タイトル:【コミ】修羅場の後マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/16 12:58

●オープニング本文


 エスティヴィア(gz0070)はドリンク剤を飲みながら必死に机に向かっていた。
「し、しめきり〜!!」
 新作は恋愛ものにすると決めていたものの、良いモデルがいなかった。「此を落とすわけにはいかない! 絶対に」
 と、己との戦いに勝ち、何とか書き上げて、修羅場を乗り越えて、何とか原稿を書き上げた。
 しかしその反動は、彼女は入稿後‥‥、ふらついていた。
「う、コアードリンク剤余って‥‥」
「所長ここ‥‥に‥‥って、所長!」
 エスティヴィアが倒れる。慌てて抱きかかえるコアーは慌ててしまう。
「過労ですな」
 地元の医者に診て貰っての診断。仕事や原稿と多忙を極めていた彼女は今になって疲労が祟ったのである。1週間ぐらいは寝込むようである。
「うーん‥‥うーん」
「もう大丈夫ですか? まったくもう‥‥」
 溜息をついているコアー。
「にくくいたい、にくー」
「精が付く物が良いですよね‥‥はぁ。でも、色々しなくちゃ‥‥」
 仕事場を見ると又修羅場で汚くなった部屋。掃除はしているのだが、空港跡を使った住居兼研究所を一人で掃除するのは不可能に近い。
「誰かに頼むしかないですね」
 コアーは知り合いに、『エスティヴィアが倒れたので看病と、ラボの掃除の手伝いをお願いします』と打つのであった。

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
秋月 祐介(ga6378
29歳・♂・ER
アキト=柿崎(ga7330
24歳・♂・SN
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC

●リプレイ本文

●集合
 ラスト・ホープ広場。一度はここで待ち合わせと言う事になっていた。
「エスティヴィアさんが倒れたって聞きましたけど、大丈夫なんですか?」
 アキト=柿崎(ga7330)がコアーにあってすぐ出たのが、エスティヴィアの心配であった。
「え、ま、まあ、今はおとなしく寝てますけど‥‥かなりばててるみたいです」
「‥‥そうですか。ここは、見舞いに行かないと行けませんね」
 コアーの言葉で、柿崎は安堵の溜息を吐く。
「けひゃひゃひゃひゃ! ここは我が輩の用意したサプリメントの出番だね〜!」
 ドクター・ウェスト(ga0241)が怪しい笑い声に怪しい鞄を持ってやって来た。
「色々世話になっているし、少し気になりますね。見舞いとコアーさんが頼んでいる掃除に行きましょうか」
 秋月 祐介(ga6378)が眼鏡をくいっとあげて、やって来る。
「原稿落としていないだけでもよしとするか」
 水円・一(gb0495)がブツブツ何か言っていた。
 しかし、この現状を見るとコアーは困っていた。
「あのー男性陣だけ‥‥ですか?」
「そういえば、そうだね〜」
 ドクターは不思議でもないんじゃないか、と言う顔をしているが、
「!! そういえば! どうしましょ? 女性の家に男性ばかり‥‥」
 柿崎は現状に驚き、どうするか困る。
「せ、洗濯とかは私、できますけど! ほとんどデスク掃除だけに集中‥‥」
 コアーがワタワタと説明するところに、
「‥‥ちょっと。コアーさんかしら?」
 黒髪のショートヘア、着物姿の女性が声をかけてきた。
「はい、そうです」
「‥‥、ちょっと‥‥。人づてに話を聞いて来てみれば、女性の看病なのに男性ばかりじゃないの」
 女性は思いっきり溜息をつく。
 着物美人の名は南 星華(gc4044)。本当に人伝で今回の話を聞いてやって来たようだ。
「自然な流れか、親しい人が自分らと言う事から来ると思いますが‥‥いつものメンツと言う事です」
 秋月が腕を組んで状況を考える。ただ、その雰囲気はいつものような覇気(?)がない。
 やって来ている動機が、不純でもなく親切心が強いためやって来た事と、秋月に至っては、彼女の原稿進行具合を考慮するとあり得ると予想していたのだろう。
「私もほとんどクリーニングで済ませているけど‥‥やり方などはなんとか弟にメモ貰っているから、そちらの家にある洗濯機の使い方を教えてくれれば何とかなるわ」
「女性の方がおられるだけでたすかります」
 柿崎は安堵する。
「では、思いっきりラボの掃除と看病と行こうではないか〜!」
「ですね」
「そうだな」
 男性陣はエスティがどうなっているか見る為に空港に向かった。
「だ、大丈夫‥‥ですよね?」
 少し不安なコアーが後からついていく。

●廃空港
 寂れた廃空港を住居兼研究室にしているエスティヴィア(gz0070)は、私室でうなされていた。
「げ、原稿真っ白! 今日締め切り!」
 悪夢を見て飛び起き、原稿のコピーを確認しては安堵した。
「‥‥ゆ‥‥夢‥‥」
 嫌な汗を拭って落ち着かせ、サイドテーブルにあるスポーツドリンクを少しだけ飲んだ。
 外の方で、高速移動艇の着陸音がしたので、コアーが戻ってきたのかと彼女は、又横になる。
 コアー以外の足音も近づいてきているので彼女は「?」と思う。
「誰か呼んできたのかしら?」
 書斎兼研究室の広間の方から聞き覚えのある声がする。
『此は相変わらず凄いな』
『コーラの空き缶にピザの箱が一杯だね〜。栄養ドリンクのビンも転がってるね〜』
『埃はここの環境上多いからしっかり拭かないと駄目かも知れませんね』
『風呂場などはどこ?』
『その角突き当たりから‥‥です』
 等々聞こえていた。
『そうだ、エスティヴィア君に会ってから掃除に取りかかることにしよう』
 そして、私室のドアがノックされる。
「どうぞ」
 エスティヴィアが応答すると、どやどやと秋月、柿崎、水円、ドクターと入ってきた。
「大丈夫ですか?!」
 柿崎は心配で仕方なく、走るようにエスティに近寄る。
「落ち着きたまえ。アキト君。我が輩が診察してみるから」
「いや、俺と南以外は一応診断できる技術は得ているだろ」
「しかーし、我が輩は元々医学の道を進んでいるのだよ〜」
 ドクターは医学の道を学んでいるため、文学志向の秋月や機械技術向けの柿崎とは違うというところだ。
「大丈夫ですか? エスティさん」
 秋月が尋ねると、「‥‥うーん、まだ体が重いかな‥‥」とエスティは答える。
「脈なども問題はないね。しっかり安静にすれば治るだろうし、コミレザには大丈夫だと思うね〜」
 うんうんと、ドクターは診断した。
「サプリメントも調合したから飲んでおくように。よく効くと思うよ〜」
 と、怪しい鞄の中から変わった色の粉末や、いかにも怪しそうに見える錠剤、カプセルとあった。
「コレはビタミン、コレは鉄分、コレは‥‥」
 と、こぶし大ぐらいの大きなカプセルがある。
「「此は何ですか?」」
 全員がそう聞きたくなる代物だ。
「そしてコレが最強(狂?)のサプリメントだ〜。中身はソコのヤツをちゃんと全部が効くように調合しているものだがね〜」
 自信作とばかりに持っては見せる。
「それは、飲める大きさじゃないな」
「!?」
「薬という物は飲みやすくするために錠剤やカプセルがあるはず。物が大きくなると、口に入らなければそれは‥‥」
「しまったー! 競合しないように色々入れていた結果大きくなりすぎた〜」
 冷静な水円のツッコミに、ドクターは口から魂が抜けていた。
「ありがとう、まともなのがあれば飲むわぁ」
 苦笑するエスティであった。

●掃除と料理
「えっと、洗濯は南さんと私で‥‥あと、ラボの掃除は先にゴミの分別をお願いします」
「分かりました」
 コアーの指揮で、男性陣はデスク周辺の掃除に取りかかる。
 可燃物や不燃物を分けて、一端外に放り出す。すると意外に広く感じる研究所の掃き掃除をするのだが、そこで、日本人の柿崎と秋月は新聞紙をぬらしてばらまいてから掃いていく。そうすることで元々埃っぽい場所でもある程度埃の飛散を防ぐ事が出来るのだ。
「やるからには、とことんやらないと」
 秋月は、せっせと掃いていき、また拭き掃除にも積極的に動いていた。
「そんなに積極的に掃除するとは思いませんでした」
 柿崎が秋月の姿に感心して言うと、秋月は、
「今は、体を動かしていた方がいいんです」
 秋月はそう答えてそのまま掃除に没頭する。
 ほっかむり姿の水円は、キッチンに立っていた。
「適当にあっさりした物がいいだろうな」
 エスティに何を食いたいかと尋ねると、「肉――」と言い始め、ドクターや柿崎らに「病人がいきなりそんな精の付く物を食べると、余計に壊す」と言われるというお約束な状態だった。
「スプーンやフォークで大丈夫なやつを」
 古びた手帳からレシピを調べ、『夏野菜のピラフ』、『豚しゃぶのサラダ』と決めた。
「冷蔵庫は空っぽか」
 彼はコアーを呼んで、買い出しに出かけないかという。
「あ、まってください‥‥。このボタンをおして‥‥」
「ふむ、なるほどね」
 コアーは南に洗濯機の使用方法を教えているところだった。しばらくして洗濯機の回る音がする。回している最中で若干時間が取れた様子なので、水円と南、コアーは研究所にあるエスティの車で買い出しに出かけることになった。

●愚痴
「此はエスティさんに訊かないと行けませんね」
 と、秋月が持っているのは、ネームノートの束だった。捨てるべきなのかどうかを尋ねに、私室に向かう。
「どうしたの?」
 ノックをして入った秋月に、エスティは訊く。
「いや、この束は捨ててもいい物かと」
「‥‥それは、其処の机に置いてて」
 彼女は私室にある綺麗な机を指さす。
「わかりました」
 秋月はそれを置いてかた、少し溜息をついた。
「?」
 エスティは調子が悪そうねと秋月に言う。
「え、そう‥‥みえますか?」
「何かあったの?」
「‥‥ええ、実は‥‥」
 彼は、今自分の機体に乗ることを畏れていると言う話をぽつりぽつりと話し始めた。はっと我に返る秋月は、
「‥‥すみません。まだ自分の心の整理がついていないのにこんな事を」
 秋月は苦笑をする。
「自分の命を大事にするのは大事な事よぉ。まあ、今の私が言っても説得力無いけど。彼女のために生きなさい!」
「ええ‥‥そこで、そう言われると、きついですね」
 また、自嘲ともとれる笑顔になる秋月だった。

●料理と湯浴み
 二時間程度で、ラボはかなり綺麗になり、屋上には溜まっていた洗濯物が干されていた。
「おーすっきり出来ましたね」
「これなら、気持ちよく研究できるという物だね〜」
 水円はてきぱきと、『夏野菜のピラフ』、『豚しゃぶのサラダ』を作り、エスティの元に持って行く。本来なら、コアーの分も作るつもりだったのだが、掃除終了後に街で外食という意見が多かったため、作っていない。
 エスティの反応は、
「うん、おいしい。肉がもう一寸ほしいけど」
「まだいうか」
「にくくいたい、にくー!」
 子供っぽい口調で口癖を言うエスティに、
「甘えるな。食べたら静かに寝てろ」
 水円は軽く手刀で突っ込んだ。

●湯浴み
「ところで、えっと、修羅場‥‥だっけ?」
「だな。この惨状」
 南はエスティが倒れた理由を確認している。
「原稿の修羅場になると、風呂や食事も犠牲にして丸一日原稿を描いている状態なのです」
 秋月が遠い戦場を思い出したかのように言う。
「と、いうことは‥‥風呂にはいっていない‥‥」
 南は思いっきり考え込んだ。
「汗もかいているから、シャワーした方がいいわね」
 南がエスティに向かっていった。
「‥‥え〜」
 エスティは嫌だという顔をする。
「髪や体が汚れてると良くなるものも良くならないわ」
「自分でもできるわよぉ」
「だめだめ、あと、覗いたら斬るからね」
 一応男性陣を睨んでから、エスティをバスルームへ連行する。男性陣は平常心(?)で、エスティの研究所にあるゲームなどで遊ぶ事にした。
 バスルームから聞こえる女性の声とシャワーの音なんか気にしない。そう絶対気にしない。
「だから〜」
「子供みたいなことを言わない!」
「ぎゃー!」
 体力が落ちてるエスティを抑えるのは簡単である。しばらくするとおとなしくなるエスティだが、
「綺麗な髪ね。髪は女の命ですから念入りに手入れしないと、スペシャルトリートメントセットも用意してきたし」
「褒めたって何も出ないわよぉ」
 南はエスティの頭をシャンプーやトリートメントなどを駆使して、ゆっくり優しく洗う。
「それにしても、あなた、もてるのね」
「そんなんじゃないと思うなぁ。教授は恋人いるし。水円にしてもドクターにしても結構世話好きということと、面白いから来たんじゃないかしら?」
 と、南はエスティの好きな人をさりげなく訊いてくるが、「いないわよぉ。単に同人の同志よぉ」とかわしていた。
 綺麗さっぱりになったエスティは疲れがまだ残っているため、綺麗なパジャマでグーグー寝ている。

「さて、晩ご飯は街のレストランで食べようか」
「そうだね〜。エスティヴィア君は、もう寝ているし」
「私は留守番しておきます」
「柿崎? ああ、分かった」
 柿崎を残し、コアーと共に街のレストランへ向かう。
 そして、食事中の会話はというと、
「柿崎は、彼女のことを?」
「どうなのでしょう? まあ、行動からすれば‥‥ですが」
 等と話しながら、話は今度のコミレザはどうなるかなど、ヲタク談義になっていった。

 エスティヴィアが気持ちよく眠っている。柿崎は確認して、隣の部屋で彼女が起きるのを待っている。
「まったく、体が資本なのですから‥‥」
 彼は呟いて、彼女が起きるのを待っていた。

●後日
 看病に来てくれた各人に、エスティからメールが来ていた。
『来てくれてありがと!』
 と、元気に牛乳1000mlを持った写真も添えて。