タイトル:復活ミニライヴマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 4 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/02 15:18

●オープニング本文


 近畿最大学園都市エイジア。そこにラストホープから引っ越したローデン事務所がある。そこには、歌手・フィアナ・ローデン(gz0020)が所属している。数ヶ月以上のブランクがあったが、エイジアのとあるライヴハウスにて復活ライヴを開催する事になった。彼女程度なら、市民ホールを借りても満席を見込めるハズなのだが、規模を小さくしているのは、慣らし運転的な所もあった。
「声の調子はどうですか?」
「いいですよ」
 スタッフがフィアナに訊ねると、笑顔で答える。
 そろそろ桜が咲く頃だ。今年の開花予想はいつ頃か? 楽しいことが見えてくる。
「歌いたくてうずうずしています」
 今回傭兵は客ではなく、メインとしてスタッフとして募集する。力作業はやはり傭兵が頼りになるし、今までの交流から楽器演奏の上手な人もいるからだ。
「来てくれると約束している人もいるから。思いっきり歌いたいな」
 フィアナは、プログラムを友人やスタッフで作りたい。そう思っている。
 充実した歌。
 歌が好きだと伝えたい。
 もし、これが成功を収めるなら。アフリカの大規模作戦の惨劇で受けた傷を克服できる第一歩かもしれないと、彼女は思ったのだ。
 ラストホープにはスタッフ募集の依頼と、エイジアと近辺にはチケット販売が始まった。

●参加者一覧

ベル(ga0924
18歳・♂・JG
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN

●リプレイ本文

●約束
 エイジアの小さなライヴハウス。
「歌姫フィアナの再スタートね。約束通り駆けつけたわよ。みんなで良いライヴにしましょうね」
 小鳥遊神楽(ga3319)がフィアナ・ローデン(gz0020)の約束のために、やって来て彼女に言った。
「ありがとう、カグラ。来てくれて嬉しい」
 2人は握手を交わして、喜び合う。
「フィアナの復活ライヴとあっては全力を出さざるを得ない」
 キリッと答えるのは、葵 コハル(ga3897)だ。
「あはは、ありがとうコハル」
 フィアナは嬉しそうに笑った。
「‥‥お久しぶりです‥‥。成功させましょうね」
「ええ、ベル君も手伝いに来てくれてありがとう」
 ベル(ga0924)の事にフィアナは微笑んでは彼と握手した。
「フィアナさん、話があります」
「? はい?」
 辰巳 空(ga4698)が真剣な顔でフィアナを呼ぶ。
「本当は、ラジオなどでリハビリをしてからライヴをして欲しかったのですが」
「あたしは、歌いたいの。そのためにレッスンは地道に積んでいたわ。あのあと、何もしていない訳じゃなかったんだから」
「‥‥そうですか。それなら仕方有りません。が、状態を見てドクターストップをかけさせて貰います」
「分かりました」
 フィアナは「もう大丈夫」という意志を伝えているが、辰巳からするとまだまだ心配な状況ではないかと思っている。
「成功のためにも、充分な準備運動とストレッチを」
「わかったわ」
 と、フィアナは辰巳の意志を尊重してはコハル達に話をした。

 ステージに上がる神楽とコハルと一緒にストレッチや準備体操をしては、リハーサルもこなしていく。
(大丈夫かな?)
 ベルは正直心配だった。多分他の誰よりも心配している。この中で一番彼女に関わりが深いからなのだが。
「第二照明の位置がずれてます」
「‥‥あ、はい。調整します‥‥」
 リハーサルでは、疲労や前のショックなどが無いように見えるが、裏側から覗くベルはハラハラしていた。その心配はフィアナの前では見せないようにしたかったが、体に表れる。移動する時に転んでしまった。
「大丈夫?」
「‥‥大丈夫、です‥‥」
 ベルはスタッフに助けられて調整を手伝う。
「照明、OKです」
「はい」
 照明、音響、様々なことを調整していき、プログラムを流して行っていく。それを間近で見るコハルと神楽はフィアナの復活を確信しているが、心配しすぎている辰巳とベルはそうではなかった。
「後は心の方だとおもうけど、温泉の時から元気だったし、大丈夫だとおもう」
「しかし、ですね」
「心配しすぎだって。あんたが医者って言うのは分かるけど、フィアナが思いっきり歌え無くなるのはこまるっしょ?」
「む、確かに」
 コハルが辰巳にフィアナの調子の感想をいっては、辰巳がしかめっ面をするので説得(のようなもの)に入っていた。
「過保護も良くないし‥‥。ベルを見なさいな。心配せず普通に仕事をこなして‥‥」
 照明音響の方で手伝いをしているベルを見るコハルと神楽、辰巳だが、
「その機材はこっちじゃないよ」
「‥‥え? そうですか? すみません‥‥」
「大丈夫? またこけたでしょ?」
「‥‥大丈夫です‥‥」
 大きなミスではないが、ベルらしさが無い。いくつかミスをしている様だ。だいたいの理由が、フィアナの動向をちらちらみてはよそ見をしてミスしている。端から見て心配しすぎだと分かる状態だった。
 しまいには、そのミスが多いベルに、
「ベル君大丈夫?」
「‥‥だ、大丈夫です!‥‥」
 逆にフィアナに心配された。ベルは極力冷静に努めて普通に対応しているが、ぎこちない。
「心配しすぎて、ああなっちゃう」
「は、はい。彼女の好きなように、彼女とファンが楽しめるように医者として動きます」
 コハルと神楽は、なんとか辰巳を納得させたのであった。


●開始前
 ベルが裏口から外に出て、人の流れを見る。すると、フィアナ復活を知って昔からのファンが集まっている。しかし、満員に出来るほど人はいないような気がする。
(やっぱり心配だ)
 ブランクも有る所為だろうし、活動を停止してから半年、人気は落ちている。その影響だろうと思えば納得がいく。ただ、それでも、フィアナの人気が落ちている辛かった。
「普通‥‥と言った所か。復帰ライヴで満員は贅沢かもしれないな」
 スタッフは考える。
「あたしは、観客が一人であろうと、歌います」
 フィアナは強い意志で言うと、スタッフは「君はそうだったね」と笑った。
「お客さんの熱気負けするフィアナじゃないよね!」
「うん」
 コハルの言葉でフィアナは頷く。

 それでも、本番が近づくと、誰もがフィアナは緊張していると言うことが分かる。半年のブランクやゴシップなどをはねのけられるのか今回のライヴで分かるからだ。握る拳に汗が滲む。顔にも翳りが見られる。
「大丈夫フィアナ、緊張してない? 歌いたいように歌って楽しんでこーよ、お客さん達もきっとついてきてくれるハズだからさ、あたし達もバンバン盛り上げていくからね」
 コハルが優しくフィアナを抱きしめる。
「久々のライヴだもの‥‥やっぱり緊張するよ」
「そっか」
「せっかくのライヴだからね。お客さんと一体になれる曲が良いと思うわ。フィアナさんの歌で皆が幸せになるを実感できるって、ライヴハウスならではだと思うしね」
 神楽もフィアナの緊張を解くように話しかける。
「うん、みんな、ありがとう」
 フィアナは笑顔を取り戻した。

●本番
 イントロダクションから入り、フィアナは登場して歌い出す。ギターの神楽とキーボードのコハルの伴奏もベストなタイミングだ。観客が沸き上がる様なテンポの良い歌から始まり、終わると、観客は歓声を上げた。
「ありがとう! あたしはこうして歌えることが楽しみだった。これからもみんなに元気を、そこであたし自身も、元気をともに分かち合っていきたい! 戦いは本当に激化しているけど、元気になっていこう!」
 そういうと、観客も歓声で答える。気持ちが通じたのだ。
「では、次の曲!」
 フィアナが神楽達の方を見ては頷き、再び観客の前を向く。またアップテンポの曲で観客のテンションは上がっていく。
 一方、ソデでみている辰巳はハラハラしていたが、フィアナが曲をこなしていく事で安堵感を覚えてくる。しかし、医者としてはまだ注意して見ていなければならないと思っていた。
「‥‥大丈夫‥‥」
 ベルが辰巳に言う。
「‥‥あんなに楽しそうにしているフィアナさんはこの半年観られなかったですよ‥‥」
「‥‥ですね‥‥」
 ベルはそれだけを言った後、自分の仕事に戻っていった。

(フィアナさん、ブランク克服してるわ)
 ギターをつとめる神楽が、フィアナの歌の質が劣るどころか、成長していることを知る。
(いやまったく、才能ってコワイよね)
 キーボードのコハルもテンションに乗って、気持ちよく弾く。
 ステージは観客と一体になり、更に盛り上がっていった。
 フィアナはPOPS以外にバラードなども歌いこなし、プログラムを終了。アンコールが巻き起こる。しばしそこでコハルのマッサージを受け手は辰巳の特製ドリンクを飲むフィアナ。
「アンコール行きたい」
「だよね!」
「そうよね。あたしも思いっきりはじけたいわ」
「では、いこう!」
 フィアナがライヴでよくアンコールで使う歌の1つを携え、再びスタージに向かっていく。3人(ドラムやベーススタッフ含めると計5人)は大歓声に包まれるのであった。

 満席ではなかったが、復帰ライヴとしてはまずまずの結果を残したのであった。


●展望
 ライヴの後片付けがすべて終わり、あの歓声が嘘のように消えていた。静かなライヴステージ。そこにフィアナが一人立っていた。
「‥‥どうかしました? 皆さんがまってます‥‥」
「うん」
 ベルが呼ぶとフィアナはベルの後を着いてきた。
「一寸一人で余韻に浸っていたの」
「‥‥そうですか‥‥」

「皆さんお疲れ様でした!」
「おつかれー!」
 フィアナが来たことで、一気に打ち上げの乾杯。
「お疲れ様でしたー! 久々にお客さんに聴いてもらったけど、感想はいかがですかにゃ?」
「もう、最高だったよ」
 コハルがフィアナに寄りかかっては、ニコニコ訊ねるとフィアナは笑顔で答えた。
「‥‥良いライヴだったわね。これで、足踏みしていたフィアナさんにとっての夢にまた一歩踏み出せたと思うわ。 次の機会があったら、また呼んでちょうだいね」
「ええ、もちろん。ちゃんと連絡する」
「ありがとう。フィアナさんと同じ舞台に立って、音を紡いでいる時間は、あたしにとってもミュージシャンとして生きて居ると実感できる大切な時間だからね」
 神楽は今回のライヴでまた自分が『ここ』にいる事を再確認していた。
「次はどこが良いかな?」
「北米で開放された場所というのは?」
「それはいいね」
「その時は、あたしたちが守るわ」
「ありがと」
「‥‥俺も必ず‥‥守ります‥‥」
 と、打ち上げの時に、次はどこで歌うかを考えるフィアナ達だった。

 フィアナのライヴはある程度の成果を収め、それがラストホープや北米各所に知られる。
『フィアナの復活』というニュースで。
 それで、北米にいる有るエースは大歓喜したとかないとか噂もあった。

 フィアナは、おそらく今までの経験を元に戦火の中で歌うだろう。そしてその後‥‥そう、平和になった後も。
 誰もがそう思う復活ライヴであった。