●リプレイ本文
●たかが鰹、されど鰹
「古来、目に青葉、初鰹に不如帰と言います。見るのは無料でも食べるのは有料なの! しかもバグアのせいで青天井よ!」
熊谷真帆(
ga3826)が憤慨していた。
全く持ってその通りである。普通なら大漁で美味しい鰹を食べられるというのに。此は一大事だ。
「悪い宇宙怪獣達をけちょんけちょんにやっつける!」
潮彩 ろまん(
ga3425)は漁師町育ちもあるため、紀伊半島にあるひとつの港町の惨状を見て、怒りをあらわにしていた。
つまりかなり士気が高い。
「目視だけでこの数は酷いですね」
水上・未早(
ga0049)が作戦テーブルで考えていた。
「乱獲にも程があるわね‥‥それに」
緋室 神音(
ga3576)も考えている。
「それに?」
全員が振り向く。
「以前遭遇した超マグロは食べることが可能だったけど、この鰹は無理とは‥‥残念ね」
やっぱり、お魚は食べる物と認識が強いのであった。
「この眼で見るのは初めてなのでな。出来うる限りの情報を教えてもらいたい」
シリウス・ガーランド(
ga5113)が初見の敵について、質問すると、海中戦の経験のある水鏡・シメイ(
ga0523)が教えてくれた。
「なるほど、牙や突撃が危険なのだな‥‥」
作戦を纏めると、空戦班と海中班とで別れて、海中班がメガロワームを索敵。空中班に連絡後、空中班が爆雷を浴びせ、そこからテンタクルスが殲滅、空戦体は爆雷投下後、補給ヘルメットワームや護衛タイプヘルメットワームを撃破する方向になっていた。しかし、深追いはしない。
空も5、海も5、鰹キメラの強さは未知数。船一隻を簡単に破砕できるのは考え物である。
●索敵と空中戦
真っ青な海に機械仕掛けの鳥が飛んでいる。緑川 安則(
ga0157)のS−01改を先頭に、熊谷も飛んでいた。後ろに爆雷班がいる。
「海中班、みつかった?」
『まだです』
シメイが答えた。
海中班は全員テンタクルスのそろい踏み。ごぼごぼと音を立てて、辺りを見渡している。威龍(
ga3859)は、落ち着かない操縦桿に苦労していた。水圧や揚力引力によって、操縦桿が堅いのだ。
「シミュレーションでならしていたけど、なかなか無理か」
彼は呟く。
「まあ、水中自体が難しい環境ですからね」
シメイのサポートもあり変に沈むことはない。
「あ、敵影発見、10時方向。間違いない宇宙怪獣マグロワームだ! みんな、気を付けて」
ろまんの声。ソナーに当たったようだ。
青いフィルター越しに写るような海中にサメが5匹泳いでいた。普通のサメとは違って、不可思議な装置が装着されているためワームと分かる。サメたちはこちらに気付くと口を開けてそこから何かを出してきた。
鰹キメラである。
「口が砲台か!」
クールなシリウスが驚く。何というシュールさ。
「迎撃しよう!」
井出 一真(
ga6977)が叫ぶ。操縦桿を握りしめた。
ガウスガンやガトリングで、ギリギリに迫る鰹をねらい撃つ準備にはいる。
「ねらい撃つ!」
ロックオンした鰹ミサイルの群にシメイが操縦桿に付いている射撃スイッチを押す。ガウスガンの震動がコックピットに伝わってきた。目視で爆発を確認する。そして、誘爆していく。
その戦闘が位置を知らせる事になり、爆雷班はセットに取りかかる。
『敵水中ワームの位置情報、送ります。深度50メートル‥‥!』
ノイス混じりに井出の通信。それを聞いた爆雷班は設定中。
空中でも相手は気が付いたようで、ヘルメットワームが4機こちらに向かって飛んでくる。目視では5機という事だが明らかにその5機より多い。8機か10機いるようだ。
「誤情報か?」
緑川が舌打ちをした。
「まって、レーダーと目視では‥‥認識箇所がちがうわ!」
緋室が言う。
そう、相手はダミーを周りに飛ばして目視もレーダーでも混乱を与えていたのだ。
「そうか実数は本当に不明と言うことか! バグアめ!」
山崎 健二(
ga8182)が爆雷発射設定をしながら毒吐く
「悪いな。先はメガロの方にプレゼントを進呈しないといけなんだ。邪魔してもらって困るんだよ」
操縦桿を握る緑川。上部カバーを親指で外し、思い切りボタンを押す。
勢いよく飛んでいくのはG−01の全段発射。護衛隊列の左側のヘルメットワームに命中し爆発するが、落ちるまでに至ってない。しかし、そのヘルメットワームはバックしていく。
「こっちも!」
熊谷のAAMとD−02が火を噴く。2人の行動で、ヘルメットワームは2器にめがけてプロトン砲を一斉発射。方向性から、巨大な光の帯が、緑川と熊谷を捕らえるが‥‥運良くかわす。
「うおお」
「なんのこれしき」
操縦桿をしっかり握り、Gに耐えながら急旋回、急回避する。
「――――水深設定完了。‥‥投下5秒前‥‥3・2・1「爆雷」投下!」
神音が、爆雷発射ボタンを押す。
振動が彼女の体に伝わった。
他の機も発射し、海面に爆雷が投下されていく‥‥。そして、轟音とともにいくつもの水柱が立ち上ったのだ。
●空戦
爆雷を放てば、後はヘルメットワームである。しかし、反撃とばかりにヘルメットワームからも、海面からも鰹がトビウオのように飛んでくるので、かなりひっきりなしに回避するじょうたいだ。
「上から下からちょこまかと!」
緑川はブランクの所為か、操縦がおぼつかない。
しかし、牽制や弾幕を絶やさないように必死に熊谷やほかのロッテ、神音を支援しているため、熊谷、山崎、未早は確実にヘルメットワームに弾を当てて弱らせている。
しかし厄介なのは相手もプロトン砲で、固まったところをねらい撃たれるのだ。それで、数機被弾する。
「こいつら! 俺たちを纏めて焼き払うつもりだ!」
山崎が操縦桿を右に倒し、2時方向のへルウメットワームをロックする。
「喰らえ!」
高分子レーザー砲を放つ。見事命中し、爆発でヘルメットワームは少し動きが鈍くなった気がする。そのまま彼は操縦桿を強く握って、アクセルを思いっきり踏むと、遅れて聞こえる轟音と共にヘルメットワームの装甲が大きくなっていきた。しかし、ワームは真横に逃げた。飛行機ではあり得ない方向の移動である。
「くそ、もう少しでソードウィングのサビだったのに!」
舌打ちし、操縦桿を左に倒して旋回と距離とをる。
「くそ、当たれ!」
緑川は苦戦する。スナイパーライフルは確実に当たっている。旋回し回避するも、相手のミサイルが鬱陶しい。
いきなり目の前に現れるヘルメットワームに、緑川は急旋回するが、
「あぶない!」
熊谷と神音の叫び。
位置的に3人並んだ。そこでワームのプロトン砲が勢いよく発射される。
神音と熊谷は避けたが、操縦桿が重い。しかし、運悪く緑川のS−01改は、かなりの損傷を受けた。
「くそ、すまん‥‥離脱する」
彼はブーストを利用し、ロケットランチャーで牽制してから一気に戦闘区域から離脱した。
「緑川、今まで頑張ってくれた。急遽だけど私とロッテを組もう」
神音が提案。熊谷もOKをだし、先ほどのワームに立ち向かっていく。
未早と健二のロッテはバランスが良く、攻守を入れ替わりで立ち回っていた。
「ここ!!」
コックピットにあるブースト系スイッチを二つ入れる。すると、自分の体とKVの一体感を強く感じる。
マイクロブーストとブーストの連動稼働で、更に素早く動けるようになったのだ。
AAMを発射のち、高分子レーザーを放つと、目の前のワームはたじろぎ、バックする。しかし、その後ろから、健二のディアブロがものすごいスピードで突進していたのだ!
「はああ! アグレッシブ・フォース!」
彼のソードウィングに力が宿る。そのままワームを半分切り裂き、爆発炎上させた!
「ナイス、健二さん」
「よし一機撃墜! 即席コンビにしちゃ、結構息が合ってるよな? 何でか、良く分かんないけどさ」
熊谷も神音も負けてはいない。
熊谷のレーザー、ガトリング、確実に一機を弱らせ、神音がホーミングミサイルで牽制する。
そのあと、スナイパーライフルを構えて狙いを済ませる熊谷。
「狙い通り‥‥ここぉ!」
「――――アイテール【アグレッシブ・フォース】機動! 此処で落ちなさい!」
神音はレーザー砲に力を込める。
2人の同時砲撃でもう一機のヘルメットワームを撃墜させた。
数の多かったヘルメットワームは半分以上減っており、捕球型とおぼしきモノと、護衛1機はプロトン砲を牽制砲撃しながら、空の彼方へ消えていったのだった。気が付けば、海面からの鰹も飛んでこない。
「暫く警戒しましょう」
●海中の悪魔
爆撃の水雲のなかを音波式のレーダーで確認する。
「流石に、全弾命中でも耐えていますね」
シメイが呟いた。
あちこちに、ワームらしき影が存在している。泡の中で、メガロワームは分散した爆雷に向け、レーザーを発射し、有る程度迎撃していたようだ。途中までに口から何かをはき出したところも目撃している。
5機のテンタクルスは、水中独特の静寂にある音を聞きながら、全ての爆雷が爆発したことを確認すると動いた。
「私とろまんさんは突撃します。他の方は弾幕、支援を!」
「了解」
「了解いっくよー!」
シメイとろまんは、ブーストボタンを押した。
「ブースト・オン」
スクリューと推進装置が一気に加速する。
そのままメガロワーム5匹の群れにつっこむ中で、後ろからガウスガンや、ホーミングミサイルが飛んでくる。
メガロワームは口から鰹をはき出すように飛ばしてきた。その早さは、普通の鰹の早さよりも比べものにならない。丁度それがホーミングミサイルやガウスガンの弾に当たり、爆発・泡をつくっていった。その区域を突き抜けシメイとろまんが、一番先頭のメガロワームに接近する。
「くらえぇ! これは猟師さん達の分!」
ろまんがガウスガンを撃つ。
ガウスガンはそのままメガロワームの鰓付近に突き刺さり、周りを赤く染めていく。
「此でも喰らいなさい」
シメイもガウスガンで同じサメを撃つ。
もがくメガロワームだが、まだ撃破に至らない。
弾幕と鰹ミサイルの接戦はほぼ同じようだったが、数群(1群10匹)抜けてきた。
「こいつ、自立回避もっているのか!」
あの、射出速度もモノとせずに自らかわすと言うことがあり得ようか? しかし現実を見れば一目瞭然であった。
しかし、飛んでくる。そして、各機に当たって大きな爆発が起こるのだ。衝撃は恐ろしく、威龍はコクピットの中で揺られる。
「うう、はきそう!」
窒素酔いの危険性が出てくる。
シメイやろまんにも何発か当たり、彼の高度な防御力でも、損傷を受けた。とてつもない威力だ。
「流石サメ‥‥いえ、鰹キメラミサイル」
変形して水中用ディフェンダーとレーザークローで近接戦に持ち込もうとシメイは動いた。
それに感づいたメガロワームは、彼に一斉に突進してくる。彼の防御の前にあまり機体に傷は与えてないように見えるが、シメイ自身は衝撃による『酔い』に耐えていた。
「援護する」
シリウスが魚雷を発射し、ガトリングを撃ち続ける。サメたちはそれに一旦距離を取る。
「こんなにすばしっこい?」
ろまんも一体のメガロを捕らえ、人型になり氷雨で斬りつける、もつれるようにメガロと戦っていた。
しかし、メガロは先の爆雷の損傷が激しく、徐々に、1体、2体と倒されていく。鰹キメラも、かわすことが出来れば、暫く飛んでいき、射出時の様な早さではなく、敵ではない事が分かった。
しかし、肉弾攻撃においてメガロワームは強い。
シメイと戦うのは不利と考えたのか? また鰹ミサイルを射出する。それを迎撃する一行だが、その隙をぬってシメイとろまんを抜き、陣の中心にいた威龍に向かって噛み付いてきたのだ。
「うわ!」
今未だ彼は変形していない。
回避しようと、必死に操縦桿を握って動かすが、元が海の生物との行動差は歴然で、体当たりと噛み付きを喰らってしまう。
「こんな所で墜ちてたまるか!」
変形し、ディフェンダーで1体を突き刺した。それが幸運にも脳天を貫通する。しかしメガロワームは彼の機体の左腕を噛みちぎって、海底に沈んでいった。本体と腕から、オイルが漏れる。
「大丈夫ですか?」
「左手がやられたが、未だ大丈夫だ」
あと、2匹。
又、ワームは威龍に向かって襲いかかってくる。
「ここは‥‥こうだ!」
シメイが彼を庇う。突っ込んできたサメに強い衝撃で回転するようにシメイ機が蹌踉めくが、それがいなした形に進路が変わった。
其処に既に変形していた井出。手には「蛍雪」。
「蛍雪、アクティブ! とっておきだ、受けてもらう!!」
手足を動かすレバーで、上段からのたたき割り。
それで、メガロワームを仕留める。
残ったメガロワームはろまんが、
「食べ物をオモチャにするような奴は、ボク、容赦しないんだから‥‥! 必殺、波斬剣−真夏の太刀−スイカ割りだーっ!」
気合い一閃の水中用ディフェンダーで、仕留めるのであった。
「こちら海中班、殲滅成功しました」
シメイは上空にいる仲間に連絡した。
●さて、退治したけれど
「え? 鰹のたたき無いの?」
熊谷はションボリする。
「それもそうだとおもうけどなぁ。復旧に暫くかかるんじゃないか?」
あそこまで乱獲されたなら、こっちに回っているかと思えない。
しかし、猟師達はねぎらいと感謝を込めて、いまは貴重な鰹を漁で取ってきてくれたのだ。
「やったー!」
熊谷大喜び。
少し休憩と宴会。そのあと、どうするか。
「紀伊半島といや、白浜温泉が有名だっけ。帰りに温泉よってかないか?」
健二がそういう。
「それも一興ですね」
怪我を癒すのも良いのかもしれない。
●余談。
「で、熊谷さんはなぜ、鰹のたたきにマヨネーズつけるの?」
「まよらーなの」