●リプレイ本文
●会場前
大阪のミナミで駅に近いライヴハウス。数階建てのビルの上あたりにある規模の大きめの物だった。その周りではかなりの人だかりが出来ており、様々なアーティストのファンが固まって開場を待ちに待っている。
開場する前にはすでに、グッツなどが売られるスペースが出来ており、そこで行列ができていた。ペンライトの他にアーティストのグッツを先行販売しているのである。
「‥‥ん。最後尾はここ。しっかり一列に並ぶ。列を乱すのはダメ」
最上 憐(
gb0002)が、メガホンを持って、誘導を頑張っていた。店舗では、ファイナ(
gb1342)が売り子をしている。
「あ、はい! この商品お買い上げですねっ!?」
と、元気に客の対応をしていた。
企業側のスタッフが、交代するよと憐に言って来たので
「‥‥ん。ありがとう。開場まで時間有る‥‥ご飯。食べないと力でない」
最上は軽い足取りで、楽屋裏の階に向かっていった。
開場する。
入り口では少し困ったことがあった。
そういうライヴでは、持ち物検査で、カメラや録音機、武器類は、一時的に預かりされる。動画サイトなどに無断に流さないためだ映画館とほぼ同じマナーが適応されると思えばいい。ライヴ風景を撮りたかったUNKNOWN(
ga4276)は、心の中で残念がっている。中にあるカメラなどは全部一時預かりになるとおもったからだ。
「さて、大丈夫だろうか?」
たぶん中も一部禁煙だろう。近場の喫煙コーナーで、サックスの入ったケースを持ち、紫煙をあげていた。
別のスタッフが彼を見て近づいて、二言三言かわす。
「‥‥ふむ、既に準備が整っていたか」
「お待たせしました。アルヴァイムさんから聞いております」
黒い男は、内心ホッとして、奥に入っていく。
別のことで困ったこと。
如月・由梨(
ga1805)は、知り合いからライヴは楽しい物だと聞いたので、依頼の合間にやってきたのだが、ライヴに関しての知識は全くの素人であった。急いできたので、色々鞄に詰め込んだ状態。それは自分で気にしてはダメだと思いこむのだが‥‥、
「え? チケットが要るのですか? 四千?!」
「ドリンク別です。1ドリンクで大体五百です。買えないと入れないですね」
当日売りのスタッフと警備の鳥飼夕貴(
ga4123)に言われる。
「え、え‥‥? は、入れない、ですか‥‥?」
財布の中身を見る。残金三千クレジット(以降C)。
「お金が‥‥」
ションボリと、彼女は帰っていこうとするわけだが、救いの神が居るとするなら此処にいるのだろう。
「それは残念だね」
夕貴は苦笑していた。
「あ、そこ人、俺の知り合いっス。顔パスでお願いできませんか?」
と、さわやかな青年の声がした。
スタッフと如月はそっちを見る。
「苦労さん!」
「苦労さん?」
「クロウさん?」
「会い様にそれはないっしょ! 『九郎』だって! って、何でスタッフの人も鳥飼さんも『?』つけてんスか!」
アクセントで分かったのだろうか? 即行突っ込みに入る青年。
彼は砕牙 九郎(
ga7366)。たまたま、会場内のフロアで歩いていたときだったのだ。少し話を聞いていたのだろう。
「九郎さん、決まりですが」
「しかたないなぁ。俺が立て替えておくっていうのでいい?」
「それなら、構いません」
九郎は五千Cを払い、チケットを如月に渡した。
「『SWORD and GUN』のライヴしっかり聞いてくれな! んじゃ!」
「ありがとうございます」
九郎はそのまま奧に戻っていった。
彼がハイテンションであるのは、いつものことである。
まひる(
ga9244)と紫藤 文(
ga9763)が手を繋いで会場内を歩いていた。離れないように。文としてはデートとして誘ったと言うことだが、まひるにしては、文はまだ友達だ。そんな微妙な関係。
「臨時でもこんだけできるって、すごいね、色々」
まひるはむふふと笑っているが、
「集合企画のようだから、可能なんですよ」
文が説明する。
「ふ〜ん」
ドリンクを受け取って、まひるにもわたした。
どうもゴミや、食べる音が問題になるので、ポップコーンなどの食べ物はない。
「すみません、使人風棄さんの知り合いなんですけど、楽屋に入れますか?」
と、スタッフに訊ねるが、
「パスないですか? パスがないと今は楽屋裏には入れません」
スタッフが答える。
「パス‥‥あ、ないですね。どうします? まひるさん?」
「ないとむりかぁ。そんじゃ、頑張ってといっておいてくれない?」
「わかりました。伝えておきます」
スタッフは走っていった。
「ま、ゆっくりするか」
「しますか」
オールスタンディングで良い場所を取るため、会場内部に入っていった。
クマが会場前で立っている。
そこで子供達に懐かれているわけだが、中の人はオブシディン・バールド(
gb0143)であった。
(「リベンジを果たせたようで‥‥もしかしたら違うかもしれんのう」)
と、複雑な思いであった。
気になる猫は此処には居ない。此処は大阪だ。あの例の猫はLHの広場に居るのだ。しかし、彼は時折、有りもしない気配に、びくついていたのは内緒である。
そして、最上が待機室でたらふく食べた後、また行列整理をしているとき、
「‥‥ん。あ!」
てとてと、とある女性の場所に駆けていった。
「‥‥ん。水無瀬ママ発見。列はあっち」
「憐ちゃんご苦労様♪」
水無瀬みなせ(gb9882)は優しく、憐の頭をなでた。
「ご家族?」
隣に並んでいる人に訊ねられると、みなせも憐も頷いた。
「わかいですね。ほほえましいです」
「あらやだわ」
みなせはちょっと上機嫌。
憐は、無意識にみなせに抱きついていた。そして、その訊ねてきた人に、こう聞き返す。
「‥‥ん、フィアナの歌、好き? 歌。癒し」
「ああ、大好きだよ。今からでも楽しみだ」
と、その人は答えた。
●楽屋・控え室
「ありゃま、司会は無しかニャ」
アヤカ(
ga4624)はネコ耳をぺたんと倒して、残念がっていた。
スケジュール的に、篠原 悠がトップでMCや司会無しからという演出になったためである。途中で司会になると、歌を止めるかどちらかになると、企画側は判断したみたいだった。流れ的な問題なのである。それに、アヤカ自体に負担がかかるのだ。
「本当にごめんなさいね。色々考えてくれたみたいだけど」
「いいニャ。気にしないニャ☆ さて、あたいは楽屋に戻るニャ♪」
アヤカが笑って歌に精を出すことにした。
フィアナ・ローデン(gz0020)の楽屋のテーブルには、大盛りカレーが盛られていた大皿10皿が山積みにされているが、それを気にしては負けである。憐の食べた後だ。
スタッフや警備経由から、花や差し入れなどが届けられる。各々のアーティストの部屋はそう言った物で埋め尽くされている。余裕が有れば関係者であれば此処まで入れるのだが、警備か裏方のみとなっていた。
ジェイ・ガーランド(
ga9899)が楽屋前でしっかり警備しているからでもある。紳士である彼は、使命感というオーラで、関係者以外何人たりとも通さない雰囲気があるのだ。パスがあるか、ライヴが終われば、観客で来た知り合いは通れる仕組みになっていることも聞かされているので、今は無理ですと丁寧に断っている。
「パスをお願いします‥‥。はい、通っても良いですよ」
それを気にせず通れるのは、クレイフェル(
ga0435)、水鏡・シメイ(
ga0523)、優(
ga8480)などの同じ警備班や、ナレイン・フェルド(
ga0506)達、裏方である。
「数分休憩やから、ちょっと、挨拶してくるな」
「同じく。ちょっと、通りますね〜」
クレイフェルとシメイが優に言って、通り過ぎていく、彼女も頷くだけで何も言わない。
「まさか【IMP】もいるとは、テンション上がってくるわぁ」
「絢さんが居るからですか?」
「なんで、そうなるんよ? うちは、歌姫さんのためにきてんやで?」
シメイの言葉に、驚くクレイフェル。
「なるほど、なるほど。『フィアナさんを応援する会・会長(自称)』の私としては、同志が増える事は嬉しいですね」
シメイは扇子を広げて、口元を隠し「くっくっく」と笑っている。
「ええい、もう、挨拶行くで!」
赤面してクレイフェルは先に進んでいく。
「こんちはー」
ノックして入る2人。
「あらいらっしゃい♪」
ナレインが丁度フィアナのメイクを施していたようだ。
「丁度良い所ね♪ メイクの方は終わった所よ」
彼女のメイクはなかなかの物である。
まず、可愛さを引き出す為アイラインなどは控えており、頬に軽くチークを塗り、やわらかい表情を作っているのだ。口紅は淡いピンク色、軽くグロスを塗って弾力のある唇にしているので、より一層フィアナがフィアナらしくみえている。
「わお、これまたべっぴんさんやな! フィアナ!」
「ナレインさん、メイクが上手ですね」
「ふふ、ありがと」
「クレイさん、シメイさん。今日はありがとうございます」
フィアナが2人に軽くハグする。親交の挨拶の抱き締めだ。
「これと言った、トラブルもないので平和なもんや。それはとして、頑張ってな」
「フィアナさん頑張って下さいね」
「はい♪」
「服は此で良いわね。はい、男達は一旦失礼してくれないかしら?」
「了解〜」
男達は、警備の時間だと言うことで退散していった。
【IMP】の控え室
「IMPの知名度を上げるチャンスだよね、コレは! メンバーも集まったし、ビシッィと決めるよっ!!」
葵 コハル(
ga3897)がテンション高めにメンバーに言った。
「そうですね」
緋霧 絢(
ga3668)が答える。
鷹代 由稀(
ga1601)、ノエル・イル・風花(
ga6259)も頷いた。
「‥‥初ライヴでトリであります‥‥」
各々のトレードの服装になって、今回はフリーにそして、かなり積極的に演奏することとなった。
「その間、売り子しようか!」
コハルの案に誰も反対する者はいない。
「そうしよう! コハルちゃん」
お祭り好きの由稀が親指を立てて笑う。
「異議はありません。皆様でやりましょう」
「販売促進です」
四人は「えいえいおー」と気合いを入れ、腕を挙げているのだった。
『Twilight』は、準備は万端であり、2番目にあたる。
先ほどフィアナと出会ったとき、小鳥遊神楽(
ga3319)はこう言った。
「こんなに早く、またフィアナと一緒にステージに立てるなんて思わなかったけれど、お互いに頑張りましょうね」
「ええ、神楽もね」
お互い掌を重ね合わせ、控え室にむかったのだ。
神楽は、相棒の乾 幸香(
ga8460)に、こういった。
「やっぱり参加して良かったわ。能力者である前にあたし達はやっぱりミュージシャンなんだ。だから、必ず今日以上の舞台を二人でやろう、幸香」
「そうね。あたし達はこうやって音楽やっているのが、本当のあたし達だよね。だからもっともっと良いライヴをしてお客さん達と一緒に楽しみたいよね、神楽!」
2人はステージに上がるのを楽しみにしている。
『SWORD and GUN』の控え室では、テミス(
ga9179)、アルヴァイム(
ga5051)、ソード(
ga6675)、砕牙 九郎に、レティ・クリムゾン(
ga8679)が最後の打ち合わせをしていた。
男達はすべて黒く地味色の浴衣姿、レティ、テミスはゴスロリ浴衣でいる。しかしアルヴァイムだけはどうしてもこう呼ばれる。
「黒子」
「黒子だ」
「黒子だってばよ」
彼には満足げに、スケッチブックを取り出して『ありがとう』と書かれたページを向けていた。
しかし、テミスは緊張している。
「大丈夫、成功するってばよ。俺たちが付いている!」
九郎が言うと、
「苦労では説得力がないな」
っふっと、笑うレティ。思いっきりずっこける苦労。
「ひどいっすよ! レティさん! って、また苦労でスか!? だから俺は苦労じゃないってばよ! 『九郎』!」
九郎を弄る状態になっていくが、テミスの緊張はまだ取り除かれていない。
開幕30分前に、ステージのソデで【IMP】の絢と『Twilight』二名、『SWORD and GUN』、篠原 悠、使人風棄(
ga9514)、篠原 悠(
ga1826)、アヤカ、フィアナが集まる。しかし1人足りない。
「だれ? 居ないの」
「テミスさんだ」
「緊張で逃げたか‥‥。探そう」
ちょっと困ったことになりそうだが、まず悠と『Twilight』は持ち場に着くこととなる。【IMP】も販売ブースに向かうという最終打ち合わせであった。アルヴァイムだけ残り、SaGメンバーは探すことになった。
「大丈夫かな?」
フィアナは心配していた。
●開演前のあれこれ
開場全体が賑やかになる。警備も売り子もせわしなく、さらに【IMP】の売り子販売で、【IMP】に気付いたファンでごった返している。
最上も必死に整列するが間に合わなく、クレイフェルも夕貴も手伝うことになった。
「うっはぁ。確実に人気になっていってんなぁ!」
「はい、そこ横入りしないで! ならんで!」
「‥‥ん。カメラ撮影は禁止」
覚醒して、対応しないと逆に吹っ飛ばされそうである。
こうしたブースは別の階に設けているので開場自体に大きな混乱はない。
「今の内に、ローデンさんのCDを買いましょう!」
「ですねー」
鳳 つばき(
ga7830)と月夜魅(
ga7375)が、販売ブースに並んでいた。今の内に色々買うことも正解だ。グッツは売り切れていたら補充はないのだ。
つばきは3つ買う
「どうしてですか? つばきさん」
「つきみー、しらないかな?」
不気味に笑うつばき。
「使用用と観賞用、保存用で3枚。つきみーさんも3枚ずつですよ」
「そ、そうなんですか!? 買い物は奥が深いですね〜」
月夜魅は感心しているが、
「それ、どこのヲタクやねん。3つって」
知らない人につっこまれてしまった。
「がーん!」
「つばきさん、ヲタクだったのですねー」
「さて、テミス達に招待されてきたんだが‥‥」
袴姿の男、鴇神 純一(
gb0849)が辺りをキョロキョロしている。舞台やまだ周りの喧噪から、始まってないことを知っているが、なぜ此処に呼ばれたのか皆目見当が付かない。
パスを持っているので、楽屋裏に向かえる彼だが、途中の角で人とぶつかった。
「ごめんなさいっ!」
「すみませんっ‥‥。って、テミス?!」
「あ、あああ! 純一さん?!」
泣いて、メイクが落ちているテミス。慌てて起きあがろうとして又転ぶ。
「しかたないな‥‥」
純一は彼女を優しく起こして、手を繋いで控え室に向かった。
「わたし、素人なのに‥‥」
テミスは、緊張の理由を話す。
「大丈夫だ。一生懸命練習していたじゃないか? な?」
純一は、彼女を優しく励ましていた。
そしてメイクも直して、元通りに。
「純一さん‥‥」
おたがい、見つめ合って‥‥。
「いないなぁって、わあ! 失礼しまっす!」
九郎が思わず開けて、すぐに退散。
(「ああ! 良いところだったのに!!」)
テミス心の声。
「大丈夫だ。九郎」
「あ、いいっすか? よかった」
純一の言葉に、九郎が顔を覗かせた。
まあ、何とか無事揃ったので、楽屋裏での事件はひとまず一件落着。
アヤカの服の裾をずっと握っていた葵瑞穂(
gb0001)は、舞台裏の慌ただしさをじっとながめていた(アヤカが居る範囲で)。手にはフィアナのサイン入りのCDが大事に抱きかかえられている。
(「みんな、がんばってほしいの」)
魔宗・琢磨(
ga8475)は顔、体中、何かのひっかき傷だらけでこの大阪にいた。
「何という凶暴な猫なんだ」
こっちに向かうついでに気になっていた猫と、このライヴで聴こうと思っていたようだ。しかし、猫はかなり怒っていたらしく、逃げるのではなく、襲いかかっていたのである。何が気にくわなかったのか謎だった。
「恨みでもあるのかな? いや、クマが居なかったからに違いない」
会場に着くと、『ペット同伴お断り』と書かれている。
「‥‥ああ、そうなんだ」
がっくり肩を落とす。
「‥‥ん? 喧嘩?」
憐が魔宗をみて、救急セットを引っ張り出していた。となりにはみなせ。
「いや、猫に襲われて」
「‥‥ん。怪我治す」
「手伝うわ」
「あ、ありがとう」
と、3人で医務室に向かった。
「‥‥ん。猫‥‥ああ、あのクマ好きの」
憐は覚えていたらしい。
●開幕〜YOU
開幕五分前の放送が流される。撮影録画、録音などは、禁止となっていること(業務関係者は例外)、モッシュ等の怪我は自己責任、ダイブなどは止めるようにと、諸注意である。
「いよいよ始まるね」
「わくわくなのですよ!」
愛原 菜緒(
ga2853)と赤霧・連(
ga0668)が、テンション高くなっている。
「でも‥‥眠い」
「はわ! 大丈夫ですか?!」
菜緒は寝ていないようだ。
ステージからかなり離れた壁、そこにシロクマ顔が気障っぽく壁にもたれかかっていた。
彼曰く、
「壁の花ならぬ壁のクマ。なんちて」
という。
彼は『堕ちたキス☆クマ』鈴葉・シロウ(
ga4772)。常時覚醒で疲れないか? と言う突っ込みは受け付けない方が良いか?
その隣で、蝶ネクタイのヒグマの着ぐるみが突っ立っていて、黒白のコラボレーションとなっていた。ちょっと目立つ。
「やはりシロクマだよ」
「‥‥む」
特に親しい人とは軽く挨拶を交わして、本番を待っていることにした。
始まるために、徐々にオールスタンディングの場所が暗くなり、ステージも暗いまま調整音が響き始める。それに伴って、ソデから、カメラを回すアーティスト(暗くて分からない)がいた。それに観客が手を挙げてそのカメラに収まろうとする。
歓声、様々なコール。手拍子、そして熱気が充満し始めた。
ソデでは、悠が気合いを入れて自分の頬をたたく。
「行ってくる!」
ゆっくりとステージへ。
スカジャンにショートパンツ姿の、悠が、ステージの真ん中で、アカペラで歌い出す。
『強く私を抱きしめて あなたの愛をちょうだい!』
そこから、ハイテンポな演奏スタートし
『Love me!』
シャウト。
観客がYOUコールし、歓声が上がった。
♪いつも私を 子ども扱いするあなたを♪
♪いつから意識するようになったのでしょうか♪
彼女が歌い出す。徐々に先頭はモッシュになる。
最初の歌、Love meを歌い終わると息切れしながら、彼女はトークに入った。
「はい、みなさんふんどしーちょ!」
『ふんどしーちょ!』
「YOUです! 今日、うちはトップバッターという事で少し緊張気味やけど、出演陣含め会場のみんなで! ガンガン!! 盛り上げていきましょっ!!!」
『おおお!』
『ねーちゃん、かわいいぞー、脱げー、ふんどしー』
そこで鳳つばきが声を挙げる。
『なんだ? なんだ?』
騒ぐ人々。
「え? えー!」
月夜魅はワタワタする。
「そうね」
悠はちょっと考えて、
「暑いからぬいじゃおっか!」
と言いながらもスカジャンだけ。ビキニとショートパンツになっただけだった。
『んじゃ次行くよ! 「Sky!」』
そして続くのであった。
ただ、そのヤジが何かのネタとスタッフ側が、気付いていたのか不明だが、つばきが呼び止められて注意を受け、退場するまでの大事にはならなかったみたいである。オールスタンディングなのでそこまでスタッフが行けないのだ。こういう事は、あまり勧められないことだが‥‥(よい子はまねしちゃ行けないよ)。
悠が終わると、5分の休憩。そこで、顔見知りなどが居ることに気付いたり、トイレ休憩やグッツを買い求めたりと様々な観客風景に変わる。
●『Twilight』
『Twilight』の出番。
「頑張ってきて下さい」
ソデのフィアナが応援する。
「はい、頑張ります」
幸香と神楽は頷いて、ステージにあがる。
「がんばってほしいの」
瑞穂がアヤカの影で応援していた。
2人ともジーンズ基準のストリート系にまとまっており、
「まずはあたし達『Twilight』の代表曲『Fight!!』からいくわ! 黄昏からの思わぬ残光をみんな受け取って!」
と、マイクで叫び、『Fight!』を歌う。
♪突き進め! 切り開け! 明日を!〜〜♪
リズムが良いので、手拍子か軽くおどる。一寸モッシュ状態。何人かは、彼女らを知っているようで、たまに2人の名前をコールが聞こえていた。
トラブルもなく、自己紹介に入っていく。
「次は黄昏の安らぎを担当する幸香の番よ。新曲『明日を信じて』を聞いて頂戴」
神楽がトークする。交代のようだ。
幸香はゆっくりと歌い出す。
♪下を向いてばかりじゃ、きっと何も見つからない♪
ゆっくりとしたテンポで、少しバラード調である。
静かに聴く人が多かった。
無事彼女たちの番は終了した。
ソデで、2人とフィアナはハイタッチする。
「お疲れ様! 最後は全体曲で!」
「はい!」
●ピアノ
使人風棄の番だった。
ピアノを使うと言うことで、大がかりな準備になる。一旦スタンドやドラムなどを奧に移動し、ピアノを入れるためだ。10分ぐらいはかかるだろう。
調律師が再度調律し、OKがでるには15分かかった。
「いきますか」
あまり、人と関わらない彼。フィアナとも軽く挨拶を交わすだけで、ステージに上がる。
♪僕の器が、音を立てて崩れゆく♪
悲しいバラードのような歌。
その悲しみは何なのか。
そこはフィアナに感じることがあった。
(「この人も何かを求めているんだ、背負って居るんだ」)
と、思っている。
勝手な解釈かもしれない。
「ふーき、立派だよ。かっこいい。うん、よかった」
彼の唯一の理解者、まひるはそう呟いてた。必ず後で会いに行こうと。
●一寸残念な事:あんのん
「ピアノの準備で時間が食いましたので、飛び込み参加の件はなかったことで」
と、スタッフが言う。
「む、それなら仕方がないな」
UNKNOWNは納得した。
アルヴァイムも納得した。
撮影許可は得られているため(ローアングルは禁止と念を押され)、そちらを優先し、あとでフィアナ達に会いに行こうと思うUNKNOWNであった。
●SWORD and GUN
「行きましょう」
レティが言う。
緊張も解けて、覚悟を決めたテミスが頷いた。
暗いステージに、配置に付く。
ざわめき、新しいアーティストを迎えるために、SaGコール。
九郎、ソード、アルヴァイムも準備OKと合図をおくると、ライトアップされた。
「あれ? あれテミスじゃない!? わお!! おーい! テミス! がんばれー!!」
まひるの応援が聞こえる。
月夜魅も「がんばれ桃色ばんどっ〜!」と、応援する。
一斉に歓声。テミスは又緊張するが、レティが肩に優しく手を置いた。
真っ先に見えたのは、遠くの方で見てくれている、純一だ。
「よぉし!」
すでに、観客全員にピンク色のペンライトは配布されていた。ピンクの星々が瞬いている。
ギターやドラムのビートで、そのペンライトがリズムに乗って動いていく。
テミスが歌いレティがサポートでコーラス。
ステージと真っ正面に設置されている音響装置の近くにいたカルマ・シュタット(
ga6302)も、ペンライトをふりながら大声で、テミスコールである。
曲はラヴソング『想い伝えて』。
♪この胸に宿る 想いの全てが ただ貴方に まっすぐ届くように♪
レティが歌い、テミスが続いた。
♪(届いて)私の言葉 貴方の元へ♪
♪(響いて)私の歌 貴方の胸へ♪
♪(伝えて)私の心 私の想い 貴方の心へ♪
レティがコーラスに入りテミスが歌い、歌は終わる。
歓声とテミスとレティコールで成功を収めたようである。
そこで、レティが、テミスにマイクを渡した。
「え? ええ?」
「ほら、このためでもあるんだ」
微笑むレティに、テミスは気合いを入れ直す。
そして、
「鴇神純一さん! 私は、貴方の事が、大好きです!! だから‥‥だから! 私と、一緒にいて! 付き合って下さい!!」
いきなりの告白。
おれは、バグアもびっくりだ。
純一はそのことで驚く。しかし、いつの間にか隣にいた黒子がマイクを持ってきたので、受け取る。全員が彼に注目する。
「おっけーだ! こんなおじさんで良ければよろしくなー!!」
そこで、大歓声。
純一とテミスコールにの大歓声であった。
●フィアナ
フィアナの番になった。
彼女の歌は相変わらず強く優しく、時には悲しい。聴き入って、歌の最後には必ず拍手を送るのであった。格段に歌が磨かれているという事が分かる。
クレイフェルは、感動のあまり言葉を失っていた。
「すごいのです! フィアナさんなのです!」
目を輝かせるのは連。
まひるは、文にちょっかいだそうとするが、フィアナの声に、何かを感じ取り、悪戯を止める。もしそんなことをすれば‥‥自分が恥ずかしく思ったのであった。
ただ、文は自然とまひるの手を握る。まひるははっと気づくが、少しため息を吐いてそのままに、フィアナの歌声を聞くのであった。
隣にいた漸 王零(
ga2930)と楓姫(
gb0349)も黙って聴いており、このごろやっと感情が現れたベル(
ga0924)も感動し、彼女から来たこのライヴに来て良かったと心から思った。
沈黙の後、歌が終わると大歓声になっていた。
●アヤカ
5分休憩後、今度は明るいアヤカの出番になった。螢柄の浴衣を着る彼女は元気いっぱいに「頑張るのニャ☆」とガッツポーズをとった。
「瑞穂ちゃんは、ここでいるのニャね」
「うん」
「フィアナちゃんお願いニャ」
瑞穂はフィアナに託して、1人ステージに立つ。
テンポの良いバックバンドで、雰囲気が一変する。
「あたしはアヤカニャ! よろしくニャ!」
アヤカコールの中、アヤカはしっかりトークをはじめた。
「定番の『BLACK CAT』ニャ!」
と、言ったときに、歓声が上がった。
♪夏、早くしゃべり続けた、素顔のままの都会の猫とビーチ♪
季節的に、先取りな歌であるが、彼女らしい歌で、リズムに乗っていく。
無事に終わったあと、アヤカコールが巻き起こり、無事彼女の出番は終了した。
戻ってくると、瑞穂がアヤカに抱きついてきた。
「よかったの!」
「ありがとニャ。瑞穂ちゃん」
まるでそれは姉妹のようだった。
●IMPとクレイフェル
10分の休憩。
シロウはナンパしては自爆している。漸はまひるをからかっていた。一部、奥さんに報告だなと逆に漸が弄られる。ここで、警備の優などは巡回するが、これと言って問題はなかったようである。彼女もフィアナのステージの時には休憩が出来ており、十分楽しめていた。
【IMP】の出番。フィアナの計らいか、暗躍ではなく、スタッフ特権と言うことで、クレイフェルはソデにいた。
「ここから見られるのって、結構レアや」
と、感動。
そこで、【IMP】が入ってくる。
「やあ、皆がんばってな!」
「もち、頑張るよ」
「‥‥命をかけて頑張ります‥‥」
「もちろん!」
コハル、ノエル、由稀がウィンクする。
「ええ、頑張ります。クレイフェル様」
いつものトレード衣装の絢が、クレイフェルに答えると、クレイフェルが顔面真っ赤になって、
「あ、ああ、緋霧、がんばってな‥‥」
と、少し戸惑いがちに答えるクレイ。
「はい」
【IMP】は『NATURAL−ナチュラル−」と定番曲『Catch the Hope』を歌う。
由稀とコハルのトークや、ノエルのソロで、【IMP】のファンはハイテンションであった。
そこでクレイフェルはずっと、絢を見ていたのである。
彼には歌はあまり聞こえてなかった。絢が美しすぎたから‥‥。
「さー、今日出席のメンバー紹介いってみよかー。まずは一見クール、でも可愛いところも、我らがリーダー緋霧絢ちゃん。続いて、しっかり者のようでドジっ娘属性アリ? ムードメーカーの一角、葵コハルちゃん。そして、第2次メンバーからの参加です。普段は淡々と。しかし、初のラジオドラマで見事ヒロインの座を射止めたノエル・イル・風花ちゃん。最後にあたし、ハイテンションとお祭り騒ぎ大好きの鷹代由稀、以上4人でお届けしましたっ」
と、由稀のトークで【IMP】の出番は終わる。
歓声と、コールが鳴り響いた。
「みなおつかれ」
我を取り戻した、クレイフェルが、【IMP】に労をねぎらう。
フィアナはクレイフェルと絢を眺めて、微笑んでいた。
●アンコール
「アンコールはやっぱり基本ですよネ?」
連が目をキラーンと輝かせ、近くにいる菜緒に言う。
「もちろんだよね!」
眠気も吹っ飛んでいた、菜緒も同意。
もちろん、周りの人はアンコールの大合唱。
1分もしないうちに、フィアナ、【IMP】、『Twilight』、『SWORD and GUN』、YOU、アヤカがステージに立つ。
アヤカがマイクを持って。
「フィアナちゃんとあたいたちで、フィアナちゃんのうた『光を求めて』大合唱ニャ。歌分かる人も一緒にお願いニャ☆」
と、宣言した。
歓声で応えられる。
各バンドが、バックバンドとコーラスも努め、フィアナが歌い出す。
♪箱の中には闇があるというけど、それは光があるから♪
フィアナが歌い出す。
♪光を求めて今あるこう、悲しみも苦しみを乗り越えて♪
その歌を知る人は、サビでは大合唱となった。
終わると、大歓声。
「ありがとう! みな、ありがとう!」
●終わり
宴は終わり、楓姫の誘いに乗って、二次会に行く人や帰っていく人とばらけていく。
楽屋では、フィアナは、未だハイテンションの連と、眠たそうな菜緒に抱きついて頬摺りしている始末だった。また、告白を受けた純一とテミスは、緊張しているようであるが、周りはニヤニヤが止まらないようである。とくに、褌娘2人と、うっかり妖精なのだが。
「みなさんおつかれさまでした!」
成功を収めたようである。
此で又、フィアナも有名になっていくのであろう。