タイトル:【リズ】Sneakマスター:タカキ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/28 13:09

●オープニング本文


 リズ・A・斉藤(gz0227)は、ナシュビルと、別区域にある補給地点の地図を入手していた。
「ここに、人類側がとらわれていると言うことですか? 少佐」
「そう言う情報があるだけで、洗脳される前に救出が出来ればいいが、まずはこの補給地点を調査しなくちゃならん」
 ウィルソン・斉藤(gz0075)が煙草を吸いながら、全体の地図と、敵の予測行動表の走り書きのメモ、昔のその『補給地点周辺の地図』や今の遠方からとった写真などを広げていく。
「この州道から、トラックなどで運んで、人間の物資を運ぶのは向こうも同じようだ。ワームがひっきりなしに動くのは、向こうもやばいと思っているだろう。補給用のワームはむやみにでかいからな。生物押しての必須な物資は、人間側が使っていた物を使うんだろうな」
「ええ、車の利便性は向こうも知っているようですし、親バグア派が全員ワームやキメラを使えるわけではないですからね」
 まずは、指令では、この区域にある補給地点の規模調査、救出すべき人間の有無らしい。
「本当はすぐに助けるべきだが、いかんせん情報が不足している。こっちも下手にKVをだすと大事だ。幸いこの区域は、リズが言う『境界線』だからな。生身がいいだろう」
「はい、私もここはずっと気になっていました。周辺で補給部隊の物資を奪ったこともあります」
 この場所についての地理に詳しい彼女だが、周辺を上手く利用し生き延びていた。

 ここからは違う。解放するために、一つの補給地点を偵察する。この地区を奪還するために。
「俺が今、出来る事はここまでだ、リズ‥‥。あとはお前が仲間を集めてするんだ。お前が依頼主になり指揮官になる‥‥だが‥‥」
 紫煙を燻らせながら、斉藤の途中から口調が変わる。
「皆でしっかり行きて戻ってこい。お前の料理も食べたい」
 父親のように優しく言うのだった。
「パインサラダは作りませんからね、安心してください。養父さん(おとうさん)」
 ニッコリとリズは微笑んだ。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
風代 律子(ga7966
24歳・♀・PN
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
風雪 時雨(gb3678
20歳・♂・HD
風雪 六華(gb6040
20歳・♀・ST

●リプレイ本文

●集合
 作戦キャンプの周りは砂埃が舞っており、少し肌寒い。周りはかなり広範囲を見渡せるために、戦争の傷跡がくっきりと見えている。ファウンダーとリズ・A・斉藤(gz0227)が用意した、地図はほとんど手が加えられており、逆に読みづらくなるほどだった。
「其処まで変わっているのか」
 不破 梓(ga3236)が、むむっとうなっている。
「別のコピーで要所は書き直してます。お姉さん」
「あ、そうならいいが、お姉さんじゃなく、梓でいい」
「‥‥あ、はい、梓さん」
 リズは前の訓練時に彼女を尊敬している。
 大体人数がそろってから、挨拶が始まり、相変わらずセージ(ga3997)は握手をリズとするところで、横から声がした。
「遅れて、済みません!」
 風雪の双子のようだ。しかし、片方が何か違和感がある。確か男だったはずだが。
「なぜ、自分がこんな格好を!」
 ああ、確かに男だった。
「兄さん、似合ってるからいいじゃない」
「あ‥‥、双子の姉妹さん?」
 リズが目をまくるして言う。
「いえ、自分は男です。姉妹とか言わないで‥‥」
「え? ‥‥?」
「俺に振られても困る」
 リズがセージをみると、肩をすくめるだけだ。握手することなんか忘れてしまうほど強烈だった。
「いや、妹が‥‥これを無理矢理着せて‥‥」
 風雪 時雨(gb3678)と風雪 六華(gb6040)の双子兄妹だが、六華と関わると、兄は100%女装らしい。今回はカンパネラ制服の女性物だ。
「‥‥何してるんですか? 遊びじゃないんです‥‥」
 少し声を厳しく発しているのはベル(ga0924)だった。彼は結構真剣にこのことに取り組んでいる。
「はい、すみません」
 平謝りの時雨であった。
 今回時雨はAUKVを持ってきていない。軽装という点では条件はいい。しかしスキルはないだろう。
 風代 律子(ga7966)は潜伏用スーツですでにスタンバイ済みだ。
「ランタンなどの照明ある?」
「確認しましょう」
 水上・未早(ga0049)も荷物の確認をする。
「‥‥未早、そっちは任せました」
 ベルが、未早の手伝いに加わった。
「はい」
 鹿嶋 悠(gb1333)も作戦の立案とまとめをして、リズと話はするが、何かしらぎこちない。
 それを横目で見た未早は、「ほほう」と気づいて微笑むだけであった。

 書き直しや訂正などから導き出された地図を作るのはリズの仕事だ。要点と推測を別紙に書いている。それを全員頭にたたき込んで、班分けをする。
 周辺を担当するA班のリズ、鹿嶋、六華。下水道をメインに進むB班は、風代、未早、セージ。そして、状況に応じてAかBに合流するC班が、ベル、時雨、梓である。
「はい、これがまとめのファイルです」
「ほう、結構わかりやすくなったな」
 周辺がそうなっているだけで、街内部がどうなっているか分からない。ただ、下水自体は、破壊という手段を用いない限り、劇的に変わることもない事がわかった。
「‥‥誰もサプレッサーはもってないから、完全に銃の使用は無理ですね‥‥」
 ベルが、難しい顔をする。持ち物確認すると、サプレッサーを誰一人持っていなかった。
「レアリティ高いんだっけ? あれ」
 此で難易度はかなり上がったと言っていいだろう。
「無いだけならないなりに、機転を利かしましょう」
 未早が微笑んで、皆に言った。
「威力偵察じゃない物ね。何事も慎重に‥‥よね」
 風代が、最終確認をすませてバッグやベルトポーチに装備をしまった。
 鹿嶋も自分の装備確認を終わらせ、喉を潤している。リズとは少し距離をとっているようである。いろいろあって、どう接したらいいか分からないというか、複雑らしい。しかし、未早は、彼が立案した班分けを見て、一言。
「ちゃっかり、リズさんと一緒ですか」
「ぶっ!」
 彼はその言葉にむせた。

 全員が揃って出発する少し前に、未早は再び作戦会議中に一度言ったことを繰り返した。
「もう一度言います。薔薇のバリケードはまずキメラと思います。芳香や蔦で私たちに異常を起こすことをするかもしれません。刈り取るなどしないと先に進めない場合には最新の注意を払ってください」
 そして、梓もこういう。
「最悪、連絡が取り合えない可能性も出てくるだろうな‥‥そうなった場合、潜入に使った下水の出口からやや奥まった場所。そこを合流場所としたいが‥‥どうだ?」
「それは賛成だな」
「了解」
「最終確認OK、ミッション開始」


●地下道
 リズとスナイパー2名、風代の先行偵察が功を奏し、木陰、岩陰を進んでリズが見つけた下水の入り口までなにも遭遇せずたどり着いた。鉄格子はさびており、そこから生活用水がまだ流れている事を知ると、人間はあの街の中で生きていると分かる。
 地図からすると、大凡直線で1マイルだろう。曲がりくねっているなら、更にかかる。
「明かりを」
 ランタンを用意し、ベルがジッポライターでそれぞれに灯す。
 錆びた鉄格子を、鹿嶋とセージで、力任せに引き抜いた。結構遠い位置なので、豪快に投げ捨てる。
「さて、行こう」

 確かに2mもあるかないかの狭い所だった。一行は歩いて行く。
(「生き物の気配がないな」)
 地下では距離感がつかめないが、数十ヤードは歩いているだろう。
(「‥‥息を止めて!」)
 そこで、未早が手を振っての『サイン』を出す。皆急いで止めた。痛烈な刺激臭と薔薇の香りがするのだ。
(「‥‥消臭剤の役目をしてくれればな‥‥芳香剤の失敗作か? この匂い」)
 と、セージは思った。
 暗視スコープで目をこらしてみる未早は、この先フィート先に、地上から地面を突き破り、繁殖している薔薇ではないかと推測していた。
 本来根っこであるはずなのにここも青々と生い茂り、赤い薔薇を咲かせていた。しかも、薔薇の花が「きしゃー」、「うぎょー」と気持ち悪い鳴き声を発している。蔦はうねうねと動き、確実にキメラと分かった。
「迂回するか?」
 毒ガスだと問題だ。幸い横道がある。無難に横道から迂回して、薔薇を回避していった。
 薔薇はおそらく地下の生物などを食べる食虫植物型になったのだろうと推測される。それに、レーダーの意味合いもあると、未早は思った。

 地上に出ると、一瞬周りが真っ白になる。内部に進入できた。
「見張りはないね‥‥」
 まず、風代が外に出て、転がって物陰に隠れる。そこから、スナイパーのベルと未早も班ごとに別れるようにでる次にリズがでた。セージと鹿嶋、雪風兄妹とつづいた。
 下水の匂いが、服や鼻にこびり付いているため不快感がある。しかし、リズは生い立ちや今までの経験。風代は職業柄、気にしてはないようだ。
「おっと、班で行動する前に‥‥」
 セージがリズに望遠鏡を渡した。
「俺の班は持って手も意味はないからな、あとでかえせよ!」
 セージはA班の2名と一緒に蟻塚ビルに向かった。
「え、ちょ、ちょおお、ちょっと!」
 リズはいきなりの事なので、ワタワタしている。
「仕事を続けましょう、リズさん」
「あ、はい、鹿嶋さん。六華さん、大丈夫?」
「そ、そうね。大丈夫よ」
 
「‥‥さて、俺たちも他の部分をさがして、最終的に合流しましょう」
「はい」
「わかった。殿は私に任せろ」
 C班も動く。

●B班
 蟻塚ビルに難なく潜入していく、3人は息をのむ。
(「余り人がいない?」)
(「見て!」)
 蟻塚は中暗く、またランタンか何か照明で進まないと難しい状況だ。そこで、ポニーぐらいある大きさの蟻キメラに、銃を持った人間が乗っていた。
「‥‥蟻塚だけに‥‥警備も蟻かよ」
 洒落ではない。絶対洒落ではない。
「エレベーターはあるみたいですが‥‥」
 暗視スコープからみてロビーには一応あるようだ。しかし。
「非常階段らしき物が見あたりません」
「まさかクライマーとは‥‥」
 移動手段が、蟻キメラを使うようだ。

 見つからず、目を暗闇に慣らしながら、大体の構造を知る。幸い、3人はロビーにあった、『総合案内』の看板をみつけメモをとった。ここの人間達が、念のために場所をここに書いているようだ。
「地下が食料庫、牢屋、動力室があって、更に地下二階がキメラの巣みたいですね」
 未早がメモを見て言った。
「ここで襲われたら容赦ないだろうな」
 セージが武器を再確認。警戒を怠らない。
「上に登るのは‥‥絶望的よね」
 風代が、天井を見る。蟻塚の独特の土の天井だった。本当に蟻を使って上り下りするしかないように、階段が急な勾配になっている。しかし食料などを置く、地下は階段がある。
 隠れながら蟻の行動を見ていると、小型カメラで蟻の生態を見ているTVを思い出す。それが巨大になっただけに恐怖がこみ上げてきた。余り気持ちがいい物ではない。
「地下に動力室もあるから、規模もある程度調べましょう」
 と、先に進む。漆喰の床(壁?)を降りていった。
 門出で合う警備を、一瞬で沈黙していき、コンクリートとリノリウムの床を歩いて行く。
「あちゃー。牢屋の区画は、蟻塚の漆喰か」
 かなり頑強に作られている漆喰の檻。此では中に何人いるか分からないので、動力炉の規模を調べてから、梓が提示した場所に引き返すことにした。
 ここの動力炉を写真と絵で納め、3人は無事蟻塚ビルから脱出できた。

●A班
 あたりを隠れながら見るリズと鹿嶋と六華。
「あれが蟻塚ビルに、メインストリートとキメラの流れ‥‥」
 メインストリートは来るまで動く事はなく、蟻キメラだった。死角を何とか探して、そこでみている。なにせ、1〜2階立ての建築物でも蟻が平然と登って移動していたからだ。『道なんてあってもなくてもいい』状態といえる。
「とんでもない要塞だわ‥‥」
 蟻ばかり見て、気が滅入る六華だが、超機械をしっかり持っている。

 大凡メインストリートと、彼らが居る場所から交差して2ブロック先で、建物が爆発し、煙が出た。蟻キメラとバグア兵(人間)の動きが、慌ただしくなった。
「なにがあった? まさか誰か見つかった?」
 緊迫する。
 今通信はできない。そもそも、ショップ売りの無線は一般の仕様。バグア区画ではジャミングで役に立たない。
 蟻塚からは遠い‥‥。無事を祈るか‥‥助けるか悩むところだ。
「あまり立地的な情報は得られませんでしたが、戻りましょう」
 鹿嶋が言う。リズも六華も頷いた。

●C班
 ベルが先行して、蟻塚、または周りを調べている。
 1ブロック先で、爆発が起こったことに、3人は緊張を隠せないで居た。
「まさか、A班?」
「合流地点にむかってから、居ない場合戻って見てくる事にしよう‥‥」
「‥‥そうですね」
 冷静になって対応する。もちろんベルが先行して、警備をスルーしていく。

 しかし、杞憂というか安堵の結果を知る。
 老朽化した建物に、蟻キメラが登って押しつぶしたとかいう、警備の話を盗み聞きしたからだ。蟻キメラは無事だが、乗っていた兵士も脳しんとうで救急車に運ばれている。
「‥‥キメラ以外の人間の道具は使うんだな‥‥」
 此はある意味、有意義な情報ではないだろうか? と、3人は思った。

 疲労の顔を見せながらも、無事合流地点にむかって、薔薇キメラを迂回し戻ってくることができた。
「はい、双眼鏡」
 リズが、なぜかむすっとしてセージに双眼鏡を返した。
 なぜ、彼女がむすっとしているのか、セージには理解できなかった。
 任務はまずまずと言うところだろう。


●想い
 書類でまとめる仕事も手伝って、デトロイトで数泊する一行。飯スタントになっている時雨は、相変わらず六華のおもちゃになっている。雪風姉妹(兄妹とかのツッコミはもう無しで)の発案らしい。
 この場にウィルソン・斉藤(gz0075)は仕事で居ないのだが、彼の家でしばらく寝泊まりすることに。しかし、多忙のせいで散らかし状態に未早や女性陣は溜息をつきながらリズと掃除をし、最後の仕事と一緒に和やかムードなパーティになった。結構リラックスする状態になった。

 人質の情報は得られなかったが、街の規模は分かったし、蟻塚の強度も大凡分かる。薔薇への対処法は今後考えなくてはいけないと、まとめていく。
「おわったー!」
 元から明るい性格だったリズは、報告書を書き上げて、背伸びする。
「お疲れ様です」
 と、鹿嶋がコーヒーを持ってくる。
「ありがとう」
「あの、お話があります」
 鹿嶋が切り出した。
「‥‥あう」
 何かを察したのか、リズは真っ赤になる。しかし、それがすぐに複雑な顔になる。
「俺にとって『大事な人』なのは確かです。しかし、『恋愛』とかそう言うのでは、まだ‥‥。もうしわけないです」
 と。彼も苦しい表情で、今の気持ちを伝えたのであった。
「いえ、あこがれだったし、それが、わるいわけじゃ‥‥ないもの」
 リズは、精一杯笑顔でいようとしたのだった。