●リプレイ本文
●萌えと言うよりホラー
公園に、何個かの固まりがうごめいている。群なのだが、にゃーにゃーみゃーみゃーと鳴く。猫の群だ。猫団子だ。木や木製の柱は爪研ぎになってボロボロになり、芝生は踏み荒らされている。鳥の一羽さえ此処に近づいていなかった。近づけば跡形もなく食べられるからである。
「これだけの数のキメラを集めるなんて、バグアは何て素晴‥‥恐ろしい事を」
緩みきった顔で、新居・やすかず(
ga1891)がその光景を眺めていた。
「餌の用意は出来たよな? 作戦通りにいくぞ」
朔月(
gb1440)が罠を仕掛ける班が動いている間、マタタビスプレーを作っていた。後でそのスプレーを全員に渡すつもりである。残念ながら捕獲網の支給は出来なかったようである。
「あたいは、これを猫と認めにゃいにゃ!」
猫のビーストマンであるアヤカ(
ga4624)が怒っていた。飼い猫のだいふくとはあるていど意思疎通出来ているらしいのだが、実のところそう思えるだけなので、実際ビーストマンが『完全な動物との意思疎通』が出来るわけではない。
今回の殲滅作戦を言うと、葱入り餌やマタタビスプレーで弱体化したところを一気に叩くということだ。解せぬ猫に対しては、ルノア・アラバスター(
gb5133)とやすかずの十字狙撃、全員での連係攻撃を主としているようだ。
遠くから見ればそれほど猫キメラ達の萌えオーラに影響されないのだが、やっぱりしぐさが可愛すぎ、和んでしまう。癒されるわけだ。
「にゃーうなー」
そんな声を聞いただけで、力が抜けてしまう。
「猫ですね。猫なんですよね。キメラでも猫なんですよね」
「猫じゃないにゃ!」
風雪 時雨(
gb3678)が俯いて呟くところアヤカが否定している。よほど猫好きらしい。
「元に戻せぬなら、罪を重ねる前に命を絶つのみです」
守原有希(
ga8582)が抜刀し、行動を開始する。
「‥‥カーくん頑張ろう、ね」
ルカ・ブルーリバー(
gb4180)はお気に入りのぬいぐるみをぎゅっと握りしめる。
(「くっくっく、犬派のボクだけど猫もワリとイけるんだよね〜〜。さて、何処まで萌えさせてくれるのやら楽しみにしているよ」)
いろんな意味で楽しんでいそうなのは、九条・護(
gb2093)である。
餌を周りに置き、各自罠を貼っていく。ここまでは相手も気にしていないようで、無関心だったようだ。やすかずとルノアは、解せぬ猫を発見し、監視を続ける。でかいだけ有り、目立つ。こいつが姿を陰に隠し、襲ってくるところが想像つかない。正面から見れば、その瞳から「解せぬ」と訴えているように見える貫禄を持っていた。
「160匹を罠の所までおびき寄せるニャ!」
アヤカが動く。
朔月も一緒になって動いた。
気配を感じ取った猫の群。一気に、アヤカと朔月に寄ってくる。のろのろ。てこてこ‥‥。
「こ、これはっ! 可愛いけど怖いよ! 有名な鳥が一杯映画みたいに!」
マタタビスプレーをまいているが、酔っ払う気配はなく、猫たちは寄ってくる!
「嘘だろ?!」
驚く朔月。
「うニャー!」
エノコロに持ち替えて振るアヤカ。すると、猫たちは目を輝かせながら、アヤカに飛びかかる50匹!
「多すぎニャー!」
アヤカはダッシュで逃げていく。勿論餌がある方へ。
●猫山
「可愛いけど、御免!」
由希が、猫を斬る。しかし、群が別れて思う様に狙いが定まらない。振り回すことはなく確実に一振りと狙う彼なのだが、猫たちはおもしろがって、足下にすり寄ってくる。
「だ、駄目ですたい! かわいか!」
蝉時雨、蛍火を落とし、その群がる猫を抱きしめようとしてしまう由希。しかし、其れが罠だ!
「ぎゃああああ!」
20匹の猫に、噛み付かれ引っかかれ、頭や体に登られ、こんもり猫山が出来た。
「これは酷い‥‥」
遠くで、やすかずが呟いた。
「こわい、です」
ルノアもその惨状をみて、怯える。
アヤカが引き連れた50匹は必死に餌をむさぼり狂う。キュピーンと「してやったり」と確信するアヤカなのだが、
「これで、倒したも同ぜ‥‥あ‥‥ニャ〜?」
猫たちは、食中毒や酔っ払うこともなく、食後の毛の艶が良いようです。満足して、グルーミング始めてます。
「もしかして、きかにゃい?」
訊ねてみると、猫たちは振り向いて、ニャーと大合唱。『YES』と答えているようにも、聞こえる気がするがこれも気のせいである。もし、中毒症状などを起こすキメラは作らない(そもそもそれが残っていたら、SESなど此処まで発展されていないだろう)。
『ちょうだい』
と、聞こえてしまう猫の声(気のせいです、多分)。色々『遊び回って』丁度お腹が空いていた、それでも足りないから、餌をくれとアヤカにねだり始める。
「うにゃー! 何かそう言う目で見ないでニャー!」
瞬足縮地で距離を取ってから、機械剣「莫邪宝剣」とエノコロをブン回すアヤカだが、流石に多勢に無勢。猫山がまたひとつ。残った30匹が、歓喜して、さらなる遊び相手を捜す。
『解せぬ』
相変わらず解せぬ猫はそう言いたげな顔つきで、猫の群の戯れを見ていた。
毛まみれのAU−KVから超機械「ST−505」をかき鳴らす。スラッシャーな自分だけど、今聞こえている猫の悲鳴は新しいSEだ! そうだ関係ない。でも、可哀想なのは何故だろう? 教えてお父さんお母さん。とか、心理的に護にダメージを与えていく。しかし、ギター型超機械は全体に響かせて、群を確実に仕留めているのだった。彼女の顔は緩みきっており、結局、猫山の中で萌え尽きていた。悔いがないような笑みを浮かべ。
時雨によって猫山から解放される由希。何とか活路を見いだして倒していくのだが。
「‥‥起きあがった!? 時雨さん、これは?!」
時雨が仕留めたはずの猫が起きあがり、うなーと鳴く。可愛いしぐさで遊んでとねだってくる。
「やはり、猫は‥‥殺せません!」
なんと、彼はとどめを刺していない!
「それはそれ、これは‥‥これ‥‥で、かわいかー!」
由希がまた萌える。
猫山が再び出来て更に1つ増えた。
朔月が徐々に解せぬ猫に近づく。目がつり上がり、髪の毛に猫の毛が絡まっている。仕留めた猫の死体を投げ捨てて、ボスの解せぬ猫を睨めっこ。
「この、良い子にしておとなしく‥‥しろってんだ」
解せぬ猫は、それでも、『解せぬ』と目で訴えている。しかし、ゆらりと起きあがって、朔月にゆっくり近づいてきた。
「その仕草も可愛いけどっ! そう簡単に‥‥もえて‥‥ああ、かわいいよう!」
その瞬間頭をカプリ。
「‥‥ぎゃああ! このお! いい気になりよって!」
猫のじゃれ合いの如く、プロレスが始まった。猫パンチ、パンチ、キック連打の解せぬ猫に対して、朔月の【OR】Cat’sfingernailが猫の毛を刈り取る。お互い猫の喧嘩に見えて仕方ない。
丁度そのころ、ルノアとやすかずも狙いを定めている。朔月が投げ飛ばす瞬間を狙うのだ。しかし、猫1匹が、やすかずにこっそり近づいていたのだ。
「‥‥へ?」
「にゃーおん」
覚醒して冷静さを増した彼でも‥‥一鳴きに落ちる。その仕草がとても可愛いからだ。
「かわいいですよ!」
しかし、彼の周りにぎらりと光る、猫の目、目、目。
「‥‥ひぃ!」
天国と地獄を、同時に味わったやすかずであった。
「ぬおおお、お前はイイ子にしなさいって言うのが判らんのか〜!? 『にゃんこ★ろーりんぐあたっく』!!」
朔月が、やっと解せぬ猫の前足を掴み、思いっきりジャイアントスイングする。
「やすかず! ルノア!」
思いっきり投げた。同時に銃声。しかし、一発分しか聞こえない。猫が飛んでいく先には、萌え最中のやすかずだ‥‥。
もちろん、その後の結果がおわかり頂けるであろう。
最大の家猫型キメラが、やすかずの顔面にクリーンヒットした。彼の顔には綺麗に四つの肉球の跡が付く。
「うぼえらっ!」
「「みひゃ!」」
群が逃げる。しかし、やすかずの上に、ちゃんと立っている解せぬ猫。
肩口には、銃弾の後があった。ルノアがうまく狙ったのである。
『解せぬ』
と、朔月を睨む解せぬ猫。
「もう一度やろうってのか?」
朔月も威嚇している(様に見える)。
そうして又プロレス開始だった。
遠くでは必死にルカが、アヤカや由希、時雨、護にへばりついている猫山を超機械αで倒していくが、心が痛む。とても傷む。しかし、何とか理性を保って超機械αのスイッチを押した。電磁波が、猫の群を蚊取り線香で落ちる蚊の如く、落としていく。
「痛いけど‥‥ごめんね!」
覚醒するときに出る、犬の幻が、音もなく威嚇している。それをおもしろがって遊ぶ猫。その仕草に萌えてしまいそうな彼女は、心を鬼にして倒していった。
「あううう、にゃああ、助かったニャ〜!」
覚醒して猫耳が生えているアヤカの猫耳が垂れる。かなり疲労が激しい。やっとのことで、理性を取り戻して、戦闘に復帰していく。
「もう一度、これだぁ!」
『にゃんこ★ろーりんぐあたっく』を繰り出す朔月が次に向けたのは、復帰したメンバーだ。
「こうなれば、この猫だけでも!」
「‥‥可愛いけど倒します!」
「うおおお! うわ! 弦に猫の毛が!」
「‥‥もうだめだ。自分はもう‥‥」
「‥‥空飛ぶ‥‥ねこさん‥‥かわいすぎ‥‥きゅう」
アヤカと、由希、護の総攻撃でなんとか解せぬ猫を仕留めることが出来た。
「‥‥何とかカル(解せぬ猫)を‥‥たおしたか‥‥」
朔月は覚醒が解除された事に気付く。
周りの、猫たちは危機感からか、一行に寄らなくなってきた。しかし、公園からは逃げることはない。
「だめだ! 練力が持たない!」
「一旦傭兵達を退かせろ!」
しかし、長時間の精神線に、時間があっという間に過ぎ去っており、傭兵達は撤退を余儀なくされるのであった。
●未だ居続ける‥‥
ボス猫(解せぬ猫)が居なくなったのだが、まだ沢山の萌え猫キメラ数十匹が陣取っている。
「これからは長期戦になる。しかし、ボス猫を倒してくれたおかげで、我々だけでも有る程度処理は出来るだろう。礼を言う」
まだ、UPC軍は戦いが続くようだ。
「‥‥もう、だめ」
「ハク‥‥まってて‥‥しくしく」
彼らには、戦う気力が無くなっている。
「だめニャー。もう駄目ニャー。可愛すぎるニャー」
「つかれ、ました」
「‥‥だめだ‥‥」
萌え尽きた傭兵達はとぼとぼ、帰還するしかなかった。
萌えキメラ恐るべしである。