タイトル:【棺】無名島の悪の施設マスター:タカキ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/04 22:11

●オープニング本文


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【棺】無名島の悪の施設

 ウィルソン・斉藤(gz0075)は、傭兵達を呼び出した。
「相手の居場所が分かったのは良いが、無名の島。しかも、その中に今まで攫われてきた、人々がいる。今回の任務は其処に潜入し内部構造を調べ、破壊作戦と救出作戦を開始しなくてはならないのだ」
 紫煙を燻らせて、また話し始めた。
「あいつのことだから爆発物で証拠隠滅を計ると思うかも知れないが、そこまで バカの一つ覚えでもない。コレは確信だ。俺たちをそのまま迎え撃つ迎撃態勢を整えているとしてもいい」
 USBメモリには詳細ではないが研究施設の大まかな構造が説明されていた。アキラ・H・デスペア(gz0227)は何故其処まで教えたのか問うとおそらく、
「ゲームのヒントですよ」
 と言うだけに違いない。彼の考えていることは謎が多い。
 島の周辺距離は4km程度、その真ん中にジャングルがあるが、其処に尽きだしている大きな記念碑のような塔があるようだ。
「島からかなり離れたところに高速移動艇を着水させ、ボートで乗り込む。重力波レーダーで感づかれるかも知れないが、小さな物だと見つかりにくいだろう。島に入れば無線は全く使えないと思え。すでにバグアの領土だ」
 傍受されることを考えると無線による情報伝達は危険だ。
「1階が訓練施設のようで、2階が住居スペースらしい。地下には研究所があるのだが、肝心の『コフィン』につながるルートがこのデータにはない。それを見つけ出して、侵攻ルートと救出ルートを割り出さないといけない。頼むぞ」

 高速移動艇から小型ボートに乗り換えるときに、内部にいた部下が慌ててやってきた。
「隊長! バグアからのジャックです!」
「なに?! もうばれたのか?」
 急いでモニターを見ると、アキラその人が映っていた。
『やあ、歓迎しましょう。私の島へ。思いっきり観光してくれれば幸いです』
 冷酷に、そして挑戦的にアキラは言う。
『島までの旅は安心してください。迎撃命令は出していません。ただ、上陸して観光がすんなり終わればいいですが』
 そう言うだけ言って、通信を止める。
「あいつが招待しているからか‥‥。ふざけやがって」
 おそらく迎撃は生身でするのだろう。
「迎撃システムに自信があるみたいだな‥‥。お前達、今回の任務を忘れるな?」


 コフィン内部。
「さて、餌が来るよ。最強の護衛」
 高さも幅も50mはあろうかという、大広場にアキラがいる。その大広場でも狭いと感じる大きな物体がうごめいた。アキラはそれを『最強の護衛』と呼んでいる。
『グルル‥‥』
 その生物は鈍く光赤い鱗をもち、トカゲに翼をはやした、伝説上の生き物だった。中南米では神々の蛇類がいるが、これは欧州で語り継がれる、西洋の竜そのものだった。
 それは言葉で表せない咆吼をあげると、天井が開き、それは翼を羽ばたかせ、空を舞った。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ファルティス(ga3559
30歳・♂・ER
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
桂木穣治(gb5595
37歳・♂・ER

●リプレイ本文

●上陸
 ボートを岸に上げる傭兵達は、島の密林の先に目立つ建物を見据えた。木々で見えないとは思ったが意外な事に目立つ建物だったため、道さえあれば進めると確信する。
「‥‥まずは、施設まで‥‥行きましょう。何か仕掛けているはず‥‥」
 終夜・無月(ga3084)が言う。
 すでに、敵の手の中だ。隠密行動が出来る状態ではないが木々に潜みながら周りを見ることは必要だ。
 人が踏みつぶして出来た道を進むと、施設の周りで旋回している赤黒い何かを見る。
「‥‥な、なんだあれはっ!」
 全員が驚くのも無理はない。
 翼長40m近い赤黒いそれは、まさに西洋の竜の姿をしていたのだ。いま『アレ』に手を出してはいけない。あの巨大さでは太刀打ちできないと、全員が確信した。
 なんとか、アレが上空で見つけないように進み、研究施設からあと、10mの所まで進む。その場所は大きく開かれており、体を隠すところがない。建物はいかにも何かの研究所の様な現代的な物と、生物的な不気味さを醸し出す砦に見える。
「‥‥ここは見つからないよう全力で走ります」
「‥‥わかった」
 ベル(ga0924)が閃光手榴弾を手にしながら全員に言うと、桂木穣治(gb5595)達も頷く。
「いくぞ‥‥っ!」
 風雪 時雨(gb3678)が竜の翼で駆ける。
 全員が走る中で、赤いアレは直ぐに見つけた。
『■■■――っ!』
 絶叫とも言える咆吼が、耳をつんざく。猛獣のたぐいを超越する雄叫びに耳が認識しない。
「なんて声だ!」
 耳を劈くことで、全員怯んでしまう。竜はそのままその開けた場所に降りてこようとする。このままでは赤い竜に踏みつぶされる!
「く――っ!」
 ベルがその中、赤い竜の頭部に目掛け、手閃光手榴弾を投げつける! 距離は十分だ!
 光が周りを包むと、着地に失敗した竜がその場所に落ちてじたばた藻掻いた。
「いまだ!」
 落ちた振動でよろめくも、全員が走り出す。研究所施設にたどり着いた時と、竜が目くらましから復帰し周りにブレスを吐く時は同時だった。
「丸焦げは勘弁だぜ」
 鹿島 綾(gb4549)が暴れている竜を見てつぶやき、中に入った。


●研究所1F
 全員は研究所のロビーに居る。形だけのロビーだろうが、研究者の白衣の影が、外の異常を無視して歩いていた。まるで、入ってきた8人を無視するかのように歩いている。
「‥‥拍子抜けするようで不気味ですね」
 鹿嶋 悠(gb1333)が口にするほど、違和感がする。しかし、それで安心してそのまま進むことはない。
 その予想は当たっており、数秒もせずに、白衣の人影は目をギラつかせて襲いかかってくるのだ。アレは間違いなくキメラだった。
「これは、失踪した人達のなれの果てでしょうか?」
 水上・未早(ga0049)がシエルクラインでキメラを撃ち殺す。
 鹿嶋は大鋏でキメラを切断し、鹿島はウリエルで焼き斬る。無月は明鏡止水でなぎ払って敵を吹っ飛ばしていた。
「コレは埒があかない」
 キメラの数の多さが進行を遅らせている。
「限度がないな!」
 ファルロス(ga3559)が舌打ちながら真デヴァステイターで援護する。
 かろうじて血路を開けば、あとは4人に別れて別々の地上ルートを探すために別れる。
「‥‥生きて戻ってきましょう‥‥未早」
「ええ、ベルさんも」
 二人の恋人はそう言うだけで、班に別れた。

 銃撃と剣撃はあらゆるところで続く。
「これってどこの、FPS(一人称視点射撃ゲームの略)だよ‥‥っ!」
 やってくるのはゾンビのようなキメラばかりだ。鹿島の毒吐きはもっともだ。一つ一つはそれほど強くないのだが、数が多いために直ぐに排除できない。
「‥‥二階へ進む階段を守っているようですね」
 未早が物陰から遠くを見て、それを確認した。
「カメラなど気になるけど‥‥そんな余裕ないな!」
「同感です‥‥」
「可能な限り無力化していきましょう!」
 鹿嶋、鹿島は突撃しゾンビを殲滅していく。未早とファルロスは、見つけたカメラを打ち抜き、援護射撃に回った。
 そのまま、階段を上る。殿は鹿島で襲いかかるゾンビを斬り殺す。ゾンビ達は階段を上がることはしなかったが、数は増えているようで恐怖する。
 上りきると2階。そこには、2人の白衣姿が待っていた。
「侵入傭兵達がどれほどなのか見せて貰おうか! 人間!」
「強化人間っ!?」
 相手も余裕を見せてない状態をわかり、突撃は避ける。しかし、向こうも同じく、銃撃戦となっていく。
「ぐ!」
 別の階段を見つけた無月達は、身を隠しながら二階にたどり着く。ちょうど未早の班が戦闘中だと、しり、直ぐに合流。さすがの2名の強化人間も、8人の能力者の前では敵わなかった。
「ごふっ!」
「アキラの部屋は何処だ?」
 まだ息のあった強化人間を壁に押さえつけ、尋問する鹿嶋。
「‥‥っ!」
 しかし、体内毒をかみ砕いて自死する。
「‥‥なんと言うことだ」
 8人に戻った傭兵達は、二階を調べていくと、アキラの部屋らしき場所に行き着いた。
 鹿島が扉を蹴り破る。中は質素に見えても、かなり質の良い家具などが置かれている。
「おそらく彼は見取り図を持っているはずです」
 未早がてきぱきとアキラの書斎を罠がないか調べながら、見取り図を探す。他は罠がないか、隠し扉がないか、探していた。
「‥‥未早、見つけ‥‥ました」
「コレは二つのキーが居るな‥‥」
 無月と鹿島が本棚の影などでカモフラージュしている隠し扉を見つける。
「こっちも見つけました」
 見取り図を持って未早が答えた。
 やはり、コフィンは地下にあるらしい。実際は地下一階に訓練所や洗脳施設からでも行けるのだが、安全に周りを調べるにはこの隠し扉にある階段を使い方が良いらしい。この階段は最上階にもつながっているようだ。
「エレベーターじゃないんだな」
「非常用の逃げ道かも知れませんね」
 慎重に未早やファルロスが降りていく。カメラのたぐいなどなく、そのまま進むと地下の踊り場に出た。
 身を隠して、先にあるドアをみると、
「これは‥‥」
 吹き抜けにアクリルで出来た通路。下の方には、先ほどのゾンビキメラや洗脳能力者が銃を構えて警戒している。部屋自体に屋根があるが、それもガラス張りらしく内部が見えた。どうも一望できるような作りになっているらしい。
 今は動いてないのか、訓練施設らしい広間も人はいない。ほとんどこの地下へのロビーやエレベーター前で待機している。
「それにしてもアキラが見えないな」
 鹿島の疑問はもっともだった。
「‥‥まさか、『コフィン』にいるんじゃ‥‥?」
 ベルが推測する。
「いくか‥‥」
 更に地下へ下る階段を下りていった。

●『コフィン』
 重い扉を開ける。
「うわ‥‥これが‥‥」
 地下1階とおなじ吹き抜けで、アクリルと鉄筋の橋で周りを一望できるようになっている。中央に生物が寄生した墓碑と思わせる建造物、その周りに、棺桶の形をした透明な『箱』があった。そこに人が眠っている。
「コレが、『コフィン』‥‥それに‥‥この数は」
 コフィンの数はかなりの物だ、40人以上と言っても良い。これは、無月達は「救助は難しい。いや、今の装備では無理だ」と判断するしかなかった。可能とすれば、『アキラをここから排除する』事と『周りを飛んでいるドラゴンを倒す』事が最重要となるのだ。
「‥‥救助が駄目なら‥‥あとは‥‥」
 全員が研究所施設階層に向かう事を考えている。
「研究所施設ですよね?」
 アキラ・H・デスペア(gz0270)が遠くの方に立っていたのだ。
「直通ルートおめでとう。たいした物ですよ。こちらの警備は私だけですから」
 拍手を送る。しかし、相手も踏み込むようなことはしていない。
 銃や武器を構え、迎撃に備えるが、アキラは肩をすくめた。
「ここで武器を使えばどうなるか分かるでしょう? アクリルや鉄筋の橋も耐えられませんよ?」
 しかし、挑発に乗ることはない。
「今回は巧くやり通せたあなた達の勝ちですね。このまま私を倒しますか?」
 明らかに挑発しているアキラに。
「決着を着けたいのならいつでもどうぞ‥俺達は必ず受けるでしょうから‥‥人質なんて‥‥他に優先する対象が無ければですが‥‥」
「悪いがいま、お前と関わってる暇はないんだよ」
 無月と鹿島が言い返す。
「ほう、結構冷静ですね。どのみち100人を上る『コフィン』の人々を救い出すには‥‥まあここの破壊しかないでしょうね‥‥」
 笑うアキラは、そのまま奥へと戻っていった。その先には大きな扉だった。
「格納庫か?」
「それにしても、違和感があるな」
 ファルロスが睨んでその先を見るが、用心深い穣治は行くことをためらう。
「‥‥アキラを追うことはありませんよ‥‥」
 ベルが戻ろうと示唆した。
 地下一階にいけば戦闘は回避できない状態を知ると、見取り図と人質の数を知っただけでも上出来だと思う。これ以上の戦闘継続は脱出を考えると好ましくない。さらに放たれている竜から逃げるためにも体力は温存するべきだった。
(「‥‥いずれ決着は俺がつけます‥‥あの人が守り通せるならば」)
 ベルは決意を込め、その場を去った。

●最強の護衛
「ほう、追いかけてこないとは、賢明な判断です」
 アキラがいる場所は、あの『最強の護衛』の巣だった。まだそれは戻っていないが、巣の危険もしくは、アキラの危険かコフィンの危険を察知して戻ってくるように、設定されている。
 何とか傭兵達は2階に増えたキメラや強化人間を蹴散らし、血路を開いていく。傷が深ければ穣治やファルロスが直ぐに仲間の治療に当たって連携をしている。
「閃光手榴弾を頼む!」
 先陣を切っている鹿島が殿だ。未早は直ぐに投げ入れ追撃を怯ませた。出口は鉄のシャッターでふさがれているが、見取り図を持っている一行に対策はあった。
「離れろ!」
 鹿嶋がフォルトゥーナ・マヨールーに貫通弾を込めてドアごと撃ち抜く。至近距離だったため、かなり大きな穴になり、そこから出られる。もっとも、それで蹴破ってもカーテンのような弱さしか残ってなかった。

 まずはベル、無月、時雨、穣治がでる。その次に鹿嶋、未早、ファルロスと続いて、ダッシュで逃げる。
 怒っている竜は、空高くホバリングしては、そこから 炎のブレスを吐いているのだ。
「うわっちゃああ!」
 穣治が飛び火に尻を焼かれてしまうが、直ぐに転がって消化し、ジャングルに身を隠す。
 ベル達はそのブレスを回避していくが、最後に転がるしかなかった。後列の鹿嶋達は、相手の目線を予測して、
「コレが最後だ!」
 鹿嶋が閃光手榴弾を投げつけた。
 光る中を必死に走る!
 しかし、今回は効き目が薄いのか又ブレスを吐いてきた。その場所にはすでに傭兵達はいない。
「あいつ、研究所近くで暴れるけど‥‥内部を知って納得したな‥‥。『上はあってもなくてもどうでもよい』わけだ」
 鹿島が密林に隠れながら、あの巨大な護衛を見ていた。あの建造物はあの巨大ワームの攻撃に耐えられるようになっているのかは疑問だが。
「こっちを追いかけてくる前に、逃げよう」
「そうですね」
 未早が頷き、全員も竜の追撃を避けるために全速力で逃げる。
(「待っていろ‥‥アキラ!」)
 誰もがそう思っていた。

●最終戦へ
 負傷や練力がぎりぎりの状態になった一行は重体者もなく、なんとか戻ってきた。
 直ぐに治療は出来たが、全快といかず、まだ痛み止めの注射もして次の準備を整えている。
「ふむ‥‥」
 ウィルソン・斉藤(gz0075)が見取り図を見て、考え込んでいた。
「これは、地上は無くなっていてもかまわないという事だな。飾りみたいな物か。おまけにあのでかい敵は生身では無理だな‥‥よし、KV出撃の許可を出そう‥‥」
 コフィンからアキラを退けさせ、あの巨大竜を仕留めないと行けないのだ。

『コフィン』にとらわれた人々を救い出すために。