●オープニング本文
前回のリプレイを見る リズ・A・斉藤(gz00227)達と傭兵達、そしてアーベストは戦っていた。
「主を殺して、返り咲くつもり?」
「既にアレは亡骸です。北米バグアには既に力はありません。あとは意地です!」
銃撃と剣戟のなか、2人は言い争う。
「何のために! 素直に投降し、人類側に取引すれば一部の強化人間は救えるとききました!」
リズがサブマシンガンを撃ち続けリロードしては叫ぶ。
「それで助かるのはわずかです。強化人間になった事は、すなわち人を捨てた。バグアに服従した証! なら、その誇りとともに死ぬのが本望です!」
「それが誇りなの? 死に急ぐの? もしかしたら助かるのかもしれないのよ?」
「否! 人として完全に道を外れた者しかこのナッシュビルにはいません! わからないのですか? 狂ったガドルの気まぐれで生き残ってきた道の最後がこれだと! 生きるか死ぬかです!」
アーベストは剣で銃弾をはじき接近する。
リズは射撃するも、間合いに入られる。しかし、蹴りを入れてはアーベストを吹き飛ばした。
「‥‥」
「悲しいよ」
「それが戦いというものですよ。分かっているでしょう?」
ナッシュビルが完全に人類側に落ちない手段はただ一つ、リズを殺すことだ。アーベストはそれが最善の策と考えた。他の部下達もリズを狙う。
ナシュビルの希望はリズ。その希望が死ねば、義勇軍の士気は下がり巻き返しができる。いや、巻き返すことはできないが、少なくとも臨時統治者がいないとなれば、バランスは崩れ、おそらく起こるだろう北米の大きな戦いに影響がでるであろう。たかが内陸の1つの街の制圧でも、解放されるのはバグアとしてよくないのだ。
アーベストは、バグアに忠誠を誓っていた。彼は知性もあったし、運もあったから。配属された場所は狂ったような強化人間・ガドルの元だったが‥‥。それでも、生きて行けたことに感謝と恩義を忘れてはいないのだ。
「あなたは、ゲリラとして死を賭して戦った! 私はバグアに甘んじて生を得ることが出来た、その違い!」
強化人間側の銃撃が激しくなる。
話は平行線。わかり合えない。リズは悲しかった。しかし、故郷を解放する為にはこちらも退けない。
これは、お互いの誇りと意地を賭けた戦いなのだ。改めて思い知らされる。
均衡は崩れない。その均衡を崩せるのは、傭兵達だけだ。
ナッシュビル最後の戦いである。
●リプレイ本文
●死を賭して
銃撃が格納庫にある木の箱などをぶち破る。格納庫には普通機材置きの家具、箱様々な物があるものだ。リズ・A・斉藤(gz0227)や傭兵達、そしてアーベストを含む11人の強化人間はそれを遮蔽として銃撃戦を繰り広げていた。
「一つ質問がある!」
眉間にしわを寄せた白熊頭の鈴葉・シロウ(
ga4772)が遮蔽物の裏で叫ぶ。
「地上に出てきたアレを作ったのを手伝った人はいるか?」
どうやら、アーベスト達に化け物ワームのことを訊いているようだ。
「あれは、ガドル独自でおこなったものだ、我々は関知してない」
「そうか‥‥。ならまだ救い用はありますね。もし、手伝っているなら普通に殺すだけでは足りなかったよ」
ツインブレイドをしっかり持って、作戦行動の準備にはいった。
「アレは人の死に方じゃない」
鈴葉は抑えきれぬ怒りを押し込めた。
「散開するぞ。標的になりたくなかったらな」
時雨・奏(
ga4779)が傭兵全員に向かって叫ぶ。
「で、どうするのです?」
「R−01がやっかいだな」
終夜・無月(
ga3084)が時雨に訊くと、終夜はふむと考えた。この場には、ガドルが逃走用に用意していたR−01がある。敵に使用されては、厄介だ。
「縮地系で敵の真ん中に入って、各個撃破がベストだろう」
「そうですね」
「‥‥援護は‥‥任せてください‥‥」
ベル(
ga0924)愛用のライフルを持って、木箱の陰に隠れている。
「リズさん!」
「悠さん?!」
鹿嶋 悠(
gb1333)が明鏡止水を盾の様にしてリズをかばう。
「この銃撃の嵐を乗り切るには、突破口を開く3人の力を信じましょう」
「はい」
「俺らは、リズ、お前を守る」
セージ(
ga3997)も寄ってきて、威嚇射撃を始める。
鹿嶋とセージがリズに接近出来た事を確認した鈴葉がウィンクし、
「では、馬のようにあいつらを蹴り飛ばしましょうか!」
と叫び、ベルが援護射撃をもって合図となり、鈴葉、時雨、終夜が地面を蹴った。
距離としては縮地系スキルで充分届く。時雨は上手くR−01に飛び乗り、無月が近くで十字撃と両断剣・絶を放ち4人の強化人間を吹き飛ばす。鈴葉がツインブレイド二刀流を振り回しては1人の両腕を切り落とした。
「させる‥‥くっ!?」
アーベストがR−01に近寄ろうとするところを終夜が止める。デュランダルとアーベストの剣が鍔迫り合いとなる。
「邪魔はさせません‥‥」
「高名な傭兵が来るとは。あなたの首も貰ってさらに士気を落とさせていただく!」
剣戟がその場で起きた。
時雨はコクピットに乗ると一瞬で、不足なものが分かる。
「これは一寸大変やな。SES機能が全部無いわ。飛行機形態でなら動きは簡単やろうけど」
飛行機形態でも壁にする程度なら充分だろうと操縦桿を握り、動かす。人型に変形させて壁にするつもりだったが、多少改造されてしまっているのか、移動させるだけで精一杯だった。それを止めるサブマシンガンの銃声が聞こえるが、ガドルが強化していたために装甲は厚かった。
リズの壁として役に立つR−01を持ってきては、
「これで万端やろ? しかしこれで暴れさせるのは無理っぽいわ」
「ありがとう!」
リズと鹿嶋、セージが反撃に出る準備は整った。
●激戦
鈴葉は襲いかかる敵は無情に命を奪っていく。それは怒りからだ。関わってないとは言っても、怒りを抑えることはできないし、助かる見込みはないと確信している。リズに向かってくる敵は時雨と鹿嶋、セージが対応していく。奇襲してくる敵はベルが直ぐに察知しては狙撃。そこから鹿嶋の明鏡止水の一撃が強化人間を両断した。セージも強化人間の力を見切ると少しため息をつく。
「本当は『死を奪いたかった』が‥‥」
「慈悲でも与えるつもりやったんか? むりやろ? あいついらは死ぬ気でリズの頭を狙ってるわけやで」
時雨が言う。
「わかっている。自殺願望の片棒を担ぎたくなかっただけだ。しかし、そう行かなくなった」
「さよか。どっちにしろ、わしはひと思いにやるだけさ」
R−01を壁にセージと時雨が、主義主張の違いをはなしていたが、「全員倒す」ことで決着が着いたようだ。
「見せてやる。俺のソードダンスを」
セージが飛び込み襲ってくる敵を切り裂く。時雨はまた瞬足縮地で遊撃に回り敵を翻弄する。
「戦いましょう、悠さん」
「‥‥わかりました」
リズが盾となったR−01を利用してスコーピオンを撃ち、鹿嶋はフォルトゥナ・マヨールーに持ち替えて後方援護にしばらく回った。
1人1人徐々に強化人間が倒れていく中で、終夜とアーベストの一騎打ちは終わらない。
(アキラと同格か?)
と、彼は考えるが、それが隙になるため思考を遮断。剣を振るう事に集中した。
上段からの斬りつけがアーベストに躱され、アーベストが懐に向かって剣を振るう。紙一重に躱そうとするが、腹から血を流す。それをこらえて横凪ぎ。それはアーベストが剣で受け、数メートル吹き飛ばされた。
「重い‥‥っ」
吹き飛ばされて動けないところで終夜の袈裟斬りが来る。それが掠ったことでアーベストの片腕は使い物にならなくなっていた。
「‥‥」
「‥‥」
お互い傷が深い。周りから援護が出来る雰囲気でもなかった。
●決着
鈴葉は獣の皮膚で体を守るが多対一になってしまう状況で体がぼろぼろだ。ベルの援護もあったので、確実に3名ほど沈めることが出来た。また、時雨の遊撃や鹿嶋とリズの援護、セージの近接加勢により一度後退できる。
「ふう、少しやられました」
「動かないで! 応急手当てするから!」
リズが鈴葉の傷を救急セットで応急処置をする。それが終わると、鈴葉はまた飛び出していく。
「うおおお!」
「では、俺も向かいます!」
「はい」
鹿嶋も近接戦に向かうことに。
ほとんどの強化人間を倒した後、のこるはアーベストとその周りの3人だけになった。3人が加勢にはいるところを鈴葉とセージ、鹿嶋が割って入り、1人は50m飛ばされ、1人は銃を切り落とされ、1人は大剣で切り伏せられる。
「あのねーちゃんは、スケジュールがやまほどあるんだ! 狙わせはしない!」
時雨がアーベストに向かって獅子牡丹で斬りつけるも躱され、蹴りを入れられ吹き飛ばされた。その隙を突いて無月が剣を振るってはアーベストの髪を切る。
鈴葉が吹っ飛ばした敵に向かって瞬足縮地で追い、とどめを刺す。
ベルとリズの援護で残る敵はアーベストに近づけないように出来るのだが、アーベストが思いのほか強く、終夜だけでは苦戦を強いられていた。その均衡を破ったのは鹿嶋であった。
「うおおおお!」
「はああ!」
「?!」
鹿嶋と終夜の両断剣・絶の同時攻撃がアーベストをなぎ払う。彼は数メートル吹っ飛び、その場から動かなくなった。のど元に剣や銃を突きつけ、勝負あったという仕草を鹿嶋がした。
とどめを刺すべきだという殺気を皆から取り除くためでもあった。
「み、みごと‥‥」
アーベストは吐血し、彼らの勝利を認めた。
「‥‥幾度か会いましたね」
彼は鹿嶋に向かって言う。反撃の力もない事がよく分かる。地面が赤く染める中で、何かを訊きたいようだ。
「最期だ、何を言いたい?」
「何故‥‥戦うのです?」
「それは、人類とか世界とか言うつもりはない。俺はただ彼女の夢を叶えてやりたいだけだ。それに‥‥惚れた女一人守れなきゃ、漢(おとこ)じゃないだろ?」
鹿嶋の迷い無い答えに、アーベストは笑う。
「愛‥‥ですか‥‥ははは、久しく忘れていた言葉ですよ‥‥愛‥‥で強くなれる‥‥それは‥‥とても‥‥あこ‥‥」
アーベストは何かを思い出しながら、何かを言い切れずに息を引き取った。
「‥‥終わったのね‥‥」
ガドルとその副官アーベストの死亡を伝えると、地上では歓声が沸きおこっていた。
●戦いが終わったが
リズが蟻塚のバルコニーに立ち、こう宣言した。
「いま、ここにナッシュビルの解放を宣言します! いままで散っていった命に哀悼の意と、そして戦ってくれた仲間のために感謝を!」
その言葉で歓声がより大きく強くなる。
このあと、一般人の虜囚などの介抱や、けが人の手当、武装解除など問題が山積みだ。一部は義勇軍で何とかなるが、UPC軍の手も借りないと行けない問題もありえる。この戦いで残っている強化人間は0という事で、如何に死を賭して戦ったか物語っていた。
「これからどうするん?」
時雨がリズに訊ねる。
「スケジュールはいっぱい。どこから手を付ければいいか直ぐには決められないわ」
怪我を負った傭兵達の治療に当たるリズは答えた。
「解放の方はこっちに任せろー」
リスターが蟻塚のシェルターなどを探す仕事に向かっている。
「夢が叶いましたね」
鹿嶋がリズに言う。
「まだまだありますよ。悠さん」
「ええ、そうですね」
「ありがとう。ずっと戦ってくれて」
「いえ、守るのが俺の使命です」
鹿嶋はリズにほほえみかけた。
「はーい、怪我の手当をした我らは、あの桃色空間にいてはなりません。義勇軍の手伝いに行きましょう。幹部に訊けば仕事はわんさかあるでしょうし!」
と、鈴葉が傭兵4名を引き連れて、リズと鹿嶋を2人きりにした。
「色々話は‥‥あるのですが‥‥いいでしょう‥‥」
こうして、ナッシュビルは解放された。
次に目指す夢は復興であろう。