タイトル:空からの伝書・手紙の主マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/19 14:47

●オープニング本文


 ある日のデトロイト。UPC北中央軍の見張り兵が、ひとつの木に引っかかっている風船を見つけた。
 風船と言っても、アドバルーンや気球のようなものではなく、玩具のそれである。
「どこかでイベントでもあったのか?」
 その兵士は、普通なら見過ごす他愛のない風船を取るため、木に登る。
 そう、あまり気にもしない風船だ。近くで子供が泣いているわけではない。
 気になったわけは至って単純。風船に付けられた紐に、米国では普通のサイズの封筒が付いていたからだ。
「海に瓶を流して、不特定の人に手紙を送るものもあったな‥‥」
 何かの想いを込めて、海や空に何かを飛ばす。そのような物だと確信した。
 緊急時での連絡方法でもあったかどうかは定かではない。
 中には手紙。
 慎重に手紙とって、危険はないか調べる。危険はない。
「よく、戦乱の中ここまで飛んできたな」
 兵士は呟いた。
 一旦、自分のデスクに人を集め、ペーパーナイフで封を切り、手紙を読む。手紙はタイプライターで書かれており、直筆サインが書かれてあった。あとは、小さく折りたたまれた地図だ。

『私は、テネシー州の人間自治区にいる者のです。いま私たちの地区は親バグア派の侵攻をうけて、壊滅の危機にあります、この手紙が届いたら、お願いです‥‥助けて下さい。彼奴らは、基地を作り拡大しています。リズ・A・マキシム 25.Aug.08』
 良くある、競合地区〜親バグア政府地区でのSOSだ。

「この風船は、テネシー州のナッシュビルあたりから飛んできたようだ。ただ、この手紙がいつか書かれたのは8月25日だ‥‥。おそらくこの者が住んでいた地区は‥‥絶望的だ。どこかに逃げたかどうかはわからない」
 特別捜査チーム『ファウンダー』のリーダーウィルソン・斉藤(gz0075)が動く。
「しかし、見つけた以上‥‥俺たちは動かざる得ない。補給基地が拡大していると、このデトロイトやオタワも危ない」
 地理的に、テネシー州はシカゴの南部、北上して来ると問題だ。
 ファウンダーは、競合地区の境界線の集落に移動し、無線や有線、足を駆使し、競合地区の情報をかき集めていた。
 立ち上げたとき、酷い雑音混じりに何かが届いた。衛星からの通信が出来ない以上、まだかろうじて生きている有線か、かなり周波数を上げた電波だろうか。
「もっと感度を上げろ!」
「は、はい!」
『‥‥こちら、リズ‥‥た、たすけ‥‥』
「こちら『ファウンダー』ウィルソンだ。リズ! 聞こえるか?」
 斉藤は叫ぶ。
『バグア‥‥が、迫ってくる! ‥‥急い‥‥ッ』
 そこで、連絡はとぎれた。
「生きているか‥‥。助け出して、色々聞かなければ‥‥」
 ウィルソンは苦悶の表情を浮かべ、紫煙を燻らせた。

 そして、作戦会議。
「基地を破壊、もしくは、可能なら痛めつけろ。このリズという人物を探し出すのは別の班だ」
 ウィルソン・斉藤は陣頭指揮を執る。
「罠という可能性は?」
 情報処理の部下が訊ねた。
「ないだろう」
 確信に満ちた声。
「サインからにじみ出る『声なき声』。そして、あの通信からの悲痛な声。偽造や演技じゃ此はできないな。恐怖と、俺たちにすがる想いが、この手紙には込められている」
 サインはや直筆の部分は恐怖で震えている箇所がいくつか有るし、タイプライターや地図の内容にも誤字がある(読解不能というレベルでもない)。急いで書いて飛ばしたに違いない。
 まず、KV戦に対しての情報を伝える斉藤は、次にリズという謎の人物を捜し出す作戦を伝える。
「次に潜入・リズ捜索班だ。車で移動する。今回、MAT(ダンデライオンの治療部隊)の要請も申請している。共同で戦うことになる。車が有ればいいな‥‥。リズの居場所は補給基地から東に約5マイル先の農業集落地のようだ。軍事無線、有線の電話回線を駆使して、完全な場所を特定。救出せよ。キメラは狼型などハウンド・狩猟型だな。嗅覚や鋭いものだろう。こちらの動きを見て、待ち伏せをしている物だろうな。治療専門が居ると助かるだろう。ただ、ここは競合地区。情報を聞き出す時は注意しろ。競合地区の人間は疑心暗鬼だ」
 ホワイトボードの地図に、乱雑に書いていく。
「苦戦を強いられるかもしれないが、くれぐれも、無駄に命を落とすなよ?」
 斉藤は、真剣な顔で檄を飛ばすのであった。

●参加者一覧

赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
神無月 るな(ga9580
16歳・♀・SN
麻宮 光(ga9696
27歳・♂・PN
立浪 光佑(gb2422
14歳・♂・DF
七ツ夜 龍哉(gb3424
18歳・♂・GP

●リプレイ本文

●遠くの方で
 ナッシュビル近辺にある補給基地から爆音が聞こえる。
「はじまったみたいだな」
 ウィルソン・斉藤(gz0075)が双眼鏡から補給基地を攻撃しているKV班の事を目視で確認していた。
「では、行って参ります!」
 赤霧・連(ga0668)が手を挙げてから、ジーザリオに乗り込んだ。MATも12人参加し、4人1組でジーザリオに乗り込む。
「気を付けてこいよ」
 斉藤は、赤霧の頭を撫でる。
「ほむ♪」
「ああ、分かっている。こういう事は何度も経験したことだ」
 南雲 莞爾(ga4272)は、其れを見ながらも、真剣に斉藤に答えていた。
 傭兵とMATの24名、計6台の車が土煙をあげて陣営から走り出す。
「可能性が有るなら‥‥助けないと‥‥だな」
 悪路を走るジーザリオに揺られながら西島 百白(ga2123)が呟くように言う。
「希望持ちましょうよ。救助を待っている人が居るなら、見捨てる訳にはいかないでしょう! 絶対に見付け出して、無事に連れて帰りましょう!」
「‥‥そうですね‥‥」
 リュドレイク(ga8720)は、そう答える。それにベル(ga0924)が頷いた。
 前もって、地域の情報を手に入れようとしたが競合地区と言うこと、そして今踏み入れるのは、その中でバグア区域だと言うことなので、まともな情報がつかめなかった。危険は増すと判断した方が良いだろう。
 緋室 神音(ga3576)が遠くの方を双眼鏡で見る。
「斉藤が目星を付けたところはあそこかしら?」
 5マイル先にある、5〜10棟程の農家の家が建ち並ぶ集落。倉庫などもちらほら見える。しかし、前の争いによって、家としての形を無くし、無惨に廃墟のようなものだった。
「人の気配はあるようです‥‥。近くに茂みや林は?」
 遠くの方で、未だKVとワームとの戦闘音が響く中、終夜・無月(ga3084)は車が隠せそうな探す。
「あっても全部を隠せる状態じゃないね。茂みぐらいだね」
 聖・真琴(ga1622)が辺りを確認する。
 道中にリュドレイクが、手でサインを送った『危険』というサインだ。
「待ち伏せか!」
 立浪 光佑(gb2422)や七ツ夜 龍哉(gb3424)が叫ぶ。
 迷彩塗装をしたバイクに乗っている人間3名と、猟犬型キメラ4匹が6台の車を囲もうとする!
「リュドレイクの『探査の目』があって助かったぜ!」
 七ツ夜が直ぐに弓をつがえて、人間の乗るバイクに当てる。勢いよくバイクは転倒し、視界から消えていった。彼も蹌踉めきジーザリオから落ちそうになるが、踏ん張る。終夜がフォルトゥナ・マヨールーで、近づくキメラの一匹を吹き飛ばした。
「廃退した人間が性懲りもなく! バグアに従わない人間は滅びてしまえっ! バグアこそ地球の新たなる支配者だ」
 バイクに乗っている人間が叫び、ショットガンで車狙う。A班のジーザリオに危うく直撃しそうになる。
「ふわわ! 流石に車に当たると、とんでもないのです!」
 赤霧が、ハンドルを思いっきり切り、回避している。
「力に心酔した奴らか! 飼い慣らされるはお前達の方だ!」
 B班の南雲がブラッディローズ、七ツ夜と同じようにバイクを撃ち、転倒させようとしたが、七ツ夜の狙った相手とは違うようで、かわされた。
 しかし、小回りからすると相手の方が有利のようだ。地の利を活かして、目的地に行かせない様に道を阻んでいるかのように見える。
 猟犬型キメラが走りながら、MATの車1両に火炎を吐く。
「うわああ! あぶない、焼け死ねるか!」
 車が爆発炎上してしまう。しかし、MAT隊員はうまく脱出しているようだ。反撃に転じてキメラと戦っている。
「くそ! ちょこまかと!」
 麻宮 光(ga9696)が反撃するも、かわされ続け、舌打ちする。
「相手しないと行けませんわね!」
 神無月 るな(ga9580)がアサルトライフルを座席の横に置いて、小銃「S−01」で、バイクを狙い撃つ。
 別車両の南雲が牽制射撃し、その隙をついて、彼女がバイクを打ち抜いた。そのまま横転爆発する。
「うふふ、運が無かったわねぇ? サヨウナラ♪」
 高飛車風なお嬢様の口調に変わっている神無月であった。
「おおっと!」
 リュドレイクがハンドルを切る。横から襲いかかってくる猟犬から身をかわすためだ。
「‥‥ここでやられる訳にはいかないのです‥‥」
 ベルや南雲、立浪の3人が宙に浮きそうになるが幸い落ちていない。
「乱暴だね」
 全身メタリックシルバーになった立浪が、文句を言いながら小銃「S−01」で猟犬キメラに反撃するが、キメラはかわしてしまう。相手は、走りながら火炎を吐いてきた。それを避けるのに精一杯になるが、少し髪の毛が燃えてしまう。
「あつつ! 止まると危険なのは分かるけど当てづらいなぁ! もう!」
「そう言うな。予想していたことだ」
 南雲が答えながら狙いを定めている。
「こうなったら‥‥てえい! くらええ!」
 聖がスコーピオンで、威嚇射撃する。
 間合いがとれた所で、スナイパー陣がバイクを狙い撃つ。
「‥‥ねらい、撃ちます」
「見せますよ♪」
「ほっほっほ!」
 ベルが、赤霧が、神無月が、確実にバグア派のバイクとキメラを仕留めていく。火炎や体当たりを喰らいながらも遭遇を乗り切った。
「少し‥‥遠回りしておこう。敵に知られたかもしれません‥‥」
 終夜がそう言うと、少しずれた場所に移動していく。車が一台大破したが、分けて隊員は乗ることになった。
「定期パトロール隊だったのかしら?」
「その可能性は‥‥高いか‥‥」

●集落に
 集落から半マイル離れたところに車を止め、迷彩シートをかぶせ向かう一行。そこから班に別れて捜索していた。
「家の中には誰もいない」
 念入りに調べて、有線の電話も確認するが、数件は通じてないようだ。
「ん? 水道も電気も生きてますね‥‥。‥‥電話‥‥これは繋がりますね‥‥」
 神無月が、電話をかける。
『はい、こちらファウンダー‥‥』
「斉藤さん? こちら救助班。目標ポイントに入りました。捜索中です」
『そうか。有線電話が未だ生きているか』
「ライフラインが生きていることは、生存者がいる可能性は高いですわ」
『ああ、傍受されていると行けないだろうから引き続き、捜索を頼む』
「了解しました」
 神無月は電話を切った。

「斉藤が記録していた周波数からは無理か‥‥少しずらしてみよう‥‥」
 B班のリュドレイクが無線の周波数をずらして、リズからのSOSが流れていないかを調べる。
『‥‥き‥‥きこ‥‥きこえ‥‥リ』
「あたった!」
 ベルが急いで無線機を探そうとするが、
「‥‥ああっ! ‥‥しまった! 持ってくるのを忘れてしまった!」
「うっかりするな! 命幾つあっても足りないぞ!」
 南雲に怒られる。
「リズは未だ生きてる! 待機だ!」
 南雲が代わりに、各班に通達する。
『‥‥た‥‥たすけ‥‥』
「何処にいる?!」
『‥‥風見鶏‥‥ある農家の‥‥地下‥‥』
「‥‥風見鶏‥‥あそこですね‥‥」
 ベルが指差した。半壊の農家の家。屋根だけは無事で、其処に今にもとれそうな風見鶏が風で回っている。丁度、B班とA班を挟んで真ん中だ。
「まこちー、みなさん、いきましょう!」
「OK 委員ちょ」
「いきましょう」
「いこうぜ」
 A班が先行し、危険がないか確認する。
「大丈夫みたい」
 そして1分遅れて、B班も合流した。
「ベル君うっかりだね。だめだよ‥‥」
「‥‥すみませんです」
 聖にいわれ、真っ赤になるベル。
 慎重に、銃を構えて中に入る。
 鉄製の扉には、大きな凹みと燃え跡があった。その近くには、犬の死体がある。異様な筋肉隆起が見られるためキメラだろう。死因は不明だ。
 C班は外で待機している。
「あけて! 助けに来たよ!」
 聖がドアをノックして叫ぶ。
「リズさん、UPCの傭兵です!」
 赤霧。
「‥‥本当?」
 かすかな声。
 リュドレイクが持つ、無線も通じて、ステレオ化し聞こえる。
「こちらUPC。リュドレイクだ」『こ‥‥U‥‥ド‥‥』
「本当‥‥だ‥‥」『本当‥‥』
 向こうは確信したのか、ドアが開く。
 其処には16〜19歳のショットガンを背中に担いでいる少女だった。あちこちに包帯を巻いて、血がにじんでいた。
 奥の方には、同じぐらいの子供が数名と、怪我をしている能力者らしい人間がいた。
「皆、ラストホープから助けが来たよ!」
 リズが言うと、奧のおびえ切っていた避難民は歓喜で泣いたり叫んだりした。
「喜ぶのは確実にここから逃げてからです‥‥さ、急いで」
 七ツ夜や南雲、緋室がけが人や子供を連れて行く。
「うわ、エミタ破損か‥‥良く生きている!」
 男勢が重体の能力者をゆっくり担架に乗せる。
「MATを! 急いで!」
「ほむ! 大変なのです!」
 何とか、車に乗せ、応急手当をする。
 リズは、未だ緊張が解けていないのか、ショットガンを構えて警戒に当たるので、赤霧とベル、聖が安心するよう声をかける。聖が手を握り、
「安心して、守るから」
 と言うと、リズは頷いた。
「指切りげんまんなのです!」
 この状態でも、癒しの笑顔を忘れない赤霧である。
「‥‥良かった‥‥。‥‥出発しましょう」
 安堵しているベル。
 全員がB班と生き延びているリズと人間派を載せたMAT車両を囲む。
 ベルと聖、赤霧がリズを連れて車に乗せようとする‥‥。
「!?」
 ベルの真後ろの空に、何かが迫っている! しかし、反応が遅れた!
「危ない!」
 幻獣の竜を模したキメラが、ベルに向かって体当たりをしてきたのだ! 近くにはリズ!
 しかし、リズとベルは何か別のものに弾かれた!
 立浪の肩にキメラが噛み付いている。
「‥‥立浪さん‥‥!」
「このお!」
 近くにいた聖が、渾身の爪でキメラを切り裂く。外れた瞬間に、噛み付かれた立浪も壱式で切り裂いた。
「く‥‥っ」
 立浪は全身メタリックから一部メタリックに戻り覚醒が解ける。
「MATさんお願いします!」
「‥‥無茶して! どうして‥‥!?」
 ベルが駆け寄り、立浪を抱き寄せる。
「2人とも‥‥守らなきゃいけないじゃないか」
 立浪は、血を吐きながら、ベルに答えて気を失った。
 急いで彼に練成治癒、応急処置が施される。MATの隊員が言うには、命は大丈夫だが、直ぐ集中治療は必須だろうという。
「く、囲まれた! やはり野生からのキメラは違うのか!」
 麻宮が叫ぶ。
 7匹ぐらいの狼や猫科の狩猟型キメラが囲んでいるのだ。うまく茂みに隠れて、忍び寄っていたのか!?
 子供達が悲鳴を上げる。終夜は、キメラを睨むが今ここで動くと危ないと判断し子供を庇うように、刀を構えていた。
「このままでは‥‥!」
「っは! 一カ所だけで良いから道をあけるんだ!」
 麻宮が何かに気付く。そこで、南雲、緋室、神無月、西島が動いた。
 囲みが一番薄い場所‥‥、つまり集落のキメラを一瞬で仕留める。
 聖が閃光手榴弾を投げる。
 接近して道を切り開いたメンバーは、走る車に飛び乗って逃げる。
 追いかけてくるキメラ達!
「みんなっ! 目ぇ閉じてっ!!」
 30秒後‥‥大きな閃光が辺りを包む!
 キメラの半分は眩しさで怯み立ち止まる。しかし、既に接近している4匹が、C班に炎を吐いてきた。幸い、能力者以外誰も乗っていない。
「熱っ! しかし、もういっちょ!」
 麻宮も閃光手榴弾をタイミング良く投げ、神無月や終夜が威嚇射撃をし、閃光で怯ませた。

 何とか追っ手から逃げた救助班は、無線で『ファウンダー』に連絡を入れる。
「こちら救助班! 確保、リズ確保! 生命に異常なし!」
『こちらファウンダー、了解!』
 直ぐに返答が帰ってきた。
『KV班! リズを救助した! 撤退せよ! 撤退せよ!』
 斉藤が、KV班に知らせたのであった。
 基地の方角は、火柱が立っていた。

●その後
 オタワ。
 リズと生き残った人をオタワ近郊の都市へ運び終えた一行は、治療を受けオタワにいる。地下室にいた、能力者と立浪の怪我は深く、集中治療を受けていた。
 本当はリズ達もオタワへ保護したかったが、オタワはUPC軍の主力軍である北中央軍の総司令部があり、斉藤の口添えでも上層部の許可は得られず、入ることは許されなかった。
「‥‥俺が、隙を見せたばかりに‥‥」
 ベルは拳を握っている。油断してはならなかったのだ‥‥。
 リズのほうも、かなりの傷を負っていたことと、精神的疲労から、面会謝絶となっている。
「子供や、生き延びた人が助かったが‥‥、重体者一名というのは、奇跡かも知れないな‥‥」
 斉藤は煙草を燻らせて、外を見ている。
 赤霧と、聖、終夜、リュドレイクが彼を見ている。
「大丈夫なのでしょうか?」
 赤霧が心配そうに斉藤に尋ねた。
「立浪は重体だが、復帰できるだろう。しかし、避難民を守っていた能力者は、能力者としての再起はむりだな‥‥」
「そうですか‥‥」
 ションボリする赤霧を斉藤は頭を撫でた。
「ほむ♪」
「すまない、また撫でてしまった。本当に、撫でやすいな‥‥」
 斉藤は赤霧の頭を撫でるのをとめる。
「いいえ、撫でられるのはうれしいです」
 赤霧はにっこり微笑む。
「でも‥‥、でも、撫でやすいのは、やっぱり、ちっちゃいからですか!」
 赤霧の言葉で、周りにいる人々に笑いが漏れた。一気に場が和んだ。
 彼女の笑顔はその場を和ませる。不思議な雰囲気があった。
 その数日後。
「リズは一般人だったが、かなりサバイバル能力や通信技術を持っている、流石生き延びていることはある‥‥もしかすると‥‥適応者かも知れないな‥‥」
 と、斉藤は彼女のカルテを見て呟いていた。