タイトル:【BHN】黒きサンタ騎士マスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/26 01:26

●オープニング本文


 聖夜の夜、メトロポリタンX跡地に集結する、暖かなファーをふんだんに使った赤い服を纏った者達‥‥。
 白い口ひげを蓄えた初老の男性もいれば、妖艶な妙齢の女性もいる。
 彼ら彼女らは皆、一様にサンタクロースと呼ばれる服装をしている。
 背負っているのは白い大きな袋。
 空いている手に持っているのは‥‥首を狩る得物。
 背後に控えるソリならぬチャリオットを牽く真っ赤なお鼻のトナカイさんも、鼻息が荒くどことなく凶暴そうだ。
 そう、彼ら彼女らはバグアがサンタクロースの物語に基づいて創り上げた、サンタクロースキメラなのだ!
 プレゼントをもらうはずのサンタクロースに狩られる‥‥バグアの襲撃以降、暗い話題が多い中、皆が心待ちにしていた聖夜に悲劇が待ち受けていると知ったら、人々は絶望のどん底へ叩き落とされる事だろう。
 それこそ、バグアの狙いなのだ!
 能力者達よ、人々が平和な新年を迎えられるよう、血塗られたサンタクロースに人々が狩られる前に狩れ!!


 とある、平和な街‥‥のはずだった。
 普通なら、聖夜前後は賑やかになるはずなのに、ショップ街は人が居ない。さらには、住宅地区も静まりかえっている。
 それは、この街に、恐ろしい騎士が‥‥人々を絶望に陥れているのだ。
 各地で起こっているサンタキメラの暴力事件。バグアの仕業。
 そのなかでも見た目も凶悪なのが、象のように大きい黒馬に乗る甲冑を着た騎士なのだ。この騎士は漆黒甲冑の上にサンタの服をマントのように羽織っており、オープンフェイスヘルメット上にサンタの帽子を被っている不自然きわまりない姿‥‥。しかし、肌は紫を帯びた黒、紅の目が不気味に光る。鎧と対極な真っ白い髭を付けている。本来サンタが持っている白い袋はいびつにでこぼこしており、その中にあらゆる武器が入っている。彼とその馬は不気味に鼻や口から青白い吐息をはき続け、周りに冷気を放つ。そして、目に付く逃げる無辜の人を惨殺し、建物を破壊しているのである。
「Die! Human Die!」
 叫びながら闊歩するのは、歩く恐怖である。

 今こそ、能力者を立ち上がれ! この悪夢の騎士を止められるのは君たちしか居ない!

●参加者一覧

アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ヴァイオン(ga4174
13歳・♂・PN
東野 灯吾(ga4411
25歳・♂・PN
八神・刹那(ga4656
20歳・♂・BM
守原クリア(ga4864
20歳・♀・JG

●リプレイ本文

●緊急事態
 高速艇で、会議は進む。
 テーブルには目的地に向かう地図と人数分の無線機、そして、クリスマスを窺わせる小物が転がっていた。例外なものはあることはあるが‥‥。
 終夜・無月(ga3084)は
「血の聖夜などと‥‥ふざけた事を‥‥。無垢な子供達の夢を壊させない為にも‥‥これ以上あいつの好きにはさせない‥‥」
 無表情ながらも、怒りを込めて言う。
 ヴァイオン(ga4174)も、
「まったく、こんな時期にこんなキメラが現れるなんて」
 怒りを持って言っている。
 クリア・サーレク(ga4864)も怒っているのだが、雰囲気が可愛いためか迫力がない。
「思いっきりたたきのめして、ハッピーホリデーを取り返してやるんだから!」
 やる気満々だ。ただ、手に持っている短冊は何なのだろう?
 ちなみに、ある時を境に、アメリカではハッピーホリデーと呼ぶようになっている。
 アグレアーブル(ga0095)は、無言のまま頷いているが、気持ちは同じようだ。
 東野 灯吾(ga4411)は
「楽しいクリスマスを台無しにする奴ぁ許せねぇ!」
 と、テーブルを叩く。
「さて、この地図を見れば、この広場、そして、山の手の教会、ハイスクール、など色々ある。そう分けるべきか」
 御影・朔夜(ga0240)が、言う。
「誘導で広場に引き寄せ、狙撃と追撃にて退治しよう。ただ、情報から袋に沢山武器があるようだが‥‥」
 終夜が答える。
「その案で問題はない。ただ、袋はどうする?」
 八神・刹那(ga4656)が尋ねた。
「それは決まってるじゃねぇか!」
「?」
「サンタさんのプレゼント袋を奪い取るのは子供の頃からの夢だぜ!」
 東野が、親指を立てる。
「強奪か‥‥。まあ、彼奴らにもその恐怖を思い知らすのは良いな」
 御山・アキラ(ga0532)の口元に笑みがこぼれていた。
「それは夢‥‥だね。何か‥‥面白い物が‥‥入っているかも‥‥しれない」
「物騒な物ばかりだよな。情報では」
 そう、あの黒い騎士は、白い袋に武器をしこたま入れているというのだ。故に、袋の形がいびつになっている。
 そうして、班分けもどう動くかも、高速艇で滞りなく進む。
「まず、灯吾が、町の人を教会や避難所指定の場所に避難・誘導の救出を、狙撃班は朔也とクリア、追撃は俺とヴァイオン、そして要であるサンタキメラの誘導はアグ、アキラ、刹那でいいな?」
 終夜が、確認を取る。
 つまり、誘導班がメインストリート先にある広場におびき寄せ、狙撃と迎撃する作戦なのだ。
「相手の速度はどうか分からないが、気を付ける」
 御山達、誘導班が言った。
 一方、緊張する中で、先のことを考えている女の子が1人。
 クリアだった。
「早く倒して、皆さんが楽しくハッピーホリデーを迎えられるように、ツリーにこれを掲げたいですよ」
 クリアが例の短冊をもって言う。
「なぜに‥‥短冊?」
 日本人衆が、なぜか恐る恐る尋ねてみた。
「だって、ジャパニーズ・ハッピーホリデーはツリーに願いごとを書いた短冊を吊すんだよね? 早くやりたいな♪」
 無邪気に笑う。
 短冊には、『世界平和』、『バグア撃退』、『彼氏欲しい』と書かれていた。
「それは、七夕だぁ!」
 日本人全員が突っ込んだ。
「あうう! 違うの?! ええっ!?」
 その、可笑しさから、無駄な緊張が無くなって、誰もが笑い堪えきれなくなる。しまいには、誰もが吹き出した。
「さて、しんみりしてもはじまらねぇからな! クリアがやろうとしている事も結構いいかもしれねぇな!」
 東野が大笑いした。
 良い感じの緊張感が、其処にはあった。
 希望を運ぶ為の力を持って。


●作戦開始
 郊外に高速艇が着地した。外に出ると、気温は恐ろしいほど寒かった。体感温度で−15度かもしれない。
 そう、吹雪いているのだ。
「普通のホワイトクリスマスなら良いのに!」
 ぼやいても仕方がない。
「早く、行動‥‥しよう。まずは広場の‥‥チェックだ」
 終夜が指示を出す。
「OK、救助は俺に任せな」
 東野が無線を持って位置を把握し、行動を起こす。
 他の仲間も動くのだが、八神だけはとても震えていた。
「? どうした」
「もう少し厚着にすれば良かった」
 今言っても遅い事だ。
 相手は冷気を出している。その情報を元に、ほとんどのメンバーは防寒装備を万全としている。ゴーグルによる保護もしている者もいる。長時間居れば、雪目にもなるだろう。
 広場についたとき、足跡を確認する。
 像のように大きな蹄だ。一度ここを歩いたようだ。
「さて、この周辺の人を避難させる」
「ああ、灯吾。頼んだ」
「任せろ!」
「では、私たちは見つけてきます」
 誘導班が動き始めた。
 無線からは吹雪の音がよく聞こえてくる。
 視界も悪い。この悪環境の中で、あの黒騎士を倒すのは至難であろうか。
「朔也。鏡月を‥‥使うぞ」
「アレを使うのか?」
 御影は終夜の言葉に驚くが、嬉しい笑みに変わった。
「ああ、先手はお前に任せる!」
 2人は定位置に隠れる。
「ボクも隠れようっと」
「僕もこの位置に隠れるか」
 クリアは見晴らしがよい場所に、ヴァイオンも隠れやすい所を探し当て、各所、位置に着いた。


●遭遇と愚者
 東野が自治体達とともに動く声が町に響いていた。
「こっちは危険だ! 教会か、ハイスクールに向かうんだ!」
 半径5マイルの人々を避難させる。
 他は自治体が誘導している。しかし、自然と東野がリーダーシップを取っていた。怪我をしている人を負ぶっていく彼の姿に、感動した若い者がこぞって手伝っていく。
「ミスター。この方向に足跡がある!」
「え? そこは封鎖してくれ」
 東野は無線で誘導班を呼び寄せる。
「サウスストリート38番地に馬の足跡発見! 地図からすると‥‥100ヤード先だ!」
「了解‥‥」
 東野は無線での会話を終わらせると、
「ありがとな」
 若者に礼を言った。
「いえ、あなたの勇気に感謝します」
 1時間ぐらい経った。
 ほとんどの市民を避難できた。残るのは迷子の子供を負ぶっている東野の2人。
「もうすぐママがいる場所に付けるからな」
「う、うん‥‥。お兄ちゃん‥‥」
「大丈夫だ」
 しかし、立ち止まる。
 目の前には、黒い巨体。恐怖の騎士。
「げ、こんな時に!」
 危機を感じ、東野は覚醒する。
「守ってやっから! 待ってろ」
 彼が子供を庇うように槍を構えた。
「Die! Human Die!」
 東野は袋に入っている武器とその鎧姿を見て、
「てめえ‥‥こっちは槍買っただけで文無しだってのに、見せ付けんなよ!」
 と、叫ぶ。
 間合いは、30ヤード。これは分が悪い。しかし、子供を守らなければならない!
 大剣を振り下ろす騎士に槍で防ぐ!
 それを受け流して‥‥、
「ここ!」
 一閃で騎士が持っている袋のヒモを突き、重みによってヒモは千切れて、地面に落ちた。
「Die!」
 その槍裁きに、騎士は馬ごと一歩下がる。
 しかしこの騎士の周りはとても寒い。子供が心配になる。好戦的な気性を抑えながら、東野は後ずさる。
 そこで、
 横から、黒い衝撃が騎士の直前まで迫る。しかし、赤い障壁がそれを阻んだ。
「なに!?」
 既に覚醒して性格が好戦的になっている八神が驚く。
「八神さん! SES装備もってなかったの!?」
 アグレアーブルが彼の手に何もないことに驚いた。
「‥‥う、うるせえ! そんなもの無くたって!」
 八神は飛び出す。
「馬鹿!」
 騎士は興味を八神に向けた。
 そして馬が、口から冷気を吐く。八神はそれをもろに受けるも突進する。冷気に因ってコートが凍り付く!
「うおおお!」
 そのまま拳で騎士を殴りつけるも‥‥馬ごとかわされた。そして騎士は退き‥‥突進してくる! 騎士の体と大剣の周りに冷気が収束し‥‥霧状の氷が舞う!
「Die! Human Die!」
 大きくなぎ払う。
 八神は無謀にも突っ込んでいく!
「化物同士、気兼ねなく! 殺しあ‥‥」
 冷気の衝撃。さらには追い打ち。
 彼の拳は、全く障壁で届かず‥‥無惨に凍り付く。
「危ない!」
 アグレアーブルと御山が牽制攻撃し、気を引かせる。
 東野も槍で馬を牽制攻撃し、気を散らせた。
「私についてこい! 黒騎士!」
 御山とアグレアーブルが走る。
 騎士も馬に乗って追いかける。
 すでに、息も絶え絶えの八神を残して。
「東野! そいつも教会の中に!」
 御山が言い残し去っていく。
「あ、ああ‥‥。まったく先輩達は。人使いは荒いんだから」
 覚醒を解いた東野は、凍え死にそうな八神を見る。
「おいしょっと」
 東野は、子供とこの負傷兵を連れて、避難先の教会に向かった。


●奇襲・挟撃・苦戦
「八神‥‥がやられた! いま‥‥2人で‥‥導中!」
「了解」
 アグレアーブルと御山は上手く連携し、作戦位置に騎士を誘導している。
「やつは‥‥気を身にまとわ‥‥せて衝撃‥‥出す‥‥殊攻撃を持‥‥いる!」
 無線の感度が悪いが言いたいことが分かってきた。
「やばいな」
 それでも、じっとするしかない。騎士が来るまで。
「来た!」
 高いところで隠れているクリアが無線で追撃班に伝える。
「カウント‥‥するぞ」
 誘導班からサインの笛。
「3‥‥2‥‥1‥‥」
「0!」
 その言葉に、クリアがサンタ帽を被ってミニスカサンタに格好になり、フォルトゥナ・マヨールーを構え、
「悪いサンタには、鉛の弾丸をプレゼントだよっ!」
 威勢良く騎士を狙った!
 銃から、普通より勢いよく弾が飛び出す! フォースフィールドを打ち破り、鎧の一部に穴を開けた。
「Die!」
 騎士は苦痛にうめいている。
 その瞬間、誘導班が牽制攻撃、態と外す。馬と騎士はそれを上手くかわして、落馬しない。
「Die! Human Die!」
 騎士が剣を振り、馬が冷気の息を吐く。
 御山もアグレアーブルも上手くかわしたが、寒いのは変わらない。
「くう!」
 終夜が駆けてきて騎士を斬る!
「!?」
 騎士は何事かと周りを見ると、刀と銃をもった少年を視認する。
「む、彼奴‥‥属性が『水』なのか‥‥!」
 刀に付与されている、熱気が若干落ちている。
 手応えが、あまり無かったのだ。
「しかし!」
 彼は動く。
 同時に、別の方向から銃声。御影朔也の二丁拳銃だ。これも、片方は手応えがあまりないが、もう一発はかなり騎士を苦しめている事を知る。
「‥‥運が悪かったな、私と無月が組んで打倒出来ぬ敵はいない‥‥故に。我等が前に現れた不運を呪え」
 鏡月とは、終夜と御影、2人の連係攻撃のである。
「Die! Human Die!」
 騎士は激怒して馬もいななく。
 冷気の吐息、そして冷撃が6人に襲いかかる。
 ヴァイオンが瞬間に間合いを詰めて‥‥騎士に二段撃を華麗に決めた!
「うがあああ!」
 獣の叫び声。
 反撃に剣を振るうが、ヴァイオンは瞬天速でかわして逃げた。
 そこでまた、鏡月での連係攻撃。
 御山とアグレアーブルも、牽制に回り‥‥、終夜と御影の連携で徐々に騎士を弱らせていく。
 同時に馬も攻撃していった。
 寒い悪環境で、最高の仕事をしている。
 クリアはまた構えて‥‥狙いを定める。
 御影が、騎士の兜に穴を開けたとき‥‥。
「そこ!」
 彼女のフォルトゥナ・マヨールーから火が噴いた。
 騎士の頭はそこで吹き飛び‥‥落馬した。
 馬はその状況に、驚き、いななき暴れ、冷気を吹きまくる。隙をついて、終夜がとどめを刺した。
「‥‥終わったか‥‥」
 全員覚醒を解除する。
 そこは、氷の柱と赤い地面に染まっていた。しかし、赤い色は、雪の白で埋もれていく‥‥。


●退治終了
 教会に待機している東野と合流し、応急処置を受けた一行。
 八神だけは、応急セットでも回復が見込めない程ひどかった。無謀といえるだろう。
「本当にありがとうございます。これで、聖夜を過ごせます。ただ‥‥弔いの日になりそうですが」
「ああ、悲しいことだ」
 市民の代表と話し、暖かい食べ物を戴き、しばらく暖を取ってから、高速艇に戻る。
 市民から、感謝の言葉を貰い、帰る彼ら。
 終夜は、1人の子供にこう言った。
「本当のサンタさんが‥‥、必ず来るから」
 と。
「うん! 信じる! ありがとうお兄ちゃん!」
 子供が無邪気な笑みを浮かべると、終夜は微笑んだ。
 高速艇は町を後にした。


●袋の中身
 さて、サンタ騎士が持っているものとはというと‥‥。
「なに?」
「さびた剣」
「錆びた鋸、鉈? 出刃包丁? わ! 刃がとれかけの投げ斧がいっぱい?」
「血まみれ釘バット‥‥斧はさびているし、チェーンソーはSESじゃない‥‥」
「あれがブンまわしていた大剣も、肝心のSESがが付いてなければ‥‥」
 とんでもない期待はずれ。
 がっくり項垂れる一行。かなり期待していたのに!
 クリアは、袋の奧に何かあることに気づき、袋を逆さにしてふってみる。すると、赤い靴下がでてきた。人数分。
「‥‥」
「これ? なんだ?」
「靴下だよね‥‥どうみても」
「‥‥うーん」
 やはりバグアの考えていることは分からない。
 しかし、この靴下を見ると、なんとなく、誰でもワクワクした気分になれる不思議な物だった。
「ハッピーホリデーに靴下は、必需品だよ。ホントのサンタさんが何か入れてくれるかもっ!」
 クリアは非常にピジティブシンキングであった。
 朝焼けを背に、彼らはラストホープに戻るのであった。