は一緒になって、『ミニブタの飼育の仕方』をめくり調べ始めた。
「ミニブタが欲しいから来たよー!」
火茄神・渉(
ga8569)が元気よく声をかけてきた。
「最近はいろんなペットがいるとは聞いたことありましたけど、ブタもいたんですね」
加賀 弓(
ga8749)がゆったりとやって来る。
「命は大事にしないと行けません」
それに続くのは仮染 勇輝(
gb1239)と一色 七(
gb5661)で、
七は、
「初めて、豚を見たよ! 精肉しかみたこ‥‥っふがが!」
「正直な感想は良いけど、此処では禁句だよ」
勇輝が七の口を押さえた。 他の皆は苦笑している。
「こんにちは、ジェームスさん。こう言ってはなんですけど、ちょっと意外ですね。ジェームスさんが自分名義でこういう依頼を出すなんて」
「成り行きという奴だ。軍名義だとおかしいだろ?」
弓の言葉に、ジェームスは肩をすくめる。
「しかし、あまり杞憂もなく、決まりましたね。よかったですよ」
「そうですね。こうした心和む事なら大歓迎なのですけど」
弓と伊織が、ジェームスに言うと、当の本人も唖然としており、「ああ」と上の空のように返事するしかなかった。
「予想以上に早く片が付きそうで、俺は驚いている」
●休む暇がない
「たしか、緊急出動では、休みだったはずですよね?」
伊織がジェームスに聞いた。
「そうだよ。全く、何でこんな事に」
頭を抱え込むジェームスに、
「休む時間に何かに巻き込まれるという性質なのでしょうか?」
「そう言うのは、本当に勘弁だな」
伊織の言葉に、ジェームスは溜息で返した。
改めて挨拶を行ったときに、伊織が「しがない傭兵」というので、顔見知りからは「ないない、あんたは強い」と総ツッコミが来た。
「そ、そうなのでしょうか?」
少しオロオロする。
歴戦の戦士だというのは確かだ。うん。あと、称号の数々も。
話は戻って、ミニブタの処遇になった。
「ああ、かわいいなぁ。ヘラかわいいわぁ」
ミニブタに頬摺りしているのは悠季だった。もう、名前すら付けていた。
「ぞっこんだね」
海は苦笑している。
「ねーねー、おいらも貰っても良い?」
「ああ、いいぞ」
渉は喜んでミニブタをケースから出して抱っこする。
「元気なやつだ! よし芸を仕込めるかな!」
「それは、確定するまで待った方が‥‥って聞いてないし」
ミニブタにメロメロになっているのが2名。初対面での印象が最悪で話に加われないのが1名。しかし、当初の目的は達成されているので、問題はない。
●子供を捜そう
海がミカエルのバイク状態で走り回って、伊織や弓、色と勇輝が子供達に聞き込みをしていくと、住宅街に、その子がいるという。渉がハーネスとつけて、パッチーとつけたミニブタで探すと言うが‥‥。探している間、もう一頭の世話をすると言うことでジェームスと待機する。例の黒い服の男はからかいに来ただけなので、数に入れない。
「たしか、そろそろ引っ越すらしいよ?」
「うん、開放された地区‥‥場所は知らないけど、お爺さん夫婦と暮らすんだって」
と、子供から聞いた。
「あそこだ」
色が、指差した先が、庭付き2階建ての中流階級な邸宅だった。
子供が外で、泣いている。
「どうしたの?」
「‥‥ぼく、ぼく酷い事した‥‥」
服装からするに、ビンゴだろう。
「ほら、涙拭いて、男の子でしょ?」
悠季が、優しく話しかけた。
「‥‥うん」
落ち着いた少年は、「誰?」と当然訊ねる。傭兵だよと答えたら、首を傾げる。事情を話せば、又泣きそうな顔になったところ、今度は伊織が優しく接することで落ち着いたようだ。
「どうして捨てたか教えてくれない?」
「本当は飼う約束してたんだ。でも、でも、いきなりお父さんの仕事の都合で、此処をでなくては行けなくて‥‥」
とてもションボリした顔だった。
親に捨ててこいと思いこんだ様子でもある。
そう考えそうだったので、親にも聞くと、引っ越しは確かにあり、ペットは変えそうにない状態になると言うのだ。里親募集をしようにもギリギリだったのだが、保護センターはあるがそこで運良く貰われるのか不安だったそうだ。
もともと、この親ミニブタの持ち主も、引っ越ししてしまい、所在はつかめないそうだ。
「色々複雑な事情のようですね」
勇輝が考え込む。
「でも、焦って捨ててしまっては可哀想だよ」
各々が、優しく子供を諭した。
少年は「うん、こめんなさい」と謝った。正直で純真な心で。
「では、あたし達が責任もって、このミニブタを育てますので」
「ありがとうございます」
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
少年に、もう悲しい顔はなかった。
「では、済みませんが、連絡先を教えてくれませんでしょうか?」
「あ、はい」
ラストホープに来れば、いつでも会えるようにするために、連絡先を教えて貰う。そして、家族に、感謝されて、一行はジェームスの所に戻っていった。
一方そのころ、公園では、渉とジェームスが、ミニブタを散歩させて楽しんでいた。
「結構賢くて可愛いんだ‥‥」
色は、ミニブタのすごさに感心しっぱなしだった。
渉が、既にパッチーに芸を仕込んでいたからだ。
「へへ、すごいだろ」
「ブタって、よ〜く見ると、猫よりも可愛いかも‥‥」
ここにまた豚に魅入られた人が‥‥。
出立まで時間があったので、公園で弓が歌を歌うという。
「お、IMPの弓から聴けるっ! ラッキー」
ジェームスは楽しみに機構とする。当然っぽい反応だ。
『出会い〜Memories〜』
♪降り注ぐ光の中 僕らは出会った
♪運命なんて言葉で終わらせない この奇跡を
♪ゼロから始まる物語 キミと共に刻もう
♪想い出なんて無くても これからがある
♪キミと出会い生まれた 名もなき日記
♪二人で綴っていこう 大切な日々を 白紙の頁(ページ)に
その歌声は、聞いている人を魅了していくであった。
●無事里親発見
お別れに、少年の家族も来た。
「どうか、よろしくお願いします」
少年は、悠季と渉に握手を求め、2人はそれに応じた。
「ごめんな、酷い事して。でも、しあわせになってね」
少年は、ミニブタを撫でて、少し泣いた。伊織が頭を撫でて上げた。
UNKNOWNはジェームスの後ろで何かを口ずさんでいたが、誰にも分からなかった。その歌は日本の歌詞だけではかなり悲しい歌なのだが、自由や希望を願った歌でらしい。その声は誰も聞こえなかったが、彼自身、その声はあるいは届かなくても、気持ちを送るという点ではよかったのかもしれない。
ジェームスは現地からでられないために、ここでお別れ。傭兵一行は高速移動艇が飛び立つ。
「育て方は本で読んだけど、まだまだ分からないことはあるだろうね」
悠季が籠に入れた新しい家族を見てまた頬をゆるめていた。年相応の少女に見える。うみにしても、其れが面白くてたまらないらしい。ちなみに、色も癒されて言葉に出してない。
「私はそんなに強くはないはずなのですが」
「いえ、いえ、強いです。かなり強いです。尊敬していますよ」
伊織が首を傾げて、自分の強さを考えているのだが、勇輝に突っ込まれる。
こうして、平和な災難は無事に里親が決まったのだった。