タイトル:アミューズメント・Pマスター:墨上 古流人

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/10 08:19

●オープニング本文



 某所某日某時刻

 春の日差しと、風の冷たさの差が心地よい季節。
 外にいるのが苦にならず、冬籠りで溜まった鬱憤を解放するには丁度よい頃合いだ。
 皆そう思ってか思わずか、とある日本の地方の遊園地には、沢山の人が詰め寄っていた。
 数年前までメジャーであった主要なテーマパークが、バグアの占領管轄内となってしまっている為か、
 ここのような、アトラクションをただ並べ、フードコートを運営し、イベント会場を設けただけの、言ってしまえば『平凡』な遊園地でも、
 前数期の売上が格段と伸びている。どんな状況や時代であろうと、人々には、娯楽が必要なのだ。

「これはイベントじゃありません! 繰り返します、これはイベントじゃありません!! 慌てず、速やかに、前の人を押さないよう、スタッフの指示に従ってください!」
 だが、ここにまた、一掴みの娯楽さえも泡沫の夢と化され、奪われてしまうのであった。

「てめぇら! 動くな! 少しでも逃げようとしたヤツからぶっ放すぞ!!」
 すり鉢状に作られたイベント会場でスポットライトを浴びているのは、戦隊ヒーローでも新人アイドルでもなく、
 マイクで叫びながらサブマシンガンで威嚇射撃をする目だし帽の男だった。
 数分後に開催する予定だったショーを見る為集まった客は、火を近づけられた蜘蛛の子のように慌て逃げ惑いだす。
 が、見せしめなのか、単なる気性なのか、ある者は殴られ、ある者は逃げる背中を撃たれ、武装者の凶行の被害にあってしまう。
 もはや、避難誘導を最後まで全うすべき職員すら、人の雪崩れに便乗していた。
―――昼下がりの遊園地は、あっという間に武装組織により制圧された。

「‥‥恨むぞ、蜜柑‥」
 たまたま幸運の女神に見放された男、灰色短髪に銀縁眼鏡、今日もスーツ姿な井上 雅は、その遊園地のオリジナルデザインが描かれた土産袋をわなわなと握りしめ、
 避難の滞っている場所へ向かい、人の流れを逆走しだした。

「おい、兄ちゃん。それ以上動くとハチの巣だぜ」
 ひしめき合う人の流れを誘導し、客同士のトラブルを仲裁した姿が目についたのか、いつの間にか、至近距離で向けられていた銃口に、雅がゆっくり両手を上げる。

「‥三下と言うのは、台詞も三枚目なのだな。ベタ過ぎて溜息が出る」
 人差し指一本に自分の命が委ねられていると言うのに、至って冷静に、見下すようにあごを上げ、眼鏡の奥から相手を見やる。
 死ね、と男が言い放つ。次には雅がハチの巣だ。
 だが、雅は上げた腕の左肘を相手の手首に振りおろし、射線を自分の身体から脇にズラしたと同時に、左膝で骨を砕く勢いで思い切り挟みこんだ。
 思わぬ打撃に苦痛の声をあげ、拳銃を落とすが拾う隙は与えられず、男はみぞおちに感じた鈍い衝撃の後に、意識を失った。

「‥目立ちすぎたか。連絡を取るにもまず、身を潜めなければな‥」
 身体検査をする間も惜しんで、急ぎ、そばの係員専用通路へと飛び込んだ。
 そして、喧騒は、敷地の隅々まで行き届く、武力というプレッシャーの元、押し殺された。



「‥また私の担当に、親バグア派テロリストの事件が舞い込んでくるとは、ね」
 どうなってんのかしら・・? と、後頭部をかきながら言うのは柚木蜜柑。
 人目があるというのにタイトスカートで足を組み、ぐでっと浅くパイプイスに座る姿勢は、本当に女性なのかとツッこみたくなる。

「でも今回は、とちくるった素人テロリストじゃないみたいよ」
 まるで特殊部隊御用達のような、厳ついデジタル式の時計が電子音で時間を告げると、姿勢を正し、彼女は仕事モードに入る。

「代表者と名乗る奴からの声明によると‥やっぱり信条としては親バグア、で、すんなりとバグアのお偉いさんに取り入れてもらう為に、まずは日本のUPC、ULT関係の『モノ』を全て排除するため、この遊園地を拠点にする‥んですって」
 プロジェクターがメディアに向けて撮ったであろう、代表者の声明を映し出す。
 者、物、UPC関係なら、全部危ないのかしらね‥と、言いながら話を続ける。

「人質はとってない‥みたい。本当に『ベース』として使うつもりらしいわね。変に建物も頑丈だし、食糧も豊富だから、確かにピッタリなのかしら」
 プロファイリングには必要だけど、そこまで詳しく理解してやる気もないわね、と蜜柑。

「リーダーは、バグアが地球に来る前、日本の駐在米軍の有力者だった事が確認されたわ。その前はレンジャーの中隊長‥かなりの実力なんでしょうね」
 油断しないこと、と、びっとボールペンの先を向けて言い放つ。これは彼女のクセなのだろうか。

「ぁ、そうそう。私の知り合いの能力者が潜入に成功してるわ。通信も繋がってるから、詳しく知りたい事が出たら、彼に聞いて」
 まぁ、成功というか、たまたま私がお使い頼んだだけなんだけど‥と言う呟きは、果たして傭兵達に聞こえただろうか。
 後はそっちにスルーパスーと言うと、流れるような動作で自分の資料を片づけ、部屋を出ようとする蜜柑。

「気難しくて頭も固いけど、ま、お仕事達成の為にも、こき使ってやってちょーだいっ」
 何させても良いわよ、と言ったのは、果たしてその男への信頼か、それとも任務成功の為なら手段を選ばぬ性格なのか、
 まぁ、一旦忘れるとしよう。こうしている間にも、知っている『モノ』を無理やり犯され、泣いている『モノ』がいるのかも知れないのだから。

●参加者一覧

東條 夏彦(ga8396
45歳・♂・EP
優(ga8480
23歳・♀・DF
杠葉 凛生(gb6638
50歳・♂・JG
飲兵衛(gb8895
29歳・♂・JG
ウェイケル・クスペリア(gb9006
12歳・♀・FT
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF
黒瀬 レオ(gb9668
20歳・♂・AA
魔津度 狂津輝(gc0914
28歳・♂・HD

●リプレイ本文


 
「遊園地は子供も大人も楽しむ所だぜぇ。それを大人だけが楽しもうなんて、許せねぇなぁ そいつはよ」
 魔津度 狂津輝(gc0914)が、遊園地から少し離れたビルの陰で、パイドロスの座席に手を乗せ、気だるそうに体重をかけている。
「相手は元軍人さんですかい。それじゃあ、ちぃとばかり遊んで貰いやすか」
 腰に提げた刀の柄に左腕を乗せ、東條 夏彦(ga8396)が動かない遠くの観覧車を見上げて言った。
 その横では優(ga8480)が、今回も入念に事前準備を整えている。
 彼女が両手で広げている来客者向けのパンフレットには、各施設の大よその高さや制圧予定ルート、緊急時の合流場所等が書きこまれていた。

「親バグア‥か‥」
 頭の後ろで手をを組み、壁に寄っかかっていた黒瀬 レオ(gb9668)は、、
 初めて相見える思想への純粋な興味か、それともさほど興味が無いのか、ノリの良いリズムを響かせるヘッドホンを外し、そう呟いた。

「折角来るなら、遊びで来たかったもんだぜ」
 片方の手では閉じた扇子を口に当て、もう片方の手でガイドマップを広げているのはウェイケル・クスペリア(gb9006)―ウェル―だ。
 広げたガイドマップの逆サイドは、エイミ・シーン(gb9420)が担当して仲良く覗きこんでいる。
 そんなエイミの隣には、購入したばかりのSE−445Rがサイドスタンドで停めてあった。
 何やら、彼女の空いてる手の指は、先ほどから虚空を突くような挙動を繰り返しているようだが‥



「うー‥?」
「どうした、悪いもんでも食ったか?」
 声の響く狭く暗い道、一時のバディの体調を気遣う杠葉 凛生(gb6638)に、飲兵衛(gb8895)が気のせいか‥と腹をなでる。
 彼らが息を潜めて歩いているのは、パークの地下水道、水を使う機会は多いので、それなりに整った作りだ。

「しっかし‥普通に休日でこんな所に来るのなら良いんだがなぁ‥可愛い子ちゃんとならだが」
「かわいこちゃんじゃない所悪いが、ここから先は敵の警戒も増える。用心してくれ」
 彼らの後ろに付いて歩くのは井上 雅。傭兵達が潜入するまでに情報収集をこなし、結果、この地下で落ち合う事を提案していた。

「陽動班に突入するよう伝えてくれ。警備が減り次第、俺たちも動き出そう」
 雅の指示に、凛生が無線を飛ばす。レシーバーから微かに漏れて来たエンジン音を合図に、男達も銃を構え、歩き出した。




 入場券も使わずに容易くゲートをくぐれば、探査の眼など使わずとも、沢山の敵を視野に捉えられた。
「家族連れ‥って雰囲気じゃねぇな。連絡入れ‥!?」
 ゲートのすぐ近くで待機していた数人のテロリストが、傭兵達へゆっくりと注意を向ける、
 が、気だるそうに手に取った無線は、夏彦の投げた蛇剋の軌道にかすめ取られてしまった。
 まだメディアで情報が飛び交い混乱する中、傭兵達の早期対応に、占領を終えてひと段落したテロリスト達の士気向上は、追いついていなかったのだ。

「開始直前で潰されたものの変わりにはならないけど‥今からショータイムだ」
「ショーには不向きでしょうが勘弁していただきてぇ」
 レオの黒刀炎舞と夏彦の妖刀天魔が、同時に鞘を走り、地を駆ける。
 切り上げられた双刃は、敵のアラミド繊維のタクティカルベストを容易く切り裂く。
 レオは炎舞の炎で着火を狙っていたが、炎が出るのは覚醒時の一瞬だけだった為諦め、残心を取る。
 エイミのシャドウオーブを喰らった後方の敵が、苦し紛れにホルスターへ手を伸ばすが、走り寄った優の膝で肘を逆に曲げられてしまった。
 そのまま肩の関節を極め、鈍く光る月詠を男の首筋に当てる。

「十秒時間を与えます。このまま逝くか司令塔の場所を答えるか選びなさい」
「知るか‥俺達ゃ警察も来ねぇの良い事にダベってただけだ‥」
 収穫の無さに薄く溜息をつき、男の延髄に刀の峰を落とす。
「こいつは‥もうちょい中の方で聞きこむ必要があるみてーだな?」
 ウェルがしょうがねぇ、という感じに先を見やれば、思わず心躍りだすアトラクションの方面も、徐々に騒がしくなってきているようだ。

「コシュタ・バワー‥戦場を‥駆け抜けるよ?」
「バイドロスの特性を殺しちまうが、しゃーねぇわな」
 バイクに乗ったエイミがタンクを撫で、エンジンをかけた横では、狂津輝のAU−KVが既に振動を立てている。
 両機はやがて、それぞれ派手にウィリーとマックスターンを決めて、予定していた制圧ルートへと駆けだした。
「あまり距離は開けすぎないようにしてくれよな‥」
 追いつくだけで疲れちまう、とぼやいてから覚醒しなおした夏彦の横で、苦笑したレオが無線で先行く仲間へ伝えた。


 
「上が始まった‥のか‥?」
 依然地下水道を探索中の潜入班。
 隠密潜行で先行し、様子を伺っていた飲兵衛は、固定して配置されていた敵が踵を返して行くのを見た。

 飲兵衛の後ろの方では、凛生と雅が前方に注意を向けつつ、潜めた声で相談をしている。
「このパークの運営や事務に関わる中枢は、フードコートの地下にほぼ集まっているらしい」
「そこへ行こう。首謀者がいなくとも、防犯カメラの映像で位置を掴めるかもしれない」
「そうなると‥飲兵衛の先の敵を、排除しなければならなくなるな」
 雅がそう言うと、会話を聞いていた飲兵衛が、敵を見張りながら親指を立て、後方の凛生達へ見せる。
 二人が近寄り、曲がり角から顔を出せば、そこには銃を提げた二人の見張りが立っていた。

「声や音は響く。即殺を心がけよう」
 雅がS−01を構え、飲兵衛と凛生が頷く。敵の一人が欠伸を始めた刹那、二人は角から一気に飛び出した。
 テロリスト達は表情こそ変えるものの、武器を構えるまでには飲兵衛の発砲を許してしまった。
 敵の腿に命中し、思わず苦痛の声を上げそうになった所を、近づいた凛生に口を押さえられ、駆け寄った勢いでそのまま地面に叩きつけられる。
 凛生はそのまま、もう一人の敵を回し蹴る。首を刈り取るように放たれ、体重の乗った後ろ回し蹴りも、敵を地に容易く崩す。
 飲兵衛が構えたまま近づき脈をとれば、まだ生きている事がわかる。敵はそのまま目立たないよう、パイプの陰に転がす事にした。

「とりあえず、フードコートだっけか? そこへ向かうよう言っておくよ」
 飲兵衛がまた先頭に立ち、進む前に無線を繋ぐが、
『とりあえず向かうけどよ、今はそれどころじゃねー!』
『のんさん空気読めー!!』
 静かな地下水路に響いた無線は、数々の銃声と、幾つもの敵の怒号。そして爆音と仲間からの苦情だった。
「く‥空気読めは無いんじゃないかっ!?」
「ま‥まぁ、向こうはイヤでも敵を惹きつけるからな、テンパってるんじゃないか‥?」
 何がなんだか訳のわからない、という顔で無線を見る飲兵衛に、少し同情を覚えてから、雅がフードコートへ繋がる道を指示しだした。


 
 数分前の陽動班は、まさに孤軍奮闘と言える働きをしていた。
 何せこのパークは普通の道でも、随所随所が混雑を緩和する為かなりのスペースを確保してある。
 近づいて来た敵に囲まれないようウェルが扇でいなし、小手返す。
 本来強襲目的で使うはずだったエイミのバイクも、取りに帰る暇がないので持ち込み、結果的にその目立つ様は陽動の要となっている。
 駆け付けてくる応援部隊へ即座に突っ込み、ハンドルと一緒に構えた忍刀で敵を撫で切っていた。

「増援も撤退も‥中央の方から来てないですか? ‥もしかして、大事なものがあるのかも」
 闘いながらも常に敵の動向へ気を配っていたレオが、シエルクラインで弾幕を張り、牽制しながら言った。
「あちらは確か‥パークの中央、フードコートですね」
「兵糧を削るっつー意味では、そっちも潰しとくべきかもな?」
 優が敵のナイフの軌道を月詠の刀身へ走らせ、身体の横に逸らした後、凄皇で袈裟切りを浴びせれば、エミタらしきものを胸に埋めた男が倒れる。
 ウェルも敵のしぶとさに嫌な予感を覚え、大鎌「紫苑」を取りだす。
 石突を敵の下顎へ振るい、その反動で鎌を抉り込む。引き抜き、間髪いれずに蹴って間合いを取り、フルスイングで刃を横腹へ埋めると、彼女の倒した男にも、エミタが埋めこまれていた。

 パイドロスを着込んだ狂津輝は、静かに構えたと思ったら、突撃し暴れ切り、豪快で華やかな新しい剣舞でも舞うかのように、敵を前線で斬り飛ばしていた。
 竜の咆哮で飛ばされたテロリストが再び斬りかかれば、顔面クローで敵を宙に持ち上げる。

「無駄に抵抗するからよぅ だから紅い染みになっちまうんだよ ヒャッハー!」
 彼らの周りから、徐々に敵が減ってきたように見えた。
 が、それはただ減ってきた訳ではないと気づくのは数拍先だ。

 突如、激しい爆音と共に地面が削れる。
 何事かと態勢を立て直し、辺りを警戒すると‥‥パークの目玉のジェットコースターのレールの上で、2本の鉄の砲身と、数機のガトリングを備えたコースターが走っていた。

「スピード抑えて動かせば、列車砲として使えるってぇわけですかぃ、やっこさんも考えやすねぇ‥」
 そして、前線で暴れて居た狂津輝の横を、高速の弾が駆け抜け、あまりの風圧に流石のドラグーンもよろけてしまう。
 その弾を放ったのは、彼の数十m先で、列車砲よりも大きな砲身をこちらに向けている、煌びやかなネオンと派手なペイントに無理矢理武装を積んだ、パレード用のゴンドラだった。

「や‥やれるかなぁ‥?」
「戦車を相手にするようなものです、逃げましょう‥!」
 浪漫の鉄拳をエイミが構えてみるが、優が冷静に戦力差を見切り、提案すると、ゴンドラが、パレードで見せるには早すぎるスピードで傭兵達に迫ってきた。

『こちら飲兵衛。聞こえるか? どうやらフードコートの地下がパークの中枢らしいんだが‥』
「とりあえず向かうけどよ、今はそれどころじゃねー!」
「のんさん空気読めー!!」
 必死で駆け、逃げ、足を運ぼうとした場所は吹き飛ばされ、絶えず鉛の雨が降る恐怖。
 一同、歩兵の敵の相手も最小限に、命からがらフードコートの係員通路に飛び込む事に成功した頃には、
 春の陽気を恨めしく思う程に汗をかき、息を切らしていた。



 
『地下3階には行かせるな!』『入口で食い止めろ!! 守備に能力者を周せ!』
「‥なるほど。地下3階にいるんだな?」
 ウェルが敵から拝借していた無線から、ノイズ音に埋もれて貴重な情報が漏れてきた。
 急いで降りて廊下を見やれば、飲兵衛が敵を組み伏せ銃口を当て、凛生と雅が両開きのドアに張っているのを見つけた。

「向こうも構えているだろう、油断するな」
 凛生が親指でドアを指さし、閃光手榴弾のピンを抜く。
 どうやらこの奥が首謀者の居場所らしい。9人で突撃するには多いので、雅と狂津輝が廊下の警戒に周り、ドアの向こうに眩い光が弾けた刹那、
 傭兵達が部屋の中へと雪崩れ込んだ。

 一番に飛び込んだ凛生が、ドアの両側で構えていた敵へ、両手を左右に伸ばし、それぞれマモンとラグエルの洗礼を浴びせる。
 思い切り光を目に焼き付けてしまった室内の男達は、ほぼ奇襲に対処出来ずにいた。
 部屋の隅で、銃を苦し紛れに乱射する男がいたが、舞うように弾を避け、歩み寄るウェルにあっさり意識を落とされてしまう。ドアの外では、狂津輝が近づく敵を片っ端から、竜の咆哮を乗せて弾き飛ばしていた。
 
「首領発見、かな‥!」
 少し後ろから入ったレオは、素顔を晒した、首謀者らしき敵を相手どる事となった。
 致命傷にならぬよう、ソニックブームを足元へ放ち態勢を崩した所へ、刀の峰を思い切り腹へ沈める。

「‥あ、れ?」
 後ろでエイミがロケットパンチを構えて居たのに気付いたので、トドメを任せ次の敵へ向かおうとしたが、
 首謀者らしきその男は、レオの峰打ち一撃で意識を失ってしまった。
 思いがけぬ呆気なさには多少困惑したものの、その男が動かなくなると、残りの敵も動かなくなり、必然的に傭兵達も戦う手を止めたのだった。




 園内放送で敵に投降を投げかけると、意外にも素直に応じる者が多かった。
 逆上し暴れ出す者も、投降した敵の有志が諌め、武装解除を促していると言う。

「逃げる人にまで銃ぶっ放しといて、何がしたいの?」
「親バグアになるからには、それなりの覚悟ができてるってことだろう?恨みっこなしだぜ」
 園の正門前広場にて、連行してきた首謀者を見張る傭兵達。
 宗教と同じ、誰が何信じてようが僕にはどうでもいいと言うレオと、凛生が、後ろ手に縛られ座っている男へ声をかけた。
 無念そうに首を振り、やがて深い息を吐くと、二人を見上げ、言葉を紡ぎ出す。
「私は別に、バグアに理解を示したつもりは少しもない‥実は、すんなり取り入れてもらって、そこからバグアどもへ復讐を果たすつもりだった‥」
 緊張が解けたのだろう。自責の念か、悔恨か、男は少しずつ、嗚咽交じりに言葉を続ける。

「軍人にもしもは禁物だが‥もし、私が能力者だったのなら‥もし、私が少しでも抵抗して、あのままバグアに殺されたのなら‥もし、私があそこで、妻をヨリシロにされなかっのなたら‥こんなことはしなかったんだ‥」
 は、と息を飲む凛生。人には人の考えや事情があるゆえ、それを否定はしない。だが、否定もしないが容赦もしない彼は
 今ここに、自身とほとんど同じ境遇の男を、目の前にしていたのだった。
 同情か、励ましか、だが起こした事実に目を瞑る事は出来ず、複雑な思考の中、男の肩に手を乗せると、

「ただ‥ここに来てた人達は、少なくとも死にたいなんて誰も思ってなかったはずだよ」
 レオが、言葉を続けた。
 その一言に、男は何か恐ろしいものでも見たような表情になり、声にならないような声で叫び、
 そして、少しずつ涙で地面を濡らしていった。


「そのまま動くな」
「ん‥!?」
 飲兵衛が仕事納めの一服をしていた所へ、雅が近づく。
 指で拳銃を形どって脅した後、そのまま自分の咥えた煙草を、飲兵衛の煙草の先へ当て、火を奪った。

「すまんな、丁度切らしていたんだ」
 言ってくれれば‥とライターを出す飲兵衛に、面倒だった、と返す雅。
 その後ろから、ベンチに座ったウェルの頭に顎を乗せるよう、後ろからハグしてまったりしていたエイミが声をかける。

「ショッピングモールで、最後にお菓子の許可くれたの‥雅さんでした?」
「‥あぁ、あの時も協力してくれたのか。感謝する。だが、それは恐らく俺の‥」
 部下のような下僕だ、と返しながら不敵に笑う雅に、エイミとウェルはただ苦笑するしかなかった。

「内輪揉めしてる状況じゃないってのにな‥」
「全くだ。だが、全員が全員、YESと言う、そんな世界もありはしない。バグアの有無関係無しに、人間なんていつでもそんなもの、だ」
 昇る紫煙をそこはかとなく見つめ、見放したようにも聞こえる言い方で、雅は呟くのだった。