タイトル:懲りない海の奴らマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/19 23:06

●オープニング本文


 紀伊半島の沖合。このころの旬の食材として、鰹もあるが、カジキ類も釣れるそうだ。カジキと言えば、スポーツフィッシング、トローリングの対象としても有名である。
 しかし、この前の鰹ミサイルによって各漁船、漁村が危機に瀕しており、今は復興のめどが付いたばかりであった。観光客集めや復興のためのイベントも考えている事もある。
 しかし、バグアはあの馬鹿げた鰹ミサイルに飽きたらず新たな物を送り込んできた。
 先ほど言った、カジキ。そう、ソードフィッシュをキメラ化し周りの海域を荒らしているのだ。
 ジャンプしては、偵察船、もしくは残って漁に出ていた漁船を襲うという自体。豪快なのだが、キメラなだけに大問題だ。
 これを作ったバグアは海が好きなのか? というか海が嫌なのか? と、考えもあるのだが、このままでは又お魚事情が大ピンチになりかねない。さらに、これらがまた近づいて、漁村を襲ってきたら大変である。
 カジキをつり上げるのは、スポーツ感覚で良いとしてもまともな船がない。
 それに今回キメラ化したため、最速の魚と攻撃性がアップし、普通の船では厄介だ。

 幸いというのか不幸と言うのか。そのカジキ‥‥、15mもある巨大なものだ。巨大な物は現在4匹確認されている。ひょっとするとワームじゃないかとか思うぐらいでかい。ほか数匹はカジキとしては普通サイズ。
 此を送り込んだヘルメットワームも居るかもしれないと、本部はKVでの出撃を許可したのであった。

『美味しい魚を守るために、なんとしてもカジキキメラを倒してくれ』
『もし、食えるなら食って良し』
 受けた上司は、きっと魚が好きに違いない。

●参加者一覧

御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER

●リプレイ本文

●囮
 威龍(ga3859)が漁港を見ている。徐々に復興している様に見えるが、未だ脅威は残っていることに怒りをあらわにしていた。
「まったく、鰹ミサイルに続いて、カジキキメラか? バグアの奴は何を考えてんだ? 頭かち割って中身を見てみたいものだな」
 そう、今では15mのカジキキメラが海を荒らしているのだ。
 トローリング用の船が一隻、夏でも黒服に黒い帽子というUNKNOWN(ga4276)がその船を整備している。
「ふむ、此は動くか。壊れなきゃいいのだが、ね」
「釣り上げるの?」
「ああ、キメラ退治のあとに、な」
 熊谷真帆(ga3826)の問いに黒い男は答えた。
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は、雷電の調整をすましてこう言った。
「カジキは食ったことはないな」
 と。
「カジキは、偶にマグロ扱いとして出るわね。寿司とかお刺身とか」
「ほんとうか!?」
 緋室 神音(ga3576)の答えに、ホアキンは驚く。
「確かに‥‥。そうだよな。味が似ている奴があるんだろう」
 南雲 莞爾(ga4272)が同意する。
「まあ、もし釣れたら食ってみるか。漁師さんにも聞いてみよう」
「しかし、思うのだが‥‥。KVで倒したキメラは無事に食えるのか? 食ってもいいと言われてもな」
 呟く莞爾だった。

 水中戦経験者から様々なレクチャーをして貰い、一応掴みかけているのだが、海は侮ってはならない。ほとんどが、通常のKVに水中用キットを装着して出撃するため、御山・アキラ(ga0532)と威龍の戦力は重要になるが、危険が伴うだろう。
 トローリング船を囮にし、その前方に凹の字の陣形を組む。大体30m間隔で、しばらくは御山がUNKNOWNを普通のワイヤーロープで牽引するが、敵との遭遇時には直ぐに切り離す。
「カプロイア機種が揃うのって、珍しいと思うな」
 誰かが言った。
 K−111とKF−14が有るという少しレアな状態だ。
「ふ、私の『けいいちさん』は海を行くか」
 UNKNOWNが機体に滑り込むようにして乗った。漆黒の『けいいちさん』だ。
 全員も愛機に乗っていく。
「行きましょう。空は私に任せて下さい」
 熊谷がバイパーに乗って空に向かう。敵にヘルメットワームがいる。故に空から攻撃に備えるべきなのだ。
 熊谷のバイパーは、凹の字陣形の水中班の上を、円を描きながら飛んでいる。水中班と同じ速度では飛べないからだ。飛行機・戦闘機という物はそう言う物である。熊谷の監視区域は直径70〜150m前後となるだろう。
 懲りない連中を倒しに、7機が沖に向かう。


●15mの脅威
 空と水中でデータのやり取り、無線をチェックするために、常に声がする。
「レーダー異常なし」
「前方グリーン」
「普通のカジキの群ね、音で散らすわ」
「了解」
「海流が強いな‥‥流されるな」
「ららら〜らら〜」
「おい、UNKNOWN、口ずさむなよ」
「いいではないか‥‥ふっふっふっ」
 南雲も緋室もこの男が何を考えているか分からない。いや、緊張を解きほぐすための行動とは分かっているのだが。大阪・日本橋の件で見る目が普通と違っている。
 索敵を続けて30分。熊谷が目視で海面から魚影を発見する。そのシルエットは未確認生物の不気味さを漂わせ、競泳ボートさながらのスピードで、トローリング船に向かってくるのだ!
「敵影補則! 距離は30〜50! 気をつけて、ものすごいスピードよ!」
「結構近いな! って見えたが、何だありゃ!?」
 威龍が驚く。
 TV等で観たカジキは確かに大きい。しかし、15mという鯨級にまで達した物を実物で観てしまうと、驚く。
 全員が、戦闘陣形に展開するが、相手は勢いでアキラとUNKNOWN、威龍に襲いかかってくる。
「南雲よけろ!」
「無論!」
 陣形的に、UNKNOWNの後ろに南雲がいる、巨大カジキはそのまま突っ込んで、K−111とディアブロを蹂躙しようとしていた。何とか2人は操縦桿を力一杯握って、相手の突進をよける。しかし、カジキは直ぐに旋回し、また突撃しようとしていた。
「巨体な割に素早すぎる! く、上手いようにうごかない!」
 幾ら水中用シミュレートしても、実践では違和感がつきまとう。
「やっかいな敵だぜ!」
 威龍が、先にいる普通のカジキキメラを確認する。
 横に展開する、緋室とホアキンは、その群を威嚇射撃。真ん中に誘導させるのだ。
 アキラの方に突撃したカジキキメラも大きく、アキラの機体ごと10m程度自分の体ごと突き飛ばす!
「ここで、負けるわけにいかない」
 冷静に(いや感情がないのだが)アキラは操縦桿を思いっきり倒し、ブレーキもかけて、これ以上飛ばされるのを防ぐ。反撃にガウスガンを撃つ。赤い壁がより一層強く現れた。ガラスが割れるように砕け散り、体に銛が命中する。赤い血が水中で吹き出し、海面に煙のように昇っていく。
「強度の強いフォースフィールドだな。タフだとおもえ」
 アキラが是認に通達する。巨大化すると、こうした物も強化されているようだ。
「一番二番、魚雷発射!」
 神音のディアブロがゆっくりと向きを変え、UNKNOWNと南雲に襲いかかっている巨大カジキに魚雷を発射するが、巨体と思えぬスピードでかわされてしまう。
「っく、外した!」
「やってくれる、な。キメラ!」
 UNKNOWNのK−111と南雲のディアブロは、機体から泡をだしながら少しだけ離れ、突撃してきた巨大カジキガウスガンで応戦。一方、ホアキンは、もうカジキ群に魚雷を放つ。水煙の中、何匹かが爆発したようだ。
 さらに一匹の巨大カジキが、UNKNOWNに噛み付いた。
「うお!」
 K−111はカジキに噛まれた場所からオイルが漏れる。不幸中の幸いにコクピットは無事である。助けに入る南雲のディアブロも、別の巨大キメラの尾ビレの攻撃で吹き飛ばされるた。
「南雲!」
 神音が叫んだ。
「大丈夫だ! 堪えてみせる!」
 操縦桿を強く握りとブレーキを思いっきり踏む、衝撃の苦痛はまだのこるものの、機体は安定したようだ。
「邪魔だ! どけ!」
 南雲は、人型に変形しレーザークロウで切り裂くため近寄る。見事にカジキキメラを捕らえ、フォースフィールドごと頭部をえぐりとった。キメラは死亡し、海に沈んでいく。
「一頭撃破‥‥」
 次の援護に向かう。UNKNOWNのK−111が苦戦しているのだ。
「神音! 助け出すぞ」
「わかった!」
 巨大カジキに食われて身動きが出来なくなったUNKNOWNを助けるために動く。
「アグレッシブフォース!」
「――アイテール【アグレッシブフォース】起動‥‥ここで墜ちなさい!」
 2人の渾身のダブル攻撃で、巨大キメラの吻と胴を切り裂く。そこでK−111は自由となった。
「UNKNOWNは! 一旦退け!」
「‥‥悪いがそうする」
 イヤな汗をかいているUNKNOWNは、ブーストさせ戦線から距離をとった。

 威龍とアキラも、他の巨大カジキに苦戦を強いられていた。
 威龍は、変形してから水中用ディフェンダーで斬り、確実に相手を弱らせている。しかし、巨大なために吹き飛ばされたり、噛まれてしまったり負傷するが、上手く立ち回っていた。
 アキラもキングフィッシャーで確実にダメージを与えていく。しかし、物は海の生物であるカジキキメラ故に若干押され気味であった。
「これでどうだ!」
 威龍のテンタクルス改が、水中用ディフェンダーでカジキを仕留める。
 同時に緋室と南雲の連携で、一番先頭にいた、カジキキメラを粉砕した。血の海となるので視界不良になった。
 ホアキンはアクチュレーターを駆使し、キメラをよけて確実にレーザークロウで普通のカジキの大きさであるキメラを屠っていく。
 水中船は徐々に彼らの流れになり、確実に、1頭ずつキメラを屠っていった。


●海上空戦
 海面から赤い物と黒い物、そして泡がみえるなか、パイパーに乗っている熊谷は、別の存在を確認した。およそ300先か、小型ヘルメットワームである。
「あれですか! お仕置きしなくてはいけません!」
 先に向こうがプロトン砲の大きな光を放つ。熊谷は操縦桿を右に倒して回避、衝撃だけが身に響く。
「8連螺旋弾頭、ホーミングミサイル発射!」
 反撃にミサイルを発射するが、ヘルメットワームは真上に飛んでかわす。
「いつも不可思議な動きで!」
 しかし、操縦桿を下にし、上昇、接近し3.2cmレーザー砲とヘビーガトリング砲の射程内に入った。
「くらえ!」
 ヘビーガトリングとの同時。ヘルメットワームは被弾したが、垂直横に逃げる。
 旋回するように操縦桿を動かした追いつめようとする熊谷。距離を取りつつ、攻撃しようとするワームの追いかけっこが続く。タキオン砲やプロトン砲が吼える中でも、彼女は懸命に回避する。
 しかし、何発目かのヘルメットワームの攻撃が、彼女のバイパーに命中する。
「きゃあああ!」
 きりもみで墜ちそうになるところ直ぐに、操縦桿を強く引き、機器を安定させるために操作する。危うく、海面に激突というすれすれで安定した。海面は波立てて、バイパーは上昇する。
「あぶなかった、このお!」
 彼女は接近する。リロードの隙を出さすに、ヘビーガトリングと高分子レーザーで反撃をする。ヘルメットワームから出た電撃の玉も回避し、休まず撃つ。
「此で終わりだ!」
 空戦スタビライザーを起動して、フルバーストをし、ヘルメットワームを粉砕した。
 煙をあげながら、海面に墜ちて爆発するヘルメットワームを確認しながら、無線が大丈夫か確認する。
「電波良好‥‥。大丈夫?」
 ぐるぐる、回りながら、水中班に連絡を取る。
『‥‥ああ、カジキは倒した』
『大丈夫だぜ? しかしな‥‥』
 ホアキンや威龍が返答する。
 海面から浮かんでくる水中班のKV達と‥‥、なんだかよく分からない肉片だ。
「? ああ、そうね」
 巨大のカジキは浮かんでいるのは2頭。どれも此も傷だらけで、いびつで既にカジキとは言えない姿となっていた。先述したようになんだかよく分からない肉片である。南雲と緋室の倒したカジキキメラに至っては、肉片どころじゃないレベルだったため、跡形もない。
「食べても良いとは聞いているが、どうやって料理するんだ?」
 彼は、四散している、肉片を眺めて呟いたのであった。


●バカンス。
 戦いが終わってから。
「では、もし肌を焼きたいというなら、私が君たちの背中にサンオイルを‥‥いや何でもない」
 黒い男は、女性陣にジト目で見られ、殺気をかんじて距離を置いた。
「大阪・日本橋でやったあなたに、触られたくない。このセクハラ男」
 神音は青筋を立てて、言った。
「ふ、冗談が通じないな、神音」
 微笑む黒い男。しかし、笑っているのかよく分からない。
「よるな! 神音に触るな」
 南雲が割って入る。この人も、彼の犯行を見た人だ。
「何をコントしているんだ」
 ホアキンがため息を吐いた。
 高速移動艇がこちらに来るのは明日か明後日らしい。なら時間があるのだから、バカンスをすることになった。南紀白浜にきて遊ばないのはもったいない。カジキキメラ騒動で、魚の出が悪い。が、レジャーで釣り上げる分には問題はないだろう。さらに(南紀白浜では元々なのだが)少ないクラゲが更に少なくなっていた。
「泳げるのは確かだな」
 普通のカジキも戻ってきているようだし、遊ぼうではないかと。
 ホアキンはカジキの塩焼きをする。残ったカジキの形はいびつだったが、食えないことはない。
「筋張ってはいるが美味だな」
 威龍が言う。
「おいおい、塩焼きにマヨネーズかけるなよ」
「私まよらーだから、こだわりあんるんですよ!」
 漁師さんから色々調理方法を聞きながらバーベキュー。香草焼きもあり、一寸贅沢じゃないかという状態だった。

 そして次の日は、トローリング船でUNKNOWNは、昼寝をしながらヒットするのを待つ。
 アタリが来たので釣り上げてみたら、50cmはするぐらいの大タコだった。
「カジキを期待していたのに、な」
 彼の言葉に怒ったタコはUNKNOWNの顔に、墨を吹きかけた。
 それをみた全員は大笑いしたのであった。