タイトル:食材:ボア〜鍋と歌マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/26 23:47

●オープニング本文


 冬には色々、スポーツはある。登山もある意味スポーツではなかろうか。
 難易度はそれほどでもなく普通の人が好んでいく山がある。そういうのが近畿内にあることは調べてみると分かるだろう。
 しかし、いま、山を管理運営している自治体周辺住民から、とある問題が出ている。
 山に通る道に大きな猪キメラが陣取っており、登山客に被害を出しているのである。
「あーこまったことになったな」
「このまま春が来て‥‥増えると」
「たいへんになる。山にまだ居座っている時こそが要だ」
 この時期になると、山には餌がなくなる。人里に降りてくると厄介である。ここで自治会はUPCに依頼を出すのだが‥‥。

「近畿にボタン鍋ってあるのかしら?」
 UPC受付センターに新しい護衛依頼を申し込もうとしていたフィアナ・ローデンがその依頼内容をたまたま見ることが出来た。そのときの感想。
 リネーアは不思議に、思った。
「あなた日本人じゃないでしょ? よく知ってるわね」
「え、まあ。でも、日本の食文化は色々勉強してみました」
「‥‥まあ、好奇心あって、好き嫌いがないのは良いけど」
 苦笑する。
「あたしも一寸気になって居るんです。これを」
 依頼申込書のラフのメモだろうか、リネーアはそれを見ると。
「ああ、地域が被ってるのね」
 彼女が行うコンサート会場は、山から近い麓の町だった。
 今回は屋内ホールで、収容はそれ相応みたいだが。予想として200名かそこら。
「過去二回2キメラを食べていたって言う能力者もいたけど」
「そうですかぁ。じゃあ、このキメラも‥‥?」
「可能性は高いそうよ」
 ずれはあっても、ほぼ同地域で依頼が重なるのは好ましくない気もする。

 フィアナはとある場所に電話する。
「もしもし山岳管理局です」
「フィアナ・ローデンと申しますが‥‥」
「ああ、近く、町でコンサートを開かれる。私たちも応援してますよぉ」
「実は、そのことと‥‥話があるのですが」
 事情を知ったフィアナにとって、キメラが居ることが何より気になったのだ。
 元気づけたい。しかし目の前に危険がある。自分は言って歌を歌いたい。しかし危機がある。
 人によっては、彼女の行動に疑問視するだろうか? しかし、かなり効率的な方法であるのだ。

「つまり」
 リネーアは腕を組んで頷いていた。
「向こうの青年団なども要望もあって、あなたの護衛も途中で含めて、猪キメラ退治と。報酬はあなたのコンサート無料招待とボタン鍋なのね?」
 リネーアは持ち場から離れられないので一寸悔しそうだ。
「だめでしょうか?」
 不安そうなフィアナに対して、
「いいんじゃないかしら。そっちの自治体と話付けて変更ぐらいしても。それにボタン鍋でお酒飲めるとなるとこの時期ですもの人気があるかも」
 リネーアは笑って答えた。
「地酒で良いのがあったらお土産に欲しいわ」

『猪退治求む。途中までフィアナ・ローデンが同伴しますが、ボーナスとしてフィアナ・ローデン・コンサート招待、および猪キメラのボタン鍋』
 という、なんだかよく分からない依頼に変更されていた。

●参加者一覧

アルフレッド・ランド(ga0082
20歳・♂・FT
神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
水鏡・シメイ(ga0523
21歳・♂・SN
メディウス・ボレアリス(ga0564
28歳・♀・ER
御影 柳樹(ga3326
27歳・♂・GD
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
風間由姫(ga4628
17歳・♀・BM
マーガレット・ラランド(ga6439
20歳・♀・ST

●リプレイ本文

●顔合わせ
 フィアナ・ローデン(gz0020)の事務所を尋ねる一行。
「いらっしゃいませ。あ、あなたは」
「お久しぶりです。フィアナさん。前のライヴには顔を出せず済みません」
 先にフィアナに声をかけたのは、水鏡・シメイ(ga0523)であった。
 メディウス・ボレアリス(ga0564)も、
「久しぶりだな。ローデン君」
「お久しぶりです、水鏡さん、メディウスさん」
 フィアナは顔見知りを見つけては笑顔にいっぱいになった。
「水鏡さん気にしないでくださいね」
「ありがとうございます」
 深々と頭を下げる水鏡。
「こんにちは、初めまして、アルフレッドと言います」
 アルフレッド・ランド(ga0082)が挨拶し、神無月 紫翠(ga0243)、御影 柳樹(ga3326)、風間由姫(ga4628)、マーガレット・ラランド(ga6439)もそれに倣った。
「皆さん、来てくださってありがとうございます」
 フィアナは笑顔で答える。
「初めまして、葵 コハルです。ライディくんがやってるラジオ、よく手伝いに行ってるんだ。よろしくねっ」
 葵 コハル(ga3897)がにこりと笑って挨拶する。
「初めまして、葵さん。ランディさんとお知り合いなのですね。あの人にもよろしくお伝え願えませんか?」
「うん。いいよ♪」
 フィアナは、全員に握手を交わした。

「さて、色々事情が重なって、こういう依頼になったが。主な目的は2つですね」
 マーガレットが言う。
「フィアナさんの護衛は、経験者がいるので大丈夫として」
「牡丹鍋さぁ♪」
 マーガレットの言葉に続けるかのように、御影がニコニコする。
「うむ、鍋は良い。しかし、どうやって倒すかだ」
 メディウスが、頷く。
「ですね」
 マーガレットがメディウスに頷いた。
「作戦はどうしましょう?」
 アルフレッドが言う。
「スナイパー2人いますからね。しかも場所は山、標的を誘導して、狙い撃ちしましょう」
 彼は地図を見る。
「雪は?」
 メディウスは尋ねる。
「流石に頂上まで行くと、残っているでしょうけど、其処まで登る程ではないとか。そう積もらない場所なので」
「このへん‥‥ぐらい‥‥ですか」
 神無月が地図を見て言った。中腹ぐらいらしい。
 機動性のある、風間と御影、戦闘力のある葵にアルフレッドが囮と索敵し、無線で逐一報告、山に罠を作り、狙撃にて仕留めていく作戦になった。ただ、うり坊は、発見後すぐに戦闘する。
「萌えキメラは、侮るな」
 メディウスは過去の依頼を思い出して遠くを見ていた。
「そんなに可愛いのですか。それだとお持ち帰りしたいですが」
「結局殺すことになるから意味ないとおもうよ」
 葵は水鏡に言う。
「ですねぇ」
 残念そうな水鏡であった。

 高速艇に乗り、現地に向かう。その間にフィアナと楽しい会話がされていた。
「ねね、フィアナ!」
 葵がフィアナを呼ぶ。
「はい?」
「CD出してる?」
「あ、まだなんです。ごめんなさい」
「残念」
「でも、3月以降に作りますよ」
「え、ほんと? 楽しみにしているよ!」
 葵は、フィアナの手を握り、ぶんぶん振る。
 和気藹々とした中で、現地に無事到着した。


●情報収集
 現地で更に作戦を練るために、アルフレッドとメディウス、マーガレットが猟の会合場に訪れた。話を聞けば、ここでは猪はかなり珍しいと言う。
「全く謎のことをするな、バグアは」
 メディウスは、首をひねる。
「儂らじゃ手に負えないんだ。しかし、つい最近ここに引っ越してきた、三郎のじいさんなら猪のことは詳しいな。呼んできてやるよ」
 猟師の1人が言う。
「助かる」
 村人が1人出て行く。
 10分もして、三郎が来た。
「ん? あんたら、あの化け物を退治する人かえ?」
「私、マーガレット・ラランドと言います。 猪について色々訊かせて欲しいのです」
「まあ、長いこと猪を狩ってきたがねぇ」
「出来れば、そのコツと大物を捕ったときのこと話して頂けませんか?」
 マーガレットが感動と関心の瞳で言うと、三郎は機嫌良さそうに、武勇伝を話し始める。それに釣られて、他の村人もわいわいと、狩りの武勇伝や狩りのコツ、この山が大好きだと言うことを、色々語ってくれた。
「嬢ちゃん達、この辺によく彼奴らが出没してるんじゃ。だから、その場所を探せばよいさ」
 三郎と、村人は丁寧に教えてくれた。
「私は都会育ちだから、化学調味料ばかりの食品で、本当の自然の美味い食べ物を食べたことがないんですよ。猪の食べ方など教えてください」
「私も詳しく猪の調理法を教えて欲しいです」
 アルフレッドも身を乗り出した。
「おう。教えてやるとも。まずはな、臭みをとるにはな‥‥」
 ただ、老人達という者は話が長くなるし、酒も入るとさらに饒舌になるものだ。3人はしっかり彼らに捕まって、夜遅くまで宴会につきあわされてしまった。しかし、メディウスは、あとの宴に地酒の情報を手に入れ、アルフは様々な猟師の料理を教わる。つまり、マーガレットの活躍で、かなり友好的に情報を手に入れたわけである。
『すまん。宴会に誘われた。遅くなる』
 このメールで、御影はフィアナが用意していたホテルで悶えていた。

 幸い、猟師に飲まされた人は、酔いつぶれず、二日酔いにならなかった。

●出発
 登山口。
 今は『キメラ危険!』となって閉山されている。フィアナは可愛いコートとスカート姿で、近くの売店兼茶屋で待機すると言っている。
「いってきます〜」
「いってらっしゃい」
 一行は出発していった。
 登山道は、かなりしっかりしており、かなり楽に上れる。ただ、重装備だとそうは行かないが、それでも、凍結もなく、足を取られることはなかった。
「たしか、ここから数百m先が猟区域ですね」
 アルフレッドが言う。
 地図を見ている神無月が頷いた。その奥へと進む。
「よし、班分けして、待機地点に落とし穴を作ろう」
 待ち伏せ地点に着く。
 罠なども確認し、葵と御影とアルフレッドが、携帯シャベルを取り出し、穴を掘り、落とし穴を作る。常人なら一苦労の作業だが、覚醒してすればなんて事はない。
 カモフラージュも出来て、準備万端だ。
「では、作戦開始!」
 メディウスが言うと。皆は無線機をオンにした。

 アルフレッドと御影、葵と風間の4人で猪を探す。
「いるかな?」
「足跡発見しました」
 風間が皆を呼ぶ。
「というと、この先か?」
 足跡の先を見ると、続いている。相手はキメラなので、周りは折れた木々、食い残しがあるので見つけやすい。
「邪魔する者は全て突進で排除って感じさぁ」
 御影は苦笑する。
 気を付けて、足跡をたどると、茨から、何か丸っこいものが転がってきた。
「ぷひ」
 まるく、そして茶色い毛玉。背中に数本の黒っぽい線に、白い斑点のある可愛い生命体だった。
「‥‥これって」
「うん」
「これが‥‥うり坊。かわいいさぁ」
 うり坊2匹が頼りなさげに歩いて、能力者達を見る。いなや、可愛い泣き声と共に、走ってやってくるのだ。ものすごいスピードで。
「な! うり坊キメラ発見! 今から迎撃するよ!」
 葵が動いた。覚醒し、銀色の髪になり、獣のような耳に変わる。
「可愛いけど、キメラはキメラ! 倒す!」
 相手より早く、間合いに詰め寄って、蛍火を袈裟斬り、其れはかわされたが、すぐに回り込み再び斬る。手応えがあり、うり坊はぷいっと鳴いて転がって離れていった。アルフレッドが別のうり坊を刀で突きを入れる! しかし、華麗に転がってかわされた。
「なにぃ!」
 アルフレッドは驚いた。
「ああ! か、かわいい! 攻撃できないです!」
 風間は、そのうり坊の姿に武器を持つ腕が震え、固まっていた。
「やはりかわいすぎるさぁ!」
 御影も悶えていた。
「恐ろしい!」
『だから気を付けろと』
 無線で、メディウスが言う。
 うり坊2匹は、反撃に転じる。攻撃してきた葵と、アルフレッドに体当たりをしてきた。
「きゃ!」
 しかし、体が普通のうり坊と変わらないのか、逆に葵やアルフの胸に当たったまま撥ねて、転がる。
「いや、可愛いのは分かりましたから‥‥え? うわ!」
 しかし、うり坊はまた飛びかかってきて、2人をはじき飛ばした。
「痛い!」
「やはりキメラか!」
 2人は少し傷を負ったものの、構え直す。
 立ち直った御影が、叫ぶ。
「可愛いけど、これ戦いなんださぁ! あと、鍋のためさぁ!」
 と、うり坊一匹に瞬時に近づき、渾身の急所付き! それでうり坊は一匹倒れる。
 アルフは3連続の斬撃をもう一匹に与えようとするが、可愛い転がり方で2撃共かわされる。
「ちょこまかと! しかし!」
 最後の1撃は見事、うり坊の急所を捉え、倒すことに成功した。
 丁度、葵と風間は別の方にむけて、警戒を解かない。遠くから、地鳴りのような、轟音がするのだ。
「これは‥‥本命がきたよ! 全員に通達。お鍋の具がきましたー!」
 うり坊が転がり落ちてきたところを、二頭の猪キメラが猛突進で進んで来たのだ。


●おいかけっこ
 二頭の猪キメラ。
 普通の猪より数倍大きく、目が爛々と赤く光り、筋肉質であると言うことが一目で分かる。此は強敵だとアルフレッド達は確信した。
 葵が石を猪に投げる。自分に気を惹かせるつもりであるらしい。
「気を付けて! うり坊でも危険だったから、作戦通りに」
「ほたほら! おいで〜! あたしと追いかけっこしようよ!」
 御影も、同じように石を投げる。
「ほら鍋、僕の所に来るさぁ」
 一頭が2人を睨み、雄叫びを上げ、走り出す準備をしている。
 アルフレッドと風間も、
「侮っては行けないな。二手にわかれて、計画通りに合流だ」
「はい」
 もう一頭に軽く石を投げて、気を向かせた。
「狙撃地点で会おう!」
 と、全員は走り出す。
 山の森の中、足場が悪いなかでも能力者と猪の追いかけっこは続く。
 こちらは囮として、付かず離れず距離を取って逃げているが、すぐに追いついてくるのだ。
「何という速さだ」
 しかし、猪は急な方向回転は出来ない。葵に突進してきたとき、葵は横っ飛びでかわす。後ろにあった木が、猪キメラの突進により、折られて倒れる。木が倒れる轟音が響く。
「うわあ、此に当たるとひとたまりもないよ」
 もう一頭が風間にも猛突進するが、かろうじて彼女はかわした。先は一寸した草むらで、猪キメラは急ブレーキをかけて、ゆっくりと向きを変える。そして、獲物を狙おうと睨むのであった。
「うわぁ、猪と言うより、牛だなぁ」
「怖かったですよ」
 そして、4人は猪を先にある、作戦の場所までおびき寄せるのであった。


●落とし穴
 狙撃班の水鏡とメディウス、神無月とマーガレットはうまく物陰に隠れ、遠くでの戦闘の音を聞く。
「うまくやっているな」
 と、メディウス。
「油断‥‥しないよう、早く終わらせて‥‥楽しみましょう?」
 神無月が言う。
「きました!」
 水鏡が報告する。
 全員が覚醒し、雰囲気が豹変する。
「2頭か? すばしっこいが、逃がすかよ」
 神無月の口調が変わった。
「援護は我とマーガレットに任せろ」
 各自持ち場で、合図をおくり、機を待った。
 
 落とし穴は3個あり、其れを飛んでかわす能力者。しかし、本当の落とし穴に気づいた一頭は、急に立ち止まる。
「うわ、意外に賢いんだぁ!」
 葵と御影は急に立ち止まって、武器を構える。
 その隙に猪は飛び出し葵に体当たりする。吹っ飛ばされる葵。
「痛い!」
 そのまま追撃が来る! 刹那。
 葵にそれ以上の怪我はなかった。
 猪の眉間に矢が突き刺さった。悲鳴を上げる猪。水鏡の洋弓「アルファル」だ。
「いまだ! 観念して鍋になるんさぁ!」
 御影が瞬天足ですぐに間合いを詰めて、全力攻撃をする。愛用のファングが猪の顔、足を切り刻む!
「たあ!」
 葵が態勢を立て直し、すぐに後ろに回り込んで、渾身の一撃を与える! それは急所を狙ったすばらしい攻撃で、猪キメラは沈黙させた。
 メディウスは駆け寄って、怪我をしている葵に練成治療を施した。
「ありがとう。もう一頭は?」
「大丈夫のようだ」


 アルフと風間が担当している猪は、1つの穴を飛び越えて、次の穴に落ちていった。もがく猪。
「やりましたね!!」
 風間が喜ぶ。
「此で狙いやすくなった」
 神無月が笑う。
 マーガレットが風間とアルフに練成強化を与える。2人の武器は仄かに光っている。
「えい!」
 風間がヴィアで穴に落ちた猪を突き刺して、傷を負わせる。かなり与えた感じがした。
 しかし、猪は、すぐに穴から出てきて、風間に体をぶつけてくる。
「きゃあ!」
 彼女は少し吹き飛ばされたが、持ち直してヴィアを構えている。
「穴が浅かったか。しかし、そのロスは貰った!」
 神無月が、長弓「黒蝶」で眉間をねらい撃ち、見事命中。
 悶える猪にアルフレッドの全力攻撃が、猪キメラを沈黙させた。
「ぷぎゃあ!」
 猪は断末魔を上げて倒れていった。
 完全に息の根を止めたことを確認してから御影は、
「ひゃっほう。鍋さぁ。たらふくくうさぁ!」
 と、喜んだ。
「楽しみ‥‥ですね」
 覚醒を解いた神無月は微笑んだ。


●鍋と歌
 治療をし、御影が二頭を担いで、水鏡と葵がうり坊をもって下山してきた。
「わあ。すごいですねぇ」
 フィアナはびっくりした。

 その夜。アルフレッドの独り舞台になる。つまり、料理だ。根菜も少し入れて、スーパーで買った野菜もくわえ、まずは猪鍋を作り、うり坊は刺身にしてみた。大食漢がいるので、品数は少なめになった。ただ、薫製分だけは残している。
「あとで、桜チップで薫製にします」
 そのあと、フィアナと囲んで、猪フルコースを食べる。やはりキメラなので筋肉質であり、筋ぼったいが、美味であった。メディウスは地酒の熱燗と猪の肉に舌鼓をうち、御影はマーガレットに「食い過ぎです」と止められるほど食べようとした。危うく、うり坊一匹分が彼の口に収まるところであったのだ。
「フィアナさん、コンサート、聴かせて‥‥くださいね」
「たのしみだよ!」
「私も楽しみです」
 神無月と葵、水鏡はフィアナの歌が楽しみだった。
「はい、頑張っちゃいます♪」
 こうして、鍋パーティの夜はふけていった。

 そして、コンサート当日。
 ちゃっかり水鏡は良い席に座って、フィアナの登場を待っていた。他の全員も思い思いに席に座っている。
「たのしみだねぇ」
 ワクワクが止まらない。
 ステージにフィアナが出てきた。彼女は礼をし、歌い始める。
 その歌声は、とても綺麗で、心がこもっていて、勇気が湧いてくるものだった。本当にプロの芸能界などに属していないことがおかしい、と思うぐらいに。
「すごい‥‥綺麗‥‥」
 葵はそれ以降黙っていた。
 コンサートも終わり、今回の仕事は無事成功したことになる。
「絶対CDかうぞ!」
 葵は、そう言った。