タイトル:【FF】75号戦線確保マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/18 22:47

●オープニング本文


 【AS】America Strikes Back以降、北米東海岸では、人類・バグア両軍ともにオタワでのエアマーニェ騒動を意識しながらも、戦闘を継続していた。有力な指揮官を多く失った北米バグア軍は、前線を維持する事が出来ず、防戦に徹したまま徐々に後退。そして、オタワの情勢が落ち着き、UPC北中央軍が勢いを増し、更に、ゼオン・ジハイドのエドガー・マコーミック率いる軍が撤退に追い遣られると、前線の南下が一気に加速したのである。

 しかし、サウスカロライナ州のコロンビア、グリーンヴィルまで進攻したUPC軍は、そこで快進撃に終止符を打たれた。
 メトロポリタンXへの途上、アトランタで彼らを待ち構えていたのは、亡きリリア・ベルナールの名と北米バグア軍の再興を声高に叫ぶ歴戦の猛将達、そして士気溢れる兵団。更に、非常に統制の取れた動きで彼らを支援する無人ワーム群にも苦戦を強いられていた。広域での戦力分布やバランス、戦況の変化を敏感に感じ取って配置と陣形を変えていく様は、徹底した中央集中管制による効果だと推測出来るが、その性能は他に類を見ないほど高い。
 進撃の足を止められたUPC軍は、アトランタ東の20号線・85号線上にて敵軍と衝突。同時に、同市を守る都市防衛システムの全容を暴くべく、調査を開始した。

 ナッシュビルを解放して数ヶ月。特に大きな問題もなく整備は整えられ、義勇軍とUPC軍が共同でナッシュビルを守っていた。そして5月末からアトランタを解放すべく85号線と20号線で戦いが起こっている事を知る。義勇軍のリーダーである、リズ・A・斉藤(gz0227)はUPCの指揮官ロマード・オベリックと話し合っていた。
「解放したナッシュビルの人々から情報はわかるのでしょうか?」
「完全に外と隔離された中なので、外世界についてはほとんど知らないと言うことだ」
「‥‥すると、一度は最低でもチャタヌーガまで偵察し、そこを前線として確保出来れば‥‥」
「波状攻撃できるな」
 チャタヌーガまでこの混成部隊が進軍すれば、アトランタ攻略にかんして充分有利に進む事になるだろう。

「しかし、混成部隊の進軍・駐留には時間がかかる。既に85号線では純粋な軍の戦いがあるが」
 ここの混成部隊長として配属しているUPC軍の隊長、ロマードはあごひげを手で弄り考え込む。
「彼らに頼むしか有るまい。こう言う時にこそ自由に動いては頼りになる‥‥」
「彼らというと?」
「傭兵だよ」
 リズは彼の言い方に眉間にしわを寄せ抗議をしようとしたが、ロマードは落ち着けとジェスチャーした。
「まてまて、私は彼らを何でも屋とは思っては‥‥思っては‥‥居ない。傭兵が居なければ、ここも解放できなかった。だから、その力を見込んでの事だよ」
「‥‥分かりました。では、彼らにどうして欲しいのですか?」
「チャタヌーガ近辺の偵察だな。実際手薄になっているか分からないし。実際援軍が来て重装備かもしれない」
「なるほど」
「電撃戦が良いか、確実に勧めるかを知るにはまず情報が必要だ。それは、君も分かっているだろう」
 ロマードはふふんとリズを見た。『どうだ、俺はすばらしい事考えただろう』と自慢している子供のようだった。ふしぎとその場が緊張から解かれる。
「確かに」
 リズはその作戦に同意した。
 偵察は必要であろう。

 そして傭兵が呼ばれる。
 正面にはリズとロマードがいる。リズが傭兵に作戦命令と趣旨を伝えた。
「現在、85号線付近にてアトランタを侵攻、また強行偵察が行われています。私たちは75号線を使い、敵をたたくことになりますが、強行突破する訳ではありません。混成部隊や軍の進軍に時間がかかるためです。今回、あなたたち傭兵を呼んだのは、チャタヌーガまで戦線確保のための偵察を行って貰います。その情報を元に軍が動きます。お願いです、助けてください」
 と、リズは言った。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
ロジャー・藤原(ga8212
26歳・♂・AA
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
館山 西土朗(gb8573
34歳・♂・CA
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
ルリム・シャイコース(gc4543
18歳・♀・GP

●リプレイ本文

●再会と初対面。
 傭兵一行は、ナッシュビル義勇軍長リズ・A・斉藤(gz0227)に頼まれ75号線に位置する、チャタヌーガを偵察する事となった。実際は24号線がナッシュビルとチャタヌーガがつながっているが、その先は75号線になる。
 リズと傭兵達は自己紹介を済ますと、それぞれ任務に必要な準備に取りかかった。
「二年ぶりだな」
「お久しぶりです。今回よろしくお願いします」
 館山 西土朗(gb8573)がリズと再会に握手する。
 各自出来る事を車やバイクに施し(ぼろ布によるカモフラージュは出来なかったが)、偵察準備は整う。
「気をつけて、悠さん」
「はい、分かってます」
 少し不安そうな笑顔でリズが恋人である鹿嶋 悠(gb1333)に言うと、鹿嶋は笑顔で彼女の頭をなでた。
「シカシ鹿嶋ニ彼女ガイタナンテ初耳ダナー」
 ロジャー・藤原(ga8212)が驚きと冷やかしの棒読みで館山のジーザリオの運転席に座った。
「ええ、そうですよ」
 鹿嶋は、極力感情を抑えて答えている。
「仕事が大事だと思う」
「藤原さん‥‥」
 夢守 ルキア(gb9436)と終夜・無月(ga3084)が注意した。
「仕事は大まじめで行くぜ」
 藤原は自分の持ち場の再点検をした。
「この程度しか迷彩できないのは仕方ないな」
 ルリム・シャイコース(gc4543)が、顔にドーランを塗ったり各所に迷彩偽装を施したりするが、少し物足りなかった。


●車で偵察
 出発は夕暮れ時。チャタヌーガまでの運転だ。セージ(ga3997)が鹿嶋に言う。
「久しぶりに会えたが、元気そうでなによりだな。なあ?」
「そうですね。元気そうで良かったです」
 鹿嶋にとっては、リズとナッシュビルは大切な存在なのだ。セージは時にはからかうこともあるが、その気持ちをよく知っている。
「美女とドライブとか最高だな」
 藤原が館山の車を運転しては、うきうきだ。
「お世辞はやめてよー。はい仕事に集中するー」
 と、ルリムが藤原の背中を叩き、
「年齢的な守備範囲はないの?」
 夢守がしれっと鋭いツッコミをいれていた。

 しばらく時間が経って、チャタヌーガからかなりギリギリの距離に車を止めた。そこから徒歩でチャタヌーガまで向かう手はずである。夢守は暗視スコープを所持している。夜の偵察に使う為だ。
 まず動いたのは終夜だった。全速力と瞬天速であっという間の先に行く。しかし、他の傭兵はじっくりと歩いて行く。
 途中、スキルのバイブレーションセンサーで敵がいないか確認しつつも、用心に重ねて進む。
「敵はいない」
 セージが、道路の跡を見ては、敵はどう動いているかを考察した。
「どう動いていると思う?」
「どこかに集結しているように見えるな」
 藤原が答える。
「向こうにあったワームらしい跡をたどったら、こっちに」
 そのあと、集まっては、チャタヌーガの方に向かっている。
「これは、集結しているな」
 セージは顎を弄って考えた。

●夜の偵察
 夜、夢守と館山が先行して偵察をする。別方向にて、藤原が動く。
「罠はないのかな?」
 夢守が方位磁石などを見ると、普通に動いている。どうやらここまでには磁石を狂わす何かはないらしい。暗視スコープから双眼鏡をのぞき込み周りを見るが、遠くの方にワームが集結している事が分かる以外、大きな収穫はない。
「罠がないと言うだけでも、いい情報かな? 一度もどろう」
 夢守は呟いて、館山と戻ろうとしたが、
「よし、一度引き上げよう‥‥。いやまて!」
 館山が別の方向を見ていた。その方向の上空のヘルメットワームがサーチライトを照らして警備してきたため、2人は素早く岩陰にある大穴に隠れた。2人は上空のヘルメットワームが過ぎ去るのを待つ。見つからないようにと願いながら。
 上空のヘルメットワームは、ライトをあちこちに当てては調べるが、異常がないことを知ると、そのままチャタヌーガの中心部まで飛び去っていった。
「あ、危なかった」
 夢守がふぅと安堵する。
「警備はかなり厳しいかもしれないな。幸いにも俺が入るぐらいの穴があって良かった」
 館山は、夢守を抱きしめるように隠れていた。その状況を理解した夢守だが、
「あ、ありがとう」
「おうよ。すまんな。とっさのことで」
「いいよ。これぐらい」
 と、大声も出さずに離して欲しいと頼むと館山は素直に応じた。

「敵が集結している事は確実だよ」
 と、夢守が、傭兵達が集まっている暗闇の中で知らせる。
「こっちも危うく見つかりそうになったが、館山のおっさんとルキアが言っていることと変わりないな」
 藤原も偵察して得たことを報告する。
「集結しているか。防御に専念しているところか」
「警戒を強めているようですね」
「朝方の偵察をどうしようか考えよう」
 敵が集結していることは分かった。しかし、数までは把握していない。双眼鏡などはほとんど日中に使えるタイプなので、朝日を待つ。朝を待っている間に、終夜が帰ってきた。
「途中でパトロールらしいキメラの群がいましたが‥‥直ぐに片付けました‥‥」
 と、それだけいって仮眠をとった。
 偵察という任務が緊張感で周りがぴりぴりする。そんな雰囲気を良しとは思わない館山は、
「こうぴりぴりしても仕方ない。ほれこれを食べろ」
 と、みんなに板チョコを分けてあげた。
「こういう時は甘い物だねー。助かるよー」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
 と、各々が礼を言っては食べる。チョコの酸味と甘味が、心を落ち着かせてくれた。
「この先に何があるかがわかれば、進軍に大きな影響を及ぼします。しっかり、調べましょう」
 鹿嶋が言うと、
「ああ、分かっている」
 皆が答えた。

●朝の偵察
 朝方、朝日とともに皆が地平線を見た。ほとんどのメンバーが匍匐前進ですすみ、双眼鏡で細部が見えるところまで進む。鹿嶋には隠密の技能はないが、荒れ果てたこの道に障害物はないかとそこに隠れて周囲を警戒する。終夜の行動で、この辺りにパトロールのキメラがいる事は分かった。しかし、遠くの方で大きな異変‥‥目立つような警報‥‥がないと言うことで、安堵する。
 双眼鏡で見える距離まで到達する。砂埃が舞う中、伏せ状態でチャタヌーガを覗く。
 チャタヌーガの光景は、歪でかつ不気味であった。生物と金属の混合体だと思われるような物質で城壁を構築し、その周りにキューブワームが浮遊している。夜では分からなかったが、壁と壁の隙間にゴーレムが配属されている。その少し上空は、5機編成のヘルメットワームが行き来しており、南の方からワーム達が来ていることが分かる。警備係のヘルメットワームは1機だけでとんでは辺りを見回っているようだ。
 数はこの距離から見るに分からない。双眼鏡ではゴーレムは壁と壁の隙間にいるのは5体程か? ヘルメットワームは多数存在しているようだ。ただ、砲撃役のタートルワームやタロスやレックスキャノンのような『発展型』は見あたらない。
「すごい‥‥一杯いるな」
 藤原が驚く。
「これは予想以上だ。はやく知らせないとな」
 セージと鹿嶋は傭兵が伝えている情報を逐一、メモに書いていった。
 強いワームが見あたらない。昔の機体だけが集まっている様に思える。
「陣形を見た方が良いですね」
 鹿嶋が提案する。
 今はまだ、相手に気付かれていない。もう少し見ておく方が良いのではと思う。危険な事ではあるが、まだ見つかっていない。ギリギリまで見つからずに細部を知りたかった。なにより、鹿嶋は恋人の故郷の復興が気になっていたのである。
「じゃ、もう少し近づいてみるかー」
 ルリムはそういうと、覚醒して匍匐前進。もう少し距離を詰める。24号(ナッシュビルとチャタヌーガを繋ぐ道)と75号をゴーレムとキメラ達でふさいでいる事が分かった。司令室とわかる建物は壁などで遮られて判別が付かない。もう少し遠くにあるのか考えるところだが、無理に進んで相手に気付かれるとまずいと思い、ルリムは瞬天速で皆のいる場所に戻っていった。そして、ルリムは覚醒を解き、守り方は道を重要拠点としていると皆に告げる。
「道路を封鎖するという手段ですね。相手も必死なのでしょう」
 鹿嶋がメモをとる。
「後ろ‥‥ナッシュビル‥‥を警戒しているな。これ以上集まってこられても困る」
 セージが、頭をかいては自分なりのメモを書いた。
「‥‥これ以上居ると見つかるだろうな。戻るとするか」
 館山が提案すると、全員が頷いた。
 全員はゆっくりと、車を置いた場所へ戻る。幸運なことに無事に車の所に戻り、リズの居るナッシュビルにたどり着いた。

●報告
 今回偵察のことで、リズやロマードに報告すると、ロマードは、口をへの字にして考え込んでいる。
「これは、大きな戦いになる予感がするぞ‥‥さてどうした物か」
 と、顎に手を当てて考え込んでしまった。そして、周りをうろうろする。
「リズ、話をしよう。傭兵の諸君は休んで良い」
「皆さんありがとう。疲れをとってください」
 リズは傭兵を休憩室へ向かわせる。
「何かあったら言ってください」
 と、鹿嶋がリズに言うと、
「ありがとう。でも大丈夫。後でお話ししますね」
 彼女は笑顔で答えた。


 作戦の概要がある程度絞れてきたようだ。KV戦を想定するのは確定であるが、ゴーレムやヘルメットワームの数が増えている事で、混成軍がどのような連携をするかにある。会議が終わった後、リズは鹿嶋と再会を喜んだ。
「本当に、お久しぶりです。また助けていただきました」
「助けるのは当たり前ですよ」
 と、2人は笑顔になる。しかし、リズの笑顔に鹿嶋は顔を真っ赤にして照れくさくなった。
「どうかしました?」
「いえ、その、な、何でもないです」
 リズは首をかしげて鹿嶋の反応を不思議に思っていた。

 数メートル離れて、人一人はいるほどの大きな『木箱』を被った藤原が居るが、館山に捕まる。
「お前は何をしている?」
(いちゃこらを収めようと‥‥ダンボールじゃなく空きの弾薬の木箱しかなかったんで、これで)
「そういうことはやめろ‥‥」
(ああ、これも偵察ミッションだって! いや、まってー、ここからいいところなのにー)
 と、引きずられる藤原だった。
「どうかしましたか?」
 鹿嶋が気づき、館山に訊ねるが、
「こんなところに空きの箱があってな。元に戻そうとしてるだけだ」
 がっはっはと笑いながら、空き箱を揺さぶる。中に人が入ってますよ。
「まあ、弾薬箱。危ないです。片付けます」
 リズが申し出るが。
「なに、俺も弾薬庫へ行くついでだからいいぞ。気にするな」
 と、館山はやんわり断った。
 小一時間、館山に説教されてあと、(箱の中で揺らされたので)悪酔いしてる藤原が居た。

●作戦の骨子
 作戦は大まかな所まで完成した。KVがゴーレムとワームを撃破し、一気に蹂躙するような電撃作戦が一つとして上がった。タートルワームなど砲撃型ワームが少ないのであれば、その作戦が効果的だと判断したらしい。そしてチャタヌーガを解放すればアトランタ攻略の足がかりとなり、75号線を戦線確保出来るようになる。このときまた、傭兵の力を借りる事になるだろう。
「傭兵の皆さん。また皆さんの力をお借りしますが、その時もよろしくお願いします」
 と、リズは全員の手をとりながら言うのであった。

 戦いはまだ始まったばかりである。