●リプレイ本文
●悩んでいる
「おもいつかないー」
エスティヴィア(gz0070)は悩んでいた。いまはLHのホテルでのたうち回っていた。
広場では‥‥。
「エスティヴィアさんが困っているって?」
「はい、そうなのです」
アキト=柿崎(
ga7330)は、エスティが困っていると聞いてコアーに急いで合流して、状況を聞いていたようだ。
ドクター・ウェスト(
ga0241)がコアーに話している。
「どういうことで困っているのかね? コアー君」
「キャッチコピーが上手く考えつかないようです」
コアーは溜息をついて、経緯を彼に教えた。
「キャッチコピーで困っているのか。俺たちは営業ではないけどな? まあ、それはエスティヴィアなのだろうが」
水円・一(
gb0495)が顎に手を当てながら考える。
「彼女に会うのは久しぶりですね。力になれるか分かりませんがお手伝いします」
風雪 時雨(
gb3678)もコアーの隣にいる。
「せっかくエミタを使っとるわけじゃから、それに合わせた売り文句がないものかのう」
「あ、エミタを使用して使ったのは切欠に過ぎないのです。いまは映像粒子と家庭用電源のみで動作してます」
ブラドダーム博士(
gc0563)がエスティの開発のことを耳にしたのか、興味でやってきていた。キャメロ(
gc3337)もエスティにあこがれをもってこの話に加わっているようだ。
「? どういうことじゃ」
「どういうことなのかね?」
科学者二名が首をかしげた。
「映像粒子を動かすのにエミタ並みの力で起動しかできないのではと当時の研究成果だったのですが、徐々にエミタから切り離すことも可能と分かりました。それにこれは、SES機関を搭載するほどの出力が必要なわけでもないのです」
つまり、今回の映像機器は、エミタ自体は関わってないという。エミタに介することで、KV兵装並の出力を使う事で映像粒子が防護壁となるという偶然の結果を兵器として利用したのだ。KV兵装(DLA)や設置型のカメレオンシステムが出来ているとしても、生身のDLA防具はない。
「なるほど。今まで映像粒子はエミタにしか反応しなかったと思われたが‥‥ということだったのか」
ふむふむとドクターは理解する。
「まずは、煮詰まっている彼女の息抜きをしてもらって、そこから考えましょう」
アキトの言葉に皆は頷いた。
●ホテルのエスティヴァ
「た、たの‥‥「エスティヴィア君! 元気にしとるかね!」」
キャメロの声は、ドクターの声にかき消される。
「うあ? なんだ、ドクターか」
「そんな言い方はないだろうに。君の悩みを解消しに来たのだよ!」
「はいぃ? コアー! まさか全員に話したの? まだ秘密にしている言うときに!」
エスティはコアーの頬を引っ張った。
「す、すみまぜん! 所長が困っている顔は見たくはないですし! しばらくすればコミレ‥‥いえ‥‥他の仕事が詰まっています‥‥!」
「あー、もうそう言う時期ですか」
コミと言う事場で、ドクター、アキト、時雨、水円は妙な納得しながら、2人を制止させた。
「つまり、早めにいまの本業が片付かないと趣味に力を注げないと言う事か」
やや、あきれ顔になって水円は溜息をついた。
「エスティヴィアさんらしい」
苦笑する顔見知り達。
「こういう人なのか?」
初対面のブラドダームは面食らったというか、少し引くかんじにエスティを見る。
「決まらない物は決まらないのよぉ」
コーヒーを飲みながら、彼女は溜息をついた。
書類の束の隣に原稿用紙があるのを水円は見つけたが、いまはこの落ち込んでいるエスティを何とかするしかない。
流石にホテルの一室に8人は入らないので、一旦ドローム支社にある会議室を借り受けて会議をする方向で今日は解散となるはずだったが、
「ところで、会議は明日と言う事だから、「魔法と少女と肉体言語2」で大戦をしないかね?」
「そのつもりで来ました」
「実は俺もだな」
「ハーブティや紅茶もケーキも用意してます」
ドクターとアキト、水円、時雨達は、息抜きに対しての用意は抜かりなかった。エスティの扱いに慣れている。
「ケーキ? ケーキ食べたいケーキ」
目を輝かせているエスティはまるで子供だった。
しかしはっとなって初対面のブラドダームとキャメロをみたエスティは、2人に、
「はめまして、エスティヴィア・マロッコよ。今回は迷惑かけちゃったけどよろしくね」
と、握手を求めるのだった。
ブラドダームは普通に握手しているが、キャメロだけは、熱い視線と力強い握手で答えていた。
「は、はじめまして! キャ、キャメロと言います! よ、よろしくお願いします!」
エスティは何故こう好意を持たれているのか分からないらしく、くすぐったいみたいである。いつもの知り合いに(「あたしって有名?」)と目で問うと、誰も答えてくれなかった。
●息抜き1
「で、大きな場所というとここしかないのよねぇ」
ローデン事務所に生き抜きでくることになった。ここなら大画面TVもあるし、紅茶も淹れる設備もある。至れり尽くせりな場所だというエスティの考えは間違っていそうだが、すぐに場所を提供してくれる所はここしかない。
「皆さんおまちしてました」
フィアナ・ローデン(gz0020)が出迎えてくれる。
各々、握手を交わし中に入っていくと、すでにゲームのセットは完璧だった。
「流石、ヲタクだね〜」
「アイドルでも趣味は通じる物はあるか」
「アイドルじゃないですよ〜」
時雨が紅茶とハーブティ、ケーキを用意している間(ドクターは、ハーブティは大丈夫なのか不明だったので、無難に紅茶)、エスティとドクター、水円にアキトは画面に集中していた。特にエスティとドクター。ドクターはリハビリとかいって、テクニカルキャラを使用して遊ぶようだ。
『無銘に〜』
「いまだ〜! 『零距離でも、我には此がある!』」
ずばごーん!
エスティのひかりから超必殺技から割り込んでの零距離超必殺技で逆転する。
「うわぁ! まけたー!」
エスティはぐたーと項垂れる。どうも、動きが悪いらしい。
こうしてマッタリ、エスティのストレス発散をしていたのだった。
●会議
先日と打って変わって、キリリとしたエスティが7人と一緒に会議テーブルに座っていた。
「では、会議を始めます」
中央には、例の機械。エスティが持っているリモコンを押すと、パッと画面がでる。
「サイズは15×9×4cm、重さは1.5kg程度。粒子テレビジョンとしての第一号でもあります。ただ、当時エミタでしか反応しなかったと思われた映像粒子ですが、いまは通常に反応し、画面を映し出せます」
機械につなげているパソコンからデータを送ると色々画面が切り替わったり動画も流していたりする。パソコンの外部出力にしているようだ。
「えっと、3Dではないのですか?」
「平面噴射してTV化しているだけで、立体映像じゃないです」
「ほう。ではこのキャッチコピーの方はムリだな。『とびだす!さわれる!ついに未来がやってきた!本物の3D、コレがドローム脅威のメカニズム!!』だったのだがね〜」
ドクターは悔しがった。この映像装置は3Dには対応していない。
「もし3Dになる場合、カメレオンシステムから掘り起こさないといけません」
今回の製品は大画面フレームを必要としない普通のTVと位置づけだと言う。
みんなは、画像が映し出されている平面部分を触ってみるが、何かに接触している感覚はなく、『エミタが介しているからDLA系が出来た』と納得した。
「では、こう言うのはどうでしょう?」
アキトが手を挙げる。
『近年のTVにはない意匠を凝らしたデザインで他の家具との調和もバッチリ!』
『ショルダーバッグに入る34インチTV! 家庭用電源さえ有ればいつでもどこでも大画面が楽しめる!』
『大型TVが据え置きの時代はもう古い?! 今の時代はポータブル大型TVだ!』
と、挙げてみた。
「ほう、いいわねぇ」
エスティは考えて、それを纏められないかどうかを思い描いているようだ。
「3つめが良い感じかも」
と、エスティは久々に爽やかな笑みを浮かべているので、アキトは少しどきりとした。
「わ、私も案があります!」
キャメロが猫の格好をして、手を挙げている。
「ん、どうぞ」
「では失礼して」
人差し指君1号をもち、なにやら、TVショッピング風の劇を始めた。
「今日御紹介するのは、セレブな貴方にぴったりな新世代フラット粒子クリアビジョン『粒子に映る君』です!」
と、勝手に命名している。皆は口では突っ込まずに、心で突っ込んでおく。
「さて、今買うとこちらのテレビ台がセットになって付いてきます」
と、会議室の奥に備え付けられているテレビ台を指している。あと、色々な会議室の設備を指さしては、
「もれなく〜が付いてきます!」
と、深夜のテレビショッピング(日中のも似たり寄ったりだが)の真似をやっている。
「さ、更に今買うと! ‥‥わ、私も付いてきます!」
ここで、真っ赤になって自分を売り出した!
「炊事洗濯、得意じゃないですが、大好きです!」
あまり大声を出せない彼女なりの精一杯のアピールだが‥‥、
「キーボードの隙間の汚れをほじって一日時間を潰す特技を持っています!」
その場は沈黙に包まれた。
「えーっと、キャメロ君」
「は、はい!」
「TVのキャッチコピーの会議なのに、自分の売り込みにしてどうするの」
苦笑するエスティに、キャメロは真っ赤になった。
つまり、エスティを思う気持ちで大脱線?
「かわいそうだけど、没ね」
「はい」
恥ずかしくなって、キャメロは座る。
ブラドダームからも『史上初の映写技術搭載!』という案や水円からも『業界初、粒子スクリーン』もあり、皆であーだこーだと考えると、
『史上初、粒子スクリーンTV』と『今の時代はポータブル大型TVだ!』が有力となった。
「ありがとう。これで宣伝などの方法が思いつくわ」
と、エスティは手伝ってくれた6人に握手をして感謝を表した。
●そのあと
「今回は結構まともにしているのだな」
水円がエスティの頭を軽くなでようとすると、エスティはびくっとなって退く。
「?」
「えっと、なでられるのは苦手なのよぉ」
恥ずかしいらしい。水円はふっと笑う。
「エミタ直接ではなかったのは残念じゃが、新たな活用法を切り開いた功績はほめられてしかるべきじゃ、イッヒッヒ」
ブラドダームは笑いながら去っていく。
「あの、エスティさん」
「アキト?」
「まだ時間がありますから、デートにでも」
アキトはまだ周りに人がいるのにさらりと言った!
「!?」
水円もドクターもそのさりげなさぶりに、一寸もしくは妙に驚いた。一番ショックを受けているのはキャメロだが。
「あら、エスコートしてくれるの?」
「もちろん。数年前のファントム仮面で慣れています」
微笑むエスティとアキトは一緒に一寸別の通りに向かう事となったらしい。
「若いっていいのう! イッヒッヒッ!」
ブラドダームは大笑いする。
「エスティヴィア様っ!!」
恋人との別れを惜しむかのようにさめざめと泣きそうなキャメロが居るが、止める勇気もなくその場で立ち止まってる。
「ふむ、無粋に混じるのはよろしくないな」
「我が輩も少しは驚いたが、興味はないね〜。コアー君がひとりぼっちになってしまったのはかわいそうだけどね〜」
「お相手して頂けるのでしょうか?」
「ま、普通に飯を食うぐらいは、いいか」
「ありがとうございます」
と水円とドクターは、何事もなかったかのように、コアーと去っていく。
そんな中、積極的だったアキトを見て時雨は、
「近頃フィアナと恋人らしいことをしていない‥‥どうしたらいいのだろう?」
と、悩んでいた。頑張れ少年。
後日、この映像装置はLHと北米の一部で販売されることとなった。