タイトル:アルパカマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/20 12:25

●オープニング本文


 中南米某所。
 アルパカの牧場が僅かながら存在して、この地域の衣服などとなる毛の原料を提供している。
 毛がたっぷり生えた、ラクダのような生物はこの時代とても貴重である。

 そこで色々困ったことが起こった。
「アルパカに襲われている?」
「ええ‥‥逆襲のような」
 南中央軍の一部本隊が競合地区から近い牧場でアルパカが暴れているということ報告をした。
「キメラの気配はなく、アルパカが、その大多数で群がって蹂躙するのです」
「いつもの事じゃないのか?」
 元から人なつっこいというか、家畜であるため、群で人に寄ってくるのだが、元が人ぐらいの大きさか小さめなので、思いっきり走ってこない限り、引き倒されることはない。
 しかし、今回は違う。
 水牛や猛牛の群ごとく、突撃してくるのだ。これでは、アルパカの牧場は危険である。
 攻撃性が増している謎を解かなければ、衣服供給が滞ってしまう。
 経験からすれば、何かしらバグアは、その牧場に隠れ潜んで何かを設置したに違いないと考えられる。
「うむ、此の謎を解決しなくては」
 広大で、崖や岩山の多い牧場を探すのは一苦労だ。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
千道 月歌(ga4924
19歳・♂・ST
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
優(ga8480
23歳・♀・DF
リティシア(gb8630
16歳・♀・HD
星月 歩(gb9056
20歳・♀・DF

●リプレイ本文

●生態
「しかし、おとなしいアルパカが人を襲うようになったんだ?」
 誰しも思う疑問だ。
 それがバグアの所為であればなおさらだろう。
「これから寒くなるしねー。あの毛皮がなくなると思うと‥‥っくしゅん!
あ゛ぁ゛、もう気分的に風邪引きそう」
 新条 拓那(ga1294)がくしゃみをすると、石動 小夜子(ga0121)がティッシュを渡す。風邪はどの季節でも引くが、中米や南米北部は亜熱帯なので、日本で言う四季は存在しない。しかし共通して山というのは、平地より寒くなる。アルパカはそう言った山岳に放牧されていることがあるそうだ。
 班分けは、調査班とアルパカをモフモフ‥‥否、誘導する班にわかれてこの山岳牧場を調べる事になっている。臨機応変に2〜4人で散らばってする事も確認した。
「あの、私は拓那さんと一緒に‥‥誘導したいです」
 小夜子が頬を赤らめて、遠慮気味に手を挙げ、希望した。断る理由もないし、なんか二人に桃色空間があるので、人の恋路を邪魔する人は馬けられるので、(今回はアルパカだろうが)皆は承諾した。小夜子は嬉しそうに頬を両手で覆った。
「アルパカにはボディランゲージがあるそうです。あと、臭い唾で危険を追い払うようですね」
 星月 歩(gb9056)が、言った。
 みんなはモフモフ目当てとは口にはしてないが、まず間違いない。
 拓那が、農場主からも確認すると確かにそう言う性質があるそうだ。しかも怒って突撃ではなく、スキップみたいに喜んでやってくる確率が高いらしい。毛まみれと蹄まみれになって倒れている人も続出だそうだ。
「アルパカが‥‥喜びながら20体も‥‥。もふもふし甲斐があるけど」
 命を取るか、モフモフを取るか、究極の選択だった。
 ただ状況では、怒りながらの蹂躙もあるので判別は、歩のアルパカ知識にかかっている。
「何かの装置をこっそりおいたかも知れないですね」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)はそう考える。
 キメラは居ないというなら、農場主が気づかないうちに設置されて、こういう騒ぎを起こしているのだろう。理由は不明だ。

「向こうが動き始めたようだ」
 双眼鏡で、遠くに居るアルパカに異変があると幡多野 克(ga0444)が皆に知らせる。元々群れをなす動物なので、固まっているのは良いのだが、散り散りになって、背の低い木に集まっては押し倒したり、別の柵を壊したりするなど異常行動が目立ち始めたのだ。もちろんスキップして‥‥。
 小夜子、拓那、千道 月歌(ga4924)、リティシア(gb8630)が引寄せを行い、克、リゼット、優(ga8480)、歩が原因を探ることとなった。


●もふもふの蹂躙
 一輪車に干し草をいっぱい乗せて、小夜子が異常行動をしているアルパカに近寄ろうとする。拓那が彼女のフォローをする。
 餌をみたアルパカ達は耳をピンとたててから、群を作り始める。
「だ、大丈夫。なにもしないから‥‥コレを食べ‥‥」
「ラブ&ピースで、仲良く‥‥」
 しかし、人間の言葉を分かるはずもないアルパカは‥‥、スキップして二人めがけ突進してきた! 20頭も群が!
「きゃああああ」「うわああああ」
 モフモフを堪能する以前に、覚醒して抱きしめようともしたのだが、さすがの20頭のアルパカ突進に二人は埋もれてしまった。ちなみに、干し草も食べている。この後が恋人同士仲良く、毛まみれ蹄まみれになっているだろう。
「ああ、やっぱり何をしたいのかよく分かりませんね‥‥」
 月歌も、群を避けるように死角を探っているが、気がつけば彼の周りに数頭いた。アルパカは無言で、彼に突進しようとする!
「俺も能力者の端くれ! アルパカの突進ぐらい躱して見せるっ! って うしろからもおおお!?」
 八方向から突進してきたアルパカ。毛皮に押さえ込まれモフモフなのを堪能できるのだが、生理的問題で、窒息しかねない。彼は、義眼にサングラスのような物が浮かび上がって、必死にそこから這い出てきた。「義眼だけは何とか守るっ!」
 リティシアというと、同じ目にあっており、身動きが取れない。というか何頭いるのか? 牧場を経営する以上、100は居るのだろう‥‥。
「あう、あう、あまり痛くはないですが‥‥。なんだか最近、動物に襲われてばかりです‥‥きゅう」
 ドラグーンの「バハムート」を装着しているため、モフモフを堪能しなくて済むのだが、一気に来たアルパカの突進には小柄な彼女は耐えられず、転んでしまった。蹄で踏まれる音が耳に聞こえる。外せば、どうなるか考えると怖いので、何とか起き上がっては、ドシンドシンとバハムートで逃げている。もちろんアルパカの群は、彼女をスキップもしくはのしのしと追いかけるのであったが‥‥。

●見つかれば道と言うことはない。
 4人が尊い犠牲(?)いや、おびき寄せをしていることで、隠れながら岩や木、くぼみを調べる調査班は、
「ああ、遠くから見ると‥‥アルパカに懐かれすぎているほほえましい空気じゃないでしょうか?」
 優が軍用双眼鏡でみた時の感想だった。確実にアルパカが4人に向かって突進と蹂躙を繰り返している中、不審な物はないかを見るのだが、さすがにこの広大な牧場から双眼鏡で分かる目立つ物はない。
 そして、行動を開始してから10分。
「おかしいな、無線機の調子悪いのか?」
 なぜか雑音が入る。バグアの兵器関係は必ず一般家庭用の電化製品には異常を来す電磁波を持っている。
「ということは、アルパカはコレでおかしくなっているのでしょうか?」
 歩は考える。大凡あたりだろう。
「近くにそれらしい不審な物を探しましょう」
 リゼットと優、歩と克でわかれて岩陰や木の洞、牧場から死角になる所を必死に探した。
 すると、真空管アンプみたいな箱のような物を見つける。重さは大体1kg大きさは携帯ラジオ程度だ。かすかに聞こえるノイズが、アルパカの顔のスピーカーから出ている。
「これでしょうか?」
 歩が確認する。
「牧場にこんな違和感がある物があること自体がおかしいよな」
 克がおかしな装置を調べるも、状況からして『これ以外に原因は見つからない』という確信を込めて破壊した。
 遠くで、アルパカの異様な行動は落ち着き始めている。
「ああ、やっぱりコレだ」
 無線の電波もほどよくなったことで、ますます確信に近づいた。
「真空管アンプみたいな装置が点在しているようだ、片っ端から壊していこう」
『分かりました』
 優が答えて、4人で見つけては、片っ端から破壊していった。
 強度はそれほど無く、真空管さえ壊せば、機能は停止する。
 それが、全て終了すると、アルパカはおとなしくなった。風がきつく吹いても、くしゃみしてからまたぼうっとしている見える。おびき寄せ班の全員が、頭をなでても、余り動じない。
 干し草を与えると、喜んで食べるが鳴くことはないようだ。
「かわいいですね」
 ぼろぼろのおびき寄せ班は、おとなしくなったアルパカに安堵する。

 ひとまず、よく分からないままだが、アルパカの暴走は止まったようである。


●モフモフの時間。
「助かりました。これで普通に牧場運営が出来ます」
 農場主は感謝していた。
「まあ、モフモフ状態で天国行きかけた人もいますが、何とかなりましたね。あとは、この壊れているけど謎の装置をUPCに持って帰って貰いましょう」
 なぞのアルパカ装置を持って、克は言った。
「さて、アルパカを見て癒されますか」
 ほとんどの傭兵はアルパカと戯れたいということで、柵越しからみたり、触ったりと楽しむことに賛同している。元々、『それが本当の目的』というのもある。
「さんせい!」
 その前に、応急セットである程度治療しては、一泊する。

 そして、待ちに待ったアルパカ牧場見学会。
 小さなアルパカには触ったり、写真を撮ってみたり、同じ目線で近寄ってくるアルパカ数頭に「こんちみんな」と反射的に言ってしまったり、思い思いの楽しみ方をする。
「ああ、コレは良い感じだなぁ」
 ラクダ科の系統でもあるため、ラクダの何とも言えない顔も、今となっては可愛い。彼らの何とも言えない雰囲気に癒される。
 アルパカの毛はセーターの他に、この地域で一般的なマントやポンチョあたりが多いらしい。染めにくいらしく、遠慮される毛色もあるようだが、今の時代動物から得られる繊維などは貴重品のため、羊毛と同じぐらい価値はあるだろう。

 小夜子はセーターやどんな商品を訊ねたりしていた。すでに分かることだが、拓那へのプレゼントを考えているためだ。そのことを訊かれると、ポッとなって顔を隠す。なんとも、初々しいことだ。それを見ている拓那も恥ずかしくなって別の方を向いていた。

 そして、歩はと言うと、小さなアルパカをなでていると、
「こういう事をどこかで‥‥なんだろう‥‥いつか誰かと‥‥こうして一緒にいた様な気がします」
 彼女は失った記憶の断片〜確信ではないが〜をつぶやいた。
「確か記憶喪失でしたよね?」
 近くに一緒にいたリティシアが訊ねると、歩は頷いた。
「もしかしたら私の記憶の‥‥探し物の手がかりは意外と身近な所にあるのかも‥‥」
『ふぇぇ〜?』
 アルパカは、歩が考え込んでいる所を見ては、首をかしげて見ていた。そして、体をすり寄せてきた。
「ん‥‥元に戻って良かったです」
 歩は彼をなでる。彼女の記憶の旅はまだまだ続く様だ。


 尚、破壊した装置の調査結果は全員に伝えられた。アルパカの脳波を乱して人々を喜びながら襲わせる怪電波を発生させていたらしい。しかし、それを再現出来るのかと言われると無理だという結果が出たという。
 恐るべし、バグアの技術力である‥‥。

 ‥‥?
 恐ろしい、のか?