●リプレイ本文
●作戦会議
希望砦の大会議室でリズ達解放義勇軍幹部と傭兵8人がそろっていた。面識がある傭兵も無かった傭兵も、リズ達に挨拶を済ませる。
「初めまして、不破 霞です。お姉ちゃんから話は聞いています」
「初めまして。リズですお姉さん‥‥ああ、あの人ですね。元気にしていますか?」
「はい」
不破 霞(
gb8820)とリズは握手を交わす。
会議室とはいっても、蟻塚要塞を利用した所だった。偵察の作戦を立てているなかで、傭兵がその会議に参加すると、
「傭兵の手を借りるのは気に食わん」
リスターがリズ・A・斉藤(gz0227)とジョセフに言う。そして目の前にいる傭兵達をにらみつける。
「義勇軍の戦力を考えて。お願いリスター」
リズは厳しい目でリスターに訴えた。
「俺たちだけで解放できるだろ!」
「過信するな!」
ジョセフがリスターに怒鳴った。
「自分たちの力で‥‥ですか?」
終夜・無月(
ga3084)がリスターに問う。
「ああ、今ならな」
「余所者である傭兵の手は借りたくない‥‥砦を普段から護り戦って居るのは自分達だから‥‥。見せるなら自分達だけで成し遂げられる事を見せたい‥‥」
落ち着いた表情で無月は言う。
「終夜、分かっているな 収容所解放程度俺たちでやれる」
「気持ちは分かります‥‥其の考えも正しい‥‥しかし」
「なんだ?」
無月は間をおいて、こういった。
「ですが‥‥今回は仲間の命が懸っています‥‥。無条件に受け入れろ‥‥と迄は言いません‥‥。ただ‥‥今此処で協力出来るか如何かの機会を下さい‥‥」
落ち着いた口調で終夜はリスターに言った。リスターは舌打ちして、
「‥‥ならば条件出す。俺たち義勇軍の言うことは従ってもらうぞ」
リスターは言うと、無月は頷いた。
作戦会議は意外なことにスムーズに進み、班を分けて3方向からの偵察、そして夜にも行う事も決まった。最終指示は義勇軍側となる。また、無線機は所持するが傍受の危険を考え電源を切り、緊急時以外使わないと言う方向になった。
会議が終わったあと、鹿嶋 悠(
gb1333)がリスターに対して、「以前も感じたが、何故俺たち傭兵を毛嫌いする?」と訊くと、リスターは「お前ら傭兵は本当にリズを守る事やナシュビル解放を手伝ってくれるのか? いくらリズの恋人でもあるお前でも信用ならん」と返した。
――彼はなぜ傭兵を嫌うのだろう? 他の傭兵に不信感という感情をあからさまに出していた。
ナシュビルは荒野となっている。その荒野に合わせた色の天幕を張って隠れる。色々かき集めた機械で出来た無線機やテーブルが置かれている。
周波数の調整をしているリズと鹿嶋、ジョセフ。周りの設営に参加している他の傭兵とリスターがいた。
篠岡 澪(
ga4668)が伏せながら軍用双眼鏡で今回偵察に向かう収容所周辺を見る。林や茂みはすくなく、身を隠すのは難しい事はわかった。
「周りを見ると昔の地図はあまり役に立たなさそうね。舗装された道も整備されて無くて使い物になってないわ」
澪は地図を見て現在と違うところにチェックしていく。
ベースキャンプが完成して、無線の周波数合わせを済ませる。
「リズ、後ろが安全とは限らないから気をつけろ」
セージ(
ga3997)がリズに助言する。
「分かってます。セージさんも気をつけて」
彼女は笑顔で答える。
「ここが危ないと分かれば、直ぐに駆けつけます」
鹿嶋がリズの肩を軽く抱いて言う。リズは頷いた。
「では作戦開始」
ジーザリオやバイクで偵察に出ていく傭兵とリスター達だった。
●A班
ベースキャンプからジーザリオが土煙を上げて進む。大きな蟻塚がはっきり見えてきた。いったん車を降り『探査の目』や『GooDLuck』を使える傭兵はそれを使用した。無月はAnbar(
ga9009)が希望したとおりに【OR】情報端末「月読」を希望者に貸し出し、偵察できるように散開する。メンバーは無月、セージ、Anbarに澪である。
敵のこの施設は希望砦と同じように蟻塚が出来ていた。蟻塚で埋まった町とも言える。形はドーム状になっておりあちこちにきらきら光るものが見える。また、周りには有刺鉄線のフェンスで囲んでいることも分かった。
さらに進むと、軍用双眼鏡ではっきり見える範囲でフェンス外にパトロールを見つける。
「大きな犬のようなキメラと、人間かしら?」
犬の散歩をしているように見えるが、確実にそれはパトロールだと分かる。
「強化人間かもしれないな。気づかれないようにゆっくり進もう」
澪は人間がどっちなのか気になる。全員同じだ。
犬型のキメラが要るという事は、鋭い嗅覚を持っているだろうということで慎重に前進していく。たまに止まってこっちを見てくると、4人は伏せ状態になって身を隠した。犬は周りを気にしている様子なので人間の方も気になって周りを見る。1分ぐらいそうしていたかと思う。周辺パトロールは異常なしと判断して去っていった。視界から消えるまで4人はじっと動かなかった。
そしてさらに進む。そしてある地点‥‥おおよそフェンスから500mあたりまで近づくと、パトロールが急いでそのあたりに向かってくる。
「この辺でわかるのか?」
セージが刹那を握り、戦闘態勢に入ろうとおもったが、
「いったん引こう。500mでレーダー範囲のようだ」
Anbarが言う。幸い見つかる事なく止めてあるジーザリオまでたどり着き、いったんキャンプに戻った。
●B班
鹿嶋とベル(
ga0924)、霞、イサギ(
gc7325)は迂回して別方向からの偵察だった。
「あれに潜入すんのか、気を引き締めないとな」
イサギは大きな蟻塚〜収容施設〜を見ながら、つぶやいた。
その場所はちょうど門に位置するようで、常に見張りが居ると双眼鏡を使った目視でわかる。さらにサーチライトが各所に設置されている事も分かった。距離は600m。
「一番警備が厚い場所のようだ」
霞が双眼鏡でみて確認する。
「‥‥これ以上、近づくのは危険ですね‥‥」
ベルが言うと他の2人も頷く。
他の班との情報をまとめるのは全員がベースキャンプに戻ってからである。有刺鉄線のフェンスのほかに、門の厳重な警備を記録していく。
いきなり門が開いた。そして犬型キメラと人間の1グループが門から出てきた。4人は直ぐに身をかがめ、そのパトロールが来ないか確認する。そのグループは、A班の所に向かったのだった。
「向こうが気づかれた?」
「レーダーに察知されたのか?」
助けに行こうとしても距離がありすぎる。しかし、ベルと鹿嶋はA班には手練れが居るため無事であることを確信している。最悪戦いになっても殲滅できる、と。
「‥‥無月さんやセージさんが居ます‥‥」
「合流したときに訊きましょう」
今は門の警備状態を調べる。
門はゴーレムが出入りするほど大きい。有刺鉄線と蟻塚の土で防壁を作っているとみて間違いない。何かが近づいたら直ぐにこの門から犬キメラと人間1名のパトロール隊が出てくるという事が分かった。
●昼のまとめ
1時間後、皆は昼の状態のこの収容施設の情報をもって合流する。
「500mあたりで何かが接近すると警備段階が上がるようだ。パトロールのパターンは犬型キメラと人間だ。しかし普通の人間か強化人間かは判別つかない」
「門はゴーレムが出入りできるほど大きい。またそれ以外の門は確認されていない」
と、情報をあつめる。
「警備段階が上がるという発見は重要だな」
イサギが情報端末にメモをとった事を話し、無口になる。
「大型の乗り物が入るほどの門だと、キメラ以外でワームが居てもおかしくはないですね」
「今度は夜ですね。それで、どれだけの警備が有るか分かるかも」
と、傭兵と義勇軍は夜に向けて動き出す。
●夜の偵察
各班は夜の偵察に向かった。
かなりの数のサーチライトが周りを照らしている。門の方が沢山有ると言うこと以外は均等にそのサーチライトが設置されていると分かる。サーチライトの近くに見張り台がある可能性は高い。
「あ‥‥みてみろ」
Anbarが双眼鏡で何か影を見つけた。
「あれは、ネコ科のキメラだな」
どうも、警備は昼と夜ではパトロールの種類が違うらしい。
「となると‥‥夜目を持っている警備で固められているのですね‥‥」
500mまでは近づけないため、遠くからどういう状態で警備がされているかだけになった。暗視スコープを持っている人は少ない。
偵察に出た傭兵とリスター達は、各班の判断で、夜と昼の警備の違いを記録してベースキャンプに戻っていった。
ただ、丸一日動いたため、疲労でからだが重い。また覚醒状態がずっと続いていたため、ほとんどの練力は使い果たしていた。
●偵察が終わり
傭兵とリスター達が持ってきた情報をリズはジョセフとまとめている。そして鹿嶋も手伝ってくれている。
「ありがとう悠さん」
「お礼なんて要りませんよ。やりたいからやっています」
と、リズと鹿嶋が作業をしているとき雰囲気が緊張時とちがっていた。
「おーい、3人とも。コーヒー入れてきました」
霞とセージがやってくる。
「ありがとうございます」
書類をおいて、コーヒーを受け取るまとめをしていた3人。セージや霞はリズに「このあとどうする?」と訊ねる。リズはよく吟味して、解放作戦を練ると答えた。そのあと、霞もセージも書類手伝いに加わった。
無月はリスターと向かい合って、今後傭兵はどう動くのか少し張り詰めた状態になっていた。喧嘩にまでは発生しそうにはないが、気まずい空気なのは確かであった。
収容所の情報は手に入った。出来れば早いうちに、施設から人々を助け出そうとリズは思った。