タイトル:南紀白浜復活祭マスター:タカキ

シナリオ形態: イベント
難易度: やや易
参加人数: 13 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/02 07:03

●オープニング本文


 眩しい空、見渡す綺麗な海。そして、綺麗な白い砂浜。
 しかし、このところ、キメラ騒ぎで、南紀白浜や紀伊半島全域は、お魚問題の他に、観光客の減少で大ピンチだった。
「何と言うことだ! もう大丈夫とアピールしたいが! 夏が終わる!」
 それでももう大丈夫と宣伝し、出来れば泳ぎ以外での海のレジャーが出来ないかも考える。
 漁師さん体験、マグロの養殖見学、やはりトローリング‥‥。
 基本的に南紀白浜ぐらいの緯度経度、地理的の環境ならば、クラゲは黒潮に流され日本海のそれより居ない。しかし、幸か不幸か、鰹キメラやカジキキメラ騒ぎで食われてしまっている(もしくは鰹キメラの場合、当たって爆発だ)。なので、実のところ水温や気温の関係が夏を維持すれば、泳げるのだ(海流の問題もあるが)。
 少しだけ延期する目的で、開催したいところだが、大丈夫とアピールする事が問題となっている。急発進というわけではないが、会議を重ねる。その結果、フィアナ・ローデン(gz0020)を向かえることと、この問題を解決した能力者達で、宣伝して貰おうと招待+寸志をするというのだ。
 世界規模ではなく、大阪、奈良、三重あたりのローカルTVCMにし、あとは、地域限定のネットでCMを流すという方向だ。ラスト・ホープにもビデオレターという形で出す。

 フィアナに打診したところ。
「勿論、喜んで参加します! アピールをすればいいのですね!」
 二つ返事で快諾する。
 ミニライヴもして、彼女もCM撮影をすると言うことにもなっている。

 CM等もあるのだが、ぶっちゃければ、招待されて、単に遊びほうけるという(言い方は変だが、ね)物だと考えて差し支えない。
 ただ、このことで南紀白浜と、紀伊半島全域では異様な町おこしが盛り上がっていたのであった。

 夏の最後のバカンスを楽しもう!

●参加者一覧

/ クレイフェル(ga0435) / 水鏡・シメイ(ga0523) / ベル(ga0924) / 聖・真琴(ga1622) / 篠原 悠(ga1826) / 緋霧 絢(ga3668) / 熊谷真帆(ga3826) / 威龍(ga3859) / 鳥飼夕貴(ga4123) / 優(ga8480) / レティ・クリムゾン(ga8679) / 最上 憐 (gb0002) / リヴァル・クロウ(gb2337

●リプレイ本文

●さまざまな夏
 輝く日差し。
 澄み渡る蒼い海と眩しい白い砂浜。ようこそ南紀白浜へ。

 観光客などもまばらに見えるなか、招待された能力者達は、思い思いに海を眺めていた。
 しかし、過去のニュースに取り上げられるような、賑やかさがない。其れは誰も感じていた。
「さあて! はじめましょう!」
 熊谷真帆と聖 真琴が拳を握りしめて、気合いを入れていた。
 フィアナ・ローデンの隣にはベルと優が立っている。
「‥‥足もと気を付けて下さい」
「うん、ありがと」
 ベルがフィアナをエスコートするのをみて‥‥。
「あらあら、まあまあ」
 真琴がベルに対してニヤニヤ見ている。
「‥‥だから、そう言うのではないですよ」
「ふみゅ?」
 フィアナや真琴はCMとライヴでハードになるだろう。


●港
 一方港に向かっているのは、最上 憐と威龍である。
「‥‥ん。‥‥カジキ美味しそう。釣り上げる」
「おう、でっかいの期待しているぜ」
「‥‥ん。‥‥わかった」
 憐はトローリング。小さな体で釣り上げられるのかと、トローリング船のメンバーは首をかしげるが、能力者と言うことを聞かされているが、其れを差し引いても、半信半疑であった。威龍は、社会見学の定番や夏休みの貴重な経験としての漁師体験だ。
「おお、助けてくれたあんちゃんか。久しぶり」
 威龍は顔見知った漁師と出会う。
「今日は傭兵でなく、ただの観光客として参加させて貰ったぜ。早いところ、元のような活気のある町に戻ると良いな」
「いいとも、漁師体験をたのしんでくれ」
 漁師さんはニコニコと威龍に色々教えていった。
「沖網の他にね‥‥、さまざまな網の漁があるんだよ。今では大物の一本釣りドキュメントが流行っている、そう派手ではない仕事だよ。しかし、やりがいのある仕事だ。海は凄いからね。なに、あんたらのおかげで、予想より早く、魚も戻ってきているし、沢山捕れるだろうさ」
 網のこと、漁師としての海の想いなど、威龍は感心し熱中しながら、彼らの言葉を心に刻んでいく。
 船が出発する。
 穏やかな海が徐々に、荒くなる。横に揺れる船に必死にしがみつく。
「うおっ! 此は凄い揺れだ」
 別の揺れで、酔いがきそうだった。しかし彼は堪えた。
「さすが、わしらの海を護ってくれた人だけはある!」
 漁師の1人がかっかっかと笑う。
「んじゃ、既に仕掛けている場所から見て回ろうか!」
「おう!」
 仕掛けをみては、引き揚げた魚たち確認する。しかし、幾ら人より強い能力者でも覚醒をしていないとかなり辛い作業だった。網の重さが尋常じゃないのである。
「こいつは良い鍛錬になるな。自分の手で釣り上げた魚で作る料理は又格別だろうな」
 と、威龍は言うのだった。


●CMでは
 所戻って、TV曲のCM本部テント。
 熊谷とリヴァル、ベルとフィアナは、ディレクターと打ち合わせしている。
「ビーチバレーのセットはリヴァルが用意してくれるよ。ルールはあってなきがごとしで。いいかな?」
「はーい」
「日焼け止めは忘れないように」
 ディレクターが、企画書とプロットをみる。
 熊谷の方の企画書にディレクターはイヤな汗を掻いている。
「どうしたの?」
「いや、だがな‥‥。マヨネーズCMになるんだけどな。これ?」
「異議ありっ! マヨ鰹をばかにしちゃだめー! いや、マヨネーズをバカにするなー!」
 会議テーブルを叩き、ディレクターに指差す熊谷。
 フィアナも、ベルも、リヴァルも真琴も、彼女の企画書に目を通す。
「‥‥此はどう見ても、マヨネーズのCMですね」
 ベルの第一声だった。
 簡単に言うと、色々落ち込んでいる人のなかで元気な熊谷。彼女は『マヨ活』・『マヨ鰹』で元気だという。最後にマヨ鰹サラダを食べるシーンで、
『姫レシピ、マヨ鰹サラダで白浜デレラになろっ☆』
「だから、マヨ鰹ってなに?」
『正解は南紀白浜で!』
 其処まで引っ張る物か? と、ディレクターは思った。
「うーん、どうみてもマヨネーズ宣伝にしかおもえない」
 熊谷以外そう言う意見に達する。
「そ、そんなぁ!」
「しかたないな。撮るだけ撮る。多少編集させて貰うがね‥‥」
 熊谷の涙目に、ディレクターはため息を吐いていた。
 鰹サラダは他のスタッフが作るのでまずは水遊びから撮ることになった。お昼ぐらいに、食べることになるだろう。
 真琴は普通の水着にTシャツを着て、そして熊谷はブルマに体操服、フィアナはピンクのビキニで、ベルは半袖半ズボンにだ。
「はいはい、熊谷さん。それじゃ海じゃないよ!」
「えー!」
 ディレクターのツッコミは厳しい。
 泣く泣く普通の水着とシャツを着替えさせられる。
 当然至極の反応だ。TV曲としてお金かけているのだ。しっかりとしたCMを作りたいのである。


●ステージ
 一方別の所では、許可を取ったリヴァルがカメラマンとの指導の元で、海で遊ぶ一般客を撮っていた。
「ここのアングルはこうがいいのだろうか?」
「そうだね。もう少し右にしよう」
 と、カメラマンと静かに芸術を作るように、撮っていく。
 許可を取るためADが走る回ることもあるが、4人チームの方は賑やかに、リヴァル自身は静かに撮っていた。
 しかし、彼の考えたキャッチフレーズが、CM作成側に好評なのだ。
『真夏の舞踏会はまだ終わらない 〜南紀白浜〜』
 そのため彼の企画通りで事が進んでいるわけである。
「あのへんが、ビーチバレーのセットにいいだろうな」
「じゃ、ADにセットさせるよ」
「俺も手伝います」
 裏方に徹している方もいれば、ライヴの練習の再確認中のレティ・クリムゾンと、警備をする優がライヴ会場にいた。
「少し小さいのだな」
 ふむと、ステージに立って考えるレティ。
「ミニライヴと言うことですからね」
 優が、ソデの方から顔を出す。
 スタッフが、「優さんも普通に楽しめばいいのに警護なんて」と言っている。
「デスペアの件もあるので」
 優は、そういって警備に志願したのだ。
「すみません、リハ始めましょう」
「遅れちゃった。ごめん!」
 フィアナと真琴が駆け寄ってくる。
「いやいや、忙しいのは分かっているからな。休憩してからリハなどしよう」
「はい」
 前もって練習し、あとは、ステージでの本番だ。レティも猛特訓を積んで、コーラスに参加できていた。

 少し時間をさかのぼる。
 フィアナを目立たせるために、フィアナ以上に目立つ格好は避けるという形にした。しかし統一感が必要だということで、真琴の元気な女の子をテーマに『ローライズのひらひらミニスカートに、丈短めのキャミソール』と言う出で立ちを基準としたのだ。そうなると、短パンでも、可愛い感じの物をレティは選ばなければならない。ダンスがしやすく、可愛い物、で。
「わ、私が此を着ろと言うのか」
 レティはたじろぐ。『可愛い』と言われるのになれていないのだ。褒め言葉に弱い。
「似合いますよ。ダンス用に合わせますから♪」
 結局、彼女もダンスしようで可愛い衣装を着ることになった。
 その後の彼女は、他のバックダンサーと特訓をするのであった。

「さて、本番がんばろ!」
「おお!」
「ああ、そうだな」
 3人のミニバンド。楽器主体の真琴にダンスのレティ、ヴォーカルのフィアナであった。

 遠くの方で、篠原 悠がジュース片手にため息を吐いて呟いていた。
「やっぱり、うちの居場所はあっちかなぁ」
 と。


●CM2
 そしてCMの続き。浜辺で遊ぶ男女。とはいってもベルだけが1人男性。
「‥‥実は一寸、恥ずかしいです」
「モテモテに見られるね」
「っ! ‥‥みられたくないです。リヴァルさん! どうして入らないんですか!」
 彼は顔を真っ赤になってどもってしまう。
「外見偏差値47な俺が入れるわけ無かろう」
「外見の問題ですか?」
 フィアナが、小首をかしげる。
「そういうことだよ。フィアナ。‥‥俺が入ってはCMが台無しになってしまう」
 リヴァルは遠くを見ていた。
 納得したのは思い出したのか、フィアナが、ぽんと手を叩く。
「追いかけっこの案があったのになぁ」
「そうだよね」
 真琴とフィアナが休憩中に、ベルを見る。
「‥‥そ、そんな。しないって約束じゃないですか」
 ベルは、又真っ赤になる。
「冗談冗談」
「ですよねー。まこちー」
 ベル君、弄られている。
 マヨ鰹の試食会で熊谷は居ない。試食会は海の家だった。
「マヨ鰹サラダ美味しいですよ☆」


●トローリング
 トローリングでは、ライフジャケットを着た憐が覚醒して竿を掴む。折れそうになるほど竿が曲がっている。其れを憐は小さな体で引っ張っていた。力一杯リールを回し、徐々に引っ張っていく。波を斬る釣り糸の先には、黒い影が映っていた。
「‥‥ん。‥‥当たり‥‥つよい」
 海面から勢いよく影が飛びはねた。カジキである。水しぶきを巻き上げ、抗おうとする。その振動が竿に伝わり、憐はバランスを崩しそうになった。
 幾ら能力者が覚醒しても、自然の生き物自体の力比べでは分が悪い。足場が悪い船の上では、想うように力は出せない。人間は海に住む生物じゃないからだ。かなりの時間を費やして一頭を釣り上げるのだ。練力が持つかが重要になる。
 戦いの結果、憐がしりもちをつく。釣り糸が切れたようだった。
「‥‥ん。逃がした獲物は大きい」
 お腹がかわいく鳴いた。
「‥‥ん。お腹減った」
 憐は覚醒を解除し、用意していたお弁当を平らげる。大人5人分の幕の内弁当を。
「そんなに食うと、体が」
 船長が心配そうに聞いたが。
「‥‥ん。お腹減っては、カジキは釣れぬ」
 素っ気なく答える10歳少女であった。
 暫くして‥‥。
「此は大物だ!」
「‥‥ん。つよい。でもなんとかなる」
 またもヒット。トローリング船のインストラクター達に教わった方法を何とかこなし、カジキを疲れさせる。そして、隣にいた大人が銛で一突きした。彼女はかなり大きめのカジキを釣り上げたのであった。
「‥‥ん。ぶい」
 カジキと自分の身の丈の何倍もあるカジキと一緒に記念撮影を撮る。
「‥‥ん。美味しそう」
 釣れた快感より、食欲が優先だった。


●カップル
 完全に、普通の彼氏彼女として、この南紀白浜の復活祭にやってきたのだ。呼んだのは何と緋霧 絢のほう、と思う。
「緋霧と初デートやぁ」
 もう、ゆるみっぱなしのクレイフェル。
 白浜には2人、指を絡めて手を繋ぐ。クレイフェルは海パンにパーカー、絢は黒基調のカットの入った少しきわどいワンピースだ。絢にドキドキしっぱなしのクレイフェルは彼女を直視できない。
「クレイフェル様?」
「いや‥‥、えっと、綺麗、やで」
「‥‥」
 絢は、その言葉で顔面真っ赤になった。
 また、浜辺の散歩の中で、ずっとクレイフェルを見続ける絢は、自分のしていることに気が付いて、自分で顔を赤らめてしまう。湯気とともに擬音の『ぷしゅー』が出るぐらい、耳も真っ赤に、だ。
 散歩や、少し泳いだ後に海の家で休憩。かき氷を頼む。しかし一人前。
「はい‥‥クレイフェル様、あーん」
「‥‥あ、あーん」
 絢がスプーンでかき氷を掬って、クレイフェルに食べさせた。所謂『お口あーん』である。そう、恋人同士の定番だ。
 かき氷の冷たさが頭に響く。
「うーん、きたああ!」
 額を抑えるクレイフェル。
「お返しに、緋霧にもあーん」
「‥‥!? はい」
 そして、お互いかき氷の冷たさと、大好きな人との幸せな時間に酔うのだ。
「ん、うまいなっ」
「はい♪」
 お互い微笑んで幸せな顔をするのだった。
 時間的には、ライヴが始まるだろう。
「緋霧、行こうか!」
「はい」


●ライヴ開始
 さて、ビーチバレーのシーンを撮る訳なのだが、いつの間にか4人とも熱中して、一寸本気に遊んでいた。
「あたーっく!」
 ボールが勢いよく浜をはねる。
「まけた!」
「‥‥くやしいです!」
 CMを撮っているのか遊んでいるのか分からない状態だった。監督側は、それが良いと言うことで回していたが。
「真琴さんにフィアナさん、そんなに遊んでしまったら、ライヴで倒れるぞ?」
「あははは。ごめんなさい。レティさん。楽しくって」
 フィアナは直ぐに日陰に移動し、体をクールダウンする。もっとも、彼女の体力はライヴなどで若干鍛え上げられているだろう。
「楽しい笑顔がみれて、私は嬉しいけどね」
「あははは」
「大丈夫、体暖まった程度だよ」
 真琴が笑っていた。
「さて、はじめますか!」
 お互いの手を重ねて、えいえいおーと声をかけた。
 威龍は漁から戻る。前もって、捕れた魚は漁師さんが確保してくれるそうだ。冷凍するなりして、ラストホープに持って帰ることになった。
「お、ライヴがはじまるのか」
「‥‥ん。フィアナのライヴ。みる」
 同じ頃に憐ももどっていた。

 悠は少し端っこの方に立ってステージを見ている。クレイフェルと絢はだいたい観客席の真ん中だ。ステージ手前には鳥飼夕貴がいた。彼は既に一般として観光客の中にとけ込んでいるのであった。徐々に人が集まっている。ツアー客か、好奇心であつまった観光客か、フィアナのファンが情報を手に入れ、並ぶ。
「並んで下さい。押さないで」
 優が、列整理に必死に対応し、ベルはフィアナの傍から離れていなかった。
「‥‥フィアナさん。水をどうぞ」
「ありがとう。ベル君」
「ホント仲が良いねぇ」
「‥‥真琴さん、からかわないで下さい」
「大親友、だものね☆」
 フィアナが笑う。
「‥‥はいそうですね」
 ベルは微笑んで頷いた。
 ライヴがはじまる少し前の最終調律。真琴のギターの調整がはじまると、周りがざわめき始める。徐々にフィアナコールで観客席(オールスタンディング)が盛り上がっていた。
「結構な人数が入っているな。良いライヴになると良いのだが」
 ソデで、レティが呟く。
 OKサインが出た。
 フィアナと、レティに真琴と他のバックバンドとダンサーがステージに立つ。
「皆――!! 南紀白浜で楽しんでる――!?」
 フィアナの一声。其処からはじまった。
「おおおお!」
 海の歌がメインで、カヴァーなどを歌うフィアナ、それに合わせてバックバンドの真琴はギターを弾き、レティはダンスを踊る。
 フィアナがトークに入った最中、レティは悠が居る位置を見つけ、ウィンクをする。
「あ‥‥レティさん!」
 見つけてくれた事と、その彼女からの感謝の気持ちが伝わり、悠の『もやもや』が消えていくのだった。
「やっぱ歌姫さんの声はええわぁ」
 クレイフェルは、フィアナの声に癒されていた。
 一寸複雑な絢だが、自分もフィアナの歌が好きなので共感できる。ここでも手は絡めるように繋ぎっぱなしである。
「‥‥ん。覚醒ばかりだと疲れる。ゆっくり聴く」
 たまたま覚醒して警備している優に憐が言うのだった。憐の手には、6人前の焼きそばがこんもりと盛られているのだが、気にしてはいけない。
「‥‥仕事ですから」
「‥‥ん」
 憐はそれ以上言わなかった。
 ベルはソデから、見ている。フィアナの元気な姿が、嬉しいのだ。
 リヴァルは、観客を撮しながら、フィアナのライヴを見ているが、熊谷はマヨ鰹試食に駆け回っていた。
 最後はコーラスを含めた、大合唱。レティも真琴も頑張って歌う。観客も歌い出し、成功に終わった。
 こうしてライヴは終わりを告げた。


●夕刻
 リヴァルの仕事は終わらない。夕方の撮影が残っているのだ。結局は暫くTV曲との打ち合わせで、ラストホープと制作会社を行ったりきたりするだろう。

 真琴は1人、パーカーを羽織って、浜の散歩。
「やっぱり、彼氏連れてきた方がよかったかなぁ」
 と、溜息。
 少しばかりセンチメンタルになってみたかっただけ。自分を見つめ直すために。
 波が、彼女の足を触る。其れが気持ちいい。
「うーん。気持ちいい!」
 冷たさが、色々な事を癒してくれている気分になった。


●カップル2
 クレイフェルと絢は人気のない、浜の北端の防波堤に向かった。ずっと繋いだ手。
「綺麗な夕日や」
「‥‥はい」
 クレイフェルはこの間もドキドキしていた。こうも静かで二人っきり。波の音と遠くからの汽笛だけ。頬が赤いのは夕日の所為だと思いたい。しかし、絢に対しての想いは、間違いなく溢れている。ただ、恥ずかしいという感情が彼を臆病にさせていた。
 しかし絢は、彼の前に立ち、目をとじてつま先立ちになる。
「クレイフェル様‥‥あの、キスをして下さい」
「‥‥っ! 緋霧‥‥」
「絢って呼んで‥‥下さい」
「絢‥‥。わかった‥‥」
 そっと、軽く唇を重ねた。電撃が走るような感動と、お互いが好きである想いが2人を貫く。
 ドキドキが止まらない。
 幸せと、恥ずかしさ、これからも居られる事が、嬉しいという様々な想いが溢れていた。
「‥‥絢、好きやで」
「クレイフェル‥‥わ、私も好きです。‥‥キスって、は、恥ずかしいですね」
「あ、ああ」
 真っ赤になる2人。しかし、抱きしめ合って‥‥、再びキスをするのだった。
「今度は、絢の歌声を聴きたいな。やっぱり、絢が一番やから」
 その言葉に、絢は又、顔を赤らめ、クレイフェルの胸に自分の顔を埋めるのであった。


●辛くて、寂しくて
 一方、浜の反対側。其処に悠はいた。
「ふぅ」
 今レティは居ない。何でここにいるのだろうと、自問自答する。
「だーれだ」
 いきなり目の前が暗くなる。同時に聞き覚えのある声。
 悠はこの声を忘れない。忘れることはない。
「!? レティさん!」
「悠、きてくれたんだな。ありがとう」
「レティさああん」
 レティに抱きついて離れない悠。優しく抱き留めるレティ。
「本当に甘えん坊だな」
「うん、レティさん大好きやもん」
 と、悠は、レティの頬にキスをする。
 2人は、静かな波を追いかけて遊んでいく。海の家は閉まってしまったが、こうして2人きりで居られる時間は大切にしたい。悠はそう思った。


●打ち上げ時に
 片づけが終わったあと、打ち上げ会場に真琴に熊谷、リヴァルに優、ベルにフィアナがやってきた。
「フィアナ、篠原さんからです」
 スタッフがフィアナに、カードを渡す。
「あ、悠ちゃんからだ。ありがとうと言いたいなぁ」
 スタッフからの伝言を通じて、ドリンクの差し入れがあったのだ。シンプルに、お疲れ様』と書かれているカードとともに。
「さて、マヨネーズ祭りです!」
「もう、マヨネーズは良いから!」
 別の方向で盛り上がっている人約1名。

 このあと映像を編集し、リヴァルのCMが起用された。流石にマヨネーズCMのほうは無理であろう‥‥。
 これで、南紀白浜の来年の影響はないはずである。