タイトル:アキラの要塞2マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/14 08:06

●オープニング本文


 まだアキラ・H・デスペア(gz0270)とその妹リリィ・コバヤシの思い出の場所で戦いは続いている。前回の作戦は搬送用トンネルに仕掛けられた防御装置。傭兵達はバイクに乗って警備装置の攻撃を躱しながら、この建造物の最深部にたどり着き、防御装置と階層を制圧した。
「本当に、警備システムと搬送用の道具しかないのか」
 制圧後、配置についている『ファウンダー』の1人が調べた結果である。
 アキラはこれを建造した時、この搬送用トンネルの警備は他と同様に強化はしていたはずだ。しかし、人類側が様々な力をつけていたため、当時の防御システムをアップデートした程度では防ぎきれなかったのである。
「さて、次はここが問題ですね」
 上に登るための階段とエレベーター。どちらかを使って中層階を進むべきかが焦点となる。おそらくエレベーターは向こうの制御管理側にあるだろう。非常階段のような階段は先を調べると、自立防御システムが稼働して相手を阻むようだ。地下搬送室から、全体の階層は見えるが、ここですべての警備・防衛システムがコントロールはされていない。15階にあるフロアに地上の約20階までの制御室があると分かった。
 ウィルソン・斉藤(gz0075)とリリィ・コバヤシ、そして傭兵達がベースキャンプから地下搬送室に向かう。斉藤が傭兵達とリリィに向かってこう指示した。
「君たちに来て貰ったのは他でもない。今回は中層階の制圧になる。理由はそこに警備システムがあり、それを止めないとアキラが逃げるか、何らかの形で報復する可能性がある。中層階の方はおそらく警備は強化されているだろう。強固な防火壁、そして自動照準のレーザー。防衛キメラなどだ。地下搬送室のコンソールからは、すべてが分かるようにはできてなかったため、情報はこれ以上知ることはできない。
 上に上がる方法は2つある。1つは階段を使い15階まで進むか、エレベーターを使い直通で15階を制圧するかだ。ただ、階段を使うとなると警備システムとキメラや、警備兵との戦いが考えられる。エレベーターで向かえば中に人が乗っていることを知られると、そのまま停止されるという可能性があるだろう。これを上手く乗り越え、15階を制圧して欲しい」

 そして作戦会議が終わったあと、傭兵とリリィは支度をする。貴方は、リリィに対してアキラについて聞きたいかもしれない。この任務だけをこなすだけかもしれない。ただ、確実にトリプル・イーグルのアキラに迫っていることは確かだ。今まで犯してきた罪をこの戦いにより決着がつけられよう。そのときリリィの心境を心配する傭兵も居るだろう。


 建造物の上層階では、アキラ・H・デスペアが防弾・防刃チョッキを着込み、上層部コントロール室で傭兵達が来るのを待っている。その部屋に初老の男が急いで入ってきた。
「アキラ様! UPCと傭兵がっ!」
「分かっています。焦らなくていいですよ。中層コントロール室で防衛を、もし危険だと感じれば素直に投降するように」
「それでは、アキラ様が!」
「この状況では命のやりとりでしか決着をつけられません。それに客人を待っている気はないのですよ。彼らをお出迎えしなければとおもいましてね。貴方はタダ塔の制御をしてくれている方です。素直に投降すれば、相手は危害を加えません」
「‥‥アキラ様」
「今までありがとうございました」
 アキラの言葉で男は涙をためながら、敬礼をして部屋を去った。
「待っていなさい‥‥」
 アキラはスーツも着込み拳銃をもって部屋を出て行く。アキラは覚悟を決めたのだった。

●参加者一覧

ベル(ga0924
18歳・♂・JG
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
依神 隼瀬(gb2747
20歳・♀・HG
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG

●リプレイ本文

●作戦開始前に
 地下制御室は薄暗い。モニターからの光である程度は視認出来るのだが、懐中電灯やランタンで照らさないと細部が把握できないような暗さだった。ただ、ここにいる作業員や警備員が暗視スコープなど暗い中をしっかり視認で着る道具を持っているわけでもなく、暗視を持った強化人間でもない。蛍光灯のボタンを探すのには、少し苦労をする。何しろいくら人間が扱えるようにはなっている物の、生体物と機械が混ざっている不可思議な制御装置を把握するのには時間がかかるのである。エレベーターの制御が中層の制御室にあるため、今の地下では制御が出来ないという事で、中層制御室の制圧が必要である。

 エレベーターで一気に向かうのか、階段を使って15階まで駆け上るのかという選択肢に絞られたが、全員の見解だと「エレベーターに乗って向かうのは危険だ」という事で一致していた。そのため、相手がエレベーターを使うことがないように、ある細工をした。
 終夜・無月(ga3084)がバイオレットソードを開閉部分やエレベーターの可動部分に突き刺して、上昇を阻止する。さらにハミル・ジャウザール(gb4773)も開閉部分に試作型水陸両用槍「蛟」を差し込んだ。コンクリートに勢いで突き刺さるが、おそらくエレベーターが上昇したとき、使い物にならなくなる事を覚悟する必要がある。
 鹿島 綾(gb4549)がリリィに訊ねる。
「今のうちに聞いておくわ。リリィ――貴方の決意は、変わらないのね?」
 決意と覚悟を。
「はい、兄さん‥‥いえ、アキラは倒します。彼は罪を犯しすぎました」
「そうか‥‥」
 彼女の決意を再確認した鹿島は、一息ついてから、こう続けた。
「ただ一人の肉親が決めた事に、口を挟むつもりは無いわ。貴方が倒すと決めたのなら、私はそれに全力で協力するつもり。ただ、もしも迷いがあるのなら‥‥彼に会った時に、それを晴らしなさい。その為の時間は、稼いであげるわ」
「ありがとうございます」
 そこで、無月がやってくる。
「俺も‥‥決着をつけます‥‥」
「無月も因縁があったね」
「ええ、フィアナの‥‥護衛の時や、『棺』の時に‥‥」
 静かに答える。
(既に決めている意思は尊重する。しかし、僕には今からこの会話に入れる程、関係ではないから、意見するのはおこがましいかな)
 トゥリム(gc6022)は3人の会話を耳にしてから、ファウンダーの能力者にM−121ガトリング砲を渡して、
「もし、敵がエレベーターを使ってやってくるとき、これで迎撃をお願いします」
 と、指示した。能力者の1人がそれを受け取り、傭兵達が希望する行動に従っていく。M−121を持った能力者は、直ぐにエレベーターの天井を開けて、屋根で待機する。
 アキラ・H・デスペア(gz0270)について話しているリリィと鹿島と無月の中に、ベル(ga0924)が入ってくる。
「‥‥リリィさん。貴方の苦渋の決意‥‥。無駄にしません」
 と、告げる。
 彼は普通寡黙だ。
「俺は、幾度もアキラと戦いました。貴方がいたことで決着をどうするのか判断を迷ったこともあります。しかし、俺にはある人を必ず守るという誓いがあります。その誓いのためにも、俺は‥‥あいつを倒します」
「「ベル」」
 鹿島と無月がベルの言葉に込められた決意を感じ取り、さらに自分が持つ決意を固めていく。
(レポートなどを見る限り、彼の裏の事情というのがあまり分からないな。どういう風に人間不信に陥ったのかな?)
 依神 隼瀬(gb2747)は作戦資料としてアキラのデータを読んでいた。そして、今まで関わっている3人(ベル、無月、鹿島)にも訊ねる。
 アキラはリリア・ベルナールに忠誠を誓っている。デスペアを作り、フィアナ・ローデン(gz0020)を狙い、人をさらっては強化人間を作り出していた。そして、自分の過去を消すことに執着している。彼がリリィ・コバヤシをみたときの動揺は印象的であったと、鹿島は言った。『偽物』とリリィに言うほど、人類側を憎んでいたことを聞いた。しかし、それはアキラがバグアに与した理由の一つであり、彼の主観だ。そう『思い込まされている』か『そう思い込みたい』のどちらかになる。故に鹿島は「何故? バグア側になった」と問いたいと言っていた。
「既に死んでいたと思っていたのですね」
 アキラの記憶が洗脳なのか真実なのかは不明瞭であると、彼を追っていた3人は考える。だから真意は分からない。
「アキラの心の闇は‥‥深いのでしょうね」
 無月は武器を構えて階段へ向かう。
「始めよう。バイクでここに向かったときより早く」
 鹿島も武器を持ち進む。
「リリィさんは僕たちの後ろに」
 トゥリムの言葉にリリィは首を振る。
「‥‥わかりました。でも、僕は貴方を守る」
「ありがとう」
 7人はそれぞれの武器を持って階段を上った。

●駆け上る
 階段は2人分の幅。2×3の列を保って進む。踊り場に着く前に、無月のバイブレーションセンサーで敵の位置を知り、ハミルの探査の眼で不意打ちを防ぎ、警備ロボットの攻撃を瞬間で破壊する。階を上る毎に監視カメラ付きレーザーが天井から攻撃してくる。レーザーを躱して、ベルが「黒猫」に持ち替えカメラを壊す。
 10階にたどり着いた頃、地下制御室から、「エレベーターが無理に動きそうになった」と連絡が入る。非常停止信号を向こうが解除して無理矢理うごかしたのだと思われた。聞き耳を立てると、確かにエレベーターが変な音を立てて音がする。そして、戦いも激化していく。洗脳能力者数名が銃器を持って踊り場へ一斉射撃したからだ。階段の構造的に盾に使えるが、こちらは2人しか壁の恩恵を受けない。鹿島は射撃が止まる瞬間を見計らって移動し、キャンサーで反撃。ハミルとベルが制圧射撃をおこない、ひるませると無月とリリィ、そしてガブリエルを持った鹿島が突撃し無力化させた。洗脳能力者の射撃攻撃で無月、鹿島はかすり傷をいくつか負ってしまう。さらに警備ロボが上の階からやってくる。階段を上りきったベル、ハミル、トゥリムがそれを迎え撃つ。警備ロボはキメラとしての特性はなかったらしく、ハミルとベルの銃撃により直ぐに沈黙した。トゥリムはリリィのそばに近づき盾となって移動した。
 増援がくる。このまま15階まで走り抜ける方がいいのか、対処するかは悩むところだ。が、挟み撃ちをされたら危険だ。無理矢理エレベーターを動かしている事は、そこから増援、地下制御室を奪われる危険が出てきた。
 しかし、かなり戦いなれている無月や鹿島、ベルにとってはこの増援は雑魚である。
「人間側は俺と無月でやる! ハミル援護を!」
「分かりました」
 鹿島が無月と一緒に飛び出し、ハミルは銃を持って援護にまわる。
「‥‥警備ロボットは俺とリリィさんで、トゥリムさんは‥‥リリィさんを守って、依神さんはサポートを頼みます‥‥」
「はい!」
 ベルがさらに指示を出しトゥリムとリリィが動く。
 挟み撃ちの形にはなったが、この階による増援を素早く倒す。そして血路が開くと直ぐに7人は走った。
 11階で階段が途切れ、別の階段を探すことになる。新しい階段へ向かう途中、下から軽い揺れがおきる。無線から「エレベーターが壊れた」と通信が入る。突き刺した武器のおかげで動かなくなったようだ。モーターが壊れたのだろうか。武器に関しては全部無事とも伝えられた。

●倒すべき敵
 警備システムのカメラを破壊し、警備ロボや武装兵が襲いかかる。14階に達したときの戦闘は激化する。戦闘で戦う無月や鹿島の疲労も目に見えてきた。無月はバイブレーションセンサーを使い続けているため、消耗が激しい。探査の目は交代できるため練力の消耗は抑えられるだろう。
「流石がここの守りは厳しいか」
 14階は吹き抜けのらせん階段があり、狭い廊下ではなく大きな広間になっていた。洗脳されている人間を無力化するのはたやすいが、面攻撃である警備ロボットは、スナイパーなどが持つ制圧射撃に近い効果をもって撃ちまくっている。15階制御室に進むのは、この防御の壁を突破する以外にはないようだ。トゥリムは盾を持って銃撃を防ぎ、リリィはSMGで応戦。制圧射撃できる傭兵が一気に撃ち、相手が止まった瞬間に、鹿島、無月が突撃して警備ロボを破壊した。
 全員息を切らす。安全かどうか確認をし、依神の治癒を受けると移動を開始する。しかし、15階へ向かう階段に1人の男が2人の人間と連れてやって来た。
「アキラ」
 ベル、無月、鹿島が男の名前を言う。
「ヒデキ、いや、アキラ‥‥決着をつけよう」
 鹿島は言い直す。
「その名前で呼ばないで欲しいですね。私も決着をつけるために来ました」
 肩をすくめてアキラは『本名』を否定する。
(リリィの決意は『アキラ』を兄と思わない)
(‥‥では、行きます)
(お願いします)
 鹿島とベル、リリィは目を合わせる。その決意は全員が知っている。
 つまり、

『兄を説得するのではなく、アキラを倒す』

 という意味だ。
「では始めますか!」
 周りにいた男達が一気に7人に詰め寄った。強化人間だ!
「強化人間?!」
 依神は錬成強化をハミルと鹿島に与えて後退。トゥリムはリリィを盾でかばいリリィが後ろで射撃をする。ハミルと無月は強化人間2人と肉薄し、仲間が固まらないように相手を導く。
「くっ、手強いな!」
「俺たちはアキラ様に使える僕! そこらの洗脳人間とは違うのだよ!」
 剣と剣がぶつかり合う。銃撃音が14階にこだまする。
「決着はここでつけます! しかし、先に彼らを倒してから!」
「貴方の実力は前に分かっています無月。何かに特化していない貴方は私の敵ではないのですよ!」
「‥‥!」
 過去の戦闘から傭兵の中でも脅威と見做されたのか、無月の戦い方は特に研究されていた。強化人間は彼の鋭い攻撃を掻い潜るように動き、無月は足や手を取られてへし折られる。
「くっ!」
「無月さん!」
 ハミルが制圧射撃を行って無月が立て直す所を助け、依神がいったん退いた無月に錬成治療を行った。骨折は粉砕骨折ぐらい重度だったため、手足がひび割れだけに済むぐらいの応急処置になった。
「攻撃が読まれてる‥‥強いですね‥‥」
「無茶は禁物です」
「わかって‥‥います」
 無月は依神の言葉に頷いては、襲いかかる強化人間を剣で受け止めては蹴りで吹き飛ばす。激痛に耐えながら吹き飛ばした敵に向かって明鏡止水で斬りつける。強化人間は躱し、反撃の蹴りを入れてきた。 無月は敵に苦戦されるも、ハミルの援護のおかげで持ち直し、戦いの間で相手の動きを見切って明鏡止水の一撃を強化人間にたたきつけて沈黙させた。

 鹿島とベル、トゥリムとリリィは連携してアキラと戦う。アキラは幾度も戦闘経験を積んだ傭兵のように軽やかに攻撃を躱していた。
「妹はもう、お前を敵として認めた。それが実の兄であろうと、だ」
「アレは偽物です。あなた方の殺気で分かりますよ」
 アキラのナイフが鹿島の赤い髪を切る。鹿島は頬に血の筋が出来ることを気にせず、ガブリエルで急所を突くが受け流される。ベルが狙いを定めてアキラの方を射貫く。しかし、その銃弾は防弾チョッキで期待する効果を得られてない。直ぐに援護射撃に切り替え、リリィとトゥリムの攻撃をサポートする。
「アキラ‥‥お前は完全に敵です‥‥フィアナの為にもここで!」
「ナイト気取りですか、ベル? 意思の強さが勝敗を決すると言ったことを覚えていますか? 意思の力で私を倒してみなさい!」
「あなたは1人です。俺には‥‥意思をともにする仲間がいます!」
「そう、お前は逃げた! すべてを捨てた。そんな奴に俺たちを倒すほどの力は、もうない!」
 鹿島が叫ぶ。
「兄さん‥‥いえ、アキラ、あなたはむ倒されるべきなのよ!」
 リリィも叫んだ。
 ベルが直ぐにフォルトゥナ・マヨールーで急所‥‥頭‥‥を狙い撃つ。それが掠った。アキラは気にせず鹿島に蹴りを入れる。吹っ飛ばされる鹿島だが直ぐに起きてはアキラに向かってガブリエルで突いて、アキラの腕を穿つ。
 苦痛に耐えアキラはリリィに向かってダートを投げつけた。それは当たると必殺の域。しかし、トゥリムが盾となって阻もうとするが、トゥリム自身の目の上にダートが突き刺さった!
「ううっ!」
 刃は目に届いていない。頭蓋が割れるほどの痛みだ。依神が直ぐに錬成治療で治す。失明の危険と傷の跡が無くなったが、ダートの威力で盾を構える力しかない。
「‥‥まもれた‥‥でも、まだ‥‥」
「動かないで!」
 彼女は使命を忘れずリリィをかばっている。リリィが彼女を抱きしめて、依神とハミルも一度この階から撤退する。
「どこに向かって!」
 鹿島の槍がうなる。その突きはアキラの腹を突き刺した。しかし、彼のナイフが鹿島の足を突き破った。お互いそれが決め手。アキラは血を吐き、血を吐きながらも後退する。腹に傷を負っているのに、その素早さは侮りがたかった。15階へ続く階段までたどり着き、登っていく。
「上で‥‥待ってます」
 と、言い残し撤退。
 ベルが急いで鹿島の出欠を止めるべく銃器を背負うためのベルトを利用し止血。依神が戻ってきては錬成治療を行った。出血は収まり傷も消えたが、体がショック状態のため鹿島はその場所で膝を突いている。
「上で待ってるか‥‥必ず行く‥‥」
 治癒を受けた傭兵達はゆっくりとだが、15階へ向かった。

●投降
 15階に制御室。そこにいた紳士な初老の男は、傭兵達を観ては投降のサインを出していた。傭兵は彼には危害を加えないようにしては、各種の警備システムをオフにした。
「‥‥あと少しですね」
「ああ‥‥」
 ベルは鹿島へ肩を貸す。ハミルも無月もトゥリムも負傷を負った。一度戻るべきだろう。そして上に向かう。
 アキラは上で待っているからだ。
 それが本当の決着の時である。