●リプレイ本文
●潜入する前に
安いビジネスホテルを対策本部代わりになっていた。其処に、潜入班や情報の助手として4名と、ウィルソン・斉藤(gz0075)が書類などを囲んで話し合っている。
「まず潜入することだが、エレナと女堂、たのむ」
「はーい」
「わ‥‥、わかりました」
エレナ・クルック(
ga4247)、女堂万梨(
gb0287)が頷いた。
「俺は?」
鳥飼夕貴(
ga4123)が自分を指差す。
「まあ、男だけって言うなら、お前に頼んでいたが、今回女性がいいだろう。基本女性しか募集していないようだからな、すまん」
「むむ」
全員が潜入するより、別れてした方が好ましい。残念で仕方ない顔の鳥飼だが、水円・一(
gb0495)が彼の肩をたたいた。
「今回の仕事だが、ばれないように、中を探る。そして、噂の真相を暴くわけだが」
フットリフレといっても、繁華街にある怪しい店ではない。条例により『大抵は19時前後に閉まる』店が多い。後片づけなどで結局店の人は夜遅くなるが。本当に足をほぐす程度のサービスなのである。
「と、というと‥‥、だ、だいじょうぶなのかしら?」
おどおどと、女堂が言う。
「まあ、一応健全な街だよ? 大阪・日本橋は」
鳥飼が答えた。
萌えと燃え、人の欲望をもつこの世界が、一線を越えていないのは、架空の物と現実との切り替えを大事にしていると言うことだ。
「求人広告は持ってきた。あと、身分の方は偽造している履歴書と身分証だ」
斉藤は、エレナと女堂に渡す。
「わあ♪ かなり其れっぽいね」
エレナが偽造身分証などをみて、ドキドキワクワクしていた。足を残さないのもこっちも同じだからな、と斉藤が答える。
「さて、俺の方は、周りを聞き込みしてくる」
水円はそう言う。
連絡係として入ることも必要だと女性2人に言われ、水円も鳥飼も頷くが、
「定時連絡も入れるからね。でも、お客としても来てね! ウィルソン」
「む‥‥ああ、わかった‥‥」
彼にとって未知の世界な為、一寸抵抗のある斉藤であった。
「何事も経験と言うことだよ」
既に、ゴスロリの格好をした鳥飼に言われる。
「‥‥目立つな、其れ」
「そう?」
●潜入開始
なんなくバイトに入れたエレナと女堂は、店内を見て、感心していることばかりだ。数部屋あって其れは全て仕切られている。あん摩台はゆったりとしたソファであり、足湯用のタライがある。作業をすること考えると、ゴスロリでは難儀ではないかと思うわけだ、大正袴なら襷で何とかなる。メイドやウェイトレスなら元が動きやすい仕様なので問題ない。ただ、動きを重視してないように見えるゴスでは? となるが、この『リフレッシュ・りりー』というのは謎すぎた。
「わあ〜、此は色々楽しい感じしますね」
「あ、あの、やましいことはしなくて?」
女堂の不安のような物を店長に訊ねると。
「ああ、何かよく危ない仕事の方という印象はあるだろうけど、お客の足をマッサージして、その間、お客さんと一緒にお話しするというぐらいだよ。コースも20分から延長したり、もう少し足のマッサージに力入れたり、温泉の足湯にゆっくり浸かったりと、そんなものや。スペシャルコースを頼んだ人は、指名したスタッフと一緒に足湯に浸かって、他愛のない会話をするというもの」
店長は答えた。店長は男であった。
「そ、そうですか」
2人は仕事用のゴス服に着替える。エレナはゴシックの服装に結構相性がよかったらしい。本当にお人形さんだと、言われることもあった。
仕事を研修も含め、順序よくやっていくと確かに、店長の言ったとおりで、怪しい仕事は思えない。ただ、開放性がないので、抵抗感があるのは確かだ。
「本当にここであるのかな〜?」
「さ、探してみましょう」
その間に、エレナはVIPクラス個室のスペシャル、事務所、更衣室を調べて、秘密の通路を見つけようとしている。女堂は、怪しいと思われる場所に盗聴器を仕掛けてみた。あと、監視カメラなどのデータを抜き取ろうと思ったが、常に人が居るため取り出せなかった。
その盗聴器は斉藤の所まで届いている。
「電波良好」
一方、ゴスロリ姿の鳥飼と水円はこの周辺のフットリフレに聞き込みをしている。
「ああ、何人か姿を見せなくなっているけど‥‥」
そう言うことを聞くが、別の所に行ったんじゃないか? と言う答えも出ている。
「いなくなっている人物をリストアップしてみよう」
水円が事を進める手慣れた物だ。
「お前の手際の良さ、事務員などに欲しいな」
斉藤がそう呟く。
一方、鳥飼は、男性であることを隠していると、なかなか似合っているようで、少し離れた広い場所での撮影会に引っ張りだこにされてしまった。仕事どころではない状態なのだが、ここで上手く聞き込みが出来ると思い、
「ねえ、とある店で人が入ったらそれ以降出てこないって噂知ってる?」
と、同じゴスを来ている男女のほか、カメラ小僧にも聞いてみた。
「いろんな意味で、目立っているな、鳥飼は」
残る男2人は苦笑していた。
また、バイト潜伏中のエレナは、常に電話を欠かさない。
「お母さんが過保護だから毎日電話するようにって」
断りを入れ、家族に連絡するように「定時連絡」をするのである。
「大丈夫だよ〜」
電話先は斉藤であるのは言うまでもない。
「も、問題は‥‥監視カメラを得られないこと‥‥ですね」
「う〜ん、こまったねぇ」
と、ひそひそ話をしている2人に、
「2名来ました。スペシャルです」
「は〜い」
エレナと女堂が指名を受けたようだ。
エレナは軽やかで可愛い口調で、お客の足をマッサージする。
「ここはどうですか〜?」
「ああ、そこが結構つかれてんだ」
「はいはい」
「あのですね、噂なんですけど〜」
「?」
「この頃こういうお店に入ったきり出てこない人がいるそうですよ〜。怖いですね〜」
「其れ‥‥。そんなこと店員がそんなこと言って良いの?」
驚く客。
「だって、あたし達も怖いじゃないですかぁ。楽しい会話をしながら休憩できる場所が無くなるのは困ります」
「そうだなぁ」
客は、少し考えて、
「友達の友達なら、そうなったんじゃないかとか聞いたなぁ。会ったことはないけどさ」
「‥‥そうですか」
盗聴器を受信する斉藤は、その意味がかなり深いと思っていた。水円の調べ、鳥飼の聞き込みで、少しだけ、噂に隠された真相を見つけ出せそうな状態になることがわかった。
水円曰く、建物のレイアウト的に不自然な隙間があると言うことだ。隠し通路なのでは? と考える。
「水円は外で待ってくれ。俺と鳥飼でむかう」
「分かった」
鳥飼はゴスのままで、斉藤はラフなヲタウェイ風の服装になって、リフレッシュ・りりーに入った。
「いらっしゃいませー」
エレナが笑顔で向かえてくれる。
「スペシャルで」
「はい、畏まりました」
女堂は鳥飼を案内した。
店の外では、水円が周りを見ている。今のところ異常はない。
エレナは、斉藤に足のマッサージをしながらこう訊いた。
「きょうはお買い物みたいですね〜。何かいい物見つけれましたか?」
「台車が欲しいね。レアシングルなど大人買いをしたな」
そのことで、エレナは表情こそ出さないが、何かあるとわかる。
女堂と鳥飼は服装の話のなかで、色々暗号的な物で情報交換している。
「お客さんは、そのカードゲームイベント目当てですよね? イベントはいつでしょう?」
「そうだな。明日だ。調整しないとね」
実はエレナは、この陣取っているスペシャルルームに、何か仕掛けがあるか前もって話していたのだ。
●ピンチ?
エレナと女堂が、こっそりスペシャルルームに忍び込む。
「ここが外れるんだ」
壁の下のパネルが上手く外れている。
「い、いきましょうか?」
隠し持っている武器を持って、隠し扉を開けた。カビくさく小さな通路が続く。とは言っても、大の大人1人を引きずりながら箱部分には差し支えない。その先が、空のテナントの一室だった。そこに、簡単なベッド数台と人間がすっぽり入る箱があった。
「こ、これは! 本当に人をさらうための下準備室?! 急いで言わないと」
エレナが電話をしようとするが、電波が悪い。この電波の悪影響があることは‥‥。発信器にも影響を与えているのだ。
「バグアがいる?」
武器を構えて、背中合わせに警戒する。
闇の中から1人‥‥男らしい人影が出てきた。
「知ってしまいましたか‥‥」
一方、鳥飼と水円、斉藤も、この電波異常を知った。此はどう見てもおかしい。
「無理矢理はいるぞ」
「了解」
女堂があらかじめ開けていた、斉藤と鳥飼が裏口からこっそりはいる。
「ここまで知ったには生かしておけないかな」
暗くてどんな顔か分からない。しかし、男だというのは分かる。
「本当に失踪させていたのね!」
エレナは小銃「S−01」を構え、女堂は超機械を持ち上げる。
「ああ、そうだ。しかし、私に銃口を向けても無駄だよ」
男は窓の縁に手を置いた。
「動かないで!」
エレナが言う。
「誘拐容疑であなたを逮捕します」
はっきりと女堂が言う。髪の毛が蛇のように動いている。
「ふ、まさか、能力者だったとは。今後考えないと行けない」
余裕な男の独り言。
「ここでの仕事は終わりだ。さようなら」
その言葉にエレナが発泡するが、男は軽く身をかわし、ベッドを盾にして、一気に窓を破って逃げていった。
「まちなさい!」
裏口で待機していた水円は走る。
しかし、相手はかなり早く、直ぐ闇に消えていった。
「くそ! 此じゃ前と同じだ!」
舌打ちしかなかった。
男がいなくなって数秒で電波が戻る。
「結局、此が物的証拠となるのだが‥‥惜しいな」
空テナントにあった、様々な物品。
クロロホルムのような物や、運ぶための袋と箱。
箱はいかにも‥‥。
「これって、何か、棺桶に似てない?」
日本の長方形のより、洋もの肩辺りが幅広くなる、六角形。よく吸血鬼映画でも見る、黒い箱だった。
「ここでも、デスペアって言う文字があるな」
水円と鳥飼がメモのような書類を覗き込む。
「フィアナ・ローデン(gz0020)を襲った連中か‥‥やはり、なにかあるのか」
斉藤は、苦い顔で煙草をくわえていた‥‥。
真相は結局分からずじまいだが、確実にここで人がさらわれていたのは確かであった。まだ、相手を掴みきっていない。何としてでも、この失踪と‥‥デスペアに関することを解決しなければならないと、斉藤は思っていた。
この日を境に『リフレッシュ・りりー』は閉店する。