●リプレイ本文
●出撃前に
天衝隊長の漸 王零(
ga2930)が雷電のチェックをしていた。
「又頼むぞ、相棒」
「零♪」
「王、そっちの整備は整ったか」
「ええ♪ ばっちりよ」
夫婦仲は良い。それはよい。
「いい、零。絶対無茶はしちゃダメよ‥‥はい♪♪ いつものおまじないよ♪♪」
と、KVの下の方で王 憐華(
ga4039)が夫である漸に接吻をする。
KVの下は死角になって見えないはずだが、赤宮 リア(
ga9958)は見た。
「うぅ‥‥先を越されてしまいましたね‥‥」
彼女はライバル心を燃やしていた。
ああ、ちなみにリアも漸の正式な奥さんらしい。漸の一族の結婚風習の関係のようだ。
他の人がそのシーンを見てしまったのかは知らない。
「数だけいくらいても‥‥ね」
緋室 神音(
ga3576)は今作戦の戦況に苦笑する。
しかし、如月・由梨(
ga1805)が、
「油断はなりません。そしてハリウッドが解放されれば、士気も高まるでしょう。私たちで成功を収めていきたいですね」
注意を促した。
「‥‥そうよね」
神音は頷いた。
「あ、お歳暮にスキンケアセットはどうしよう?」
「それは、死亡フラグな気がするで!」
ロレンタ(
gb3412)の独り言に、烏谷・小町(
gb0765)が青ざめながら突っ込む。
「‥‥ふう、中将殿がおられないから良かったが‥‥噂でもそれはNGや」
小町は青ざめながらキョロキョロ周りを見て安堵の溜息をついた。
今回の指揮官はかのヴェレッタ・オリム(gz0162)である。彼女の作戦通りにすればかなり戦果を期待できるのだろう。まあ、彼女個人のプライベートには口を出さない方が傭兵家業をする上でも慎重にならざるを得ない。
「偉いさんやから、あまりなれなれしく話をすると、青筋立てかねないやろな。敬語使わないひとでも、彼女に接するときは失礼の無いようにせなね」
小町は、残る11人に言う。軍に属していなくても礼儀作法はやはり重要であると。
「‥‥確かに。中将は偉い人だ。マナーを守らないと、な」
コクピットから、エリク=ユスト=エンク(
ga1072)が答えた。
通信機器のチェックと、作戦のおさらいを一度確かめてる全員。時には確認し、調整もする。
「‥‥ん。早く終わらせて色々食べる」
最上 憐 (
gb0002)が、軽やかにKVにのり、シートベルトを付ける。
「こちらもオールグリーン。出発できます」
周防 誠(
ga7131)と、ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)、ヒューイ・焔(
ga8434)もサインを送った。
「小言を聞かないように、全力で殲滅だ」
「ですね」
「うちも小言はかんべんやわ」
「いくぞ!」
「「おお!」」
先にある、邪魔な一団を排除するべく、即席滑走路から飛行機状態のKVが飛び立って、空に飛行機雲が12筋並んでいた。
「‥‥スタートまで後‥‥か」
オリムはその空を眺めている。
●1フェイズ
定位置に接近する。威嚇するプロトン砲が飛び出てくるがそれ以外に何も来ない。キメラの正確な数えることできないが、ワーム達の壁の如く展開している。プロトン砲は、そのキメラの壁を狙わないように、そして、12機のKVが固まるように誘導しているようだ。
「頭痛は起きませんね」
「範囲があるのだろうな」
「‥‥ん。威嚇だけ‥‥どうする?」
「そのまま突撃して殲滅だ」
漸が全機に叫ぶ。
漸の雷電、王のアンジェリカ、神音のディアブロがブーストでキメラ軍に突っ込む。小町、周防も途中まで一緒に飛んでいるが、途中で左右に旋回。如月、ヒューイ、ヴァレスが横一列になり各機がガトリングなどの銃器にて牽制し接近する。100m程になると、キメラが持つブレスなどが飛び交うのだが、KVには傷ひとつ付けられてないようだ。
「先に穴を開けます!」
リアがアンジェリカをブーストと空戦スタビライザーにて、群に飛び込む! 自分を巻き込んでのグレネードを2改発射し、そのエリアのキメラを粉砕した。
「やった! ‥‥きゃうん! でもまだです!」
流石に爆風を回避することは出来なかったらしく自分に反動が来る。
つかさず、ラージフレアを投下、強い閃光が空に浮かぶ。
「無理をするな、リア!」
「いまです!」
「‥‥了解。殲滅する!」
漸、王がそのひかりの中に機体を突っ込んで、通り過し、目の前のヘルメットワームに向けて漸はソードウィングで肉薄、王が3.2cm高分子レーザーで援護射撃照準を合わせるのだが、急に漸と王に異常な頭痛を起こさせてまともに狙えなかった。当たったとしても掠っただけで、HWは健在だ。
「ここまで酷いと、さすがに‥‥CW‥‥」
「耐えろ! 小町と周防が何とかしてくれる!」
神音は先に進む替えに途中にいた群が邪魔で先に進めなかった。
「‥‥っく。アグレッシブ‥フォース起動‥‥目標ロック完了‥‥落ちなさい」
AAMを駆使し、襲いかかるキメラ軍を壊滅させる。爆音と共にキメラは蚊が舞い落ちるように地面に墜落していく。
後ろで控えるロレンタは、HWの異様な動きをみる、漸と王が肉薄したHWはその場に動かないのだが、左右のHW2機が散開するのが見える。
「CWは大事なようです」
「倒さないとやばいか」
そこで真ん中のHWがプロトン砲を2発。その合間にその機体の中央か大きなひかりの弾が2つ出来ていた。計4の光だ。
「!? か‥‥回避!」
殆ど一直線のKVの陣。プロトン砲のひかりの帯と、太陽のような眩しい光の帯が、散開している周防と烏谷を除く全員に襲いかかる。被弾したり辛うじてかわしたりする機体もいたが、まだ全員撃墜されていない。
「だいじょうぶ!?」
小町が叫ぶが、
「いや、次は自分たちの心配ですよ!」
反対側の周防に注意された。
そう目の前に垂直移動して、HW2機が赤い槍のように突撃してくるのだ。しかも、頭痛が酷く、操縦桿が上手く握れない!
「ぐぅ!」
「きゃああ!」
直撃してバランスを崩す。あまりのスピードとHWから出てくる謎の粒子がKVに当たり、その影響が計器に計器に火花が散ると同時に、2人も衝撃により、コクピット内で揺れている。
「計器に異常か?!」
「でも、まだまだ、まけへんで!」
接近したのを幸いにまずは撃退を図ろうとする。1対1だと不利かも知れない。
ヴァレスと、如月はガトリング。ヒューイはソードウィングで周りのキメラを徐々に倒していくが多勢無勢だ。幾ら歴戦でも厄介この上ない。
「CWを何とかしないと」
しかしキメラの壁に阻まれており、思うように進めない。
そこで、攻撃範囲から抜けていくキメラの群。
エリクとロレンタが長距離武器などで狙い撃ち、何とか1群を落とすが、残った群がまだ飛んでいこうとする。
「‥‥ん。逃さない」
予測したかのように、最上がハイ・マニューバーを起動し、試作型「スラスターライフル」で狙い撃つ。絶対後ろに行かせていない。この後ろにはリッジウェイ中隊がいるのだ。
●2フェイズ
「あんたじゃまぁ!」
小町は叫ぶようにHWから離脱。頭痛に耐えながらロックオン。操縦桿のボタンを押す。
「頭痛のお礼には熨斗付けてアグレッシブフォース! くらいや! ナタデココ!」
エネルギーが更に充填されたスラスターライフルが火を噴く。元々耐久性のないプルプルゼリーなCWは墜落していく。同時に頭痛はおさまった。後ろには先ほど突撃してきたHWがいるので、旋回し戦わなければなるまい。
周防もスナイパーライフルD−02にて確実にコアを貫通させ倒した。
「次! 行きます!」
「向こうは片づきましたか‥‥」
「CW殲滅確認! いくぜ、由梨!」
「‥‥ですね‥‥ふっふっふ」
好戦的な笑みの如月にヴァレスは「?」となっている。
まだ、周りにいるキメラは多い。しかし、カプロイアの夢のミサイルはそれに対抗できるものだ。課題点満載ではあるが、克服すれば強力な武器である!
「出し惜しみはしませんよ? 召し上がれ、ミサイルの雨を」
K−01ホーミングミサイルが、花火のように空を縦横無尽に飛んでいく。其れは爽快な景色であった。同時に、キメラの群の半分は壊滅する。
小さな塊や避けて前進しようとするキメラは、ヒューイや、リアや緋霧、ロレンタとが露払いしていく。
「敵は光を収束してプロトン砲のようにはなってくるようです。気を付けて」
ロレンタが状況を推測して通達しながら、兵装で、飛んでいるキメラを倒していく。
エリクも兵装を使い分けて確実に通さない。しかし、数が多い。
「ではもう一発ですね」
追加オーダーのように、由梨とヴァレスが、K−01を放った。これでもうキメラは恐怖心から逃げまどうだけになる。
「良し後はHWだ! 叩く!」
漸が雷電をF・B・A(きりもみ回転でガトリングの連射方法)で突っ込んでガトリングを放つ。ワームはそれでもめげずに突撃してお互い掠る。しかし漸の雷電はソードウィング。絶妙なサポートで、回転をとめ、ワームを2枚に下ろした。他のHW1に対しても4機で戦い、確実に仕留めていこうとする。逃げさせないために。
HWの異様な動きをロレンタが予測し、封鎖の射撃や、弾幕をはりすすめ、1分には1機。2分には残った2機を仕留めることが出来た。
「く、回りすぎた。うう、きもちわる‥‥」
「もう‥‥零ったら‥‥」
F・B・Aをやりすぎた漸は暫く酔っているようだ、戻れば治るだろう。
●おわりのはじまり
「筋肉痛になってますね。一寸未だ緊張気味です」
かなり強化しているKV乗りの肉体は悲鳴を上げているようである。あまり改造されていないKVの人は疲労程度のようだが、星座などと叩くように考えた高度の機体乗りは、疲労の蓄積がそれより高いように見える。反射速度などの緊張に、さすがの能力者自身の生身が付いていけないのだろう。幸い後遺症はなく、休養を取れば治りそうだ。
「社長の言っている意味はこういう事だったんだろうな‥‥」
と、誰かが言った。
今は整備をして貰っている。損傷を直すには整備士に任す方が良い。
「零さん!」
愛機から飛び降り、愛する人の所に向かうリア。
「リア!」
漸がその彼女の名を呼ぶ。
「今回はお疲れ様でした!」
リアは漸に抱きつきキスをする。漸も優しくそれに答えキスをした。
出発前の逆の状態。
ハンカチをかみしめながら「むぅぅぅ〜」と悔しがっている憐華がいる。
「‥‥ん。お腹空いた」
そんなことは気にもせず只、改良されて美味しいと評判のUPC北中央軍のコンバットレーションをひたすら開ける最上 憐だった。
「カレーある?」
「傭兵ども、中将がお呼びだ」
下士官が読んできた。
「見事だ。更に3分以内と好成績だ。‥‥励めよ?」
と、降りる中将の言葉。不遜な態度のように見えるが、作戦が成功のようで気分が良いようだが、傭兵に好感を持っているかまでは分からない。当然の仕事だろと言われるのがオチなので全員黙っておく。
「これより、建設を開始する。別の敵が来る可能性があるから、別の傭兵部隊と代わり休息しろ。ご苦労だった」
「は、ありがとうございます!」
「‥‥よし、下がって良いぞ」
「はっ、失礼致します!」
小町が軍式に敬礼する。それに倣って、全員敬礼した。
オリムは背を向いて、部下と共にその場を去っていく。
姿が見えなくなったとたん、あまり敬語を使わない小町などは魂が出そうなぐらいのため息を吐いた。
「顔を売ると言っても、結構疲れるものだね」
そう、大きな組織と関わるとそう言う物だと思われる。
「さて、他の状況はどうなっておる?」
オリムは、部下に別地区の戦況を訊いていた。
そして、的確に自分のプラン道理に指示を出していく。考える様子もあったが、想定内なら問題なく、指揮している。机上だけではなく、現場指揮も優秀なのかと思わせる姿であった。
それだけ彼女は、この作戦に責任を負っているのだろう。私利私益以外の何かを含めて。