●リプレイ本文
●出撃
傭兵一行は、UPCの説明を受けた後すぐに格納庫に走っていった。しかし、白鐘剣一郎(
ga0184)だけは足取りは重く、皇 流叶(
gb6275)と蒼河 拓人(
gb2873)に支えられながら向かっている。彼は、先の戦いで重体になっており、思うように体が動かないのだ。痛み止めを打って痛みを抑えていたとしても、動かないところは動かない。
「皆、迷惑を掛ける。だが出来得る限りの事はやってみせよう」
「ムリはしてはいけないよ」
拓人が心配そうに言う。
全員が機体に乗り、出発する頃には遠くの空に煙が僅かに見える。交戦していることが分かった。
「わざわざ手伝いに来て怪我を理由に任務を失敗したのでは、ジェームスに合わせる顔がないからな」
剣一郎は一人つぶやき、包帯で真っ白になっている腕で操縦桿を握る。
作戦は2班に分かれて、各グループを撃破するというシンプルなものだが、時間が1分未満とスピードを要する。殲滅が好ましいのだが、相手が一定ラインを越える時間が短く、橋頭堡で防衛出来る数まで減らせるかにかかっている。
「かなりのCWでてるという話‥‥。調整はエルシアンほど進んでないけど、この子ならいける。火力は十分‥‥エルシアン2出ます」
ソーニャ(
gb5824)がエルシアン2で離陸する。AI同調も良好であり、彼女は安堵した。
飛び立つメンバーを見て、仮染 勇輝(
gb1239)は操縦桿を握りながら下を見いてつぶやく。
「俺はここにいる人達の足元にも及ばない‥‥」
周りの傭兵が歴戦の猛者が多いためか、劣等感が彼にそうつぶやかせた。すぐに頭を振って、戦闘思考にする。
「仮染 勇輝。Chronusでます!」
管制室に伝えて、離陸する。
何名(おそらく全員)はジェームスの戦闘はどういうものか知りたかった。
●戦闘開始
「おう、UPCのエースさんよー聴こえるか? 援軍に来たゼ!」
ヤナギ・エリューナク(
gb5107)が、ジェームス隊を目視で確認したとき、無線でジェームス・ブレスト(gz0047)に伝えた。
『よう、出撃早かったな』
「此方は心配要りません。目の前の敵に集中してください」
シン・ブラウ・シュッツ(
gb2155)がジェームスに向かってこう言うと、
『お前らには期待してるぜ!』
「出来れば突破されないように、中央を頼みたいんだけど、いいですか?」
拓人がジェームスに頼むと。
『何、真ん中を墜とすのは任せろって!』
意気揚々とジェームスは隊を率いて飛んでいく。
「お前達は、両翼から殲滅だろ? OK、それに併せて『墜とす』さ」
「お願いします」
味方が行いそうなことを予想してそれに併せる、彼の態度は心強く感じた。
3グループとなって敵機を目視出来る距離になったときに、各班事に散開した。
各班のブースト+K−02の大地掃射で、各々の攻撃目標をツバメの形をした『高速突進型』に併せて一斉掃射するも、躱されてしまう。相手も何が来るか予想していたのだろう。
「な、流石高速デザインといったところか‥‥あと、対応は考えていたって事かっ!」
反撃に後方にいる砲撃型大型HWがプロトン砲を放っていく。
一気にブーストする。プロトン砲の雨あられをかいくぐりたかったが、CWの非常に濃いジャミングと電波により、頭痛が酷い。
「うっ!」
やはり重体の剣一郎はプロトン砲の回避を上手くできなく、砲撃が掠ってバランスを失う。
「痛み止め打ちすぎたか‥‥感覚が追いつかない」
何とかバランスは立て直すものの、高速突進型の猛攻を回避する事で精一杯だった。
「これしきのことで! PRM起動!」
それにより装甲を固め、衝撃に供える。
ツバメのような形の高速突進型HWはほとんどの射撃兵装はないらしく、本当に突撃してくる。一直線の突撃では無くジグザクや奇抜な方向から突撃してくるために、身構えての対応が難しい。距離的にバルカンなどの射程距離じゃないため、砲撃型とCWまで近接するまで難しかった。
「くっ。ちょこまかと」
ジェームスの方もK−02を躱されたらしく、苦戦を強いられているようだが、
「パターンを読んでるのは向こうも同じって事か!」
ジェームスは想定していたのか、一気に真ん中で高速突進型3機とドッグファイトを行っていた。1機ほどディアブロが付き従っているものの、行動自体が違うと分かる。
『突進型を抑えている間に、CWを撃て!』
それを従う他のUPCの機体。ミサイルを撃ち、真ん中1グループの方のCWの半分は無くなった。
「さすがだ。ワンマンじゃないみたいだな」
中央で大暴れしているジェームスをちらりと見ながら、傭兵達は攻撃に専念していく。
●隙?
HWの行動は比較的ゆっくりしている。CWの動きも一気に囲んでいるHWについてくるのではなく、半分だった。井出 一真(
ga6977)と剣一郎は、そのHWの陣に向かう。
「何故だろう?」
理由は分からない。この大型自体高速移動するようなものではないのか、なにか理由があるのかと思った。
何とか、突進型の猛攻をかいくぐった二機は、ソーニャと皇に後ろを託し、HWとCWの掃討に当たる。一気にブーストして向かうと、井出が先頭のCWへバルカンで1機打ち落とす。剣一郎も試作型「スラスターライフル」でCWの一機を墜とす。若干頭痛が軽くなった気がした。しかし、すぐに頭痛が酷くなった気がした。
「目標選定、マルチロック。セイフティリリース。ミサイル発射!」
蒼翼号からK−01が火を噴いた。それで、HWの周りにいたCWは一気に減った。続いて流星皇がブースト突進し、剣翼でHWを斬りつける。しかし装甲は堅く、弾かれる。
「くっ!」
旋回、銃撃するがHWは躱すのだが、HWは蒼翼号の攻撃を受け、若干下降する。
「高速戦闘じゃ負けないから!」
高速突進型を相手しているエルシアン2のAAMで動きを阻害し、よろめいている隙を見て、皇騎の試作型「スラスターライフル」が相手に照準を合わせる。
「無粋な連中には退場願おう!」
1機の突進型は大爆発し、墜落する。残る二機が皇騎にむかって突進してきた! しかし、皇騎はブーストで飛び、突進を掠る程度に躱す。衝撃は激しく皇の体を揺さぶるが、我慢できる範囲だ。
「この!」
K−02の第2射で1グループ全体に対して反撃する。直後にソーニャが、スラスターライフルの狙撃。もう一機を墜とした。
「GJです」
ソーニャからの無線。
二機の間を突進型が割り込むように突進、反転後、皇騎に向かってくる。皇が操縦桿を思いっきり傾かせて、躱そうとするがが、突進は翼を掠る。揺れを抑えて持ち直し、エルシアン2と同時攻撃のあと、突進型は地面に落ちていくのを確認した。
「残りはHW‥‥。援護する!」
HWを取り囲む流星皇と蒼翼号が剣翼で切り裂いて、班全員が残ったHWとCWに一斉射撃と剣翼による斬りつけで1グループを仕留めるのであった。
●速攻
「短期決戦でいきますよ!」
シンがScharf Schmerzをブーストと、エンハンサーを起動して飛び、K−02をHWとCWに向かって放った。
「ブースター常時起動モード! 全高出力ブースター展開、フルドライブ!」
仮染が叫び、蒼河やシン、ヤナギの放ったK−02が迎撃されないようにフェザーミサイルを突進型に向けて撃つ。あちこちで、爆発の煙が上がった。K−02が確実に命中したようだ。素早く動いている突進型は1機だけ直撃を受けたのか、海面に落ちていくのを確認できた。
そのあと、蒼河と仮染が突進型。ヤナギ、シンがHWとCWの相手と別れる。
さすがのScharf SchmerzのK−02発射により、狙っていたHWの周りのCWはほぼ壊滅し、ジャミングは弱くなっている。まだ残っているグループのジャミングエリアにかかっているためだ。頭痛を堪え、4機は担当する敵機に向かっていく。
ブーストを常時起動するKVは機動戦闘に驚異的な効果をもたらしているが、旋回時に急激なGが操縦者に襲いかかる。
「ぐううう!」
「ここで、旋回‥‥。照準‥‥ロック‥‥。いけぇ!」
蒼河が真スラスターライフルに突っ込んでくる突進型にロックしスイッチを押す。命中したが、突進型はBARRAGEの翼に体をぶつけて、90度横に飛ぶ。
「変わった動きを!」
バランスを立て直す為に、必死にコントロールする蒼河の横に仮染のChronusが援護射撃。突進してくるもう一機が躱して、BARRAGEへの突進を止めたかのように見える。
「たすかった。確実に仕留めるよ。片方頼む」
「わかった!」
二機は別れて各1機事に狙いを定める。蒼河はドッグファイトに持ち込んで、ファランクスソウルと剣翼で突進型と戦う。
Chronus のAAEM、小型荷電粒子砲を使い分けて、一機を弱体化していった。突進型の突撃等にも耐え、躱し、打ち続ける二機はほぼ同時に、突進型を倒す。
その前方でのScharf Schmerzとスティングレイのほうも、プロトン砲の攻撃を受けながらも健闘している。ヒットアンドアウェイを行っていたヤナギも、K−02で他HWを巻き込んだ攻撃から、目の前の残っていたCWをバルカンで撃墜していた。
「K−02の味はどうだ!」
落ち着いてScharf Schmerzもドゥオーモやレーザーキャノンで撃ち続けて、HWの装甲を削っていく。突進型を倒した二機が向かう時間と同じぐらいに、大型HWを倒す事ができた。
「OK」
●エースの隊は?
「ほう、みんな、やるじゃねぇか」
ジェームスは旋回して突進型一機を剣翼で屠る。あと少しで、CWから発する嫌な頭痛を軽減できそうだった。
「‥‥! そこ!」
手慣れた手つきで自分のフェニックスを操って、二グループ目HWを高分子レーザー砲で仕留めていた。傭兵達が1グループを倒している間に、ジェームスの隊は2グループを仕留めていたようである。
残っていたCWが撤退すると同時に、ジャミングや頭痛といったものが収まった。
迎撃は成功したのである。
●エースと
滑走路に、各KVが着陸する。今度は格納庫でのKV整備班が忙しくなってくるようだ。
「ストレッチャー! 急げ!」
緊張と重体の疲労から剣一郎は気絶して、ストレッチャーで医務室に運ばれている。
「腹減っていたときの出撃だから、腹減ったなぁ」
と、ジェームスが背伸びしてフェニックスから降りた。損害報告から可能な限りの指示を出してから、休憩に入ろうとする傭兵の集まりに顔をだした。
「よ、戦闘ご苦労さん!」
「ブレスト大尉」
「ジェームスさん!」
井出と仮染が彼の名を呼ぶ。
「北米のエース‥‥」
ソーニャが、初めて顔を合わせた男を見る。
(「後でコーチしてくれないかなぁ‥‥」)
と、思いながら。
今回の迎撃戦へのねぎらいから、雑談になるときに、仮染が彼にこういった。
「ジェームスさん、俺は貴方のようなエースになれない。だから誰かの傍で完璧なサポートができるようになります!」
伝えたい、自分の道。尊敬する人へ言っておきたい思い。
ジェームスは笑って、
「俺も全体のサポートがあってアタッカーとして動けるんだ。気合い入れろよ?」
仮染を励ました。
そのあとは、如何にエースとしての強さを持っているのか質問されたり、記録が欲しいと聞かれたりする。記録の方は後々、閲覧可能だったら見られるだろうとジェームスは言う。そして、強さについては、
「オヤジの実験の手伝いをしながらバグアと戦っていたら、いつの間にか大尉になっていた」
と、自分でもよくここまでやってきたなとを振り返る。
「半分は冗談だ。実際ここまでになったのは、気合いと情熱でやってきたってもんだよ。はっはっは!」
ジェームスは爽やかに笑いながら言うのであった。