タイトル:【EL】フィアナ来訪マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/07 13:14

●オープニング本文


 エルドラド。
 新しい国家を作るという目的で、戦乱の中にあった国家であるが、今はそれを乗り越えて存在している。産業や周辺の野良キメラの驚異の様々な問題はあるとしても、安定した生活に鳴ってきているという。しかし、其処に集う市民の娯楽は非常に少ない。ただ、この国を盛り上げようという気持ちは人一倍有るだろうという活気を感じることが出来るだろう。


 その地での情勢が安定しているとことをしる、フィアナ・ローデンは早速エルドラドの広報などとの連絡を取り、幾度もの打ち合わせをして、念願の慰問コンサートを行うことになった。
「これはこの順番で」
「ではよろしくお願いします」
 ステージはエルドラドに出来た屋内劇場から野外集会場の2つ。二日間の滞在にて歌とトークを行うスケジュールとなっている。
 治安がよくなっているとしても、フィアナだけで向かうのは危険であることは変わらない。エルドラドでもフィアナの名声は確り届いているため、諸々の心配があるだろう。
 スタッフ以外の演奏スタッフ、裏方などを傭兵に頼むというのはローデン事務所的に自然な流れであった。

 現地にたどり着いたフィアナは、車で移動する。車窓から覗くとエルドラドの活気を感じ取り、フィアナは俄然やる気を出す。
「みんな、活き活きとしていると思う」
「ですね‥‥。しかし、あまり見ない様にしましょう‥‥。混乱が起こると困りますし」
「そうね‥‥」
 写真が出回っているため、フィアナが来たと知れば人だかりができてお互いが危険な状態になる。フィアナは、こつこつと知名度を上げてきていたのだ。
 エルドラドでは、フィアナのライヴポスターが各所に貼られていることから、民衆の興味はかなりの物だと言う事が分かってくる。

 今まで様々な悲劇があったこの国で、彼女の歌が響くのはもうすぐだ。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
葵 コハル(ga3897
21歳・♀・AA
皐月・B・マイア(ga5514
20歳・♀・FC
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
ヘイル(gc4085
24歳・♂・HD

●リプレイ本文

●集合
 エルドラド入国より数週間前のことだ。出発前のローデン事務所では、チェックや資材運びなどで人の入りが激しい。資材を積んだトラックが空港へと向かっていく。そのなかで、事務所の若干広い応接目に傭兵達は呼ばれた。フィアナ・ローデン(gz0020)が護衛やステージの打ち合わせをしてくれる傭兵達に挨拶がしたいからだ。
「お久しぶり、小鳥遊さんにマイア、コハルさんにベル君、鹿島さん」
「おひさしぶりね、フィアナさん。今回はよろしくね」
 小鳥遊神楽(ga3319)はフィアナと握手をして再会を喜ぶ。
「やっほう! フィアナ。カウントダウンライブ以来だね! 今回も頑張ろうね!」
 葵 コハル(ga3897)は元気よく挨拶する。
「エルドラドか‥‥。何時か、フィアナがここで歌う日が来るかも知れない。そう思ってた」
 皐月・B・マイア(ga5514)は微笑みながらフィアナと握手する。
「うん、やっとだけどね」
「でも、正夢だよね」
 二人は笑う。
「‥‥お久しぶりです‥‥」
 ベル(ga0924)が遠慮気味にフィアナに挨拶する。
「プロモーションビデオ以来だな。エルドラドについては結構知っている。よろしくな」
 鹿島 綾(gb4549)がフィアナと握手する。
 そして、初顔あわせになる2人にフィアナが向いて、
「初めまして、フィアナ・ローデンと申します。今回は護衛とスタッフとしての参加ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします」
 と、握手を求めた。
「白鐘剣一郎だ。主に周辺警護を務めさせて貰う事になるな。よろしく頼む」
 白鐘剣一郎(ga0184)は微笑みながら握手し、
「君がフィアナか。よろしく。君とステージの安全は俺達が守るよ」
 ヘイル(gc4085)もフィアナと握手をする。
 挨拶が済んだ後、大まかなスケジュールをフィアナが説明する。
「大まかな警備について、お話もしたいです。皆さんの案に従いますので。あたしはエルドラドに向かったことがないためによく知らないのです」
「エルドラドも久しぶりだが、大凡のことは分かる」
 白鐘はかの国で幾度か事件に関わっていたようだ。
「俺は自警団について知っている。そっちとの連絡が出来れば嬉しい」
 鹿島は国にある自警団と面識があるようだ。
「では、鹿島さんはスタッフと一緒に、今の内に簡単な打ち合わせをお願いします」
「ここから?」
「はい。あたしの事務所はそう言うコネがないので」
「わかった」
 鹿島は現地の自警団に連絡を取り付ける仕事に取りかかる準備をする。
「OKがでた。詳しくは現地で話すことって事になった」
 鹿島がそう言って戻ってくる。
「ありがとう。では‥‥」
「警護についてだが」
 白鐘とヘイルにどう護衛するかを話合う。もちろん、他の傭兵もフィアナを一人にさせないということや、合い言葉も必要だと話が進んでいく。
 ヘイルの徹底ぶりに、フィアナはふむと頷く。彼女は危険な場所でのライヴを何度もしているため、ヘイルの考えは賛同できる物だった。エルドラド自体レベルはまだ低い部類だ。今でも野良キメラなどがいるし、市民の生活水準自体は低いからだ。
「今更だが、余り余裕の無い中でのイベントだ。念のため会場を含めた外では必ず誰かと一緒に動いて貰えるか? 直衛の鹿島か、スタッフの誰かでも構わない」
「わかりました」
 白鐘の要望にもフィアナは快諾する。
 細かい話も済んだ後に、今度はフィアナにとって大事な話になる。
「さて、あたしたちは」
 コハルと小鳥遊とマイアは、フィアナと一緒にステージに立つ役目だ。
「あたしはキーボードで、マイアと神楽はギターで」
「そう」
「頑張るよ」
 プログラムを二種類組まないと行けないため、音響のスタッフと話し合う。それは楽しく笑顔も零れる和気藹々だが、皆真剣であった。
「この曲を3番目にしてから、トークにはいって、それから」
「でも、それだと此をこう」
「それもアリよね」
 音楽に詳しくない人にはよく分からない会話になるが、雰囲気で楽しそうだと分かる。
「‥‥俺たちは、護衛の方法を詰めて話しましょうか‥‥」
 ベルがそう言うと白鐘達は同意し、別の会議室を借りて事務所スタッフと話合う。
「広場を使う理由は、集まった人達との交流が目的なのです」
「ああ、なるほど。野外ライヴというか交流会か‥‥」
「警護も厳重にしないと。しかし、威嚇しては話にならないから、さりげなくって感じが良いか?」
「そうだな」
 こうして、着々と準備は進み、一行はエルドラドに向かったのだった。

●入国と1日目
 一行は現地の空港に着く。人の流れはそれほど無いが、フィアナが来訪すると知っているファンが各所で集まっているんだろう思った。
「あたし、会議でも言ったけど、エルドラドについてよくわかんないんだよね」
「俺は関わりがあるけど、よい国なってる。電話で話していたら、安定しているっていってるからな。大分前におかしなイベントがあったからな」
 コハルはエルドラドについての知識は『ゾディアックが建国したあと、色々あって独立した国』程度ぐらいしかなく、国の詳細を知らないのだ。鹿島と白鐘以外も同じである。
「お祭りもあるから、そこそこ安定してる。情勢を知った方が良いけど、俺たちの目的はライヴを成功させること、だな」
 鹿島は笑って言った。
 フィアナを囲むように進む一行の前に、人だかりが出来て『歓迎』『いらっしゃい』と旗を掲げていた。
「歓迎されているね〜」
「良い感じです」
 コハルとフィアナはにこにこ笑い、フィアナは人だかりに手を振って挨拶に答えていた。娯楽の極度に少ないこの国では、北米での歌手来訪は大事件でもあるようだ。
「テレビが来てるな」
 ヘイルは報道陣をみては言った。フィアナへの歓迎ぶりに驚くと共に、しっかり依頼をこなさないといけないと心に決める。
 バスに乗り込みホテルに向かう一行は、車窓から活気づいている町並みを見ていた。復興している姿を見るのは、心躍る物があった。
 チェックインをしてから部屋に備え付けてのTVをみると、先ほどのフィアナ来訪のニュースが映っている。歓迎ムード一色のこの国に安心感もあるが、キメラの侵入や過激な行動に出る人物に対抗するため各自武器は持っていた。
(「使わないで済むならいいのだが」)
 それは、誰もが思っている事であった。

 鹿島が自警団と打ち合わせに入り、しばらくしてから「ステージと周辺警備OK」との連絡が入った。 
「ステージに向かいます。いきましょう!」
 フィアナはそう答えると皆は頷いた。
 ステージとなる建物の周りには、人だかりが出来ており、かなりお祭りの雰囲気だった。自警団や先行していた事務所の警備スタッフのお陰で、大きな混乱はないようである。7人の傭兵にしっかり守られたフィアナが楽屋の方へ入っていく。
 白鐘とヘイル、ベルは楽屋の入り口から離れた場所で警備し、入り口には鹿島が立つ。男3人はプレゼントなどに危険物はないかのチェックや不審人物が来てないか目を光らせていた。

 楽屋では最後の打ち合わせをし、そしてリハーサルも終わってから開演まで時間がある。
「はい、フィアナ。今日はローズヒップティーだよ」
「ありがとう、マイア」
「みんなの分もあるから。警備の人には後で、クッキーを差し入れしよう」
「いただきます」
 緊張をお茶で落ち着かせてから、
「エルドラドのみんなに元気と勇気と希望を与える為のコンサートなんだから、あたしも十二分の力を出させて貰うわよ。ずっとみんなの記憶に残る最高のコンサートにしましょう」
「うん!」
 小鳥遊の言葉にフィアナは笑顔で頷く。

 そして開演。
 フィアナの歌にエルドラドの人々は感銘を受けて、聞き入る。
(「今日聴きに来ているみんなの為にも、フィアナさんの本当の魅力のすべてをこのステージで全部引き出してみせるわ」)
(「フィアナ頑張ってるな‥‥私も頑張ろう」)
(「この感じがいいよねぇ!」)
 小鳥遊、マイア、コハルもそれぞれの思いを篭めて演奏をする。フィアナの歌が映えるようにと。今回は希望を届ける明るい歌と静かな歌であった。
 そして、トラブルもなく1日目のライヴは終わった。

 撤収の時、小鳥遊がフィアナにこう言った。
「それにしてもすごいわ。フィアナさん」
「どうして?」
 フィアナは首をかしげる。
「想いを貫いて、こうやってみんなの為にエネルギーを与え続けているんだから。同じステージに立てる事を誇りに思うわ」
「そんな。あたしは、自分が出来る事をしているだけだもの。凄いわけじゃない」
「ううん、尊敬するよ」
 小鳥遊は照れるフィアナに微笑んだ。

 ホテルに戻る。部屋割りではフィアナとマイアが同じ部屋になっている。フィアナと一緒に部屋で休んでいるとき、鹿島が明日の警備について話があるので少し時間いいかと訊かれた。
「マイアは先に寝てて」
「ああ、わかった」
 部屋で一人になったマイアは、フィアナの練習やステージで歌っているところを思い出し、練習をしてみた。
 そこで、ノックがしして彼女は驚く。
「あ、はい!」
 裏声になってドアを開けるとフィアナだった。
「あ、練習邪魔だった?」
「‥‥っ! 聞こえてたの?」
「うん、ちょっとだけ」
「‥‥っ!」
 マイアは恥ずかしすぎて真っ赤になった。
「マイア可愛い♪」
 フィアナはマイアの頭を撫でた。余計に彼女は顔を赤らめてしまった。

●2日目
 一方ホテルの廊下ではマイアとコハルは鹿島が話している。
「たぶん、フィアナは散歩ぐらい、したいと思ってる」
「そうなのか?」
「コミレザでは、結構はしゃぐからね。あの子。綾も今年からデビューだね!」
 コハルがニッコリ笑うと、
「‥‥そうか‥‥コミレザ‥‥か‥‥。フィアナも何か出すのだろうか?」
 鹿島はコミレザという言葉を聞いて、苦笑混じりに遠い目をしていた。
「たしかに、変装して楽しんでいたな。あの人ゴミの中を‥‥。って、元からフィアナはじっとしてる人じゃないし」
「なるほど。フィアナは結構活発な人だな」
 話が本格的にコミレザになって、本題からそれる前に、フィアナが閉じこもる性格じゃないので、先に確認を取るべきという話になった。
 フィアナが居るドアをノックする合い言葉でのチェックをしてから、部屋から「どうぞ」と返事が来た。
「フィアナでかける?」
 鹿島が訊ねた。
「うーん、少しだけ散歩はしたいかな?」
「丁度その話をしていたんだ。で、この変装道具で!」
 コハルがウィッグや色々持ってきている。
「用意良いな」
「では、フィアナさんいってらっしゃい」
 小鳥遊はこちらで待機すると言う事になり、フィアナとコハルは変装し、マイアと鹿島、コハルがフィアナの散歩に付き合う形となる。

 4人は街を歩く。
「色々あったんだね。ここは」
 フィアナは町並みを見てそう呟いた。フィアナ自身ここで何が起こったのかはよく知らないが、大きな悲劇があったことはニュースで知っている。
「しかし、平和になってきてるよ」
 大きな路地だけの一寸した散歩だが、その中で鹿島がエルドラドでの自分が体験した話を語り、フィアナとコハルはそれを聞いていた。フィアナとばれて、人だかりが出来る事も、ごたごたに巻き込まれることもなく、無事に散歩は終わる。
 そのあと、8人で話をしたり、昼食を取ったり、最後の打ち合わせとリハーサルを済ませ時間まで過ごす。
(「用心に越したことはないが、無事に歌っていることは安心だな」)
 白鐘は警備を怠らず、しかし心の中でそう思った。
 それほど、今のエルドラドに危険がないと言う現れだったのだろう。

 野外ステージでも、フィアナは元気に歌った。野外であるため、かなり賑やかな雰囲気になる。フィアナとのトークや交流もあり、更にお祭り感は増していく。鹿島達警備班やマイア達のお陰で、過激なファンが来ても取り押さえられる体制が整っており、安心してステージを成功させる事が出来た。

●打ち上げ
 ベルが沢山のプレゼントのチェックをする。
「‥‥沢山集まったな‥‥」
 やはり、フィアナさんは凄いと彼は思う。
 しかし、彼はフィアナとはあまり一緒には居られないと、常思っていた。
「‥‥マイアさん達と一緒にいた方が良いです‥‥俺は‥‥」
 と、思いが口に零れる。
「‥‥おっと、異常は無し、と‥‥。そろそろ打ち上げかな‥‥」
 何かに遠慮して彼はでない事にした。

「今回、お疲れ様でした! でも家に帰るまでは気を抜かないようにしますね!」
 フィアナが元気よく紙コップを掲げてささやかな打ち上げ。
 緊張を解き、ステージの感想を話す6人だった。

「やっぱり見られたり意識する方が女の子にとっては良いのかカモ? 最近だけど背とか色んなトコロが成長し始めてるんだよね♪ そこで一人の愛しい男性に見つめられているフィアナさんはどうカナ〜?」
 コハルはフィアナに向かって手をわきわきさせつつにじりよる。
「マイア〜助けて〜!」
 フィアナがマイアの陰に隠れる。
「フィアナを苛めるといけないぞ!」
「マイアも一緒に」
「だめだ!」
 と、女の子のじゃれ合いが始まるぐらい賑やかになってきた。
「はいはい、暴れるのは其処まで」
 小鳥遊が止めると、
「「はーい」」
 2人はおとなしくなる。
「そうだ、フィアナさん」
「はい?」
「いつかはあたし達のステージにもフィアナさんをゲストとして招待したいわ。押しも押されぬ歌姫になったフィアナさんには役不足かも知れないけれどね」
「歌姫だなんてそんな。あたしは只の歌が好きな女の子です」
 フィアナは小鳥遊に照れて答えた。
「でも、そのときはお願いしますね」
「ええ」

●帰路
 高速移動艇に乗り込むフィアナを見送るファンが集まっている。
「まだまだ、終わりって感じじゃないな」
「熱狂的ファンから守るのも、俺たちの仕事だ」
 傭兵達はしっかりフィアナを護り、高速移動艇に乗る。
 出発前にフィアナは、
「いい国なってくれると良いよね」
 と、呟いた。
 誰もがそれに頷く。

 こうして、フィアナのエルドラド来訪は無事に終了したのであった。