●リプレイ本文
●シンプルな答えだ。
ラッコが居ると言われている海岸。
寂れた港町に8人が居た。
「相手がラッコ‥‥さん。ですか。なかなか厄介な相手になりそうです」
大曽根櫻(
ga0005)が苦笑する。
「ラッコは可愛いです。しかし、キメラと分かれば私は容赦しません!」
蒼羅 玲(
ga1092)がしっかり袴姿で大曽根とともに女剣士風に立っていた。サムライインアメリカとか映画が出来そうだ。彼女の足下には、網があった。釣りに使うときの網より若干大きめの。
「とはいうものの、彼らはれっきとした狩猟動物だ。可愛いことは可愛いだろう。しかし、学生の頃に見たあのどう猛さは忘れることは出来ない」
メディウス・ボレアリス(
ga0564)が煙草をくわえて海を見ていた。
潮風が冷たい。
「うう、サンタ服に防寒作用ないのですね。うう」
櫻はぶるる、と身を震わせた。なので今は袴姿のままだ。
「酒がのめればいいのだが。確か未成年だったな」
「え、ええ」
ションボリしている櫻。
「いうかぁ、バグアって手当たり次第、キメラ化しているんだねぇ。何考えてんのかわからないな」
フェブ・ル・アール(
ga0655)が武器を弄っていた。
「そーです! そーです! でもでも、脂肪があるって言うラッコ! これは絶対解剖したいです!」
と、男物のコートを着て袖から手が出ていないアケイディア・12(
ga5474)が研究心を燃え上がらせている。
「どーして、女物がないのですかあのショップ!」
「ピーコートなかったか?」
メディウスがさらりと言う。
「はう!」
女性用のコートがあることに気が付かなかったようだ。
「どれだけ可愛いのかが問題だよ」
かまくら王子こと内藤新(
ga3460)が言った。彼が今回ボートを運転することになっていので、ボートの調整をしているところだ。彼は、アケイディアの格好に萌えていそうな感じはするが、それはさておき。
「付かず離れずで、戦っていくだよ」
真面目に自分の仕事をすると心を決めていた。海の男になるのだから。ああ、これが男のロマン。
「そんなこと我には関係ないな。其処まで人間できていない」
「そですよ! 解剖したいです!」
女科学者2名は平然としていた。
今回の作戦は相手を個別撃破していくことらしい。内藤が8の字で船を動かし、攪乱させ、近づいたやつを網で甲板に引き上げて叩く等々。
そして、静かに怒気を抑えているのは、鈴葉・シロウ(
ga4772)である。
「ラッコキメラ諸君、君たちは私を怒らせた。一番可愛いのは、シロクマですよ」と。
無表情の少女、アリス(
ga1649)も寒い潮風に、目を細めている。
そして、各自準備して、船に乗り込む。
「一寸小さいな。しかたないか」
壊れなきゃ良いなと不安があった。
それでも、船は進んでいった。
●強敵
双眼鏡であたりを見る。生命の気配はそこかしこにあるし、かなり遠くに鯨が汐を吹いているのも見ることが出来た。もし、これが観光なら「おお!」と感動するのだろうが、いまはそれどころではない。
「む。一時側にいる」
内藤が見つけた。
見た目は本当にラッコで、双眼鏡では区別は付かない。しかし、この地域のラッコは居なくなったと聞いている。確実にラッコキメラだろう。
ボートのスピードを緩めて警戒する。大曽根以外は覚醒する。
しかし、いきなりラッコは姿を消した。海中に潜ったのだ!
「何!」
向こうは既に気が付いていた!?
「何という野生の勘だ!」
「潜ったから、下に気を付けてですよ!」
アリスが銃を構え、大曽根もまず蛍火を構える。蒼羅はショットガン20をもちメディウスはエネルギーガンを構え警戒する。
船底から不気味な金属音。
「やばい! かこまれただよ!」
内藤が焦る。
石で金属を叩く音がする。そして非常に揺れる。
「うう、萌える前に酔いそうだ」
全員がそう言う。
下を確認するため、鈴葉が身を乗り出す。息継ぎのためにか顔をだした、ラッコと目があった。
「更に私を怒らせた!」
シロクマの彼は、そのラッコをヴィアで突こうとするも、逃げられる。何とか当てることは出来たが致命傷ではない。
「素早いな!」
「なら、私が!」
フェブが、別のラッコに武器を向け‥‥、幸福な顔になる。
目と目が合って‥‥その愛らしさは、殺人モノであった。
「きゃー! きゃー! かわいいい! かわいいにゃー!」
もう、叫んで攻撃できるチャンスを逃していた。
「何、萌えて悶えているのです! ここは私が!」
蒼羅がショットガンで、近くに現れたラッコを粉砕する。
「ショットガンつええだよ」
内藤が驚く。
大曽根が、蛍火で突こうとするが、まだ覚醒していなかったため、大事な一撃を赤い壁に遮られた。
「なら!」
すぐに覚醒し、突き直し、ダメージを与える。海水を浴びて、寒気が走る。
メディウスも我もと、自分目の前に顔を出してきたつぶらな瞳に、エネルギーガンを構えるが‥‥。ラッコの顔を見たとたん、全身に電撃が走った。そして、彼女は膝をつく。
「そ、そんな、こんなに可愛いなんて、反則だろ! なぜ我が! くそおお!」
エネルギーガンを持つ手が震えて、打てなかった。
「一度離脱するだよっ!」
内藤は、目の前のラッコを無視してスピードを上げる。鈍い音はしたが気にしていられない。アケイディアは超機械γで、攻撃しようとするが‥‥、
「かわいい、かわいいの! だめー! 攻撃できないですよう!」
なんと、「可愛いキメラなんて関係ない」と豪語していた、2人が、攻撃できない!
「‥‥威嚇でなんとかするしかないね」
アリスがハンドガンで距離を取るために打つが、ラッコは上手く海に潜ってかわす。
「っつ」
ある程度距離を取ったとおもいきや、またすぐに追いつくラッコーズ。
内藤はプロ顔負けの操縦で、ラッコの船破壊行動をかわして動く。
2匹が自ら上がってきて、アリスに襲いかかる!
「くっ!」
爪が彼女をとらえた。
しかし、彼女がロエテシアで反撃してダメージを与える。そこにすぐに気を取り直した、フェブが蛍火で斬りつけ、一匹を倒した。しかし、その反動でラッコの死体が落ちる。
「あ、落ちた」
蒼羅は蛍火に持ち替えて、もう一匹に攻撃し、ある程度怪我を負わせる。
アケイディアは、またラッコの顔を見て、悶えて動けないが、冷や汗をメディウスは理性で押さえ込み、エネルギーガンを撃つ!
「こ、こんどこそおお!」
クリーンヒットし、ラッコを仕留めた。
「なんとか、一匹‥‥」
しかし、自分に不覚を取ったことでショックは隠しきれない。
「はぁ!」
大曽根も、別のラッコにダメージを与える。
そして、内藤がまた距離を取って船を、ラッコキメラの群から離れる。アリスがハンドガンの射撃で、上手く距離が取れてきた。そこで、1匹はアリスが仕留める。
「では、ここから‥‥です」
追いかけてきたラッコに、急所突きでとどめを刺す大曽根。
さらに、鈴葉がまだラッコキメラに魅了されているアケイディアをみて‥‥、
「‥‥ちょっと失礼‥‥」
クマの顔のまんまの鈴葉が、アケイディアの肩をつかみ、顔を近づけ‥‥、キスをしようとしていた!
「何をしようとしているですか!」
「馬鹿なことをするなぁ!」
ラッコに嫉妬していたシロクマ男は、女性陣に思い切りなぐられ‥‥、海に落ちた。
それの直後にアケイディアが我に返り、ラッコに向かって超機械γを掲げる!
「は! これでどうでーす!」
やっと、冷静さを取り戻したアケイディアが超機械γでとどめを刺した。
「で、クマさんはなぜ海?」
状況を把握していない、彼女であった。
「海が好きなんだよ」
フェブが答えた。
●解剖したいけど
アケイディアの要望で船を止める内藤。剥製を作りたいためにラッコを回収するのだが。
しかし、蒼羅のショットガンの威力は驚異的だった。ラッコは肉片となっている。血のにおいを嗅ぎ付けたサメなどが来そうなので、あまり長居は出来ないだろう。
「しかし、かわいかったなぁ」
と、まだラッコキメラに魅了されているフェブ。思い出して萌えているようだ。
で、まだ浮かんでいるクマ。誰も助けない。
「破廉恥この上ないです!」
大曽根は怒る。
「サメの餌になるがよい‥‥」
殺気も含む、メディの声。
「まって! ちゃんと失礼と断っていますけど!」
「それでもだめです!」
「だめだ」
女性陣の怖い声。
シロクマは恐怖した。
「えー、助けなくても良いのかな? えっと‥‥いいのね?」
と、一応聞いておきたい内藤だが、女性陣の目が怖い。
「では、もどるだよ〜」
と、彼を放置して去っていく。
「ま、まってください! まってー! ご、ごめんなさいー!」
彼が救い出されたのは、10分ぐらい後である。しかし、ひも付き浮き輪を渡されただけでボートに引きずられる様な形で。
「ちょっと、頭ひやしましょうね?」
と、蒼羅が笑顔でしかし、怒気を込めた声で彼に言った。
ラッコの剥製を作りたかったのだが、流石にいろいろな攻撃で痛めつけたため、ほとんど形状を止めていない。諦めるしかなかった。
「うーん、ざんねんですー」
ホットココアをのむアケイディア。
風邪気味の大曽根は毛布にくるまって暖を取っている。
「へーちょ!」
大曽根のくしゃみ。
「大丈夫ですか?」
蒼羅が暖かいお茶を大曽根に渡す。
メディはウォッカを飲む。何かやりきれない思いを飲み込むかのように。今の彼女に関わると偉い目に遭いそうなので、あえて何も話しかけないでいた。
クマのほうは、別の所で寝込んでいた。極寒の海はきつい。
「いやー、全員海に戦闘中に落ちないで良かっただよ」
内藤は安堵した。約一名は数に数えない。
「あ、内藤のおかげだ。感謝する」
アリスは、彼にそう言う。
「ああ、これがおらの任務だからだよ」
と、にこりと笑う王子。
アリスは、このやり取りだけで、少し、少しだが笑えた気がした。
夕日を背景にして‥‥、高速艇がこっちに来る。
それを眺める8人だった。
フェブとアケイディアは、今日の戦いを熱く語っていた
「しかし、本当に恐ろしかった、ラッコキメラ‥‥あなどれにゃいよ」
「ですよー!」
「また、第二第三の萌えキメラが現れないとは限らないのだー!」
「そのために、ひび、たたかうですよー」
「えいえいおー!」
戦いが終わっても、ハイテンションの2人あった。