●リプレイ本文
●出会い様々
ローデン事務所をあけると、フィアナ・ローデン(gz0020)とローデン事務所のスタッフは慌ただしく事務所を動いていた。手伝ってくれる人をただ待つだけでなく、やることはいっぱいある。今後の行動の準備もそれに含まれていた。
「あ、おはようございます!」
フィアナが入ってきたあなたに気づく。ぱたぱたと駆け寄ってはお辞儀をして出迎えてくれた。
「‥‥状況はおおよそわかりました‥‥裏方は任せてください‥‥」
「『困った時はお互い様』ん? ナンか違うな‥‥まあとにかくあたし達の友情パゥワーにお任せあれ〜♪」
「頼りにしてますよ、ベル君、コハル」
ベル(
ga0924)はフィアナに会釈してから恋人のマフラーを大事にまとめてからコートを脱ぎ、会議室に向かう。葵 コハル(
ga3897)はやる気満々だ。彼女はフィアナに軽く抱きついて二言三言会話してからそのまま会議室に向かった。
「お久しぶりですね」
「こちらこそよろしくお願いします」
Laura(
ga4643)は微笑みフィアナと握手を交わす。
「‥‥フィアナさんから頼りにされるなんて光栄ね。この頃殺伐とした仕事ばかりで本業である音楽家の方が疎かになっていたから、ありがたく協力させてもらうわ。良いライブにしましょうね」
「そういえば、フィアナさんのライヴのお手伝いも久しぶりですね。楽しみにしているファンの皆さんの為にも必ず成功させましょうね」
小鳥遊神楽(
ga3319)と乾 幸香(
ga8460)の2人組がフィアナとの再会を懐かしみ、
「本当にお久しぶり。元気にしてた? そしてありがとう」
2人はフィアナとがっちり握手を交わしてから、会議室に向かった。
「フィアナ、メール受け取ったよ。水臭いなぁ? フィアナのお願いなら、世界の裏側からでも駆けつけるのにな」
「マイア、来てくれてありがとう!」
「任せてよ。事務所のスタッフさん達とは、知らない仲じゃないし。ライヴまで日がないけど、必ず最高に仕上げてみせるよ」
「うん」
皐月・B・マイア(
ga5514)がフィアナとの再会を喜び、フィアナも頼もしい親友が来てくれたことに喜んだ。
「じゃ、会議室で待ってるから」
「うん」
ラフィール・紫雲(
gc0741)がやってくる。
「初めまして、ラフィール・紫雲ともうします〜。今日は事務所でトラブルがあったと聞いてお手伝いにきました〜」
「初めまして、フィアナ・ローデンです。ありがとうございます」
初対面の2人は丁寧なお辞儀になって挨拶する。
「緊急事態なので本当に困ってしまって、でも、本当にありがとうございます」
「はい、いいライヴにできるようにがんばりますね〜。もう誰か来ているのでしょうか?」
「はい、たくさん」
「では、あとで」
ぺこりとお辞儀してからラフィールが会議室へ向かった。
ローデン事務所の入り口で青年が意を決したような表情をするが、とたんにため息をつく。
「謝るしか方法はないな‥‥とほほ」
最後は風雪 時雨(
gb3678)だった。勇気を出してドアを開ける。
「‥‥時雨‥‥」
フィアナが時雨に気づくと、不安と不満の表情になり‥‥ぷいっとそっぽを向いた。
「あの‥‥お久しぶり」
「‥‥」
時雨が声をかけてもフィアナは返事をしない。会議室から顔をのぞかせる、コハルやベル、マイアはその気まずい雰囲気に様々な感情で
(「ああ、修羅場ってるよ‥‥。あきらめるな! 時雨!」)
(「‥‥やっぱり怒ってるのですね‥‥」)
(「フィアナ‥‥」)
と、いう感じに。
「最近連絡をとることが出来ず、すみませんでした。ごめんなさい」
時雨が深々と頭を下げて謝った。
「もう、あたしのことみてくれる? 連絡もくれる? と、デートも写真とったり‥‥いろいろ!」
「はい‥‥必ず」
「なら、許します♪」
フィアナはえっへんと胸を張って言った。時雨は安堵で頭をかく。
会議室から状況を見ていた3人組はひとまず安堵のため息をついた。
●打ち合わせ
会議室に9人はいる。事務所はまだ大きくないために窮屈になっている。
「あなたたちを呼んだのは、今回事務所内だけで行う小さなライヴにて参加できないスタッフが出てしまったため、急遽手伝いに来てもらいました。どうかお願いします」
「まかせて〜!」
「はい〜」
傭兵達はフィアナの協力を惜しまないと頷いたり返事で協力すると答えたりした。
「では、ギターとドラムの代役を決めないといけませんね」
「私がギターをしよう」
「あたしがギターを‥‥」
マイアと神楽が手を挙げた。
「あら‥‥」
「2人がやってくれるのですね。何度も一緒にセッションしてくれていたから助かるよ」
フィアナはにこりと笑う。
「そうだな。私はアコースティック系を担当すれば、小鳥遊殿は‥‥」
「エレキギターを使う曲に集中すればいいよね。OK。そうしていこう」
ギター担当の方はまとまったようだ。
「問題はドラムですが」
「初体験だけどやるよ」
「一通りの楽器の演奏はできるのですが」
コハルとラフィールが手を挙げると、フィアナが難しい顔をした。
「ドラムが初めてだと、厳しいかな」
「え? まだ時間あるからみっちり‥‥」
「アイドルだからわかると思うけど、数日の練習でうまくなれるものじゃないと思う。歌だって、ダンスだってそうでしょ?」
「あ‥‥」
フィアナに言われてコハルは黙ってしまった。気持ちが先走ってもうまくはならない。能力者の器用さやタフさであれば長時間のドラムセッションはできるだろう。しかし、『小さいライヴ』でも『お客がいる』ということを考えると、一定レベルの実力がないと無理なのだ。
「ラフィールさんには、どれぐらいできるか見せていただきます」
「はい」
(「でも、がんばってドラムを覚えよう」)
コハルはそう思った。
いったん事務所に設置されているレコーディングスタジオに入る。そこで、ラフィールがドラムをたたく。フィアナとスタッフはそれを真剣に聴いていた。
「どうでしょうか〜?」
スタッフとフィアナはしばらく考え話し合った後。
「ドラム、お願いします。しかし、Lauraさんと幸香さんでキーボードにドラム音を入れてください。フォローということで」
スタッフが幸香に頼む。ラフィールがたたいても問題はないのだが、フォローを入れるということで幸香のキーボードが加わった。
「わかりました」
「はい」
何とか、ステージに立つメンバーはそろった。
そのあと、衣装について話し合う。白を基調とした服装で落ち着いた。
●サプライズ
いったん解散と言うことで傭兵達は自宅に戻る。そこで、コハルが拳を握りしめて、
「時雨!」
「はい?!」
と、時雨を呼び止めた。
「5日は何の日?」
コハルは時雨を見る。
「フィアナの誕生日ですね。今日は‥‥まだプレゼントは渡してないのですが‥‥って」
「そうそう。忘れてないと言うことは大丈夫だ。あと、渡すときはムードある方がいいよね」
時雨が即答したことでコハルは腕を組み、うんうんと頷く。時雨は「しまった」と思ったらしい。
「誕生日‥‥」
Lauraが考える。
「‥‥サプライズバースデーというのはどうでしょう?」
「‥‥いい、アイデアです‥‥」
「‥‥賛成よ。フィアナさんの驚く顔がちょっと楽しみね」
「スタッフの方にも連絡しよう」
「なるほど〜」
8人はスタッフを一人呼び出し、このことを伝えると、
「いいよ。黙っておくからそっちもばれないように動いてね」
と二つ返事でOKがでた。しかし、ステージではろうそく(火)やクラッカーなどは厳禁と言うところも打ち合わせておいた。
「ケーキはあたしが作ろう!」
サプライズパーティを楽しくするべくコハルが気合いを入れていた。
●練習とその合間に
かなり密な時間、セッションの練習が続く。Lauraと幸香はドラムの音をデータ化してキーボードに設定していく。
「今回はコーラスはいらないんだね」
そのぶん、フィアナの歌が重要になる。歌を殺さないために練習を続けるしかない。フィアナの歌は本当に周りの人に勇気をあげたいという思いが込められていた。それを、最高の形で贈る。そのための練習である。怪我を負っているスタッフがドラム担当なのでラフィールを指導していた。
ベルは裏方に回って、プログラムの調整やコハルと一緒に誕生日プレゼントの準備をしている。規模が小さい分、基本的な打ち合わせなどはスタッフがメインで動いているので結構楽だった(問題点が少なかったらしい)。
また、練習はフィアナとするので、サプライズソングの打ち合わせは秘密裏に行わなければならない。Lauraや時雨、コハルなどステージに出ない人がフィアナを呼びだし、その隙に練習する。もしくは、別の貸しスタジオを使って練習した(このとき8人そろっている)。
「さて、ばれないようにうまく音あわせしよう」
マイアが意気込む。神楽と幸香、ラフィールは頷いた。
そして、12日はあっと言う間にくるのであった。
●ライヴ当日
地下のライヴハウス。飲食も可能な小さなパブかバーみたいな感じだ。そこで、フィアナのライヴは行われる。
「久々の雰囲気ね」
「そうですね」
神楽と幸香がステージ横から、ぞくぞく集まっている客を見ている。Lauraが客にパンフレットを渡している。
コハルはショートケーキを完成させ、自分たちが起こす『イベント』に意気込む。事務所で作ろうと思ったが、それだとフィアナにばれてしまうと思い、ライヴハウスの厨房を借りて作ったのだ。
「これでよし! あとはフィアナが驚かせるタイミングはあの計画でいいよね」
こっそり作る練習もしていたのだろう、急ごしらえの感もあるが気持ちはこもっているものだった。
「‥‥こっちは準備OKです‥‥」
ベルがやってくる。
「‥‥今出ると、ケーキの匂いで気づかれますね‥‥あと、鼻にクリームついてます‥‥」
「む、おおっと」
彼に言われてコハルはきれいな布巾でクリームをぬぐった。
「これプレゼントです」
「わあ、ありがとう。大事に使わせてもらうね」
楽屋では、店から戻ってきたLauraが手製のファーカチューシャをフィアナに渡した。バンド組は白を基調とした衣装を着ている。
「では、いきましょう!」
フィアナとバンド担当達はステージに向かう。
『みんな来てくれてありがとう!』
フィアナがステージからの一声でファンが歓声を上げる。
そのまま歌が始まり、落ち着いた歌や明るい歌を歌う。神楽やマイアは慣れたもので、フィアナとうまく連携してギターを弾き、ラフィールのドラムも、Lauraと幸香のキーボードにフォローされながらもうまく演奏する。ピアノとフィアナだけのシーンは静かに客も傭兵達も静かに耳を傾けていた。
そして、8曲終わった後、いったんフィアナはお辞儀をして去ろうとする。そのときに辺りが一面暗くなった。
そこで、ソデからケーキをのせたワゴンとコハル、フィアナにライトが当たる。
「?」
ピアノの前で待機していた幸香が弾きながら歌い出す。それに続いて、傭兵や客が歌い始めた。
♪ただ、あなたの隣にいたかった。
あなたと同じモノを見たかった。
わたしは名もない小鳥だった。
闇の中に閉じこめられ、夢さえ見る事を許されずにいたのに。
あなたはその手を、光を差し伸べてくれた。
何も持たない小鳥は、ただそれにすがり、
ただひたすらに己の生命(いのち)を輝かせた。
あなたがくれた、たった一つの大切な贈り物だから。
だから、あなたにもう一度会いたい。
せめて、この歌が届いて欲しい。
何も持たない、名もない小鳥のただ一つのお返しとして♪
「「ハッピバースデー フィアナ!」」
歓声と拍手が鳴り響いた。
「みなさんありがとう!」
感激のあまりフィアナは目を潤ませていたのであった。
●打ち上げ
アンコールも終え、ライヴは成功した。軽い打ち上げの中で、フィアナは余韻に浸っている。助っ人の8人もフィアナが喜んでいることに、達成感に満足する。
「みんな本当にありがとう」
フィアナが8人に握手とともにお礼を言った。
「誕生日おめでとうフィアナ。次の一年が、フィアナにとってより良い一年だといいね。そして、そうなる為の協力は、惜しまないよ」
「マイア‥‥」
マイアが嬉しそうにフィアナを祝う。
「ハッピバースデー、フィアナ。これプレゼント!」
コハルがフィアナに幸運のメダルを渡す。
「また、危険な場所に行くだろうから、そのお守り」
「ありがとう、コハル!」
歓談はまだまだ続き、神楽は
「フィアナさんとステージを共にするのはやっぱり楽しいわ」
「ありがとう」
「フィアナさんさえ良ければ、あたしたちを呼んでちょうだいね」
「うん、わかった」
「約束よ」
「約束」
また、一緒にセッションすることの約束をし、
「フィアナさんのレパートリーの一つに加えてもらえれば嬉しいですね」
「歌ありがとう。歌っていくね」
幸香は【I SING ONLY FOR YOU】のことでフィアナと話す。
「はい、歌っていくね。ありがとう幸香」
時雨は指輪の箱を取り出し、フィアナに渡す。
「前は渡すことができませんでしたが、今なら渡せます。おめでとうフィアナ」
「ありがとう、時雨」
フィアナは微笑む。
「ヒューヒュー。ここは若い人だけになってと‥‥」
コハルはニヒヒと笑いながら、時雨とフィアナだけにしようと皆と一緒に出ようとする。
「もう! コハルったら!」
皆から笑いが漏れる。
今回は楽しいライヴであり楽しい誕生パーティであった。