●リプレイ本文
●出撃!
作戦が立てられ、KVが空に舞い上がる。そして、残る数体も進軍する。
基地は目の前だが、情報の通りに、キメラが絨毯のように待ちかまえていた。キメラの雄叫びとバルカン音の合図で、バグアの基地からや、ファウンダーの陣営からのサポートの弾幕が空、地上を埋め尽くす。
「雑魚は任せたいところだけど!」
九条院つばめ(
ga6530)がハンマーボールで、小型〜中型キメラをなぎ払っていく。またはガトリングやバルカンで一掃していくのだが、
「数がこれほど多いと、プールのようですね!」
水上・未早(
ga0049)が苦笑する。
「キメラのプール、‥‥其れは萌えませんね。萌えシロクマキメラなら良いのですが‥‥あ、ラッコは勘弁ですね」
鈴葉・シロウ(
ga4772)が答えた。過去の過ち(?)を思い出して身を震わせた。
空でも、空を飛ぶ幻獣型キメラは多く、飛行班のケイ・リヒャルト(
ga0598)、如月・由梨(
ga1805)、熊谷真帆(
ga3826)、御崎緋音(
ga8646)が基地の領空内に入れない。さらには、地上や空戦部隊のプロトン砲でうまく連携がとれない状態だ。相手の必死さをうかがい知れる防戦である。
「しつこいね!」
熊谷が舌打ちする。
「でも、徹底的に壊せばいいのよね? 其れが正義ですか‥‥わかります」
と、バックのサポート弾幕と対空砲火で、周りのキメラを粉砕した。
「きました!」
如月が叫ぶ。
HWのプロトン砲が二筋のあと、一気に体当たりしてくる、別の1機が、彼女たち4機に肉薄する。
「回避っ!」
全員操縦桿を強く握り散開させる。
辛うじて直撃は避ける物の、謎の振動が彼女たちを襲った。計器も乱れている。
「体勢の立て直しに3秒! このぉ!」
熊谷がヘビーガトリングで応戦する。ケイもP−115で突っ込んできたHWを撃ち続けた。
「先に突撃した1機をやりましょう」
如月の言葉で、そのままバックしてくるHWに一斉集中砲火を浴びせる。AMM種のミサイルやD−02の援護射撃で、突撃したHWはかなり被弾しているものの、まだ突撃してくるようだ。しかも、相手の動きを予測して、3機から若干離れていた熊谷のバイパーにだ。
「くぅ!」
掠った程度であるが、かなり重い一撃。さらに次に来る謎の粒子衝撃波で、コックピットで体が揺れる。
4筋のプロトン砲が、空を切り裂く。あいては、まとまらないように必死なのかもしれない。4機は、体当たりをし続けてくるHWをかわしながら確実に狙い撃ち、撃墜することに成功した。
「まだ、亀がいるのですか?」
ケイが呟く。
「地上も苦労しているようですね‥‥」
如月が、冷静に状況を把握していた。
●接近まで‥‥
「そういえば今やってるゲーム、主人公の名前を変更して悠にして年下だけど上司な系キャラ攻略中ですが、どうですよ?」
「そんな事しないで下さい‥‥、恥ずかしいじゃないですか」
「では、そのままロリっ娘で、昔住んでいた所の幼なじみ(思い出せない)兼同僚というのは?」
「‥‥遠慮します」
ガトリングで、キメラを一掃しながら鈴葉と鹿嶋 悠(
gb1333)の間抜けな会話が聞こえる。
「真面目にやってくれ‥‥」
榊兵衛(
ga0388)が注意する。が、彼も一寸笑ってしまう。シロウなりの冗句で緊張をほぐしていることが分かるからだ。何かの縁なのかかなり知り合い率が多いので、何となく気が知れているのだ。
「知り合いが多いから、とても心強いです! 頑張ります。鐘依さん、私が守ります」
「あ、ありがとうございます、つばめさん」
鐘依 透(
ga6282)がつばめにお礼を言う。
防御のあるディスタンがハンマーボールを振り回し盾となり、ミカガミを守りミカガミが隙を見ては雪村やBCアックスで着るという構図である。鐘依にすれば複雑な心境のようだが、ミカガミの耐久性からすると、理にかなっている。
シールドウォールで、亀を守る4機のゴーレムが見えてきた。蒼いゴーレムは肩にガトリングを付けており、黒いゴーレムはやレーザー砲と槍を装備している、その槍には、薬莢の帯が見えていた。
「もしかして、ロンゴミニアトのような奴か?」
榊やカルマ・シュタット(
ga6302)が持っているのはカードリッジ式で爆破させる、ロンゴミニアト。バグア側も何か真似たようである。
「‥‥油断ならないですねぇ」
鈴葉が苦笑する。
「作戦通りでいく!」
榊がそう言うと一気に陸上班の夜十字、九条院、水上はガトリングやリニア砲で牽制していく。ゴーレム達は盾で瀬部手を受け止める。間合いはつめていくが、周りにいるキメラが血まみれになっていく。まさに血の海、赤い絨毯となっていった。ゴーレムは、3機残って、残り2器は亀の防御に回るために後退していくのだ。
「何としても主砲は守ろうって事か!」
「俺の班は右を! カルマさんは?」
「じゃあ、左だ!」
一気に機槍隊がブーストで黒を囲む2機に迫る。相手も応戦で接近して本当の肉弾戦が始まる。有利なのは槍のKVだが、ゴーレムは慣性制御という小回りが武器である。
1対4の援護射撃と、槍の連撃で、ゴーレムの盾を破壊するも、相手も怯まず、確実に傷を負わせている。例外なのは、鹿嶋のカラサルシールドである。ただ、グングニルで機動力が落ちている彼にとって、命綱でもあるが‥‥。
「まだ、動くぞ!」
「援護行きます!」
九条院と夜十字、水上の弾幕と援護射撃。ゴーレムは盾で防御するが、横から回り込んだ槍部隊に串刺しにされ爆発する。
「これで土塊にかえってくれたか」
夜十字・信人(
ga8235)が言う。
しかし、黒いゴーレムがいつの間にか忍び寄り、夜十字のディアブロに槍を突き刺し一気に爆音が上がる! 左腕がもがれる。
「速い! 早いのは赤い方だろ?」
夜十字のディアブロが、拳で殴りつけてると、黒ゴーレムはよろめき後ろに下がる。その隙に夜十字のディアブロも相手との距離を取って片手で銃を構えていた。
「囲みますよ! 夜十字さん、伍長!」
「わかった!」
3機で黒ゴーレムを囲む。
カルマと榊はロンゴをもってバックしていったゴーレムに肉薄していく。残る4機が確実に亀を仕留めるために接近するのだが、危険を感じたらしい亀2体がプロトン砲を放ち6機を襲う! 黒ゴーレムはそれに気付いていたのか範囲から抜けていた!
「なに、プロトン砲!?」
アクセルを強く踏み、操縦桿を思いっきり動かす。シールドなどで受けて、難を逃れるもかなりの各機は損傷を被る。
「くそ、目の前の敵に集中しすぎたか!」
盾が熔けている。跡数撃喰らうと破壊されそうだ、と鹿嶋は思った。
特に、九条院は‥‥鐘依のミカガミを庇ったため、科なり損傷が激しいが、大破には至ってない。ディスタンの防御力のすごさを垣間見たところであろう。
「つばめさん‥‥」
「約束しましたから!」
反動で血を吐いているのを隠して、九条院が鐘依に安心するように答えたのだ。
しかし、そのプロトン砲の砲撃が、隙となったため、空戦班からのフレア弾が落とされた。
●落とせたのは良いが
「まずは一撃め! フレア弾投下!」
御崎が急降下して、フレア弾を落とす。【GU】の援護もあり、さらに亀の目標が、地上に向かった隙を逃すことはない。
「一般人もいると言いますがこれは‥‥仕方有りません」
如月も続いて急降下爆撃、そして急上昇する。
見た目では6割ほど破壊できたようだ。
ケイと熊谷がロッテを組み、確実にHWを押さえ込んでいたが、熊谷の様子がおかしい。
「今頃になって! 操縦桿が言うことを!」
先ほどの衝突ダメージで、操縦が効かなくなっているようだ。
「急いで守らないと!」
そこで、もう一機のHWが集結させないために、プロトン砲を撃ってくる! 掠った程度で計器が乱れるほどの威力!
「熊谷さん! 離脱して!」
ケイが叫ぶ。
「‥‥っく悔しいけど!‥‥ええ?」
しかし、いきなり接近をしてきたHWの零距離からのプロトン砲の砲撃! 熊谷は回避できない!
「きゃああ!」
熊谷のバイパーは、煙を上げながら、基地とは反対方向に、墜落していった。
「よくもお!」
残る3機が一斉射撃。熊谷を打ち落としたHWを撃破した。
遠くの方で、リッジウェイらしい機体が、熊谷のバイパーの墜落場所に動いている‥‥、MATのリッジウェイのようである。熊谷機の回収に向かってくれたのだろう。
●黒の脅威とミカガミの威力
手足を引っ込めて、態と動かなくなった亀(防御主体の行動だろう)。そこで九条院のハンマーと水上がレーザーで仕留める。
「あと、一体!」
榊と、カルマのロンゴミニアト組は1対1でゴーレムに立ち向かう。
「我が【忠勝】を敵に回したのが、己が不運と心得るのだな。我が手に掛かったのを最後の誉れとするが良い!」
とどめは胴体を貫き、カードリッジを何度もリロードしして、蒼いゴーレムを撃破する榊の雷電と、
「ダム・ダルとはやっぱり全てにおいて劣るわけだな‥‥当たり前か」
カルマのディアブロがもう一機の蒼いゴーレムを撃破していた。
流石、凶悪武装として知られる、ロンゴミニアトである。
一方、黒は機敏で堅い。
盾で3機の攻撃を受け止め続けて槍やレーザーで確実にダメージを蓄積してくる。1体3で苦戦しているのだ。
「この機体‥‥やる!」
鹿嶋が焦る。
「未だ好機ではないですね‥‥」
シロクマの顔で苛立ちを隠せない鈴葉。
「このままだと、本当にゲシュペントになりかね‥‥! なにぃ!」
注意を払って援護射撃をしていたのだが、黒いゴーレムにとって鬱陶しい援護機のディアブロの排除にかかってきた。レーザー砲を連射してきたのである!
「回避‥‥でき‥‥」
全弾被弾し爆音‥‥。
「夜十字!」
『よっちー!』
知り合いの無線。それは焦りであった。
夜十字のディアブロは大破した。しかし、通信で「大丈夫だ」と声がする。
「やらせはしません!」
彼の代わりに水上がガトリング砲で援護する! 黒いゴーレムは不意を打たれて、盾で必死に受けている。隙が出来た!
「このお!」
「弐雷電ツイン機槍を堪能しなさい!」
鹿嶋と鈴葉が一気に詰め寄る。同時攻撃だ。
黒は鈴葉の槍を受け止めるが、鹿嶋の槍だけは受けきれずに胴を貫通する。しかし、至近距離から乱暴な槍の殴打を繰り出そうとするところ鹿嶋が盾で受け止める。盾は歪む。そこで、また横からの光の筋が見てた。
「プロトン砲か!」
鹿嶋の持つ、カラサルシールドが熔けていく。しかし、幸い鹿嶋の雷電は少しの損傷だけ。鈴葉もかなり破損したが動ける!
「このまま‥‥! 倒れろ!」
鈴葉と鹿嶋は力を込めて槍で貫く。しかし黒いゴーレムも負けて無く拳で応戦してくる。2機の頭部がいびつになっていくが離れない。
プロトン砲を放った亀は直ぐに手足を引っ込めて固まるのだが、一気に詰め寄ったのは鐘依のミカガミだ。
「つばめさんがまもってくれた! そのためにも!」
肉薄したミカガミの手から雪村。眩しいほどの光の剣が、亀を蒸発させたのだった。
丁度、雷電2機が黒ゴーレムを完璧に貫き‥‥大爆発させたと同時である。
「大丈夫か? 夜十字!?」
「ああ、本当にゲシュペントになってしまったけどな‥‥生きている」
「生きていて何よりだ‥‥。なんとか運ぼう‥‥」
『こちらファウンダー! 救出成功! 撤退せよ!』
ウィルソン・斉藤(gz0075)の通信。
「よし、撤退だ!」
煙幕を張ってから、ガトリングの弾幕、煙幕をしながら撤退する陸戦班と、如月達の空戦班の空爆で、補給基地には火柱が上がっていった。
これで補給基地に大打撃を与えたはずである。もしくは、完全撃破だ。
●戦い終わって
重体者は、急いで集中治療に運ばれていった。命に別状がなければいいのだが、心配である。
オタワへ移る前に、応急治療は受けた。しかし重傷や重体者はその余裕もなく、オタワの病院に移された。鐘依は九条院とともに向かうという。
「一般人のけが人もオタワに入れてやりたかったが、色々事情で無理だった。近くの町の病院に移送している。俺は後処理があるからのここに残るけどな‥‥」
と、斉藤は言う。
「この作戦は成功したのは諸君のおかげだ。感謝する」
斉藤はきりっとした態度で、敬礼をする。
鹿島達が敬礼で返した。
そして、ラストホープ。
御崎は結婚を約束した大切な人と抱き合い、再会を喜んだ。
「無事に帰りました。でも、けが人が‥‥」
「なに、死人がいなかっただけでもよい。それに緋音君が生きているのことが、私は嬉しい」
危険な任務にはいると人はいずれ‥‥である。
未だ戦いは終わっていないのだ。
しかし、しばし休息は必要である。