●リプレイ本文
●蛮勇
大阪・日本橋の危機である。故に、リネーア・ベリィルンドに知られては行けないのだが‥‥。まず、この話が持ち上がれば、誰だってこう言うだろう。
「リネーアさん何やってるんすか(笑)」
イシイ タケル(
ga6037)の最期の言葉‥‥ではない。
彼の推理では、どうも大阪・日本橋を荒らすリネーア仮面は、実は本人ではないかと言う。故に、本人に聞いてくるために本部に寄るのだ。
リネーア・ベリィルンド(gz0006)はいつもの場所でデータ入力や、依頼の掲示、やってきた人への案内をしていた。
「リネーアさん、一寸良いですか?」
「はい。どうしましたか? 依頼をみたいですか?」
「いえいえ。念のため聞いておきますが、最近大阪・日本橋で暴れているグラマラスな女性というのは、‥‥あなたではないんですよね?」
「はい?」
いきなり突拍子のない質問に首をかしげる。リネーアは本当に知らなかったような口調だ。
(「え? 違うのでしょうか?」)
「‥‥詳しく、聞かせてもらえないかしら?」
「えっと、その‥‥それはですね」
「そして、‥‥そこで隠れている人。出てきなさい」
溜息混じりにリネーアが言う。
柱の方で隠れている、黒ずくめの男、UNKNOWN(
ga4276)とエレナ・クルック(
ga4247)、紫東 織(
gb1607)が顔をだした。
「ふむ、私としたことが。隠密先行を準備していなかった」
UNKNOWNは苦笑する。
「えっとですねー。えっと、な、なんでもないですー! 失礼しましたー!」
エレナが、イシイとUNKNOWNと紫東を引っ張って、リネーアから離れていった。
「UNKNOWNさん、UPC本部内での覚醒及び特殊能力の使用は御法度ですよ。‥‥けど、なんだったのかしら?」
首をかしげるも、気になるため、リネーアは端末で調べ始めた。
「我輩が思うに、本人に知られては行けないんだと、思うんだけどね〜」
ドクター・ウェスト(
ga0241)がイシイの行動に苦笑している。
高速移動艇で、何名かはイシイを白い目で見ていた。小さくなるイシイ。
「でも、本物のリネーアさん、凄いスタイルが良かったね〜」
ため息を吐くのはエレナだった。
「人気者だからな。原因はよく分からないが」
南雲 莞爾(
ga4272)が銃の手入れをする。
「人気者は大変ですね。胸まできっちり再現してある辺り、なんともいえない気分になれますね‥‥」
リディス(
ga0022)も苦笑するしかない。
一般人か能力者の愉快犯的行為か、キメラなのか未だ分からない。ここは、現地に飛んで調べるしかない。
そこで、本人がやっているのか、偽物は人間なのか、キメラなのかで対策を練る。
「本人がやっている可能性は0だとおもう、がね。確かめる事は必要、だな」
UNKNOWNは言う。
「でも普通の人だったり、本人だったりした場合、どうします?」
リディスが考えると。
「もし人で有れば、お悩み相談をしましょうか。8人居れば良い案が浮かぶでしょう」
緋室 神音(
ga3576)が心理学の本をもって答えていた。
しかし、彼女はUNKNOWNとイシイから、かなり距離を取っていた。
●大阪・日本橋
難波駅からおりて直ぐの駐車場を囲むように監視し、2人1組で関し警戒する。エレナが持っている無線機は一般用なので、キメラがいれば電波の狂いで使えなくなる。問題はその近くにいると分かるだけで、詳しい位置は分からない。
囮をするドクターやエレナの格好は、目を見張る物があった。ドクターは上着の白衣の背中に、『魔法と少女と肉体言語』のメインキャラを大きく描き、しかも『血煙上等!!』と書いているのだ。
「まあ、白衣は薬品に強いからマジックで良いか〜」
と、いって移動中にやっていたのだ。
エレナは堂々とブレザーに白衣、背中にアンバーシールドを背負い腰にエネルギーガンを着けていた。しかし、今は夏休み、さらに大阪南港の祭りコミレザが近いためか、似たように何らかのコスプレが居るので、実のところあまり目立たない。
「似たり寄ったり‥‥か。平和だな」
莞爾は苦笑しているが、
「まあ、いいんじゃない?」
神音が笑う。
全員は駐車場のあるブロックや、人が自然と多くなる通りを歩くわけだが、
「この辺だけど、リネーアさんいないですねー」
地面にはペイント弾の跡、車の方は清掃のために移動しているようだ。
「いつ頃現れるかを、聞き込んでみよう」
莞爾は、リディスと一緒に回る。UNKNOWNは物陰に隠れながらリネーア仮面を探す。
ドクターは別の所で人気者だった。
「やあ! 『魔法と少女と肉体言語』は全クリした?」
「はっはっは! 未だノーマルモードだけどねー!」
「おおすげえじゃん。今回のシリーズ、ノーマルでも難しいんだぞ」
前に行列販売で知り合った人と再会して、ゲーム話の花を咲かせるわけであった。
●無茶しやがって
探して数十分経ったか?
莞爾とリディス、エレナが、有る人影をみて一瞬びくっとなった。10mも満たない先にULTの制服の人影。リネーアが来ていたのかと思ったが、直ぐに仮面とわかる。
「リネーアマスクを発見したよー!」
「なるほど、目立つと言っても、この周辺でコスプレイヤーが多ければ、見分け付かないな!」
フォルトゥナ・マヨールの様な玩具で魔法少女の痛車にペイント弾を撃ちまくるリネーア仮面。そして、軽やかに走って逃げていく。そして、気が付けば既に30m先に移動していた。
「あれは、瞬天速? グラップラー?」
エレナがエネルギーガンを持って、虚実空間の青白い電波をぶつける。しかし、相手に届いたときに電波は弾かれた。
「手強いですよ!」
エレナが驚く。
それを肉眼で終えていたのは少ないが、莞爾が直ぐに瞬天速で接近する。リネーア仮面は気付いてまたどこかに『跳ぼう』とするところ、
「待ちたまえ! 君! ――私は本物かどうかを確認したいだけだ」
何処に潜んでいたのかメガホンでUNKNOWNは叫んだ。しかも、その後リネーアのスリーサイズを叫ぶ!
男衆はその言葉で釘付け。接近していた莞爾は思わず止まってしまった。
「な、何馬鹿なこと叫んでいるの!」
女性衆がご立腹だ。リネーアのパーソナルデータは公開されていないので、当たっているかどうかは別としても、かなり目立つ。
リネーア仮面はびくっとなったのか隙が生じる。直ぐに我に返った莞爾と、何を考えているか有るよく分からないUNKNOWNがペイント弾を撃ちまくる。一寸した銃撃戦になっていった。その隙にリディスがリネーア仮面の後ろに回り込んで、羽交い締めをした。そして、同じように囲んだ莞爾が鳩尾に拳を入れて、リネーア仮面を失神させた。
「さて、人間みたいね‥‥。ま、身体能力からすれば、かなりのグラップラーみたいだけど」
ため息を吐く2人。
「私が確認したい」
ゆらりと現れるのは黒ずくめの男、UNKNOWN。
「マスクを取って確認しないと、ね」
彼は言いながらも、マスクに手をかけず、仮面の上着をめくったのだ! ちなみに、本当に女性だったが、パッドで増していただけっぽかった。よくよく見れば、ULTの制服も造りが甘く、本物に比べてコスプレの域を出ていない。
リネーア仮面は人間の声で悲鳴を上げる。
「ふむ違うか‥‥、では」
彼はそのままダッシュで逃げようとしたが‥‥。
――はい、その後の結果分かりますよネ?
それを見た女性陣と莞爾は、黒いオーラを出しているかのようだ。幽鬼のように揺らめき黒ずくめの男を取り囲む。
「このセクハラ〜! 変態! 遺言もなく冥土にいってしまええええ!!」
問答無用であらゆる攻撃が彼に浴びせられて、残ったのは黒い男は消し炭『みたい』になっていた。
この騒ぎを見ていた人々や、遊びに来ている別の能力者は‥‥。
「無茶しやがって‥‥」
と、敬礼していた。勿論動画に納めている人もいるようだが‥‥。公開されるかは謎である。
――UNKNOWN、リタイヤ(いろんな意味で)。
「そっちにいましたか」
『そう、UNKNOWNが大変なこと‥‥した‥‥。他に‥‥いる‥‥』
ウェストとイシイ、紫藤、神音は別の所を探していると、手元にある携帯電話とトランシーバーの電波状況がおかしくなっている。
「まさか、こっちにはキメラが?」
イシイとウェスト、紫藤が辺りを警戒する。
そう、噂の情報では、1人のみなのかわからなかったのだ。
コツコツと頭や肩などに何かが当たる。一寸痛いが怪我するほどでもない。銀玉鉄砲の弾だ。
「まさか、キメラなリネーア仮面もいるのですかぁー?!」
驚きのあまり魂が抜けるウェスト。
「鶏が先か卵が先かは、あとにして‥‥どこから撃っているか確かめないと!」
「ここですね!」
神経をとぎすませ、位置を確認し、其処に向かって銃を向けるイシイがだ。顔にペイント弾がもろに被る。
「目がー! 目がー!」
「キメラのくせに生意気な!」
「援護しますよぉ。キメラがいれば容赦しないですねぇー!」
紫藤が瞬天速で『跳ぶ』。ウェストはエネルギーガンをもって虚実空間を展開しようとする。その前に彼も又顔や体にペイント弾が当たってしまい、スキルは上手く使えなかった。
「のおお! 前が見えませぇん!」
神音は、2人のフォローで動けない。
近づけた織がゼロで斬ろうとする。しかし、かわされた!
「速い!」
又瞬天速で追いかける。
『キメラ‥‥リネーア仮‥‥居‥‥る』
「どこに? 繋がらない!」
電波が悪い状態で、神音がエレナや莞爾、リディスに伝えた。
逃げないように簀巻きにされた『消し炭』UNKNOWN。彼は莞爾に任せることにした。挟み撃ちして、倒そうと言うことに、リディスとエレナが向かうことに。
「バグアも何を考えて居るんだ!」
人気のない路地で、対峙する。相手はもう無理と分かったのか、玩具を放り投げ、爪をだして襲いかかろうとしていた。
「きっしゃー!」
マスクが可愛い分だけ、かなり間抜けである。
迎撃仕様と構える4人。しかし、彼らより速く、銃声が聞こえ、キメラの頭はフォースフィールドの赤い壁を展開したのみもかかわらず‥‥、突き破られ、穴が開いていた。6〜8発ほど。
キメラは、自爆するほどの酷い爆発はしないものの、花火のように燃え上がって、本当の消し炭となった。
「だれ?」
その撃った先を見ると‥‥。リネーア本人が居た。ちなみに服装はいつものULT制服ではないが、胸に余裕があるジャケットにミニスカ、サイハイニーソックスにロングブーツという、前職の仕事用のものらしい。両太腿の他、右肩にも拳銃のホルスターを下げている。
「イシイさんの質問が気になって、調べたのよ。間に合って良かったわ」
格好良く銃を回してホルスターに納める。
その場にいた紫藤もエレナもリディスも、目を丸くするしかなかった。
●それから
コスプレしていた能力者のリネーア仮面は、「彼女は人気が有りすぎて、嫉妬していたので、悪い噂というか何というか」という理由でやっていたらしい。リネーアにとってははた迷惑この上なかったが、今回の件を深く反省している(さらに恥ずかしい思いもした精神的ショック)ようなので、暫く謹慎処分辺りになるのだろう。その間、神音がケアをするらしい。
「イシイ、リネーアさんに直接聞くのが行けなかったんだよ」
と非難囂々。
「私のどこに‥‥? やはり本人に確認しないと‥‥」
とまどうイシイ。
「分からないのですか? 私は、オペ娘(こ)よ?」
リネーアさんが言う。
「あ‥‥」
そう、一寸した噂が広まれば、依頼関連や事件を調べ、噂も知り、調べて、ここまで来ることは明白だ。
イシイは自らの行動に恥じ、小さくなってしまった。
「あまりあのマスクは好きじゃないですね。でも、直ぐに怒るわけじゃないですよ‥‥。噂って怖いわ‥‥。」
苦笑するのはリネーアさん。
8人は、簀巻き状態の黒い男を男が引きずって、ラスト・ホープに帰るのであった。
今日もある意味、大阪・日本橋は平和であった。