タイトル:リズの社会適応3マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/03/21 23:15

●オープニング本文


 ウィルソン・斉藤(gz0075)が怪我をして、暫く立った。回復に向かい、斉藤は今も元気に働いている。リズも学校に向かい友達も出来ている。斉藤の体調管理も彼女が頑張ってやっている。
 見るからに、親子のように仲が良い。
 しかし、『そろそろだ』と、彼女はよく言う。
「どういう事だ?」
「‥‥え、なんでもないです」
 リズは、斉藤の声に真っ赤になってはぐらかす。
 首を傾げるしかない斉藤だった。

「あいつ何か悩みあるんじゃないのか? お前分かるか?」
 斉藤はバーでエスティヴィア(gz0070)と話していた。自分の開発したKV兵装が世に出たことでかなり浮かれているが、斉藤の悩みを良く聞く親友だ。酔っていたとしても、真面目に答えてくれた。
「女の子だからな。何か言いたいことはあるのよぉ」
 彼女は何か知っているように、笑う。
「なんだよ?」
「そういうのは、自分で悟れ♪」
 エスティヴィアはケラケラ笑った。
 内緒にされると少し気になる。しかし、何となく自分がしている行動をたぐり推測し、結論をだしてみた。
 彼女の新しい新居のこと。
 自分が怪我をしたとき、泣きながら駆けつけてきた。
 ああ、そういうことか。彼は煙草を燻らせる。
「何か‥‥俺を別の言い方で呼びたい? 父親か?」
「ああ、ビンゴだよぉ」
 やっと分かったか、仕事バカ、とエスティヴィアが笑う。
「そうだな、彼女を娘にする。今でも俺は、あの娘を大事に思っていたんだな」
 斉藤は、自嘲の笑みを浮かべていた。自分のことだけを考えていたつもりなのにと‥‥。
「さて、じゃあ、そう言う雰囲気にするかどうかは、あんた次第だ。さて、一旦ホテルに戻って、明日はラボに帰るよ」
 女科学者は、去っていった。

 数日後。場所はラスト・ホープの広場。たまにはこっちに顔を出して、顔見知りや彼女が懐いた人と遊ぶ方が良いと、斉藤が思った。
「誰と遊びたいか?」
「斉藤さんとみんな」
「そうか。俺はあまりラスト・ホープに詳しくないから連中に任せようか」
「はい‥‥お‥‥斉藤さん」
「‥‥ああ」
 広場の猫が首傾げて見つめている。あの熊好きの猫だった。

 広場の別の方向では、どこかで聞いた、綺麗な女性の声がする。晴れ渡った空の下で、リズは何を思っているのだろう?

●参加者一覧

水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
ハンナ・ルーベンス(ga5138
23歳・♀・ER
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD

●リプレイ本文

●広場
 ハンナ・ルーベンス(ga5138)と風雪 時雨(gb3678)が、広場に向かっている。作戦の話を聞き終えたハンナと時雨は、斉藤からのメールを受け取って、向かうことにしていたのだ。
「リズさんに会うのも久しぶりですね。元気にしているでしょうか」
「元気にしていると思いますよ」
 と、話ながら向かっている。
 広場でウィルソン・斉藤(gz0075)がリズに出会うと、お互い挨拶を交わす。
「おお、来てくれたか」
「こんにちは」
 リズはぺこりとお辞儀をして、ハンナに抱きついた。ハンナは微笑み抱き返す。
「リズさん元気でなりよりです」
「ご無沙汰しております」
 時雨は斉藤と握手した。

 何名か顔見知りにメールを送ったが、急用なので来られない事があるそうだ。其れは仕方ない。今はダイヤモンドリング作戦真っ最中なのだから。
「途中で誰かに、会ったらいいですね」
 と、ハンナが言う。
「だな‥‥」
「あれ? どこかで聞いた歌声が」
 時雨が耳を澄ましていた。
「ですね‥‥この声は」
 ハンナが辺りを見渡すと、可なりの人だかりが出来ていた。
「ストリートミュージシャンのようだが」
「行ってみましょう」

 一方右手に双眼鏡、左手に方位磁石水鏡・シメイ(ga0523)は本部に向かっていたのに広場にたどり着いていた。
「あれ? 本部に向かっていたのに?」
 どうしようもない、方向音痴である。遭難しているようにも見えた。
「はあ、この方向音痴治らない物ですかねぇ」
 ため息を吐くと、いきなり白いネコが、飛びついてきた。
「うわあああ」
「だめにゃー! 『だいふく』っ」
「にゃー」
 シメイの髪の毛と着物に、爪を立てて張り付く子猫、だいふく。その飼い主のアヤカ(ga4624)が駆け寄った。
「シメイさんこんにちはニャ」
「はい、こんにちは、アヤカさん」
 アヤカはだいふくを剥がして、バスケットの中に入れながら、シメイに挨拶する。事情を聴いたのだが、さしたる用事はなかったらしいのでそのまま散歩することにした。その時に、聞いたことのある歌声を耳にするのだ。何度も聞いた声なので確信しているし、アヤカは分かっていた。
「あ、これはフィアナさんの歌ですね」
「フィアナちゃん。此処で歌うから、あたいも一緒にと思ったのニャ」
 そこで、フィアナ・ローデン(gz0020)が歌っているのを知っていたようだ。
「では向かいましょうか」
「ニャ」
 2人は歩こうとすると、シメイは反対方向に向かおうとしてしまうので、アヤカが彼の着物をひっつかんだ。そのまま首を絞められた状態になって「ぐえっ」となったため、彼女に引きずられる形でになってしまった。
「これ以上遭難されては敵わないニャ」
「申し訳ないです」

 人だかりが無くなった辺りで、フィアナの姿が見えてきた。
「ありがとうございました!」
 お辞儀をして、喉を潤す。アコースティックギターを肩にかけていた。
「「フィアナ(さん、ちゃんにゃ〜)!!」」
 同時に声をかけるアヤカと時雨。
「あ、皆さん、おそろいで! って、わあっ!」
 左右からの声に、どっちから向けばいいのか悩んだ結果、足が縺れフィアナが躓きそうになった。時雨が慌てて支えに入った。
「あ、ありがとうございます」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
 と、イイ感じの抱きしめ方だった。丁度、フィアナは時雨の胸の中に収まっている。彼女の言い香りが、鼻をくすぐった。
「ニヨニヨだニャ」
「によによですねぇ」
 アヤカとシメイ。
「え、えええっとっ わあ!」
 2人は急いで離れた。フィアナも少し赤い顔をしていたが、時雨はその5倍は赤い。頭にやかんを置いたら、湯が沸きそうである。
「なにか、お邪魔したような気もするが‥‥」
 斉藤が、その風景を冷静に見ていた。
「ハンナさんに、シメイさん、こんにちは」
「はい、こんにちは」
 フィアナが顔見知りと挨拶する。
「で、こちらの方は?」
 当然初対面である斉藤とリズを見て言うのだった。アヤカもシメイの方も、斉藤のことは初対面となる。
「俺はウィルソン・斉藤だ。UPC北中央軍の少佐だが、今は少ないオフでここに来た。この娘は、リズだ。リズ‥‥」
「リズ。リズ・A(アリサ)・マキシムです。初めまして」
 お辞儀して、初顔合わせの人と握手する。そして、顔見知りとは軽くハグだ(少し抵抗があったのは時雨である)。
「歌素敵でした」
「ありがとう」
 リズはフィアナの歌を遠くからしか聴いてなかったが、耳は良いため、感想を述べた。うち解けることが早かったので、ハンナと斉藤は微笑んでいた。
「にゃあ」
「猫がいます。名前は?」
「だいふくにゃ!」
「にゃー」
 猫がバスケットの中から顔を出して、一声鳴いた。

 そこで、大柄の男が「あれ、斉藤さんにリズさん」と声をかけてきた。
「鹿嶋」
 大柄で顔に傷のある男、鹿嶋 悠(gb1333)だった。しかし、彼は眼鏡をかけている。
「お久しぶりです」
「鹿嶋さん‥‥っ!」
 リズは嬉しそうに駆け寄ってきた。
「元気にしていましたか?」
「はい、あのときはありがとうございます‥‥。あの、目? 悪いのですか?」
「あ、いえこれは‥‥こういう顔ですから。隠しておこうかと」
 苦笑する鹿嶋だった。

 鹿嶋とフィアナとは初対面であり、挨拶を交わして握手する。そして、斉藤からどうしてLHに居るのか、話が及ぶわけだが。斉藤が、リズをこちらに慣れさせようと言う話を聞いて、初対面sはうむと考え。
「話は分かりました。一緒に行きますよ」
 という結論になった。
 楽しく過ごせればいいなという、希望があった。


●引っかき回し猫
 今は、鹿嶋の頭にだいふくが乗っている。高いところが好きらしい。リズが、其れをじっと見つめながら歩いている。たまに、斉藤を見ているのを鹿嶋もハンナも気が付いていた。
「だいふくを抱っこしたいのですか?」
「うん」
「だいふく〜くるにゃー」
「にゃー」
「痛い、痛い、痛い」
 爪を立てて、降りていく白猫。そして、ちょこんと座る。
「抱っこOKにゃ〜」
「ふかふか可愛い」
 リズはだいふくが気に入ったようだった。
 ちなみに‥‥シメイの背中に、熊好きの猫が張り付いていた。
「謎ですね?」
 フィアナが言うと。時雨はポンと手を叩く。
「多分髪の毛が揺れるからでしょう」
「ああ、成る程」
「とほほ」
 猫同士気が合わないのか警戒しているのか分からないが、2匹はある一定の距離を置いていた。何となく雑談しながら散歩をしていると、お昼に。時雨とハンナがお弁当を持ってきていた。レジャーシートを広げて、皆で囲む。
「わー、おいしそうですね」
「良い感じの量になりましたね」
 2人はその辺を予想していたようだった。
 こうして、他愛のない話をしながら、昼食を食べる。
 だいふくも猫用のお昼ご飯を食べている。アヤカは熊好きの猫にもあげてみた。
「にゃー」
 普通に食べる猫。
「かわいいですね」
 リズが言うと。
「猫はともだちにゃ〜」
 アヤカは笑うのであった。
 余談だが、全員は気を遣ってか、フィアナの隣に時雨を座らせる様な位置にしている。ずっと緊張しっぱなしの時雨であった。フィアナは、アヤカとリズと話をしている。切り出せてないのは時雨の方である。
 シメイもハンナも、リズの姿を見て微笑む。鹿嶋からキャンディーセットを配られて、皆がコロコロ口の中で転がして、ゆっくり蒼い空を眺めていた。

「午後はどうするにゃ?」
「ショッピングも入れて、アーケードをウロウロするのはどうですか?」
「わかったにゃ。だいふく、バスケットの中でおとなしくするのにゃ」
「にゃ〜」
 アヤカが、だいふくをバスケットの中に入れた。行儀の良い猫に見える。

 広場で熊好きの猫と別れたのち、ショッピングのストリートに向かう。
「では参りましょうか」
 シメイは又、目的地と反対方向に歩き始めるので、鹿嶋が其れを止めた。
「逆ですよ」
「あ、すみません」
「方向音痴なのですか?」
 リズが不思議そうに見ている。
「山など行けませんね」
 くすくす笑うリズ。
「え、まあ、そうですね、地図があっても無理なので」
(「良い感じの表情ですね」)
(「ええ、安心します」)
 と、鹿嶋とハンナが話していた。
「ではレッツゴーニャー」
「にゃー」
 アヤカとだいふく(in バスケット)が先行した。
「え、わああ」
 アヤカがリズの手を取って、自分のペースで歩く。驚くリズは一寸嬉しそうだった。
 その後ろを、大人達が歩いていた。

 アパレルショップや、アクセサリー、ぬいぐるみの店などを回っていると、やっぱりあれやこれやと買うのが人の性。
「これ、かわいいニャ」
「うん」
「リズさんに似合いますよ」
「え。そうかな?」
「つけてみるニャ」
 アヤカ先導の女の子のターン。時雨は荷物持ちが仕事ですよと言う。しかし、今回はその必要もないようだ。たまに、シメイとアヤカはお互いを見てにやりと笑う。そう、時雨をからかおうという考えだ。丁度リズとフィアナとハンナが、別の店を見ている時だった。
「時雨はフィアナちゃんにプレゼントは渡さないのにゃ?」
「ですねぇ」
「え? それは追々‥‥って、何を言わせるのですかっ」
 時雨はその言葉をかわそうとするが、顔が真っ赤だった。
「ん? 告白したのか? あの少女に?」
「斉藤さん、野暮ですよ」
 鹿嶋がため息を吐いた。
「と、冷やかしは置いておきニャ」
 とたんに真面目になるアヤカ。近くのショウウィンドウを指差した。ぬいぐるみが沢山飾られている。
「リズちゃんに大きな、ぬいぐるみをプレゼントってのはどうかにゃ?」
「ああ、それは良い案ですね」
 鹿嶋は頷く。他も異論はなかったようだ。
「このオオアリクイとか。1/1らしい」
 斉藤が言う。
「いやそれはどうかと思います。確かに、この店にある最大級ですけど‥‥」
「この、バットもっているコアラは‥‥問題ですね」
「ここの、店ってセンスが微妙ニャ。他に行こうニャ」
 大きな犬のぬいぐるみを探して、取っておいて貰った。あとでプレゼントするために。ハンナにも、こっそり伝えることにした。勿論承諾。

 歩き疲れたから途中の和菓子の喫茶店にはいって、シメイがあんみつと抹茶をリズに奢る。
「いいのですか?」
 当然、リズはオロオロするのだ、初対面の人から奢られるのは慣れていない。
「大丈夫ですよ。抹茶とか日本のお茶やお菓子は初めてですか?」
「はい、初めてです。ワクワクします」
「おいしいニャよ〜」
 考えてみれば、日本人比率が高い。まったりするシメイが年寄りに見えるのはさておき、ゆっくりする。リズはおいしそうに食べていた。「宝石みたい」と言いながら。
 そして支払いの時に‥‥。
「では、ここはシメイさんの奢りで」
「うわー」
「冗談、冗談」
 リズの分を含めて、7人で割り勘になった。

●風船再び
 広場に戻る。
 リズは疲れているが、だいふくと遊んでいる。
「あのね、リズちゃん」
「はい?」
 横にアヤカが居た。
「あたいは、施設育ちだったのにゃ。それは悲しいこともあったけど。施設のおばちゃんに、『お母さん』っていうのは時間がかかったニャ」
「‥‥そうなの? でも、よくわかった‥‥ね‥‥」
「顔に書いてるニャ」
「ええ!?」
 そう見え隠れしている感情は誰にでも分かっていた。
 ハンナにも、先ほども「想いを口にするのは大事ですよ」と言われたばかりだ。買い物の時に。

 鹿嶋とハンナが風船を持ってきた。
「もってきました。飛ばしましょう」
「あ♪ 風船」
 リズは風船を持っている2人に駆け寄った。
 ハンナは、リズを軽く抱きしめて、こう言った。
「今まで、辛い事や悲しい事があっても、私達はそれを乗り越えてきたの‥‥だから、リズさんにこの風船を贈りましょう。貴女もそうあれるように、と」
「はい」
 リズは頷く。
「はい、どうぞって‥‥いてててて」
「だいふくっ!」
 リズに風船を渡そうとする鹿嶋にだいふくが又よじ登った。よほど高いところが好きらしい。アヤカが丁寧に猫を剥がした。
 皆で風船をふくらませて、想いを込めて飛ばした。様々な風船が、飛んでいき‥‥姿が見えなくなった。
「皆さんありがとう」
 リズは感謝の言葉を述べた。


●終わりに
 広場で皆と別れる。時雨はフィアナを送っていくという。
「あの、義父さん」
「‥‥なんだ?」
「これからもよろしくお願いします」
「‥‥ああ、リズ」
 正式な家族になったようで、リズは真っ赤になっていた。
 そのあと、アヤカとハンナに「言えた」と手紙が来たという。

 斉藤の家には、大きな犬のぬいぐるみが送られてきた。
「新しく生活する、リズへ。傭兵達より」


●余談:フィアナと時雨
 ちなみに、二人っきりになったこの2人、話しかけようにも、タイミングが悪かったので、普通に話せないギクシャクした状態だったという。フィアナはどう反応すればいいか迷っているようだった。時雨は彼女の体の感触や、匂いを思い出し、更に夕日に照らされる彼女の美しさで声が出なかったからである。
 進展はまだまだと言うことだろう。がんばれ。