タイトル:遺産回収マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/02/17 01:25

●オープニング本文


――キミが二十歳になれば、(州と町の名前)の銀行に保管している書類に目を通すことが出来る。其処に、キミに与えられる財産があるのだ。

 アレックス・ホーキンに送られた過去からの手紙。20歳の誕生日に親族から受け取った物だ。亡くなった父親からの手紙である。
「何処なんだろ? そのの金庫?」
 住所を調べると、其れは自分の故郷だった。
 過去形。
 すなわち今は、住んでいない。むしろ住めないと言うのが正しい。

 北米は、まだ半数が競合地域であり、メトロポリタンXに近いほど、バグア勢力が強い。ただ、競合地区にその銀行があるとなると、彼の為の遺産があっても、取りに行けないことは道理である。
「どういう遺産なのだろう?」
 アレックスは考え込む。
 ラスト・ホープに逃げて、何とか生活を取り戻した。しかし、遺産が土地だとすると、価値は無いとも言える。金塊やどこか別の国にある隠し口座なら別だろうとか、思うのだが。
 しかし、生きるための希望としては、遺産という『宝』は大きい。それに、興味がわく。

 実際どうすればいいのかというと、其処に向かうしかないが、自分は行けない。それは、彼は一般人だからだ。

 色々調べた結果、その町は補給基地だったため、人が生活する上で必要不可欠な建造物などは、殆ど残っている。バグアの大多数は生物的存在である。もしかすると、銀行という、要塞として利用が出来る場所は残すのではないだろうか? 地下金庫などは大抵頑強に造られるから。もしかすると、未だキメラが残っているかも知れない。
「傭兵を頼んだら?」
 支えてくれている親族が言う。
「そうだな‥‥私以外でも、あそこに保管されている書類を持って帰って来てくれる人がいればいいな‥‥」
 臨時の、保管書類サルベージをする団体を造り、貸金庫にある書類を取り戻したい人に呼びかけた。そのあと、有る程度人が集まったと確信したアレックスは、傭兵に、「銀行に向かい、遺産書類を取ってきてくれ」という依頼を申請したのだった。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
水無月 神楽(gb4304
22歳・♀・FC
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG

●リプレイ本文

●廃墟
「情報とは違っているが、用心した方が良いな」
 アルヴァイム(ga5051)は双眼鏡から、目的の銀行を眺める。既にゴーストタウン化し、バグア側の人間も人類側も手を付けていない状態だと分かるのだ。
「それでも、バグアの金庫破りとは‥‥面白い依頼だ。廃墟なら、仕事もし易いだろうな」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は煙草を燻らせながら、言った。
「ほーほっほ、宝の分け前は貰うわー」
 藤田あやこ(ga0204)はウキウキしながら、高笑い。なにかの泥棒ネタを考えているのだろうか。少なくとも『世界の大怪盗』なんて聞いたことはない。
「金庫の鍵開けなどならお任せよ♪」
 ウィンクして皆を見ているが、浮いている気がしない訳でもない。

 ガスマスク、IDカードなども殆ど手に入らなく、装備的には不安が残るものの、地図、リンク方法などは、団体から追加で情報収集できた。ただ、地図は開発当時の青写真のため、改装されている可能性は否めない。
「周りはキメラがウロウロしているだけだ。アタックビーストみたいな奴ですね」
 水無月 神楽(gb4304)がアルヴァイムから双眼鏡を借りて、眺めると、ウロウロしている犬が居る。異形の姿からして、キメラと分かるだろう。
「さて、手はず通りに寄るに忍び込むか」
 水円・一(gb0495)が準備を始めた。
「シシマイで潜入するのも良いわね」
「馬鹿なことを言うな」
「えー‥‥冗談よ」
 一に止められ、苦笑する。
 しかし、彼女の性格上やってしまいそうである。しかしおとなしく従った方が良いだろう。
「これは、貴女が持っていた方が良いですね。お願いします」
 あやこはシン・ブラウ・シュッツ(gb2155)から【OR】メトロニウム合金製ノートパソコンを借りた。
「ありがと(はーと)」

 あやこ、ホアキン、水無月、水円が回収班に周り、アルヴァイム、シン、ヒューイ・焔(ga8434)ハミル・ジャウザール(gb4773)が陽動となっている。まずは、車を隠し、忍び込む事になっている。
 陽動の数名が隠密先行を使い、先行する。そして、うろつく犬キメラの数を確認して、一気に銃などの遠距離武器で仕留めていった。
「簡単ですね」
「しかしはじまったばかりだ」
 8人は裏口から入って、一気に警備室を制圧しようとする。
 そかし、其処は蛻の殻で、埃が被っていた。白骨化しかけた人間、生態的な印象を持つ謎の計器類(理解不能で触るのを躊躇う)も埃まみれだ。
「‥‥時間的に言うと、数ヶ月程度か?」
 一が埃のつもり具合などをみると、呟いた。
「しかし此処は競合地区にも近いから気を付けましょう」
 シン、神楽が言う
「そうだな‥‥。しかし、まさか、逆のことをするとは思わなかったよ」
 一は呟いた。
「データ収集終了。予備電源電気が生きて良かったわ」
 あやこがパソコンからデータを取る。
 廃墟同然でも危険がある。警備室が廃墟と言うことはおそらく緊急警備システムはあまり動かないと思った方が良いのだろうか? しかし、そう言うときだからこそ別のシステムがある可能性はある。
「機械室を押さえれば何とかなるだろう」
 8人は別れて各自仕事に向かう。


●陽動
 狭い廊下を歩く陽動班。数フィート感覚に、ドアが並んでいる。地図ではもう少し先に機械室がある。
「!? 危ない!」
 先行して危険がないか見る、アルヴァイムの真横から、何かが襲いかかるところを、ハミルが体当たりで庇う。
「?!」
 2人は転がって、受け身をとって構えた。後列の神楽、ヒューイが直ぐに叩き斬るが、何かはかわした。
 真っ黒な毛皮に赤い肉を見せる、醜い犬が襲いかかってきたのだ。犬は、邪悪な目をぎらつかせながら、天井に張り付いていたのだ。見た目のおぞましさから、これは死体なのかと思わせる。
「ゾンビか?!」
 銃に持ち替えて天井に向かって撃つ。しかし、この狭い廊下のなかでやたらと機敏で、直ぐに銃から近接武器に切り替えた。同士討ちの危険が出るからだ。その騒がしさで他のドアが蹴り破られるように吹っ飛び、そこから、緩慢な動きの人間の死体がうごめいてきた。
「こんなにもキメラが!」
 ヒューイが、イアリスで叩き伏せる。
 アルヴァイムは転がりながら、距離を取り、長弓「桜花」で、仕留めていく。
「きりがないな」
「まったく、これは何かのゲームであったぞ」
「‥‥あれは、研究所じゃないか?」
「ツベコベ言わず叩き伏せる‥‥」
 エネルギーガンの二丁拳銃で、ゾンビキメラを打ち抜いていくシンと、イアリスで切り伏せていくヒューイを先頭に、機械室に走っていった。
 ヒューイが蹴り破った先が機械室で、その時全員が危機を感じ止まった。
 例えるなら、超小型プロトン砲。そんな光線兵器のトラップが、足下に突き刺さったのだ。光の矢とはまさにそのことだ。
 切り開いたのは良いが、まだまだ、ゾンビが追ってくる。ハミルがクロックギアソードでゾンビ達を斬り倒している。
「避けるぞ!」
 皆が転がりながら機械室に入り、シンがレーザートラップを撃破する。連射機能があるのか、4人とも腕や足に暑い激痛を感じる。アルヴァイムが、弾頭矢をつがえ、先頭に来たゾンビを爆砕させた。その衝撃で、後列のゾンビが余計干満になるところを、全員で撃退した。
 簡単に治療してから機械室を調べる。操作が分からないバグア製の機械類は破壊する、人間が使えるスイッチなどを切っていく。しかし、電子式の金庫に関わる電源などは逆にONのままだ。
『こっちのシャッターなどは動かなくなったみたいだよ。開けてと言うときはお願いするから』
 と、回収班から連絡がきた。
「では、退路の確保と、ここの見張りだな」
「それは僕がします」
 ハミルが志願した。
「わかった。ではいくぞ‥‥」
 3人は機械室から出て行った。ハミルはシンから無線機を借り、機械室のドアを閉ざした。

「暴れるか!」
 ヒューイが、ノリノリで暴れ、仲間のスナイパー達に敵を近づけさせないようにした。檻のシャッターが閉まっているところに、ゾンビキメラが手を伸ばしている。
「ホラー映画だな。まるで」
 強固な檻型シャッターも壊れるのも時間の問題なので直ぐに片を付けていった。
「退路確保!」


●回収班
 トラップの危機が無くなったことで、ゾンビや犬が襲いかかる前に、銃器で仕留めて先を進む回収班。
 しかし、数が数だけに、疲労し、弾倉を込めるために、物陰に隠れて止まることもある。地下には沢山のゾンビと、昆虫の外骨格を持つ、ホッケーマスクをつけ、チェーンソーらしい、武器が埋め込まれた巨人キメラがうごめいていた。
「使い捨てって事だな」
 どういう理屈なのか分からないがガードとしては最適に作られているのだろう。
 先の方に、頑丈な金庫の扉がある。壁のように、そびえるガードのキメラとゾンビ達を倒していくのだが、数が多い。
「きゃああ! はなせぇ!」
 あやこがハイキックや、バトルモップでゾンビを蹴散らすのだが、そこでバトルモップなのかは突っ込まない方が良いだろう。結局ゾンビに蹂躙されてしまうところを、神楽がツインブレイドを回転させて切り伏せて助けた。
「あ、ありがとう」
「‥‥無茶しないで欲しいです」
「‥‥残るはアレか」
 ホアキン、一が遮蔽を見つけて其処でゾンビ達を撃ち続ける。あらかた片づけたところで、ガードキメラが動き出した。獣なのかよく分からない雄叫びをあげ、チェーンソーをブン回していく。
 これは受けていたらひとたまりもないので、かわすが、粉砕されるコンクリートの破片が掠って傷を負う。貫通弾や閃光団を駆使し、隙を作って、射撃武器を持つメンバーの一斉射撃。そして神楽の円閃で倒すことに成功した。
「たおしたか」
 何とか生きている。
 あとは、シャッターを開けて、電子ロック式の扉を、あやこがハッキングで開けるだけだ。
「うわー、これかなり簡単なモノよ? ちょちょちのちょい。はい、あいたー♪」
 バグアは、此処の扉のロックが優れていたものと想い、そのままにしたらしい。

「さてさて、目当てのものはと‥‥アレックスの貸金庫‥‥」
 一がメモを見ながら金庫を確認していく。
「これじゃないかな」
 ホアキンが見つけた。
「そのようね‥‥暗号はと‥‥。よし、開けたよ」
 まずは、ひとつ。
「あと‥‥手分けして探すか」
「OK〜」
 そして、電子ロック式らしい金庫はあやこが担当し、錠前関係は、暗号が分かっている分なら其れで開けていく。
 アレックスの遺産書類とそれは、蝋で封をされている。
「‥‥土地の権利書っぽいな」
 一は呟く。
「うわーすげー金塊だ」
 山積みされている他の金塊の輝きに驚く一行。
「‥‥これは、欲しくなりますね」
「くすねるなよ」
 組織団体の分をのびのびソックスにいれ保管し、撤退していく。
 金塊を物欲しそうに見ながらも、流石に重量的に持っていけない分、諦めて貸金庫を出た。

「回収完了! 合流する!」
「了解」

●仕事終了
 車に乗り込んだ一行を襲いかかるのは騒ぎを聞きつけた、別区域の親バグア派の車だ。
「いそげ!」
 ジーザリオに乗り込み発進。ヒューイが閃光手榴弾をなげ、相手の目をくらまし、脱出に成功する。
「ひとまず終わりと! 早く危険区域から出よう!」

 ラスト・ホープ。
 アレックスと、遺産回収団体にその書類を受け渡す。後日、結果が分かるそうだ。その時にも立ち会いできるので、断る理由もない。
 悲喜交々の表情を見せる依頼主達。遺産が土地だと、落胆している人がいるが、もし平和になれば、そこで人生をやり直せると皆で説得する。アレックスも、自然豊かな土地だったが、場所は北米ではなく、カナダにあるそうだ。移住も考えられるだろう。別荘か何かと言うことらしい。
「ありがとう、これで明日への希望が見えてきました」
 アレックスが8人の能力者にお礼を言うのであった。