●リプレイ本文
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某所某日某時刻。
涼やかな風が木漏れ日を揺らす。
踊る光の上を舞いながらかき集められるのは、落ち葉。
低い空から絞られた淡い日差しと、冷たい空気にどこか心地よい表情を浮かべながら、
石動 小夜子(
ga0121)は動かしていた箒の手を止めた。
拝殿の石段、座った時の冷たい感触に小さく声をあげ、
気づけば柱に寄りかかっている自分がいる。
そして、ゆっくりと目蓋が落ちて行ってしまっていそうになる。
冬の風が吹き、少しだけ裾がなびく。
境内には穏やかな時間が漂っていた。
静寂を破るのは、とても容易い。
ワインが注がれた樽の中に、たったひと匙の泥水を入れるだけで、それは泥水になってしまうのだ。
不穏な風が境内を取り囲むように辺りに靡く。
木々はざわめき、空には暗雲が立ち込めた。
「石榴さん、濡れないといいのですけど‥‥」
雨の気配と悟ったか、小夜子はぱたたと小走りをして、縁側の方へと避難してゆく。
遊びに来ていた友人、弓亜 石榴(
ga0468)の事を心配して、傘の用意に急いだ。
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「‥‥何の音だ?」
石階段をのぼりながら、井上 雅がまだ先な階段上を仰ぐ。
不穏な音がした方向を不確かに向き、ジャケットの下に提げた銃を確認しながら駆け出してゆく。
鳥居を抜けた先、縁側に面した庭では多数のキメラ(ようなもの。もはや)に囲まれている儚げな巫女が視界に飛び込むではないか。
「危ない‥‥! 伏せろ!!」
急ぎ巫女に牙を剥く人狼型に3発の銃弾を放つ。
だがその隣のメイド服(のようなもの)を着た猫型キメラ(のようなもの)が放つ目からのビームに、
雅の体は一瞬にして焼かれてしまう。
「くっ‥‥どうなっているんだ‥‥ここ最近のキメラは何かがおかしい。今までの法則を無視しているような‥‥」
しうしうと体から煙をあげながら、痛む体をどうにか立たせる雅。
そうこうしているうちにも、心配そうにおろおろと見つめる小夜子にキメラ(のようなry)の毒牙が迫る。
だが、小さな倉庫から顔を出した小夜子は、とっさに鍋の蓋で禍々しい刃を受け止めた。
「この神社は無手勝流でも承継しているのか?」
「普段から戦う心構えを忘れないのは、剣士として当然の事です」
凛々しくも必死に敵の攻撃を受け流し、「ぁ、ちょっとすみません‥‥」と傘を丁寧に傍にに置いてから、改めて刀を構える小夜子。
「気を付けてください‥‥きっと、この虎キメラの金運能力とヤギキメラの無限牛乳生産能力で、世界経済を混乱させるという人類滅亡計画の一端に違いありません!」
「‥‥金運はむしろあやかりたいが、牛乳で人類滅亡につながるとは考えにくいが」
「いいえ、牛乳が絶え間なく溢れて地球を浸食してしまっては大変です!」
ぽかん、とした後、きょろきょろと辺りを見回してからため息を吐く雅。
「どうか‥‥なさいましたか?」
「どうやら今回もツッコミは俺だけのようだ‥‥」
うなだれる雅と、刀を構える小夜子。
オオカミ型が振り下ろす爪を頭上で防ぎ、三日月を描くように空いた胴へと軌道をなぞる。
雅も甲高い笑い声でやたらと白い手をこちらに降ってくるネズミ型に対して絶え間なく銃を放つが、
どうやらここのキメラ(ry)は二人の必死の抵抗をもってしても全く疲弊しない。
二人は段々と肩で息をするようになり、筋肉に溜まる乳酸がもはや体を動かそうとしてくれない。
「そちらは‥‥大丈夫ですか‥‥?」
「正直に言えば、ダメだ‥‥というかこのネズミ型に一言でも喋らせるとまずい気がして攻撃を止められん!」
リロードしては撃ち、撃ってはリロード、そうして銃声を響かせ続けないと、
いつあのハハッ♪という陽気な笑い声や、夢と魔法と金と欲望に塗れた不法領土侵犯による国の王様だという事を名乗られるかわからない。
そうなればいくら初夢とはいえこのコンテンツはただでは済まないだろう。
「くそっ‥‥どうする‥‥っ!!」
「おっけー了解判りました!」
突如、どこからともなく陽気に表れた石榴がぽんっ、と人類対著作権の間に割って入る。
「石榴さん‥‥! 濡れませんでしたか?」
「いやそれどころじゃないだろう」
そっ、と小夜子が取っておいた傘を石榴が受け取ると、
しゃららんっと不思議な軌道と効果音で振り回した後に、びしっとキメラ(のような著作権)に突き付ける。
「そんな彼らに対抗すべく私たちも魔法少女に衣替えしよう!」
「‥‥も?」
「細かい事を気にしたら地球は救えませんよっ! 私もミニスカシスター服にするから大丈夫!」
「何がd」
ぽいぽいぽい、と、小夜子どころか雅にさえも手を伸ばし、敵中にも関わらず魔法少女へのお着替えが侵攻していった。
上手いこと見えないように衣服や敵の影が二人の体を遮る。おい雅どけ、小夜子が見えない、石榴がもう少し。
「とりあえず小夜子さんはミニスカ巫女服!」
実際にじゃじゃーんとSEが聞こえてきそうなぐらいのノリでお披露目致すは、
袖と胸部がいい具合にセパレートされた肩部をいい具合に露出した衣装、、
決していやらし過ぎず、だが服の上からでもしっかりと豊かな主張がわかる、
そのミニな袴の絶対領域は、まさに神界、マジカルかしこみ。
対して石榴のミニスカシスターは、清楚なシスターというイメージをじわじわと背徳感が蝕んでゆく。
吊るされたキリストの如く真っ直ぐに垂れ下がるはずのロザリオは双丘に遊ばれた胸元の服の波に飲まれ、
その惜しげもなく晒された肉感溢れる太ももと清楚な白いハイサイ、後光に照らされ艶のでたそれはまさに聖域、サンクチュアリ。
「さて、お約束通りお着替え中は攻撃してくれない敵さんに感謝しつつ、戦闘開始だね♪」
「待て」
まるで冥府の国からエウリュディケーを連れ出すオルフェウスが如く、後ろを見ようとしなかった二人。
小夜子が恐る恐る振り向けば、そこには、すねげ。そこを敵の群れが隙をついて怒涛の
「俺の紹介それだけか」
今や、スーツでメガネでクールチューニーな感じの井上 雅はそこにはいない。
お坊さんが揃えば完璧なんだけど、頭数が足りないから、ぷりちーなミニスカお坊さん衣装を着てもらおう♪
石榴のそのたった一言が、すべての因果律の調和を乱してしまった。
さっきまでは日曜日の朝8時辺りの時間帯でも難なく放送出来る雰囲気であったが、
こうも野郎のミニスカ袈裟姿が生活公害のようなものになろうとは、
これは有料チャンネルでも際どい放送コードであった。CEROならば難なくZを超す。
「ま、まぁまぁ、衣装に罪はないですから。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いだなんて大人げないですよ?」
「そもそもとしてまずこの袈裟が憎いんだ!」
「あ‥‥小夜子さん、でも、今チャンスです‥‥!」
そう、あまりにも現実離れした石榴のコーディネートと雅の姿に、敵はオーバーなスキルを用いずとも凍り付き、
ほとんどが戦意を喪失しているのだ。
「よーし、そうと決まれば一気に殲滅しちゃうよー♪ 魔法のハゴイタソードをくらえー!」
シスターの袖より取り出されるハゴイタソードは、マジョソウルに震えるほどビートし、
キラキラしたジュンジョカレンなキレイさとキュートさとはアイハンして、伴うそのソードのスルドイデス・キリには、
アトモスフィアごとテキ=サンをタタキキルなどチャメシ・インシデントなのだ! ナムサン!
「最後はかわいいポーズもセットの方が、より可愛くなるね♪」
「その通りよ!」
「もういい黙れ。そして帰れ」
「ここで出ろと囁くのよ‥‥私のゴーストがね」
バタバタと倒れていくキメラ達。インガオホー。
そこにここぞとばかりに鳥居の上から飛び降りてくるのは、魔法少女・まじかる・ミカン。
なお、バストは放漫であった。
「さあさあ、小夜子さんも井上さんも恥かしがらずにポーズをキメないと。なにせ魔法少女の攻撃力は、可愛いポーズを決める事で何倍にも増幅されるんだから!」
小夜子が真面目に刀を突出し、敵の繰り出す槍の絵をつーっと滑らせ、そのまま鳩尾に柄を沈めた後、滑らせていた刃で敵の懐を切り裂きながらバックステップ。
「またつまらぬ物を斬ってしまいました‥‥」
「ダメダメ全然ミラクルでマジカルじゃないよっ! もっとかわいいポーズにしないとっ」
「ポーズ‥‥ですか‥‥」
何やら真剣な面持ちで考え込む小夜子。その刀に向かって、一番よく見える顔の角度を探してみたり、手を添えてポーズを軽く取ってみたりする。
「バカやってる場合ではないぞっ!!」
ミニスカ坊主・みやびんがまじかる・りぼるばぁのトリガーを、半ばヤケクソで襲いかかってきた敵の群れへオールヤケクソで引き金を引く。
もう既に6発以上撃っている気がするが、そこはまじかる。とにかく撃てるだけ撃ちまくるのだ。
そんなみやびんの頭上をふわりと舞い上がり(ミニスカ内部はエフェクトの光がよい仕事をしてくれました)
優雅に体をひねり「まじかる〜‥‥唐竹割り‥‥!」いなし「まじかる〜‥‥パリィ‥‥!」回転し「まじかる☆キリモミ‥‥!」
敵を宙にいながら切り伏せてゆく小夜子。まるで魔法少女の鑑ともいうべきスイートでプリティでYes!でフレッシュでハートキャッチなスマイルが思わず零れてしまいそうだ。
もちろん、斬りつけながら考えていた決めポーズもびしっと忘れない。子供も大人もガッチリ鷲掴んで離さない。
なお、小夜子の振り回す魔法のカタナとマジカル小夜子変身セットは税込価格で100000C。
使い道を持て余してしまったお給料の使い道に、是非。
グッズ販促方面へのお仕事も忘れないのはさすがマジカルだ。これならば朝の良い放送時間枠を狙えるだろう。
「さぁみやびん! 臍の下伸ばしてる場合じゃないわよっ!」
「伸ばすのは鼻の下だ、もうこの悪夢をどうにかしてくれ‥‥」
うち拉がれるみやびんの腕をみかんがすっと支える。
そして小夜子と石榴が並び、小声でせーのっ、と唱えれば、
「ぷりちーまじかるあたっく☆」
指先ひとつ、いや、正確には今後の子供たちへのホビーグッズ的な販促戦略を踏まえ、
魔法のマニキュアとラメがあしらわれたつけ爪より放たれる、必殺技は、
敵の内臓を超高速分子レベルで揺るがしどんなに硬い装甲でも内部から破壊していくという恐ろしくも効果覿面のまじかる☆な必殺技なのだっ!
「‥‥‥もうやだ」
顔を覆って体育座りのミニスカ坊主。
その後ろの方ではまじかる☆な少女三人が爆風と共に決めポーズを取っていた。
「さぁ、まじかる☆まーしなりーず! この世界の危険が危ないのはまだまだ変わっていないわよっ! 私達の活躍は、次元も時間も凌駕するんだからっ☆」
いつのまにか、鳥居の中央ではなにやらトリップ出来るドアーのような不思議な空間が渦を巻いていた。
そして巫女さんとシスター、嫌がる坊さんの腕を引っ張って、まじかる☆みかんは鳥居の向こうへと消えていった。
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某所某日某時刻。
白い無機質なオフィスに降り注ぐ蛍光灯の明かり。
パソコンのファンはどこの机でもフルに稼働し、歩けばあの特徴的なオゾンの香りが鼻をついた。
中吊り広告のサンプルや、種々の刊行した表紙の一覧が飾ってあるのを見るに、
どうやら何かしらの出版社であるということは伺えた。
「んー。そうね、こっちの方が小奇麗だと思うけど」
何かと慌ただしい言葉と動きが飛び回るフロアで、涼しい顔をして顔を向けたのはミシェル・オーリオ(
gc6415)
この出版社の雑誌の編集長を任されている彼女は、くるっと椅子を回転させてひとりの女性に資料を差し出す。
摩天楼に面した大きなガラスから差し込む斜陽が、彼女の微笑と共にまぶしかった。
「そうですか? 私はこの見やすさを優先した方が読んでもらえると思うのですけど‥‥」
臆することなく、編集長にお伺いを立てるのは新人の少女。
上司部下関係なく、広く意見を取り入れるのは組織の成長の要であるが、
そもそもとしてこの新人は見込みがある、そうミシェルから目をつけられていた人材だった。
「ふふ。そね。なら資料室から先週号、持ってきてくれる?」
「先週号ですか? わかりましたっ」
「あと、帰りに情報部から『いつものちょーだい』っていってらっしゃい」
「え?あ、はい…。」
分かったように振る舞う癖と言うのは抜けないもののようだ。
聞くのも仕事のうち、新人がこの教訓を自分の新人に語るようになるのはまだまだ先の話である。
パタパタと駆けだす背中を見送りながら、椅子に体を預けコーヒーを飲むその姿はさながらバリバリのキャリアウーマンである。
ふと時計を見れば、定時が刻々と近づいてくる。だがもうしばらくはこのオフィスが離してくれる様子もなかったし、溜息ひとつ、離れる気もなかった。
――――そう思っていた。
「戻りましたー。えっと、いつもの‥‥って」
「速報、ね? ふふ。じゃあアンタも来なさい?」
資料を持って走って戻ってきた少女にそう声を掛けるミシェル。
その手にはなぜか、ペンよりも強そうなガトリングガン。
そしてもう片方の手で目を白黒とさせている後輩を掴むと、
パソコンに映し出された『WANTED』の文字を残して、勢いよく非常用ガラスを蹴破って外へと飛び出した。
後輩の声にならない声が、ビルの底へと落下してゆく。
壁を蹴りながら威力を殺し、適当な店の幌でバウンドしてうまく地面に着地する。
「あらー、相変わらずマスコミより図々しいわねぇこんな街中で」
「‥‥って、いつの間に着替えたんですか!? 編集長!」
現場到着、まるで日常風景を見ているかのように落ち着いているミシェルへ驚きを隠せない後輩少女。
一緒に出たはずの編集長は、今や魔女風スタイルのシックでゴシックなふりふりきらきらとした衣装に身をまとっていた。
「ふふ。乙女は秘密がいっぱい、でしょ?」
「編集長、自分で乙女はもう厳しいんじゃ‥‥」
人差し指を口に寄せつつウィンクするミシェルに呆れる少女。
その人差し指は少女のオデコをバチンと弾いた。
「さぁて、シャッターチャンス大盤振る舞いよ、独占スクープさせてあげるからよく見てなさいっ」
乾いた唇を舐めて、爛々とした目を巨大な脅威へと向けて、ガトリングを構える。
そこにいたのは大きな‥‥
「全裸の落ち武者とかかしら?」
「もっとソフトなものにしてくれ」
「猫耳幼女の方が需要ある?」
「その大きさでは、幼児(が)虐待だな」
いつの間にか現れて敵の分析をするみやびんとミカン。
東京ドーム一個分はあろうかという巨大な影に、あーでもないこーでもないと言葉を交わす。
「とにかく、何かとでかくてまがまがしいものという事はわかったから、仮称:ワルプル「そこまでにしておけ」
ミカンの口をみやびんが抑えたところで、伸びて襲い掛かる黒い腕のようなもの。
「あなたたち、どこのコスプレ会場から? 早く逃げないとうちの後輩が写真におさめちゃうよっ」
豪快に肩を揺らしながらガトリングを放つミシェル。
びすびすと黒い闇を穿ち、ぼろ雑巾のようになったそれは三人の前で落ちて空気中へと朽ちてゆく。
「こらー!そこの魔法少女!ちゃんと攻撃の後はびしっとかわいいマジカル☆なポーズを決めて残心を取らないとダメでしょーっ!」
「おっと、同業かな? なんだかよくわからないけど、一緒に倒すならがんばりましょ」
きらっ☆とポーズを送ると、残った敵の腕がミラクルにカラフルな爆炎で爆ぜる。
勢いに乗り、リロードも銃身の交換も気にしなくてよいガトリングをそれはもう嵐のごとく敵へと浴びせてゆく。
ミカンもせまりくる腕をマジカルなステッキでいなしてはポーズ、ピースサインから電撃を飛ばしてはジャンケン等、
よくわからない立ち回りでが着実に脅威を払っている。
「一般市民はある程度離れたようだ。だが腕を払うだけではキリがない。直接本体へ叩き込め」
雅に猫のようにつままれながらも、シャッターを止めない後輩少女。
マジカル住職をレンズに収めようとした時だけ、器用にそのファインダーには蓋をされていた。
「あのでっかいのに直接ぶち込めってこと?」
「そうだ。乗れ、そこまでお前たちを運んでやる」
みやびんがミニの袈裟をはためかせながら跨るそれはまじかる☆ライド
(注:二輪車。空を飛ぶものだけを指す)
普通のNinjaみたいな緑のバイクに見えるが、魔法の力で空を飛ぶれっきとしたまじかるなモーターライドだ。
重力に逆らい、ぐおんとバイクは3人を載せてドーム大の黒い塊へと迫る。
前にミカン、後ろにミシェルという3ケツをこなすみやびんには末永く今後爆発してほしいと願うばかりだが、
彼のミニスカ住職姿を見ると同情もしてしまう。男の友情とは、きっとこうして生まれるのだろう。
何本もせまりくる触手を右へ左へとちぎれるようにハンドルを振って交わしていく。
車体を上に傾けて、断崖を垂直に上るように駆け抜けてゆくまじかる☆ライド。
「あ、編集長! あぶないっ!」
車体の下から鋭く伸びてくる触手、気づいた時には視界いっぱいにその黒い邪悪は迫り‥‥
「いけっ! 未来は、お前たちで紡ぐんだ‥‥!!」
みやびんがとっさに腕を伸ばし、その触手をつかみにかかる。
獲物を得た黒き欲望は、本能のままそのまじかる☆住職を黒い闇に取り込んでゆく。
「住職さん‥‥!」
「ダメよ、ふりむいては。私たちは、進むの。そして、終わらせるわよ‥‥後輩に、スクープ見せなきゃ、編集長?」
思わず、涙が出ちゃう。だけど、それにはまだ早い。
彼が残してくれたまじかる☆オートドライブにより、まじかる☆ライドは敵の頭上のてっぺんへ。
口が空いているでもない、つるっと張ったそれは、本当にここを叩くことで敵を沈められるのか疑わしかった。
「やるしかないじゃない。もう、これしかないのよ。押してもダメなら、引いてる暇なんてない、もっと押す!」
ミシェルのガトリングが、至近距離で叩きつけられる。ドリルのように闇の体を掘り刻みながら、
銃弾が熱く埋め込まれてゆく。
絶え間なく襲いくるミシェルの攻撃が続くほど、その巨体は体の震えが大きくなってゆく。
「もう少し! 手を伸ばして! コアを直接潰しにいくのよ!」
ミカンの声が終わると同時に、目に飛び込んでくるまぶしい光。
まるで絶望の闇に飲み込まれたままでは似合わない、暖かくも心地よい光が漏れ出し、
気づいた時には、希望を胸に、唯々その光のかけらをつかみにかかっていた。
視界は、世界は、白に染まり、深々と光は降り注いでゆく‥‥‥‥
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「ふぁっ」
びしっ、と虚ろな視界でお鍋のふたを突き出す小夜子。
だが、しばし落ち着いてから自分の置かれている状況を確認する。
見慣れた寝室、暖かい布団。隣の温もり、昨晩雨宿りの為に泊まっていった石榴。
「夢‥‥ですか‥‥」
ぽつ、と呟き、天井を仰ぐ。
握っていた刀の感触、普段の自分からはあり得ない恥ずかしいセリフ、動き、衣装‥‥
思い出して熱くなった顔を覆う。
「うーん‥‥ぷりちーまじかる‥‥」
むにゃ、と布団の中でうごめく石榴。そんな平和そうな彼女の寝顔に微笑みを零しながら、そっと布団を出る。
お鍋のふたを、もとあった場所へ返さないと。
こうして魔法少女達は、日常へと帰ってゆく‥‥
「ふふっ、乙女の魔法の夢は、いつまでも終わらないのよ」
そして、そんな日常を守る為に、非日常を生きる者達もいる。
ミシェルはまたスーツ姿へと戻ると、目を回している少女の元へ戻るべく、神社の鳥居をくぐっていくのだった。