タイトル:カウントダウンライヴマスター:タカキ

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/08 21:54

●オープニング本文


 ラスト・ホープの年明けが近い。屋内型のスポーツ施設などでは人工雪を降らせているのかしらと思うのだが、スキーをする余裕はなさそうだ。
 デトロイトで、バグアが狙っていることを知ってから、スタッフはフィアナ・ローデン(gz0020)をあまりLH外に出さなくなっていた。いまは様々な場所で激戦が続く。本来彼女は戦地あとに赴き、歌いたがっているが、先の不安要素が解消するまでは難しいだろう。

 しかし、地道に活動することは重要。ラスト・ホープの大きめなステージを借りて、新アルバムとの販売をすることとなった。『ピース・オブ・ワールド』というCDも出すのである。
 ただ、少数発行による自筆サイン版もあると、ラスト・ホープ内で噂が広まるので、整理券もかなりさばかれたようだ。
「歌は良いね」
 誰かが言った。
 確かにそうだ。ハイテンションになることとか、癒されるとか、様々な感情を思い出す。とても良い芸術といえよう。

「さて、このごろステージで歌ってないし‥‥。思いっきり歌いましょう!」
 フィアナは事務所でガッツポーズをとっていた。
 チケットの売れ行きは良い。後は皆で楽しめるようになれば、いいなと胸を躍らせるのだった。

●参加者一覧

/ 水鏡・シメイ(ga0523) / ベル(ga0924) / 辰巳 空(ga4698) / 美環 響(gb2863) / 風雪 時雨(gb3678

●リプレイ本文

 ライヴハウス前。
 フィアナ・ローデン(gz0020)の歌を聴きたいために、沢山の人が集まっていた。
「多いですね」
 美環 響(gb2863)が、行列に並ぶには違和感のある、彼が着ている服は気品ある上質な物。しかし、LH自体国際的な島なので横に置く。
「チケットを見せて下さい〜」
「四列に並んで〜」
 スタッフが列整理と誘導をしている。客には、20年以上も前のハッピ姿で『フィアナLOVE』とか凄い客もいるようだが、それも横に置こう。通りは殆どお祭りになっていた。響は、それでも優雅に列に並んで、開場まで待つことにした。
 一方、水鏡・シメイ(ga0523)とベル(ga0924)は、スタッフジャンバーを着て円陣を組んで気合いを入れている。
「今日のライヴ、絶対に成功させましょうッ!」
「「「オーッ!!!」」」
 どこのスポーツチームか、売店にしては気合いが入りすぎと突っ込みたくなるが、自称『フィアナさんを応援する会会長』というのだから、意気込みでグッジョブと言わせて貰う。
「‥‥フィアナさん大丈夫かな‥‥」
 ベルは、スタッフルームより奧にある控え室の方を見ていた。しかし、慌ただしくあり、会えるような状態ではないようだ。
「どうもありがとうございます!」
 シメイとベルが頑張って、CDを売るのだが、シメイは「これもどうですか?」と客に勧める。基本的にグッツは少なくCDが多い(と言っても3枚だけだが)。
「申し訳ありませんが、購入制限があります。ご注意下さい」
 と、アナウンスされる。
 もともと、メジャーのようにCDを大量にプレスすることはないので、数が少ない。そのため、ファンにとって貴重品であることは確かである。売れ行きは好調で、すでに、1stCDと最新のCDは売り切れてしまった。『HOPE ISLAND』だけ数枚残っていた。このCDが出た頃はだいたいサマーライヴ前後なので、若干数が多いのだ。
 響は、優雅に歩くことがあだになり、この『HOPE ISLAND』1枚を手に入れるのみとなった。
「既に、『ピース・ザ・ワールド』ないのですか?」
「済みません、完売しちゃいました」
 響きが訊ねると、シメイが申し訳なさそうに謝る。
(「うう、何としてでも手に入れたかったのに」)
 動揺を隠し、一礼して彼は一度去った。そろそろ開演でもあるからだ。

 フィアナのライヴが始まると、歓声が上がる。この状態になると2時間ほとんど売店側は暇になるので、一度閉めて、奧に戻る。ただ、ドリンクバーの方だけはベルが居た。ドリンク注文だけはずっとあるのだ。普通チケットを見せて半券交換という形だ。ソフトドリンク、ビール、カクテル缶など何でもある。
「‥‥はい、どうぞ。ありがとう‥‥ございます」
 ベルは頑張って、バイトに専念した。
 辰巳 空(ga4698)は、フィアナ達が演奏中に、スタッフ通路からでて、シメイの休憩をみた。
「お疲れ様です」
「どうですか? フィアナさんの様子は」
「疲労はピークのはずなので、打ち上げなどは要相談でしょうね」
「そうですか‥‥うーん」
 考え込むシメイ。
 新米医師でも、人の疲労度はよく分かる。フィアナは営業とライヴ準備と多忙であった。その中で、コミレザに遊びに行ったのは何とも言えないことだが、丁度時間をあけたのだろう。
 空は珈琲を飲みつつ、端末機器に入れた『ピース・ザ・ワールド』を聴きながら、休憩している。彼の出番は、まだまだ先。
 響はフィアナがステージで歌っている所を遠くからながめた。先頭に行くほどモッシュが激しいのだ。しかし、彼女の姿と声は良く届き、よく見えた。
「素晴らしい‥‥」
 気持ちよく歌う彼女の姿に彼は魅了されていた。


 ベルとシメイは一段落付いたあとに、時雨と出会う。
「‥‥お疲れ様です」
「おつかれさまです。そっちは大丈夫ですか?」
「‥‥ええ、一段落つきました」
 2人はのんびりと、遠くからフィアナの歌を聴いていた。
 彼女の歌に、聞き惚れる2人は始終無言である。そこに、響が近づいて、話しかけてきた。
「先ほど売店でいましたよね?」
「はい、そうです。水鏡シメイと申します」
「‥‥ベルです」
「出来れば、フィアナさんについて色々聞きたいのですが‥‥」
 シメイとベルはどうしたものか少しだけ考えるが、
「私たちが知っていることであれば」
 と、フィアナについて語り始める。
 色々避難所に向かっていたこと、危険な場所にも向かうこと、一寸お茶目さんであることも話した。
「素敵な方ですね」
 そこで、カウントダウンがはじまろうとしている。
「もう、そんな時間なのですか」
 シメイとベルは驚いた。

 フィアナが観客に向かって「皆で数えましょう」と言うと、全員が指で数を指し示すように腕を挙げていた。
「5、4、3、2、1‥‥ハッピーニューイヤー!」
『5、4、3、2、1‥‥ハッピーニューイヤー!』
 拍手と音楽が鳴り響く。祝い事の様にギターの音が響く。
「では新年に相応しい曲を‥‥! 『夜明け!』」
 夜明けを祝う歌をフィアナが歌い始める。
 一度フィアナやメンバーがステージから引き上げる。アンコールが響く中、空と時雨がスタンバイしていた。
「アンコールにはこの歌ですね」
「その後に、『ピース・ザ・ワールド』が来ます。これがラストです」
「ふむ」
 と、ミネラルウォーターを飲みながら最後の確認。
 時雨が寄って、
「あの、終わったら聞きたいことがあります。時間大丈夫ですか?」
「? はい? 良いですよ?」
 フィアナはニコリと微笑み再びステージに上がる。
 空がフィアナに寄って、体大丈夫ですかと訊ねる。彼女はバナナジュースを飲み、笑顔だけで答えた。大丈夫のサインだった。空はそれだけで十分だと実感した。
「頑張りましょう」
「はい」
 そして、『ピース・ザ・ワールド』の斉唱がはじまった。殆どの観客が歌い、このカウントダウンライヴは大成功に収めた事を印象づけるものだった。

「おつかれさま!」
「おつさま!」
 スタッフやステージメンバーがハイタッチで終わりを祝う。
「うーん、楽しかったぁ!」
 フィアナはタオルで汗を拭き、背伸びした。スタッフもメンバーも各々の撤収作業につき、ばたばたし始める。
 一方、全てが終わった後に、響がシメイに、
「あの、これをフィアナさんに渡して頂けませんでしょうか?」
 と、花束とカードを渡した。
「はい、良いですよ」
 シメイはそれを受け取る。
「では、僕はこれで失礼します」
 恭しく一礼してから彼は去っていった。
「ファンが確実に増えることは嬉しいですね。ここはひとつ、応援する会に取り込むべきでしょうか」
 目をきらりと輝かせるシメイに、ベルはため息を吐いていた。
「‥‥それ自分で言っているだけじゃないですか。‥‥いっそのこと、そう言った場所を設立は?」
「設立‥‥それは、良い案ですね」
 シメイは真面目に考え始める。
「‥‥今回関係者のなかでもスタッフのみとなってますが‥‥フィアナさんは疲れているはずです」
「確かにそうですね」
 前述のようにかなりハードだった。いや、実際ハードだが、それぐらい出来なくてどうするのもある。
「さて、私も渡したいプレゼントがありますので、一度楽屋に向かいますね」
「‥‥その間に俺は売店の撤収と‥‥誘導に回っておきます。早く帰ってきて下さいね」
「了解しました」
 シメイとベルは一度離れる。

 時雨の仕事が一段落付いた後、フィアナがそこに居た。
「フィアナさん」
「先ほどの話というのは何でしょうか?」
「‥‥ああ、聞きたいことがあります」
「はい」
 ステージ用メイクも落とした、素の笑顔のフィアナを見て、時雨はドキッとなる。
「と、唐突ですが、このライヴが終わったら貴方はどうしますか?いえ、違いますね‥‥何をしたいですか?」
「本業として、避難所に慰問行きたいですね。暫く向かってないから‥‥」
 少し悲しい顔をしていた。
「あたしは、歌うことでしか皆さんを元気づけられない。だから、歌って、少しでも勇気を、希望を与えたいのです。ハリウッドが解放されたそうですから、そこで歌いたいですね‥‥」
 その答えを聞いて、時雨は微笑む。
「そうですか、やはりこのライヴに参加してよかった。貴方にお礼を言わなければなりません。このライヴに参加させてくれてありがとう」
 時雨はそう言うと、フィアナも微笑むのであった。
「裏方お疲れ様です。助かりました」
「い、いえ」

 シメイが控え室をノックしてみたら、女性スタッフとメンバーが後片づけをしていたので、いそいそ撤収。
「フィアナさんは何処なのでしょうか?」
「あれ? シメイさん」
 フィアナが時雨と居た。
「あ、良かった良かった。あの、これファンの方からです」
「わあ、素敵。‥‥カード?」
 花束を受け取る。
 その花束は、大きめであるが重たくはなく、スノードロップ、オリーブ、バラ、コスモス、アルメリアなどが入っている。ちなみに順に希望、平和、愛、乙女の真心、可憐という花言葉がある。
 続いて、カードを読む。
『可憐な歌姫へ、あなたの平和を思う気持ちが込められた歌。とても感動しました。また、あなたの歌が聴ける日を楽しみにしています。微笑の君より』
 と、キザっぽい台詞のメッセージだった。
 フィアナは一寸驚いた顔をしている。
「凄いファンメールですね」
 シメイと時雨は苦笑するしかなかった。
「あ、そうそう」
 思い出したようにポンと手を叩くフィアナに、シメイは首を傾げる。
「あとで、シメイさんとベル君に渡したい物があるので、来て下さいね」
「あ、はい」

 シメイとベルは売店スタッフとの打ち上げで疲れ果てて、一度帰宅した。既に夜が明けそうになっていたし、フィアナがもう寝ているだろうと言うことも考えて、メールにて「後日に」と連絡するのであった。
 元旦が終わり、2日に再びローデン事務所。ベルとシメイがやってきた。
「いらっしゃい。明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます」
「‥‥明けましておめでとうございます」
 と、新年の挨拶を交わす。
「あの、渡したい物とは?」
 訊ねると、
「はい、『ピース・ザ・ワールド』のCD、サイン入りです」
「!?」
「‥‥ありがとうございます」
「お礼こういうのしかないですから‥‥」
 一寸ションボリしているフィアナだが、
「いいえ! とんでもないです!」
 シメイとベルは大喜びだった。
「そうだ、私からもプレゼントがあります」
 シメイは鞄の中から箱を取りだした。
「開けて良いですか?」
「いいですよ」
 フィアナは丁寧に開ける。中には香水が入っていた。
「わあ、ありがとうございます」
 フィアナはお礼を言う。
「いえいえ」
 和やかな新年を迎えられたようである。

 いい年でありますように。