タイトル:【DoL】晴れ時々カメマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/01/31 00:37

●オープニング本文


 西暦2008年を迎えた一月某日、名古屋にあるUPC日本本部を統括する東アジア軍本部の会議室では、ミハエル=ツォィコフ中佐がいつにも増して怒号を上げていた。
「お前達が私を評価してくれたことには嬉しく思う。だがそれでは余計な注目を浴びてしまうだけというのが分からんのか!」
 問題になっている議題はツォィコフ中佐の帰郷である。本来極東ロシア軍所属の中佐がいつまでも日本に滞在する必要は無く、防衛戦の事後処理も済んだ今では中佐はロシアに帰るのが筋だった。しかし日本本部の司令官本郷源一郎大佐は、中佐の帰郷さえも一つのプロパガンダに利用できないものかと考えていた。
「だがガリーニンはもう存在しない、中佐はどうするというのだ?」
「俺を呼び出したのはお前達で、ガリーニンの突撃もお前達の指示だ! 全権を握ったのは確かに俺だが、その青写真を描いたのもお前達ではないか!!」
 吼える中佐、しかし彼に提示された案は一つしかないことも中佐は理解していた。
「お前達は何故そこまで俺をユニヴァースナイトに乗せようとするのだ!!!」

 会議室のプロジェクターは、UPC東アジア軍が提示したガリーニンに代わる中佐の乗艦「ユニヴァースナイト」を映し出していた。手元に配られた資料には「KV搭載可能、自己発電機能有、航続可能時間1000時間超」といった十分すぎる性能が書かれている。しかし最大の問題点が書かれていなかった。

「名古屋防衛戦も敵の本来の目的はこのユニヴァースナイトの破壊が目的だったのではないか?」
 ユニヴァースナイトの最大の問題点、それはガリーニンを超えギガ・ワームにさえ引け劣らない巨大な体躯だった。また空母である以上ユニヴァースナイト自体には十分な火力が搭載されているわけではない、いかに各メガコーポレーション合同開発の最新鋭空中空母とはいえ、KVが無い状態で集中砲火を浴びれば撃墜は免れない。
「そのユニヴァースナイトの進水式を大々的に行うと言うのはどういう要件なのだ! 再び名古屋をバグアの戦火に晒したいのか!!」
 当初中佐はユニヴァースナイトに乗ること自体に懐疑的だった。
 乗ってしまえば常に最前線を転戦し、部下を危険に晒してしまう。
 乗艦条件として提示したのが部下以外の各種専門家の搭乗と進水式の見直しだった。
「しかし名古屋以外にもバグアからの解放を期待する声は高い。彼ら彼女らに希望を持たせるのも私達UPC軍人の仕事だ」
 冷静に諭す司令官。そこまで言われた以上、流石の中佐も反論ができなかった。
「ならばガリーニンの時と同様KVでの護衛を依頼する。並びに、民間人は全員シェルター退避だ。貴様らの言う希望はブラウン管を通してでも伝わるだろう。これが俺の譲渡できる最低ラインだ」
 こうして中佐のユニヴァースナイトが決定した。

 名古屋市の一角。
 其処でのユニヴァースナイト護衛任務により警備につく能力者達は周りを警戒していた。
 空は冬の綺麗な冬晴れ。綺麗な空『あお』。そして雲の『しろ』。
 平和を感じさせる、その景色も今は違う意味で気持ちが良い。
 街は閑散としているがそれは仕方ないだろう。再びここが戦場になっているのだから。
 ユニヴァースナイト進水式に相応しい天候だった。

 それゆえ、この晴天が、新たな戦いに導く幕であると思う人もいるだろう。

 遠くで、かなり大きめのワームが見えた。輸送用のワームらしく、それは、すぐに姿を消した。その直後、何かしら黒いモノが‥‥空を落ちてくる!
「まさか?!」
 レーダーを確認する。
 機影が無数にある。
「堂々と投下してきやがった! 迎撃用意!」
 海からはい上がってくるのは、巨大な亀。甲羅に多種多様の刃物と大きな砲台が『生えている』。空から降ってきたのは、その亀とそして、KVを連想させるような無骨な人型ロボットだった。
 名古屋の市街地が、再び激戦の地となる。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
霞澄 セラフィエル(ga0495
17歳・♀・JG
メディウス・ボレアリス(ga0564
28歳・♀・ER
アリス(ga1649
18歳・♀・GP
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
醐醍 与一(ga2916
45歳・♂・SN
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
夕凪 沙良(ga3920
18歳・♀・JG

●リプレイ本文

●目視
 名古屋市内をKVが飛ぶ。
 敵は人型ワーム2、カメ型ワームが4体いる。
「こちらHolger、目視で敵兵確認、作戦行動に入る」
「ペガサス了解」
「A3了解」
「A4了解。亀、ですか。鈍重な相手なら、どれほど楽でしょう‥‥そうはいかないんでしょうけどね」
 水上・未早(ga0049)と、白鐘剣一郎(ga0184)、霞澄 セラフィエル(ga0495)、如月・由梨(ga1805)が中央を飛んでいく。その左右をB班、C班が離れて飛ぶ。
 カメ型のワームの一部は、市街地に降下し、ビル群を押しつぶしが、それを無視する様に破壊しながら進む。人型はそのまま大きな道路をあるいてカメを見ているようだった。
 カメたちはKV達に気づくと、徐に背中にある砲台を光らせ光を放つ。その光線は恐ろしい威力で空に浮かぶ雲に穴を開けた。各KVには全く当たらなかったが、威力を見て「此はやばい」と肌で感じ取る。
「真ん中にいる奴らが、おおいな。カメ型2人型1か」
 白鐘が状況を見る。
「Holger、援護いきます。ペガサスその間に変形を!」
「了解」
 水上と霞澄が援護射撃し、ワーム達の注意を惹く。そのあいだに、地上に降下する白鐘。如月が降り立った。白鐘はディフェンダー、如月はディハイングブレードを持っている。

「こちらメディウス。人型1と、カメ2の牽制は任せろ! 撃たせてなるか」
 メディウス・ボレアリス(ga0564)が、担当区域に近づくとバルカンで牽制し、変形して32cm高分子レーザー砲を構え、その場で打ち続ける。
 彼女の攻撃で、ワームは遮蔽に隠れ、カメはその場で止まった。首や四肢を甲羅に納め身を固くした。しかし、彼女の砲撃がリロードのために止むと、進んでくる。
「こいつ!」
 榊兵衛(ga0388)が、飛行機形態のままで、8連装ロケットランチャーを放つ。周辺のビルが破壊され、遮蔽がなくなる。しかし、ワームは一旦止まったと思いきや、ゆっくりと進んでくる。榊は変形し、メディウスの前に陣取って、ユニコーンズホーンを構える。
 夕凪 沙良(ga3920)は、通信で、いまのユニヴァースナイトの状態はどうなのか訊いていた。
「‥‥最高で5分で発進できるのですか? 分かりました。それまで、持ちこたえます!」
 彼女は各班に、
「洩らさないように、凌ぎましょう!」
 と、伝えた。

 横からの攻撃に行動を変えるB班。醐醍 与一(ga2916)、アッシュ・リーゲン(ga3804)とアリス(ga1649)は、
「こちら翁、A班の援護する!」
「了解」
 A班の白鐘たちのほうに進路を取った。
 数分の攻防。
 耐えられるか? 否、耐えてみせる。全員そう強い意志を持って、KVを飛ばしていった。


●新型兵器の驚異
 遮蔽を駆使して、徐々に接近していく両者。まず、A班がカメ2体と人型1体のグループと接近した。
 ワーム3体は白鐘を囲む。カメの突進で、白鐘のKVが傷を負った。
「この!」
 そこに、人型の剣と、カメの甲羅に刃が襲う! それをディフェンダーで綺麗に受け止めた。
「そう簡単にはやられはせん!」
 如月が、上手く回り込むが、大きな武装のため一撃までは出来ない。
 水上と、霞澄の援護、そしてC班が横から援護することで、若干有利になっている。人型は猛攻を続ける中、カメ型は一度甲羅に四肢と頭を引っ込め、防御するのであった。こうなるとかなり堅くなっているようだ。
 一方B班。
 メディウスがカメ一体に向かって、撃ち続ける。弾幕と、高分子レーザーを駆使して、1体のカメをその場に釘付けにしていた。
「くそ! またしても、かわされるとは!」
 カメが四肢を納めて防御形態になっているのに、驚異の回避力を見せていた。メディウスは驚く。
 もう一体のカメと人型が榊に突進する。榊が槍で応戦するがあまり効果的なダメージを与えていない。反撃を喰らって、機体がかなり破損する。
「くそ、これ以上は危険だ!」
「下がって!」
 榊の変わりに、夕凪がレーザーを撃ちながら、前に出る。そしてディフェンダーに切り替えた。
「かなり手強い!」
 榊はそう舌打ちし、武器を持ち替え、後退して援護射撃に移った。
「Holger、A3(霞澄)、ここは俺と如月、C班で何とかする、Bの援護を!」
「分かりました!」
「援護向かいます」
 水上と霞澄は、すぐに飛行機形態になり飛んでいく。
 白鐘のディフェンダーの連撃、如月のディハイングブレードの一撃が決め手となり、カメ1体を屠る。
 ここから、波に乗ってきたようである。
 

●迎撃
 醍醐が、狙いをさだめ‥‥、愛用のツインドリルを上手く使い、砲台の基部を破壊した。
「一体無力化! 後は人型1、カメ1を仕留めるだけだ!」
 アリスが、ブレス・ノウを機動、ブレイクホークでそのカメに突撃し、甲羅を貫く。
 如月が渾身の力を込めた斬撃!
「この一撃ならば、どうですか!」
 それで、そのカメは停止した。
「なかなかの強敵です」
 その間に、アッシュの射撃で、人型ワームを撃破した。
「1機撃破!」
 残るワーム達は、それでもひるまず、攻撃してくる。能力者達は徐々にダメージを負っていく。
 無力化したカメ型ワームを、援護班がレーザーなどで仕留めてAとC両班が対応していた敵はいなくなった。

 あとは、B班のみ。

 ゆっくりとダメージを負いながらも進むカメ。それでも打ち続けるメディウス。
「む!」
 カメがいきなり走って突進。地面が揺れる。メディウスの機体がカメの甲羅に生えている刃‥‥剣山のような‥‥に深く刺さる!
「ぐは! ‥‥しかし、この程度で我(オレ)を倒せるとおもうか!」
 彼女はレーザー銃口を砲台に狙いを定め、ショルダーキャノンのパネルを開き、零距離一斉射撃! 爆音と煙が渦巻く。カメはそれでしばらく動かなくなっている。もし、動けたとしても、砲台がなくなって、刃付き甲羅もかなり破損しているため驚異にはならないだろう。
 それでも、彼女は、このカメに撃ちまくってとどめを刺した。
「うははは!」
 別に彼女は他の所を気にしていないわけではない。足止め成功をしてなおかつ止めを指しているのだから。
 水上と霞澄の援護と、後から来た、アッシュの一撃で、人型を破壊。
「残るは無力化した亀だけだ!」
 他に危機がないかも確かめて、まず、確実にカメを動けなくしていた。

 しかし、ふいに、地上が少し盛り上がる。それはビル、大きな道路、場所を問わなかった。
「敵襲か!?」
「それぐらい予想していたわ! 数が足りないと思っていたし!」
 アリスや夕凪が、その盛り上がった場所に集中砲火。
 出てきたのは、カメだった。
「迎撃する!」
 今度は距離をとりつつ、確実に、一体ずつ‥‥、地下からはい上がってくるカメ型ワームを撃墜、もしくは無力化していった。


●空を見ながら
 1分以上は経ったのだろうか。かなり疲弊する能力者達。しかし、さわやかな笑顔であった。
 青い空には、轟音と共に、大きな船が飛ぶ。
 傷ついたKVからコックピットをあけ、全員はそれを眺める。
「任務完了。だな」
 誰かが言った。
「希望は守られた、ね」
 それに、アリスは笑う。
「しかし、騎士に守られる騎士って、なんか違わないか?」
 アッシュが覚醒を解いて、苦笑する。
「戦う船だから良いんじゃないか?」
 その辺のネーミングについて論議するのは後にしよう、と言うことに落ち着きながらも、周りを見る。
 数多くの無力化したカメ、カメと謎の人型の残骸。傷ついた街。
「希望は守られても、また、名古屋は廃墟も同然か‥‥」
 それだけは避けがたかったのか、と思う。

 今は、ただ‥‥ユニヴァースナイトを見上げながら、この激戦任務を終えた事を喜び、後に続く新たな戦いに赴くことを決意するのであった。
 まだ、戦いは始まったばかりなのだから。