タイトル:通せんぼの悪魔の球体マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/24 13:39

●オープニング本文


 日本にある、とある国道。山間部を走り、途中では綺麗な景色を見ることが出来るというツーリングや観光スポットとして人気がある道路でまた地元の重要な交易ルートでもあった。ほとんどが二車線で、酷い道ではない。この戦乱の時代でも整備は確りなされていた。
 しかし、展望できる地点数キロ離れた場所で丸い岩盤が道を阻んでしまったのだ。
 地元の人は朝起きるといつの間にかこうなっていたと話す。

 直径が10m近いその岩盤を撤去する事は当然であるが、重機では全くびくともしない頑丈さであった。
「なんちゅう堅さだ。おらの愛機でもびくともせんとは!」
 地元の建設業でショベルカーの達人である重蔵さんは声をあげる。
 地元の人は撤去方法に必死であり、この岩盤がほぼ‥‥否、完全に丸いことに気づいてなかった。
 反対方向にいる町の人も撤去作業に加わるのだが、そこで、これがとんでもないモノだと気づく。

 重機を丸い岩盤に進めていくと、岩盤は巨大な目開いて、少し宙に浮いたのだ。
「ば、ばけものだああああ!」
 少し宙に浮いた化け物は、くるりと一回転。目から謎の光線を出しては重機とアスファルトの舗装を破壊した。メスの様な切れ味の鋭さで重機は真っ二つ。
 逃げ惑う住民は急いでUPCへ対応を求めるのであった。

「あの目玉の悪魔を倒してくれ!」

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
比企岩十郎(ga4886
30歳・♂・BM
旭(ga6764
26歳・♂・AA
夜狩・夕姫(gb4380
15歳・♀・FC
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
殺(gc0726
26歳・♂・FC
守剣 京助(gc0920
22歳・♂・AA
御鑑 藍(gc1485
20歳・♀・PN

●リプレイ本文

「球が襲って来る? 何処かの秘境のブービートラップっすか?」
 キョトンと首傾げて、夜狩・夕姫(gb4380)が終夜・無月(ga3084)の腕に抱きついている。胸を思いっきり当てているのだが、無月は彼女に好きかってさせている。
「ん‥‥そう思うかい?」
「はい!」
 終夜の問いに、夕姫は元気よく頷いていた。
「このままだと、町の人達が大変ですね〜」
「全くだ。これからよい季節なのに、周りの迷惑を考えろというのだ」
「ですね〜。何とかしてあげないと」
 八尾師 命(gb9785)と殺(gc0726)が、ため息まじりに言葉を交わした。
「幸い一個だからな。複数有って転がってきたらこれこそ厄介だ」
「比企さん、今回はよろしくお願いします」
「おう」
 殺と比企岩十郎(ga4886)は知り合いであり、今回の依頼と連携を取るそうだ。
「先輩よろしくお願いします!」
 相変わらず終夜にくっついている夜狩も無月に向かっていう。
「ん‥‥よろしく」

「では、崖上と崖下から攻撃するという作戦で、あのキメラをどかして見ましょうか」
「です‥‥ね」
 旭(ga6764)が作戦の確認を取る。
「俺は崖下で、銃撃を基本としよう」
 守剣 京助(gc0920)が自分の担当箇所を皆に伝えた。
「無線でやり取りをしたいのですけど」
「‥‥距離から‥‥すると、あまりつかえないかも‥‥知れない」
「ああ、確かにキメラの周りじゃ通信機は使いにくいかもしれません。やはり雑音が入ったりしますからね」
 御鑑 藍(gc1485)の問いに無月と旭は考えてしまう。
 相手がじっとしている間なら電磁波による無線妨害がないという感じだが、いざキメラと遭遇するとラスト・ホープの店で売られている無線機でも、通信可能範囲が狭まったり、聞こえにくくなる等の現象は起こり得る。
「相手に気付かれないように進みましょう」
 その案に皆は頷いた。

 そして、双眼鏡から現場を見る比企は、キメラの大きさをみて、驚く。
「あれ、獣突で転がせるのか?」
 どう見ても、ワーム位有るだろうと思う大きさ。獣突の効果として当たれば押しのけることができるとしても、あの物体相手に物理的に無茶があると思う。
 全員が双眼鏡でみた感想として、『岩じゃなくでかいボーリングの玉』と思うほど大きな球体だった。岩はごつごつしているイメージがあるが、このキメラはそうではない。限りなく球に近い。
「しかし、要望だしな。仕事として何としてでもやらないと。上に行く道ってある?」
 彼らは地元の人に尋ねた。

 上に上っていける道はあるのだが、途中からは獣道を使いながらしか崖上も崖下も進むことは出来ないようだった。地図を頼りに定位置までたどり着く。
『配置OK』
『3.2.1.作戦、スタート』
 崖下班の守剣が貫通弾を使ったスコーピオンをキメラに向かって撃つが、球体は不気味な金属音を響かせ弾く。御鑑は鬼蛍で球体を斬ろうとするが、球体のフォルムは剣筋を逸らして効果は出ない。夜狩は覚醒してコートの前を開ける。そのまま突進し、球体に向かって大鎌「紫苑」をふるう。紫苑の刃が球体キメラを通り抜けると、球体は目を開けて、ぐるりと目から水圧カッターを放出する! 近くに寄っていた御鑑と夜狩は、転がって何とか躱すものの、肩などに掠ってしまう。放たれた先をみると、雑木林の木々や地面が綺麗に斬られていた。
 八尾師は頃合いを見計らう為にキメラの行動を注視している。
「ええい、銃器じゃなだめならウラノスか!」
 守剣がウラノスに持ち替え近接戦に加わる。目を狙おうとしても、高低差や足場の悪さから、上手く飛びつけないため、カッターの発射口である目に一撃を与えられない。
 キメラは、高速回転しながら宙に浮いている。敵を殲滅するかのように水圧カッターを出し続けているのだ。特に、ウラノスで斬ろうとする守剣と紫苑を持つ夜狩を狙っているようだ。
「もしかしたら、装甲が堅い分知覚武器がいいのかもな!」
 守剣はそのままウラノスを降り続けてキメラにダメージと与えていく。
『い‥‥で‥‥すよ〜!』
 気がこちらに向いたことを確信した、八尾師が雑音混じりのトランシーバーで崖上班に奇襲を告げる。届くことを祈って。
 その通信は届き、崖の上から一気に4人が走って球体キメラに突っ込んだ。無月が明鏡止水を上段に振り上げ、球体を両断するつもりで斬ろうとするが、

 ガリリリリッ!

「む‥‥力任せでは‥‥ムリ‥‥ですか」
剣筋が球体に逸らされ不発に終わる。
 旭も
「二撃目です」
『strength』
 OCTAVESが鳴る、蹴り飛ばそうとするが、回転している球体に弾かれる。
「うわっと!」
 幸い、勢いを殺して地面に着地する、終夜と旭。
 その後の殺の攻撃も比企の獣突でも全くびくともしなかった。堅さに加えて、球体のフォルムが攻撃ベクトルを逸らす、もしくは重すぎて効果を発揮できないと分かる。
 二人も宙で回転し着地すると同時に、球体が浮かび上がり、高速で横回転、範囲の水圧カッターで辺りを攻撃した。転がるか、しゃがんでその水圧を躱すが、コンクリートの土砂止めが綺麗に斬られている。
「こんなの当たったら、二枚おろしにされる!」
「躱す方が‥‥無難です‥‥か」
 この攻撃でキメラが転がり落ちれば、崖下班が連携して倒しに向かえるのだが、状況は不利になっている。キメラは敵が多いとわかりずっと、回転して水圧カッターを出し続けていた。
「このままじゃ、倒す前に道路自体がお釈迦になる!」
 堅さを知った崖上班は叫ぶ。
 崖下の班は物理攻撃が上手く伝わってないと分かると、各々知覚武器をもっているなら持ち替え道路のほうへ登ろうとする。しかし、水圧カッターの乱射が激しく、それを躱すことで足止めを喰らう。
「高速回転!」
 高速回転している球体は、次第に浮き始めて更に回転を速めている。カッターは周りの木々を薙ぎ斬り、アスファルトやコンクリートも切り裂いていく。
 物理が駄目であるなら、知覚武器という考えになるのは当然である。ここは急いで倒すしかない。
「僕が囮になります」
 旭が注意を引くように動き、知覚武器を所持しているメンバーが球体キメラを攻撃しやすいようにした。躱すか盾で防ぎきる。それに倣って、御鑑も崖下で守剣や夜狩が動きやすいように動いていく。
 比企が獣突で動かそうとするが、質量重量的に獣突では押しのけることは出来ないと考えると、旭と同じように水圧カッターの囮に徹した。
 4人以上の知覚武器の総攻撃で弱体化した球体は‥‥急に落下した! 地響きで、両班とも足が揺らぐ。
「これは、不意打ちか?!」
「注意‥‥するです!!」
 球体は崖下の方に思いっきり転がり始める。
「‥‥やっぱり、遺跡のブービートラップ‥‥っ!」
「あぶないですよ〜! きゃー!」
 崖下班は揺れる地面を何とか耐えて、横っ飛びでキメラの突進(転がり)を躱そうとするが、化すって少し吹き飛ばされる。
「痛っ!」
「うおおお!」
 上手く躱せなかったのは守剣で、しばらく球体と一緒にかなりがけの下まで転がってしまう!
 有る地点で、大きな衝突音と爆発音がした。キメラが自爆したのだろうか?
「守剣さん!」
 一行はそう思うと、守剣が無事か探すため、キメラがなぎ倒していった道を進む。
「ここだ〜。もう力が‥‥はいら‥‥」
 途中で木に捕まって、キメラに道連れになっていない守剣を見つけた。落ちかけるところを、比企と殺が同時に彼の腕を捕まえて落下を避ける。
「急いで治癒をします」
 八尾師が練成治療を施した。

 キメラが爆発炎上した先は、何もない所だった。
「もし、このまま轢かれていたら、どうなっていたことか‥‥」
 と、想像するだけでも怖い。
「キメラを‥‥倒しましたが‥‥。少し厄介な‥‥ことが」
 終夜は戦場の跡を見る。
 水圧カッターで土砂止めのコンクリートや道路がかなり斬られており、キメラが居座っていた場所も、ハンマーボールで破壊されたような穴になっている。さらに、自爆もあったので、この損傷を要望通りにこなせたかが不安になるのだった。

「うーん、復興にはかなり時間がかかるべ」
 工事現場のおじさん曰く、予定より復旧が長引きそうだという。
 土砂止めの破損や辺りの亀裂による地盤のゆるみがあるようだ。しかし、頑張ってキメラを退治してくれた傭兵の所為じゃないと言う。
 もし、あの場で爆発を起こしていたらこれ以上に被害は甚大になっていただろう。それだけでも感謝に足りると町の代表も言うのだった。
「早く復旧できればいいですね」
「ああ、なんとかするべ」
「今度は、こういう形ではなく、ツーリングでこの街を訪れたい」
 殺が町人にそういうと、
「まってるべ」
 町の人達は歓迎してくれた。

 八尾師や救急セットを持っている人が怪我人の手当をしたあと、移動艇がくるまでの間に、道路の復興を手伝ったり、隣町まで向かって、お土産を買ったりと時間を有効的に使った。

 こうして、通せんぼのキメラは撃退されたのだった。