タイトル:怪鳥キメラの飛翔マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/22 11:52

●オープニング本文


 近畿南部の森林区画。そこに、体長10mの大きなキメラが集落を荒らしていると言う。
 林業の人が見た話だと、くちばしが大きい鳥のようであるが、火を吐き伐採した木々を焼き払うという非道なことをしているそうだ。そのためそうした作業場が焼け野原になることも多くあり、急遽撃退もしくは討伐を依頼することになるのだった。
 小さな町や村、集落が点在しているためにKVは使用できないが、調査によると怪鳥はある山を中心に活動をしているらしい。山は林業に使われているもので、道はあるが、勾配があり危険な場所だ。しかも今は冬なので、高いところまで進むと氷点下の気温もしくは雪があるという。

「このままでは、この区域の林業は大打撃を被る!」
「はやく、傭兵達を雇わなくては!」
 焦る地元の人達。

 怪鳥の姿は大きな堅いくちばしで、背中や翼に堅い鎧みたいな物が付いているという。火を吐き、空を飛んでは縄張り内を移動するそうだ。
 このまま、このキメラが闊歩していると、畿内の林業は危機になる。急げ! 傭兵達!

●参加者一覧

番 朝(ga7743
14歳・♀・AA
絶斗(ga9337
25歳・♂・GP
ジェーン・ドゥ(gb8754
24歳・♀・SN
丙 七基(gb8823
25歳・♂・FT
綾河 零音(gb9784
17歳・♀・HD
サクリファイス(gc0015
28歳・♂・HG
湊 獅子鷹(gc0233
17歳・♂・AA
美村沙紀(gc0276
17歳・♀・ER

●リプレイ本文


 8人の傭兵が山の中を歩いて行く、林業に使われているため作業用の道が出来ており、それをたどれば、迷うことはなさそうだった。8人それぞれの動機はやはり様々であり、山を愛する番 朝(ga7743)にとっては、耐え難い物だ。
 もっとも、怒りを非常に露わにしていたのは、綾河 零音(gb9784)で、
「林業地帯に炎を吐く怪鳥キメラだと‥‥!? えげつない、えげつないぞ、それは! 絶対に許せん!」
 依頼ボードを見つけたときの発見した彼女の叫びは本部の受付ロビーに轟いたのであった。やる気満々なのは彼女の歩幅からでもよく分かる。
 自作の装甲である狂戦士の鎧を身に纏いながら巨大な【OR】エレキギター「バルガイン」と【OR】狂戦士の斧剣を背負う絶斗(ga9337)は、余り語らず用件だけを伝える程度だったため、親しい仲でしか彼の心情を知ることは出来ないだろう。
 番は(しかし、どちらかというと、少年に見える)、「10mってどれぐらいだろうな?」と、キメラの大きさの方が気になって仕方ないらしい。
「『全高』10mだと‥‥直ぐ見つかりそうだな」
 と、丙 七基(gb8823)が考える。
 今回の作戦では、丙と絶斗が囮で相手を引きつけ、前衛系である4人が連携して倒す。後衛のジェーン・ドゥ(gb8754)とサクリファイス(gc0015)は、相手の間合いから離れ、狙撃する事になっているが、今は山に慣れ親しんでいる番が先導している。
 番は、
「確認するよ? もし、もう一体いたら、そっちは俺が囮になるから、いい?」
 山林に入る前に言ったことをもう一度確認のために言った。山を知る彼女とキメラとの戦い方の用心である。
「‥‥かまわん」
「それはOKだ。そうならないように、気をつけていこう」
 絶斗と丙、後ろにいる5人も頷いた。
「挟み撃ちされないように、皆で注意していきましょう」
 絶斗並に無口な美村沙紀(gc0276)が言った。
「足下結構枯れ木があるな」
 湊 獅子鷹(gc0233)が戦場となるこの山を見渡す。道は通っていても、枯れ枝や落ち葉が落ちているのは当たり前だった。これに足を取られないように気をつけなければと注意を払っていた。
 綾河が、ワザと大声を出して進もうという案もあったが、ほとんどの傭兵が無口だったりするため、会話が続かなかった。それでも彼女は、話しかける時必ず大声で話している。常時覚醒からGooDLuckの常時起動は、練力が切れたときの問題もあるため、遭遇時のみに切り替える。
 番が、異様に開けた場所を見つける。手のサインで囮役の絶斗と丙を呼ぶ。
 異様に大きな足跡と、なぎ倒された木々。あと、焦げている箇所もある。番曰く、近くに潜んでいるとのことだ。
「では、俺らがむかうか」
「周りの警戒は、私が」
 綾河が覚醒して、GooDLuckと探査の目を起動。現在近くにいるのは1体だけと分かる。サクリファイスとジェーンは囮と前衛班から大凡50m後になるように待機しているが、相手がいる場所より高い場所に移っていた。
(「巧く行けるかな‥‥久々の戦闘のような気がするから」)
 ジェーンは深呼吸で、心の不安を落ち着かせた。

 絶斗と丙が目視でキメラを確認する。後ろから湊が見ているが、その風貌に、
(「マズそうっていうか絶対食えないだろこいつ!」)
 と確信する。
 全長10mだが、高さは2mあるかないかで、カニのような甲羅を体にまとい、ハシビロコウのような異様に大きな嘴が特徴で、鳥としては異様である。頭には申し訳程度に、オカメインコのようにとがったように見える羽毛みたいなのがあるが、ほとんど鳥と言うより、『鳥の形をした甲殻類』と言う方が良かったかも知れない。
「もし、囮側の方に行かず、こっちに来たときは、構わず特攻をして引きつけるぞ」
 番が、湊と美村、綾河に言う。3人は頷く。
 絶斗が2m藻有る大型ギターを持ち、
「さあ‥‥最高の重低音を聞いて出て来い‥‥!」
 一気にかき鳴らす!
 耳を塞ぎたくなる重低音がこだますると直ぐ、鳥の鳴き声とは思えないキメラの咆吼との不協和音が8人の耳を苛ませる。
「向かってくる!」
 丙が絶斗のカバーに入る。その間に絶斗はギターを放り投げて、斧剣を構える。キメラが叫び怒り出すと口から火を噴き出している。音に敏感過ぎるためによろめいているが、それでもこっちに向かってきている。
「援護‥‥木々の間隔が狭くて狙えない?」
 サクリファイスとジェーンが翼と足を狙うが、木々に遮られて狙い通りに撃てない。
 丙が雲隠で翼を斬る。それに怒ったキメラが嘴で彼を突いた。躱しこねて、彼はゴロゴロと山道を転がってしまう。
「ぐあ!」
 木々が多いために、あちこちを打ち付けてしまったが、転がり落ちて戦場から退場という状態は免れた。
「訓練を思い出せ! くっ」
 丙は立ち上がって又キメラに向かう。
「ウオオオオ!」
 絶斗が叫ぶ。それでキメラの注意は全部絶斗に向けられている。そうなれば、番達前衛はこのキメラを囲んで翼を狙い飛び立てなくしてから足を狙う事が出来る。
「もう少し開けた場所までおびき寄せたい!」
「‥‥」
 誰かの声に、絶斗は頷いて退く。キメラは彼を追ってきた。
 その位置は狙撃手二名が狙いやすい場所でなだらかな勾配になっている所だった。
「ここなら戦いやすいぜ! 管槍の恐ろしさを教えてやるよ!」
 湊が槍を構えて、管槍のロングスピアをキメラの足に突き刺すが、甲羅で弾かれ、のけぞった。
「思ったより堅いな‥‥くっ!」
 番が【OR】樹を振り下ろし、翼を傷つけていく。それで怯んだキメラに、綾河のデュミナスソードが、原の部分を切り裂く。彼女はころりと回転してからキメラの股下をくぐり抜ける。美村が流し切りを使ったイアリスで反対の翼を斬りつけた。
「「いまです!」」
「サンキュ!」
 湊のロングスピアががら空きになったキメラの腹に突き刺さる!
「うおおお!」
 同時に絶斗が頭をかち割ろうと斧剣を振り上げるとき。
「!?」
 キメラはいきなり突進した!
「ぐは!」
 腹の下にいた湊と翼を攻撃していた美村、そして正面にいた絶斗を巻き込んでの突進だった。はじき飛ばされ、気や地面に強くたたきつけられる。キメラはそのまま倒れ込むように突進を止めるが、直ぐに起き上がって振り向いた。
「大丈夫か?!」
「こんなのかすり傷!」
 仲間が心配するところ、湊と絶斗、美村は活性化で傷を塞ぐ。
「あったれぇ!」
 サクリファイスのアサルトライフルが、キメラの翼を穿つ。キメラは咆吼を上げて辺りを見渡すのだが、狙撃手が見えない。今転がって立ち上がりそうな、絶斗や助けに入る丙、番達が目に入って、火炎ブレスを吐いた!
「避けろ!」
 丙と番は横っ飛びで避けるも、絶斗は斧剣の狂戦士の剣を盾にして防ごうと試みたが、火は全体を回り、鎧さえも溶かしそうな熱さに、彼は苦悶の悲鳴を上げた。
 周りに火が着く心配はあったが、火は直ぐに消えた。
「燃やしてなる物か!」
 綾河と美村、番が飛び出す。キメラは羽ばたき風を巻き起こして、飛び出した3人を足止めするが、今度はジェーンの狙撃が翼を穿ち、風を止めた。
「たすかった!」
「いっけえ!」
 綾河と美村がキメラを斬り。しかし、直ぐに綾河が振り返る。戦闘でも聞き逃す事はない、大きな羽ばたきの音だ! 番がそのまま羽ばたきの音に向かって走っていく。
「‥‥! 俺も手伝う!」
 丙もその援護に回るために状況を確認した。
「あいての視界は‥‥お互いを見ている状態か‥‥なら!」
 腰に提げている閃光手榴弾を持つ。
「閃光手榴弾をなげる! いいな!」
 丙が叫ぶ。皆はそれに対応するために、目に入らないような陣取りをする。番と丙が増援を抑えている間に先の一匹を倒すことに全力を注ぐ。閃光手榴弾が光って、キメラを怯ませると、湊は、螺旋槍を流し切りから流し切りをつかって後ろから穿つ。間髪入れず、やけどの酷い絶斗が一匹目の戦っているキメラに向かって、斧剣を振りかぶって、頭を叩ききった。
「ウオオオオオオオ!」
 その一撃でキメラは沈黙する。急いで美村とサクリファイスが彼に駆け寄って、救急セットでやけどの応急処置をする。
「後は、片付けてからです」
「‥‥すまん」
 彼女は又武器を持って、番と丙の元に向かう。

 番と丙が抑えているキメラは先ほどのよりはるかに小柄だった。全長8〜9mなのかも知れない。高さは、1.5m程度と見た。二人は巧く立ち回り、翻弄する。絶斗の雄叫びと、断末魔を聞いたが二人だがそっちを振り向かなかった。キメラを抑えておくのが優先だ。
 湊が真正面から突撃するが、すぐに急に抑えているキメラの後ろに回り込み、湊が叫ぶ。
「みんな、よけろ!」
「!!」
 丙と番はすぐに散開。
「くらえ! 奥義! 螺旋槍!」
 湊が、間合いを見極め、流し切りからのソニックブームを管槍から繰り出す!
 その衝撃波は、螺旋を描いて、キメラを襲った! キメラは一瞬何が起こったのか分からない。隙をついて、番と丙が翼を斬った。手応えが今まで以上であり、飛べない状態になったことを確信する。
「いまだ! 狙い撃つ」
 サクリファイスとジェーンが、キメラの顔目掛けて狙撃する。目をやられたらしく、キメラは只暴れるだけだった。
「これはチャンスだ!」
 突進とブレスは何とか回避していくが、狂乱状態のキメラを仕留めるにはそれほど時間はかからなかった。しかし、活性化やスキルの連続使用で、倒すと同時に、全員練力が切れて覚醒がとけてしまったのだった。
「ま、まにあった‥‥?」
 綾河がへたり込む。
 もし、戦闘中に覚醒が切れていたらゾッとする。ぎりぎりの戦いだったと言える。
「でか! 持ち運びにくいぞこのギター! 覚醒時にしか使えないんじゃないの?」
 湊が、絶斗の【OR】エレキギター「バルガイン」を持って絶斗に渡す。
 美村とサクリファイスしか救急セットを持っていなかったため、各人の怪我を治すのには時間がかかり完治まで至らなかった。
 あとは、現地のUPCが処理するだろう。

 湊が「鳥鍋食いたいな」と言うところ、「カニもいいよと」誰かが言うので、鍋談義になる。
 しかし、サクリファイスは、その話題には入らず、
(「俺たちもキメラも変わりませんね。何かを殺める事ならば」)
 と、考えていた。

 宿の窓から、番が空の異変に気づく
「おお、雪だ!」
 番が空から降ってくる雪を見て、瞳を輝かせる。
「積もるのでしょうか?」
 ジェーンと美村も一緒に空を見上げる。
「山なら積もりそうだけど、どうなんだろうね」
「積もったら雪合戦もいいな」

 山はほんのり雪化粧をし、戦いの場所を白く染めていった。それは、この山での戦いが終わったことを知らせるように、そして傷を覆って癒すように。