タイトル:【DR】廃坑の奧にマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/03/20 01:04

●オープニング本文


●魔女の婆さんの鍋の中
 廊下に響く靴音。一歩一歩進む毎に、ロングコートの裾がなびく。
 上層部において決した作戦の概要を思い出し、ミハイル中佐は思わず顎鬚に手をやった。諜報部が真面目に仕事をしている、という事なら歓迎すべき自体だ。だが、これまで思うような成果のあがらなかった情報戦で、突然優位に立ったとは考え辛い。
 ――とはいえ。
「考えても詮無い事だな」
 その裏に何らかの意図があろうと、無かろうと、そんな事はどうでも良い。
 彼自身、軍人は政治に口を差し挟むべきではないと考えている。それに、この偵察作戦そのものが、この情報の真偽を確かめる為のものだ。要は、作戦を成功させればそれで良い。権限以上の事に思いを馳せるべきではない。
(余計な事は忘れろ。まずは、この作戦に集中しなければ‥‥)
 ドアを開く。
「総員起立!」
 副官の鋭い言葉が飛んだ。
「敬礼!」
「構わん、楽にしてくれ」
「ハ‥‥着席!」
 作戦に集まった傭兵達を前にして、ミハイルは小さく敬礼を返した。
 彼等は、この偵察作戦を成功させる為にかき集められた。その数、数十名にも及ぶ。
「志願戴き、感謝する。それでは、さっそく作戦の概要を説明させてもらう」
 彼がそう切り出すと、副官が部屋の明かりを落とし、映写機の電源を入れた。
 画面に映し出されたのはシベリア、サハ共和国首都ヤクーツクを中心とした地図。北部からヤクーツクまではレナ川が流れており、南東にはオホーツク海が広がっている。南西のバイカル湖はバグアの勢力圏内に、南方のハバロフスクから北東のコリマ鉱山周辺は人類の勢力圏だ。
 そして、ヤクーツク北西、ウダーチヌイが地図上に表示された。
「作戦目標、ウダーチヌイ」
 ミハイルの言葉に、作戦室が静まり返る。
 ウダーチヌイにはウダーチナヤ・パイプと呼ばれる、直径1km、深さ600mにも及ぶ露天掘り鉱山があり、この鉱山施設を中心に複合軍事施設の建設が進んでいる――諜報部の得た情報を元とし、上層部が出したこの予測が正しければ、バグアは、このシベリアを中心に侵攻作戦を企てている事となる。
 問題は、その情報が果たして正しいのかどうかだ。
 これがもしブラフで、人類が大戦力を投じた結果何も無かった等と言うお粗末な結果に終わった場合、戦力が引き抜かれて手薄になった戦線に対し、バグアは嬉々として攻撃を開始するだろう。
「確証が必要なのだ。でなければ、貴重な戦力を振り向ける事はできない」
 事実であれば、敵の迎撃は苛烈を極めるであろう。
 まさしく、魔女の婆さんの鍋の中へ自ら飛び込む事になる。副官が作戦計画書を取り出し、ミハイルへと手渡す。
「では、各種作戦の説明に移る。まずは――」

 指揮官が、ホワイトボードとテーブルの地図を交互に見て、駒を置いている。
 深呼吸をしてから君たちに振り向いた。
「3つの陽動攻撃と事前攻撃、陽動の偵察により、敵をかく乱する。そして、君たちの任務は、この穴の奧に何があるかを掴むため、ウダーチヌイにある、地下鉱山の真上まで偵察に向かわなければならない。通信はこの区域にはいると、基地に向かっては出来なくなるため危険である。敵の数も不明だ。何があったかしっかりカメラに写し、帰還すること。いいか?」
 彼は鉱山の大きな穴を、コツコツ叩いた。
「質問はないか?」と言うと規模などを訊ねるのは当然だ。
「恐らく敵は、様々な手段で我々を警戒している。厳重な警備も予想される、否、されると確信できる(規模は不明だが)。定期パトロールのワームはもちろんのこと、人類技術のものや、バグアの特殊なレーダーなどな。汎用機や電子戦機が有効と思われる。全機体に軍用の偵察カメラを取り付けよう(※1)」
 更に彼は続ける。
「この主目的は、如何に穴に近づくかにかかっている。正面突破より機転を利かすべきだ。少し迂回したり、陸に降りて隠れて進んだり、敵に真意を悟られないよう、様々な機転と発想が必要になるだろう。それと、無理に遭遇した敵機と交戦するな。君たちの任務は現地の穴の真相を掴むためだ。戦いは他の班の仕事だ。我々に必要な情報を得て、生きて帰ってこい、いいな!」
 指揮官が更に付け加えた。
「もし撃墜された場合に備え、エマージェンシーキット、方位磁石、地図(支給)は持っておく様に。永久凍土の各地のポイントに向かえ。迷彩したリッジウェイの救助隊が待っている」

●参加者一覧

水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
愛輝(ga3159
23歳・♂・PN
霧島 亜夜(ga3511
19歳・♂・FC
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
ルナフィリア・天剣(ga8313
14歳・♀・HD
抹竹(gb1405
20歳・♂・AA
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
須磨井 礼二(gb2034
25歳・♂・HD

●リプレイ本文

●飛行機雲を見送る
 ヤクーツクのUPC軍基地。そこから、本命偵察隊のKV8機が滑走路から飛び立った。管制塔のところで飛行機雲を眺めるのはミハイル・ツォイコフ(gz0007)中佐であった。
「他も上手くやってくれているといいが‥‥な」
 彼は機影が消えてもまだ外の景色を見ていた。
 8人は、まだ−20℃前後の気温だが、深夜に出た方がいいと言う判断で動いている。岩龍の巡航速度で1時間半。慎重に飛ぶ場合なら、それ以上を見越さないと行けない。目視による見張りをかいくぐるには夜がいいだろう。視界が悪化しているのは同じだが。北西側にあるレーダー群の陽動攻撃をしている為、そちらに敵機が移動しているかも知れない。もし、こちらがレーダーにかかっても、時間を稼ぐことができるだろう。
「その辺りは迂回するべきだな」
 ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)が、地図に指で、西側に向かって真っ直ぐなぞっていく。
「一度真西に移動して、途中で北上が良いと思うが。どう?」
「だな、モンゴル付近で陽動攻撃もあるし、敵はそっちに気が向いているはずだから」
 300km手前で北上、更に迂回か蛇行するのが良いという事になった。レナ河下流では陽動偵察があるので、河川に沿って北上するのは、陽動偵察の意味を成さない事になる。消去法的には、ヴァレスの案がいいだろう。敵機遭遇については、運任せになるが、こればかりは仕方ない。

 現在曇り。そして視界は悪い。最高気温は−18℃の世界だ。北極圏に近いために、太陽が当たらないことが多いし、寒波で雪雲が大空を覆っている。
「まったく、いい景色なら良いのにな。外も寒いしこまったもんだ」
 霧島 亜夜(ga3511)のウーフーが雲を飛び出し、KVが飛べる最高高度まで上昇した。横には愛輝(ga3159)のワイバーン、南雲 莞爾(ga4272)のディアブロに砕牙 九郎(ga7366)の雷電(ジガン)が飛んでいる。高々度から、ウダーチヌイ・パイプに急降下して内部をカメラに収める班だ。
 他の4機は、陸歩行か、低空飛行によりレーダーを避けて接近する。途中十数キロ先で、小回りの効くドラグーンを降ろし生身の偵察をする3方向偵察の作戦である。勿論迂回しながらだ。寒い中なので、どちらかというと今回生身より、AU−KVを活用した方がいいだろうと、気温が物語っていた。パワードスーツ状態であれば、どんな低温下でも−4℃となるという。
 低空飛行を続ける4機はシュテルン3機にウーフー1機だ。理想的な編隊である。
「うわあ、外は本当に寒そうだね。温かい飲み物用意したりチョコ持ってきたりして正解だった。万全だよっ!」
 補助シートに座る水理 和奏(ga1500)が須磨井 礼二(gb2034)に言う。
「其れは助かりますよ〜」
 礼二の赤い瞳が細くなる。ハッチのガラスには結露が出来ていた。和奏は落書きしたい子供心を我慢した。
 中央にルナフィリア・天剣(ga8313)のウーフー(フィンタニス)を3機のシュテルンが囲むように低空飛行をしていると、上空を見張る人類製のレーダーを目視で確認した。こちらはそのレーダーに引っかかっていないが、高々度の方は心配だが。レーダーがあると言うことは、近くにHWが飛んでいるはずだ。
「ゆっくり進もう」
 ルナフィリアの案に賛同し、気付かれない為に4機は一度陸に降りて、装輪走行か歩行で範囲外に移動した。定期パトロールのHWが空を飛んでいるのを目撃したが、異常がないと見て去っていった。
「みつかってないですよね?」
 抹竹(gb1405)がヨグ=ニグラス(gb1949)が、キョロキョロ辺りを見た。時間的な事と曇り空が幸いしているのか、レーダー頼りであるため、極地迷彩や白に近い色にしているKVを目視確認できていないかもしれない。しかし、見つかったらという危機感は、近づく事に募る。いまは高々度と低空班はお互い通信は止めている状態だ。まだ、300kmも満たない距離‥‥。
「時間がかかりそうだな」
 ルナ達はゆっくりと広大な凍土を歩いて行った。

 一方高々度班も、巡航速度で南西よりに移動してから北上を開始している。300m先で小型HW3機を発見する。雲の上なので暗いだけだ。
「一回離れよう」
 愛輝が言うと、3機とも方向転換し、退却する『フリ』をした。しばらく、相手も巡航速度で追って、ミサイルなどを撃ってきたが、威嚇射撃だった。有る程度の距離まで戻ったら、相手は近辺偵察と勘違いし、去っていった。
「あぶねえ、あぶねえ」
「少しルートを迂回していこう」
 先のことを考えれば、一旦退却も必須である。

●50km地点
 迂回や潜伏を繰り返して進むのは精神的に参る。苛立ちも募る。その時に、和奏がミユの手作りチョコレートを割って、礼二や班の仲間に上げた。
「ありがとうございます」
「うんうん。ミユお姉様の手作りなんだって。隠し味は知らないけどっ!」
「甘い物はこのときはいいな。わかにゃんありがとう」
 このときに糖分補給は最良の行動だ。
「おしいですね〜」
 広大なロシアの永久凍土でも、道路ぐらいはある。地図と見比べて、移動方向が正しいかの確認も怠らない。
 ルナが見晴らしの良い丘を見つけた。
「わかにゃん、ヴぁっちゃん、まっちゃん、礼二。丁度あの丘がいいかも知れないけど‥‥どう?」
「でも、何かおかしいね‥‥あっ」
 違和感に気付く全員。勿論ルナもだ。
 もそもそ、丘が動き出したのだ!
 土が剥がれ落ちていくと、見慣れた砲台と、剣山の甲羅。
『亀が冬眠から目を覚ました』という言葉が似合う。それは隠れていたタートル・ワーム2体が起きあがった。ただ、30m先で気付いたため、非物理兵装を数発浴びせるだけで、亀は雄叫びも反撃もする暇もなく、沈黙できた。
「うわ、これはこわいですね。こんな仕掛けがあるなんて‥‥」
 ヨグが震える。
「もうちょっと、隠れられそうな場所を探すか」
 ヴァレスが抹竹&ヨグ組に言い、他に敵がいないか確認する。
 10分後に少し先に、何もない窪地を見つけた、念入りな安全確認後、ヨグと礼二がKV降りる。
「シュテルン、お借りしますね」
「はい、おねがいしますです」
「う〜寒い〜。礼二さんKV借りるね!」
「はい、いってきますよ〜」
 防寒具に身を包んだ、ドラグーンの2人は、窪地から登るまではAU−KVを装着し、そのあとは、バイクになって、走っていった。
 その、数分後に、低空飛行班が離陸した。和奏と抹竹は装輪走行で追う。

●高々度
 迂回している高々度班は、そろそろ生身班が付いた頃だと信じ、本格的にウダーチヌイ・パイプに向かう。かれこれ2時間ぐらいは飛んでいるだろう。
「本当に何があるのだろうな」
 亜夜が呟く。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ですね」
「そうだな」
 4機のKVは少しスピードを出して飛んでいった。
 雲が晴れて、見晴らしが良くなった。下に、町の光が仄かに灯っている。はっきりと、鉱床の大きさは分からないが、その先が闇だというのははっきり分かった。
「穴を発見。急降下して、撮影開始だ」
 彼らは一気に降りる。
 バグア側は、低空移動班に注意を向けていたらしく、動きが止まっていた。
「チャンスだ!」
 この好機を逃すと跡はないと亜夜は、操縦桿を思いっきり倒して奥深く降りようとする!
 その先に見えた物は。
「なんだ、あれは!」

●逃げるバイク
 モトクロスレースのようだった。段差を跳びはねるようにジャンプにウィリー。
「うわあああっ! おってくるー!」
「右にもきた〜っ!」
 泣きそう、いや泣いたら、涙が凍る。そんな修羅場である。何に逃げているのか?
 こんもりした丘に隠れ潜む亀が起きあがり、生き餌だと思って追ってきたのだ。バイクで一気に走る。まるで怪獣映画で逃げまどう風景ではあるが、端から見るとコミカルに見える。餌を我先にと動くためにぶつかってしまうと、亀同士が喧嘩を始めるのだ。しかし、礼二とヨグは、そんな風景で和めるわけではない。食われたら一発アウトだ。
「「うわああ! まえにいぃっ!」」
 亀がずしんずしんと突進してくる。そして、大きな口を開いて食べようとした!
「食われちゃうううう‥‥っ!」
 2人はハンドルを切りすぎて転倒するが、バイクと一緒に滑っていく。冷たさを通り越して、鋭利な刃物で切り裂かれる痛みが体を襲う。そのまま滑って、亀の真下をくぐり抜けていったのだ。亀は頭ごと地面に突き刺さって抜けなくなっている。
「うう、偵察も楽じゃなですよ」
「待ってください、ヨグさん。あれを見てください〜」
 必死に逃げていた甲斐があった。礼二が起きあがって、指を指す。ヨグはその先を見る。
「これがウダーチヌイ・パイプですか!」
 未だ暗い中でもよく分かる。まさに魔女の鍋と言ってもいい巨大な穴が100m先にあった。
 丁度低空飛行班が、砲撃をしながら、空を飛んでHWと交戦している。
「今のうちに、写真を!」
「はいです!」
 2人はカメラを持って撮影するが、直ぐ逃げる必要があった。穴から大量のキメラが登ってきたのだ。
「撤退っ――!!」
 パワードスーツ状態になって逃げきろうとするが、追いつかれそうになるところ、礼二が閃光手榴弾を使って、相手を怯ませた。2人は急いで竜の翼で距離を取り、近くのくぼみに隠れ息を潜めた。キメラは捜そうと躍起になるが、空中戦の流れ弾で吹き飛ばされたようで。辺りが騒がしくなる。そのため、キメラもワームも注意がそちらに向かった。ドラグーンの2人は今だと言うばかりに、空も写真に収め戦域を離脱するため走り続ける。勿論仲間がこちらの照明弾が目視できる例の場所までだ。

●穴の底は
 ルナとヴァレスが低空飛行を続ける。左側で隠れていた亀の群がうごめいているのが見えた。恐らくドラグーン2名が追われているのだろう。しかし、今此処で目立つと問題だ。
「ヨグ君達は、僕たちが助けるから!」
 和奏が通信を入れる。抹竹と一緒にそちらに向かっていった。
「了解」
 ヴァレスと共にルナが大きな穴を撮影開始するため飛行を続けた。

「ああ、やっぱり人のKVは扱いにくいっ! けどなんとかっ!」
 抹竹が操縦桿の扱いにくさに、扱いにくさに毒吐いた。
「うわあ、勝手がちがうよお! えーっとこれで‥‥きゃあ!」
 和奏もシュテルンを操るのに悪銭苦闘し敵の攻撃を受けてしまう。
 多少シート調整はしたが、KVの強化は『本人のみにカスタム』されているため、本来の70%以下もしくはデフォルトなみに性能が落ちている。しかし、歴戦の傭兵なので周りにいるワームを相手に何とか渡り合っている。空はヴァレスがカプロイアミサイルでキメラや小型HWを撃破していき、ルナが穴を2往復して撮影する。いきなりKVが現れたことにより、バグア軍は統制が乱れていた。そこで、急降下する高々度撮影班。
 真上から見たとき、奇妙な何かが目に入った。手を止めた作業用ワーム以外に、工場ロボットと、資材運搬‥‥中央に円形台座と奇妙なオブジェが3本建っている‥‥まるで大きなコンロの台だった。
「霧島さん、むちゃやっちゃだめだってばよ!」
 九郎が叫ぶ。亜夜はより奧を撮影する為、急降下する。愛輝は彼についていく。
「無茶なことを援護する」
 愛輝は牽制射撃で、HWを寄せ付けないようにするが、ワーム達が増えていった。まだ、奧が見えない。一気に亀や、HWの砲撃が穴の上を交錯する。隙間がない!
「超伝導アクチュエータ、ピンポイントフィールド起動!!」
 九郎が雷電の機動力をアップさせ、直撃を回避する。全身を襲う痛みはピンポイントフィールドで和らいでいた。電子機器にもあまりダメージはこなかった。
「ピンポイントフィールド発動!」
 亜夜もピンポイントフィールドをはって、コクピットの直撃を免れる。しかし、攻撃の衝撃で揺さぶられては吐血する。
「『緋閃』‥‥くっ‥‥持ちこたえてくれっ! ‥‥よしっ! 撮れた!」
 ベストショットを取ったと確信し、彼は一気に急上昇するっ! 全身が熱い。プロトン砲の雨霰をくらったが、何とか耐えたのだ。
「俺が九郎を。愛輝は亜夜をたのむ!」
「了解!」
「撮影程度OKだ、離脱する!」
 南雲と九郎、亜夜と愛輝のロッテが自然と成り立ち、九郎のジガンが照明銃で任務完了撤収合図を送る。そして散開離脱を試みるため、ルナが穴の上から尾を引くように煙幕をはった。その間に全員ブーストで、その煙幕の中を跳び続ける。乱射される砲撃を河合ながら魔女の釜から離れていった。

「こっちなのですよー!」
 一方、地上班と生身班が一旦合流する場所を知らせるために、照明銃を撃つヨグ。
「ヨグ君! 大丈夫?」
 和奏と抹竹のシュテルンが後退しながら近づき、抹竹が煙幕をはって、2人でヨグと礼二を回収した。
「さて、シュテルンの本領発揮っ! 垂直離陸だよっ!」
 12枚の翼は四連バーニアをふかし、空中で変形飛行機状態となって、ブーストにて離脱する。バグアは煙幕で見えないために、この2機のシュテルンを逃してしまった。

 空戦から離脱しようとするのKV達は、煙幕から出ると雲の中に隠れて飛ぶ。それでも、逃さないと必死にプロトン砲を撃ってくるHW達。被弾しながらも必死に逃げる。
「ええい、しつこい‥‥ぐはっ!」
 南雲のディアブロがHWのミサイルの直撃を受けてしまう。しかし未だ飛んで逃げる。彼の口は血でいっぱいだ。
「逃がすつもりがないらしいっ!」
 愛輝が砲撃をかわすも、被弾してコクピット内で体が揺れた。しかし、ある距離までブーストで逃げると、目の前にはリッジウェイをはじめ、UPC軍が見えてきた。HWはそこで諦めて退却する。
「援軍っ!」
「逃げ切った‥‥助かったのか?」
「データを持って帰らないと‥‥」
 南雲と亜夜は、合流ポイントに不時着する。コクピットを開けると2人とも気を失っており、担架で運ばれた。機体は殆どボロボロで、撃墜寸前だった。これは奇跡としか言いようがない。おそらく、2人は重体だろう。兵から聴けば、シュテルン2機も別地点にて照明弾で知らせてきたので回収に向かっている。怪我はしているが、無事だという。
 中佐が呼んでいると言う話が来ると、別地点で治療を受けている和奏が、
「中佐のおじさんがっ!」
 と、目を輝かせた。

●中佐と少女
 会いたい人気持ちを抑えられず、怪我の痛さを我慢して基地内を走る少女。
「中佐のおじさん!」
 和奏が、いきなり会議室で待っていたミハイルに抱きついた。
「まったく‥‥。まだ任務中だろうが‥‥」
 中佐は彼女の怪我に気を遣いながら彼女のハグを剥がす。
「えへへ、僕頑張ったんだ!」
「‥‥危なっかしい‥‥。だが‥‥よくやったな」
 頭を撫でられた、和奏はにっこり本当に嬉しそうに笑うのであった。