●リプレイ本文
●トラブル続き
「まるでびっくりドッキリハウスであるな。バグアの試練とやらがどんな物か見定めてやるのじゃよ」
美具・ザム・ツバイ(
gc0857)が、謎の白い建物を一周しては、その建物を見て言った。
出入りできる扉以外他の入り口や窓、通気口がない本当に四角い建物である。
「ダンジョン! トラップ! アスレチック! やべぇ、超ワクワクする単語目白押しじゃねえか!」
赤いマスクのスロウター(
gc8161)が周りにいる人が退くほどのテンションで今か今かと建物に入ろうとしている。
「落ち着け、スロウター殿。貴殿は傭兵になって日が浅い。前に何をしていたかは訊かぬが、なかがどうなっているかは誰も分からぬのじゃ」
「ヒャッハー!」
「聞いてないな‥‥」
美具はスロウターを落ち着かせようとはするが、赤マスクの女性は聞いてなかったためため息をつく。しかし、自分もこの建物中に何があるのかワクワクするから、人のことを言えたものではない。彼女の目は今からお化け屋敷に挑む子供のようにキラキラしているのだ。2人は既にリズ達に自己紹介をしていたので、こうして建物の入り口前で待っている。
「初めまして、私(わたくし)、レスティーと申します。この度は縁あってご一緒させていただく事になりました。よろしくお願いしますね」
笑顔でレスティー(
gc7987)はリズ・A・斉藤(gz0227)に自己紹介する。
「よろしくお願いしますね」
リズも笑顔で答え、握手を交わした。
「‥‥リズさん‥‥頑張っていますね。今回もよろしくお願いします‥‥」
ベル(
ga0924)がリズと握手をした。
「はい、いつも手伝ってくれてありがとう、ベルさん。そして‥‥」
体中に包帯を巻いては青ざめている男2名が、正座していた。
「‥‥」
「「‥‥」」
リズのかわいらしい笑顔は、可愛いのに笑っていないオーラを醸し出す。いわゆる笑顔般若という状態だ。
「悠さん、セージさん」
「な、何でしょうか?」
おずおずと鹿嶋 悠(
gb1333)が顔を上げては恋人の顔を見た。笑顔般若が怖い。鹿嶋の顔はますます青くなる。リズは思いっきり息を吸ってから、
「大けがして来るなんて! もう! 心配するじゃない! 2人とも!」
雷が重傷の2人に落ちた。白い建物にいる美具とスロウターにも聞こえる大きな声だった。
「「本当に、申し訳ありません!」」
鹿嶋とセージ(
ga3997)が土下座する。
ちなみに大男2名を正座させていたのはリズである。
「リズさん、説教はこれぐらいにして」
「‥‥そろそろ本題に‥‥入りましょう‥‥」
レスティーとベルがリズを宥める。
放っていたら、1時間以上説教からリズが泣いていたかもしれない。そうなると、鹿嶋としては余計に困る展開である。
「今回の依頼呪われてねぇか?」
スロウターは、大男2名が170cmの女性に怒られているのを見て呟いた。
一番前衛で戦うエースアサルトが重傷という事態に、6人の傭兵はどうこの建物の中を攻略するかを考え無ければならなくなった。重体でも向かうと鹿嶋とセージは言う。地図作成係や光源係として進むと言うことになるようだ。
「で、俺様かレスティーちゃん、美具ちゃんが入れ替わりながら進むって事になるってコト?」
スロウターが6人の場合の行動を考える。
「リズさんとリスターさんに同行を願いましょう」
「それで8人じゃな。無理に班分けせずに固まっていこう」
レスティーと美具は、リズとずっと壁にもたれて黙っていたリスターを見る。
「分かりました。一緒に向かいましょう」
「ああ、かまわないぜ」
リズとリスターが応じる。
「ヒャッハー! いくぜー!」
スロウターが先頭で白い建物に入っていった。
各自は武器を構え、鹿嶋とセージは光源の確保をする。
●探索
最初はロビーになっていた。受付のテーブルや案内板があり、奥の方にいくつか廊下が続いている。武器を持たない状態なら、2〜3人は通れる廊下だ。廊下を見ると、案内の矢印が書かれている。
「1階は、事務所っぽいの」
美具は周りを見ては、この階に罠はないと確信する。
「エレベーターがありますね。地下1階までは」
レスティーがエレベーターを見つける。
「リスター。ここのロックはバグア製だったが、電子ロックタイプなんだよな?」
セージがリスターに訊ねる。
「そうだな」
リスターは頷いた。
「なら電気は通っているはずだから、使えるんじゃないか?」
セージはそう思った。
「‥‥使えますね」
ベルが慎重にエレベーターに近づいては、ボタンを押した。ボタンが光り、扉が開く。
「『試練の門』と言われているから‥‥おそらくは」
「大体推測はできるな。試練に打ち克てば、バグアの技術で洗脳と強化人間になれるんだろうの」
美具が言う。
「ハッハー、そんなもん俺様がクリアしてやるぜ!」
スロウターは自信満々に言う。
「エレベーターや階段で降りる前にまずはこの階の構造を調べましょう」
鹿嶋が提案する。
「そうですね。では、私が先頭になります」
レスティーが前に出て、1階部分を調べていく。強化人間か警備キメラがいるコトも考え、各々が武器を持つ。ドアに極力触らずに銃でドアの鍵を破壊する事もあった。
「1階は、事務所や応接室のようじゃな。少し拍子抜けしたの」
美具は呟く。
「なら地下だな!」
「テンション上がりすぎだ」
リスターがため息をつく。
スロウターはテンションが他の人が退くぐらいに高い。しかし、自分なりに今いるメンバーと一緒に行動はしようと心がけているようだ。
●迷路と罠
エレベーターでまず地下1階に降りる。
そこは先ほどのロビーよりかは狭い。そして中央にはモニターがある。奥の方に刑務所でよく見かけるような厳重な鉄格子の扉があり、さらにその奥に鉄製の扉があった。
「ここからが本番でしょうか?」
レスティーが気を引き締める。
中央まで向かうと、モニターに電源が入った。そこには少し太っているメガネの男の姿が映し出される。
『お前達は、選ばれた。しかし、真にバグアに忠誠を誓うなら死を賭して切り抜けろ』
と、モニターの男が言うのだ。
リズが厳しい顔になる。
「リズさん、この男は?」
「ナッシュビル周辺を支配しているガドルよ悠さん」
鹿嶋の問いにリズは答える。しかし、視線はモニターに映し出されているガドルに向いていた。
「なんかヲタクっぽくねえか?」
「それは俺様も思った」
セージとスロウターは言う。
檻の扉には暗証番号用のキーボタンがある。見た目は人類側の技術ではないかと思ったが、特定の条件が揃わないと起動しなくなっているようだ。
「入り口もバグア製で普通に開けないというなら、ここも同じだろ。壊した方が早い」
スロウターが銃を使って檻の弱い部分を破壊しようとする。
「おい! まて!」
リスターと美具がスロウターを止めた。
「なんでだよ!」
「よく見ろ!」
リスターが天井を指さす。
昆虫的なフォルムをしたカメラがあるが、いびつな形の銃の様な形をしていた。
「下手に動けば、警備システムが作動して撃たれるところだぞ」
「ヒュウ‥‥おもしれえじゃねえか」
彼女は、何か気が触れたような笑みを浮かべていた。
セージと鹿嶋は一度上に戻り、他の者も被害が最小になるように離れ、まずは銃付き監視カメラを破壊する。そして、そこから檻と扉を破壊した。当然警報が鳴るがただそれだけであった。扉の向こうには長い通路がある。幅は3メートルほどである。8人は一度集合してその通路を慎重に進んでみると、警報が止まり‥‥天井から鉄の壁が降りて退路を断ってきた。
「ふん。退却は許されないって事か」
「進むしかないですね」
リスターとレスティーが言う。
「ではそのまま進んで行こ‥‥って。なんだ?」
また、ガドルの声がする。
『第一の試練は迷路だ。5分以内にこの迷宮の出口を探せ。見つけられなければ毒ガスが迷宮全体を埋め尽くすだろう』
と。
「本当にここから本番か」
「気をつけていきたいところです」
セージと鹿嶋が自分の今の状態を悔やみながら言った。
「5分か」
「5分なのだな」
「5分か。普通の人間だと‥‥あぶないな」
美具やスロウター、リスターが考える。
「美具たちならこの程度、簡単じゃ」
美具は壁をノックするように叩いて、なにか調べている。
「まさか?」
リズは目を丸くしている。
美具が魔剣「ティルフィング」を構えては一気に斬る。SES武器の威力に耐えきれなく、壁が吹き飛んだ。
「壁を壊して進めばいいだけじゃな」
「そうだよな! 傭兵の俺たちなら!」
スロウターが穴へ向かうが。
「ひゃあ! 監視レーザー! あいた!」
迷路を攻略するという時、壁を破壊して突っ切るという『違反行為』に対応しているらしく、隠し光線銃が設置されていた。スロウターはそこで足をやられる。
鹿嶋が救急セットでスロウターの怪我を治療して、ベルが的確に設置された光線銃を銃で破壊する。それを続けていき、何とか4分で出口にたどり着いた。
そして、地下2階に進む。
地下2階は地下庭園であるが、不気味な色をした池や自動照準の警備システムが設置されている、進むにはルートにある様々な障害物を乗り越えるようなアスレチックになっている。一般人だとこのアスレチックは、かなり死亡率は高いと感じた。液体は生物の肉を溶かす物だとわかる。先に身軽に動けるリズと美具が先行し、安全の確認と庭園にある木々(偽物だったが)で橋等をつくって後続を安全にわたれるようにする。鹿嶋とセージはリズとレスティーに支えられながら進む。
他には気になる人物を見せる幻影装置や、槍衾などに出遭いながら、何とか切り抜けていった。そのトラップの数々を知恵で切り抜けるか力尽くで通り抜けると、一行は傷だらけで汗だくになっていた。
(早く風呂に入りたい)
美具が心の中でぼやく。
ゴールのアートが見える。
「ヒャッハー! これでゴールだ!」
とスロウターがゴールのアーチを目指して走しる。リスターが止めようとしたが遅かった。壁や床、天井から鋭利な刃が襲って来たのだ!
「ここで罠‥‥かよっ!」
武器で受け止めようとしても勢いにはじかれ切り刻まれる。
レスティーとリズがスロウターを引っ張りだしては応急処置を施す。そしてベルが的確に刃に向かって銃を撃ち破壊する。人ひとりがすり抜けられる空間を作るので精一杯だった。
慎重に刃の罠をくぐってゴールのアーチをくぐる。その秋には両開きの扉があり、自動的に開いた。中に入ると、そこは何かの礼拝堂にも見えるし、手術室の様に見える不思議な空間だった。
『おめでとう。君たちはバグアに仕えるための資格を得たのだ』
ガドルの声が聞こえる。
「なるほど‥‥」
全員は理解した。この建物はあの死の罠をくぐり抜け、心身ともに有望な人間を選別する事になっていたのだと。
この奇妙な礼拝堂の奥に扉がある。そこから、地上1階(裏の区域)があるのだろう。
●後処理
礼拝堂の扉から階段があり、各階にある制御室を見つけては、それを使って罠の発動などをオフにする。
「これで、ある程度はこっちでも調べられるな」
リスターが言う。そう、罠など危険要因が無くなれば、軍もしくは義勇軍で更に詳しい事を調べられるだろう。洗脳装置やこの制御室と施錠システムを軍で調べる。それが未来に活用されるかは分からないが、少なくとも軍は、バグアの技術を知ることになる為、何かしらの援助を受けることが出来るだろう。
「今回はどうもありがとうございます」
リズは5人に礼を言った。
「なかなかハードだったな‥‥」
「‥‥しっかり任務をこなせましたし」
美具とベルはリズに答えた。
スロウターはゴール手前のトラップで大けがをしたため、地上に上がると直ぐにこの元・収容所にある医療施設を使い本格的な治療を受けていた。
この白い建物の探索・調査から数日後に軍の技術者がやって徹底的に調査が行われた。その後、軍とリズが話し合った結果、この施設は危険であるため破壊した(当然データは軍が持っていった)。このことで、義勇軍は軍からなにかしら援助を受けられることになるだろう。