タイトル:Leak,Sneak,マスター:墨上 古流人

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/03 05:21

●オープニング本文



「また俺か」
 井上 雅は、とても不機嫌な顔をしていた。
 インドはカーティヤワール半島、バグア軍の補給拠点だった、ドラジを制圧したUPC軍。
 その仮設本部にて、雅は数枚の紙束を下士官から渡されたばかりだった。

「作戦の説明の代行を任せた、と伺っております」
「‥‥あいつは、待ちあわせの場所に着いてから、デートの約束を取り付ける。そういう順序が逆の女だからな」
 ため息と共に煙を吐き出すと、すぐさま口元へ煙草を運ぶ。
 心なしか、深めに吸いこんでいるのが、燃焼から読み取れた。

「なるほど。あの実に魅力的なオペレーターとそのような‥‥私には、羨ましい話です」
「いや、今のは物の例えだ。それと、見た目だけで、魅力的だとは思わない方がいい。彼女は、虎の皮を被せたC4爆薬だ」
 かくっ、と怪訝な顔をする兵士の肩を、御苦労、と叩いてから、雅はテントの中へと入っていった。


「苦手だなんだと言ってる場合ではないな」
 LEDのランタンが灯るテント内。
 オリーブドラブの幌に影を映じながら、雅がぼそりと一人ごちた。

「すまん、こちらの話だ。では、ブリーフィングを始める」
 雅は小型のコンテナ上に資料を広げ、小さなプロジェクターのスイッチを入れた。

「これから諸君は、俺と共にこの、ジャームナガルという所へ行く。早い話が、偵察任務だ」
 何度か指先が動けば、現在地点のドラジ、半島の少し西から、北西に向けて長い線が引かれてゆく。

「この経路で移動し、沿岸部のこの、ジャームナガルという街へゆく。かなり広い街だ。元は都市として、とても発展していた」
 今となってはバグアの支配下だがな‥‥と付けたし、細かい文字が画面上で歩き、街の注釈が表された。

「アーユルヴェーダ、と言う言葉を知っているか。インドの伝統医学でな、話すと長いが‥‥病気を治すよりも、病気にならない体になる為の体系を学ぶのが特徴的な医学だ」
 眼鏡のブリッジを静かにあげ、話を続ける。

「この街には、インドで唯一、そのアーユルヴェーダを学べる大学があったそうだ。それゆえかは知らんが、この街はいま、半島バグア軍の軍事医療基地となっている。人等の出入りもある。がちがちに固めた要塞へ侵入するよりは、楽かもしれんな」
 油断だけはしないでくれ、と傭兵達を見据えてから、スクリーンの操作を止めた。

「どこが手薄で、どこにどういう施設、兵器が合って、街の生活や、一般人、兵士等、何でもいい。可能な限り、諸君らが有益だと思う、攻め込む為に必要だと思う情報を集めてきてくれ」
 最後に、と、少し思慮深げな顔つきで、雅が口を開く。

「やれると思ったら、強行偵察に切り替え、次の布石とする破壊活動や工作をしても良い。その辺りの判断は、諸君に任せる。だが、焦る必要はない、と、念を押しておく」
 話を終えると、質問があれば後で、と言ってから、そのまま真っ直ぐつかつかと歩き、テントの外へと出ていった。

 雅は、すぐさま煙草に火をつけ、そのまま立て続けに3本も吸った。

●参加者一覧

大泰司 慈海(ga0173
47歳・♂・ER
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
ウラキ(gb4922
25歳・♂・JG
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF
ソウマ(gc0505
14歳・♂・DG
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD
沙玖(gc4538
18歳・♂・AA
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD

●リプレイ本文



 広いメイン道路に面して、簡素なボックス型の詰所がひとつ。
 そこの男が、職務に則り、と言うよりも、酔っ払いのきまぐれ程度に、
 道を行く一人の男に声をかけた。
「おう、ちょっと待てお前さん。どこ行くんだ?」
 声をかけられた男は微塵も嫌な態度を見せず、
 マフラーと帽子の陰から、にこりとして応えた。

「ドラジの近くに住んでたんだけど、UPCが攻めてきたから、逃げてきたんだ」
「‥‥あぁ。そいつは、気の毒にな。何やら、すね毛の従軍看護師が暴れ出したとか、おっさんの妖精を見たとか、兵士達が錯乱する程、ひでぇ戦闘だったんだろ? いっていいぞ、達者でな」
 男の態度は打って変わり、
 埃だらけの男は同情と憐みの視線を向けられ、
 リュックを背負った肩や背中を景気良く叩かれながら、軽く一礼して、街の中へと進んでいった。


「‥‥今日はよく吸うな‥緊張か?」
「‥‥いや、蜜柑の相変わらずの無茶振りの連続に、あてられただけだ」
 開けた広場の片隅で、ウラキ(gb4922)が横目で井上 雅に声をかける。
「なるほど。‥‥銃持って戦え、と言われる方が気が楽だ‥‥僕はね」
 雅とはまた違った、少し堅い面持ちで呟くウラキ。
 そんな二人の前を、薄汚れた風貌の男が歩いていたかと思うと、おもむろに靴の紐を結び直す。

「ドラジの情報は、もう来てるみたいだね。 用心に越したことはないかな?」
 二人が何事かと様子を伺っていれば、立ちあがった男が、帽子を軽く持ちあげる。
 あの、詰所の男達を欺いた陰の下からは、いつもの大泰司 慈海(ga0173)の朗らかな笑顔が浮かんでいた。


「んで、何だっけ? 商売がしたいだと?」
「はい。最近の景気はどうですか?うちの旦那様が、こっちでの商売を考えていましてね」
 フードをずらし、人当たりのいい笑顔を男に向けるのはソウマ(gc0505
 商売をしたい、と商人に扮装し触れこんでいたら、役所に潜り込む事となった。

「大抵なんでも揃えさせて頂きますよ。その土地、その環境へあった、最適の供給をさせて頂きます」
 決して威勢を張らず、されど腰は低くせず、正当な交渉の態度で望むソウマ。
 幾多も変装、演技をこなしては来たが、見せかけを偽る事は出来ても、
 結局は相手の出方次第で、良くも悪くもなってしまう時がある。

(ま、それもキョウ運ってことで‥‥)
 ふむ、と、音を立ててからから回るシーリングファンを見つめてから、男は口を開く。
「見ての通り、この街はいつ戦争になってもおかしく無い状況だわな。そんな折、今どこが何を欲しがってるか何て、『知らねぇな』」
 具体的な話を展開しようとして、寸前で意味ありげに止める男。
 そして、ソウマの目を真っ直ぐに覗きこんでくるその視線は、とても、『知らない』素振りには見えなかった。
 口元を挙げて、ため息交じりで微笑むと、ソウマは男の手元へ紙幣を滑らせる。

「OK、口を利いてやろう。 大きな声じゃ言えねぇが、今は、何といってもレジスタンスの反バグア派が商売相手にゃ持ってこいだろう。半島の戦線を押し上げるUPCを見て、いつかこの街に来てくれた時の為に、って、装備や人をしこたま蓄えに入ってる、って話だぜ?」
「そうですか、それはそれは。‥‥早いうちに、会いたいのですが、いかがでしょうか」
 賄賂は必要経費で落とせるかどうか頭の片隅でチラつかせながら、
 ソウマは、反バグア派とのコネクションを掴むところだった。
 
 

「向こうの列車‥‥運転室でガキが遊んでたぞ。良いのか、あれ」
 ウラキは、ジャームナガルの街外れにある、駅の事務所に顔を出し、そう告げた。
 中にいたのは、駅員ではなく、軍服をきた兵士。
 聞くや否や、血相を変えて、事務室から飛び出していった。

「全員で出て行くとは、少々不用心ですね」
 物影に隠れて様子を伺っていた、神棟星嵐(gc1022)が、顔を出して言う。
「武器は列車に積まれていそうですね。自分は、そちらを探ってみましょう」
 星嵐が外へ出ると、ウラキは机や棚、パソコンの中のデータやカギ付きの引きだし等を探り始めた。
 貨物列車関係の資料を探し、荷降ろしの帳簿と、運行表は見つけ次第頂いてゆく。
 物流が分かれば‥‥今後の作戦にも役立つ。
 それは、ドラジの補給部隊で教わった、真っ先に運び出されるものは『情報』と言う点を、覚えていたのだろうか。

「ちっ、ガキなんてどこにもいねぇじゃねぇか。そもそも、運転室や砲塔には鍵かけてんだっつの」
「お前、それ部屋飛び出す前に思い出せよな」
 部屋の外から聞こえてくる会話に、心臓を冷たい手で握り潰されるような感覚を覚える。

 戻ってきた‥‥?
 
 頼りないロッカーの扉一枚を隔て、サプレッサー付きの銃とナイフを握りしめる。
 グローブの下で、嫌な汗が滲む。呼吸を整えるのに労を要する。
 扉を開ける音が聞こえるのと同時に、足に力を込めると、
「すみません、子供が線路の上で走り回って、困ってるんです。何とかなりませんか?」
 耳に入るのは、聞きなれたバディの声。
「あぁ? 駅員に任せりゃいいだろうが」
「そうは言っても、中々言う事を‥‥少々、強めに言って頂ければ。あぁ、でも‥‥」
 会話が長引いている隙に、隠密先行を発動。扉の向こうを警戒しながら、
 一気に窓の外へと飛び出し、駆けだしていった。

「危機一髪でしたね」
 集合場所の、ウラキのジーザリオには、一足先に着いた星嵐が助手席に座っていた。
 助かった、と軍人を引きとめた礼を言ってから、ウラキは運転席へ滑り込み、エンジンをかける。
「そう言えば、向こうの列車‥‥確かに、子供を遊ばせるには、過ぎたおもちゃでしたよ」
 デジカメをいじっていた星嵐が、画面をウラキの傍へと持ってゆく。
「‥‥これは‥」
 画面には、分厚い装甲を纏い、車輪を極力隠し、何門もの砲身と銃座を備えた、鉄の塊。
 列車砲が、画面一杯に映し出されていた。



「お嬢ちゃん、学生? これから先生とお昼ご飯?」
 店員の女性が、甘い香りのチャイと、
 落花生とざくろのペーストを塗った揚げパンの様なものを、エイミと雅に差し出す。
 商品を買った途端、店員の顔も綻び、口も饒舌になる。

「ん? 先生じゃなくて、彼氏‥‥なーんてウソウソ」
 聞いてないぞ、とでも言いたそうな顔でそっぽを向く雅を、傍目で面白がるエイミ・シーン(gb9420
「そーいえばこーいう生活って不便だったりするのかー?」
 店員の会話の余韻を見逃さず、会話の糸口を掴み取るエイミ。
 街の雰囲気や、住民に密着した情勢を、さり気ない雑談から聞きだしてゆく。
「なるほどなー。あたしこーいう感じで生活したことねーから‥‥似た感じのはあるけどさ」
 ありがとっ、と一通り聞き終えてから、エイミが軽く手を振った。
 
 街中央部の湖周辺、ラフなカフェテラス風に広げられたテーブルと椅子の一角を陣取り、雅が情報を纏めていた。
 対面のエイミは、どこか定まらない様子で、ぼんやりと湖畔を見つめている。

「出会ってから結構長いですねー。色々と一緒に見てきましたけど」
 ふと、雅の作業の沈黙を破るように、エイミが口を開いた。
「ん? あぁ、ショッピングモールも君だったな。遊園地や、珈琲農園。‥‥神のキメラもな」
 煙越しに交わる雅の視線に、様々な依頼での想い出が、靄に流れて浮かんでくる。
「私ならいくらでもお手伝いしますから、だから無茶だけはしないようにですよ?」
 長い間見てきたからこその、懸念。そして信頼を、労わりの言葉に変えて紡ぐエイミ。
 すると雅は、ぽかん、と呆けたような口と視線で、彼女を見た。

「‥‥真面目な話なんですけどー」
「‥‥あぁ、いや、驚いたんだ。すまない」
 一瞬じとっとした目を見て、慌てて取り繕う雅。
「保護者が、保護対象に心配されたのでは‥‥本末転倒だな」
 そして徐に席を立ちあがり、エイミの頭の上に、ぽふっ、と手を乗せて言う。
「心配するな。気にかけてくれる者がいる、と言うのは、覚えておこう。こう‥‥気恥しいものだが、しっかりと言葉にしようとは思っていた所だ。君には本当に、感謝している」
 一瞬だけ、空気が抜けるように、強面を崩して口元に笑みを浮かべると、
 後は任せた、とエイミに声をかけ、雅は人混みの中へと消えていった。


 滝沢タキトゥス(gc4659)と沙玖(gc4538)は、共に街中を歩いていた。
 タキトゥスは、ただ何の気無しにオリーブ色のコートを揺らし歩くように見えても、
 街の様子や、検問、配備された兵器や、敵の分布等々、
 こと細かく目や耳に焼き付けているのだ。
 その共同体において、特異な振る舞いをしたりせず、社会の流れに身を任せる、唯々自然体であること。
 そうある限り、敵地において自分は敵で無くなる。
 物理的に身を隠したりするのではなく、周囲の認識を欺く―――ソーシャルステルス。

(街中じゃ隠れるより溶け込む方がいいな)
 ベンチに腰掛け、平和な情景に溶け込むようにしながら、軍人のこぼす些細な会話や、
 民間人のバグアへの感情を耳に仕入れる様は、街での情報収集として非常に有効な手段だった。

「さて‥‥場所もわかったことだし、いきましょうか、お医者様?」
 タキトゥスが、隣の沙玖に視線を移して微笑む。
 バツの悪そうに後頭部をかく沙玖。

 数分後、2人は街で一番大きな病院の前に立っていた。
 やはり軍の息がかかっているのか、兵士の姿もちらほら見える。
「医者志望ねぇ‥‥」
「人の回復、進化に役立つ素晴らしい学問を、是非学びたいと思ってね」
 2人の応対をしている男が腕を組む。
「アーユルヴェーダは、確かにここが医療の拠点になる切欠にこそなったが、軍事医療においては特に役だてていない。バグアの体に、俺達人間と同じ効能が出るとはわからないからな」
 暗にこの病院が親バグア派であるという情報が思わず零れたのを、2人は聞き逃さなかった。
「見たいなら、一般の人でも立ち入れる部分に関しては、好きに見てくれて構わない。ただし終わったら速やかに出ていってくれ」
 歓迎こそされた感じではないが、一応の出入り許可を得ると、
 目立たないように、施設の情報や物流、その他研究等も調べようと院内を歩き出した。

「ドラジから逃げて来る途中で、怪我しちゃったんだ」
「こんなもんでよく済んだね。あっちは酷かったって聞くよ」

 2人が、とある診察室の前にて、どこかで聞いた声に引かれ、そっと中を覗き込むと、

「‥‥あれ?」
「エミタ、バレないようにしてくださいよ‥‥?」
 そこには、埃で汚れた足と傷口を、脱脂綿で拭かれている、慈海と、医者らしき男の姿があった。



「ところで、この街には初めて来たんだけど、職ある? どこに何があるか教えて!」
「何だ、やっぱ職も奪われたか。大変だねぇ‥‥ま、この街にいりゃあ、職なんて選ばなけりゃ何かしらはあるよ」
 慈海は、治療をされるついでに色々と、聞き込みや独自で収集した情報の補填を補おうとしている。

「じゃあ、飯炊きとか皿洗いとか掃除洗濯とか、下働きを雇ってくれる施設ないかな?」
「それなら断然この病院だろう。軍人も入院したりするからね、毎回患者様の飯は病院食でもすっからかんよ」
「へー。元気でいいね。どれくらいの人数をお世話するの?」
「この病院だけでも医者、看護師、その他スタッフで200人いるかな? 多い方だよ。病人は、最大の時は2000人かねぇ」
「軍人さんは、2000人もいるの?」
「さすがにそんなにはいないだろうよ。500ぐらいなんて聞いた気もするが‥‥一般の人も受け入れてるからね。その分も考慮さ」
「ふーん、なるほど! あと、兵器の修理もできるんだけど、得意分野と不得意分野があるんだ、どこにどんな兵器あるかな?」
「兵器はほとんど、港の方の軍の管轄だねぇ。広い街の移動に便利だからか、装甲車とか戦車、後は路面のレールに沿って何か走ってるのも見た事あるね」
 雑談を繰り広げるだけで、数々の情報が手に入ってきた。
 百聞を一見に纏める時間はあるだろうか、足に巻きつけられる包帯の感触を覚えながら、
 慈海は窓の外の、遠く点として見える港を見つめていた。




 実はその窓の下では、高い気温などものともしない涼しい顔、されどその奥に深い思慮と知性を潜ませた、
 UNKNOWN(ga4276)が、紫煙を燻らせながら、撮影してきた画像をチェックしていた。
 街にはそれなりに外国から訪れる者も多いので、カメラを用いた撮影はそれなりに自然にして回れた。
「さて、少し覗かせて貰おう、か」
 システムグラスをかけなおし、庭の隅に設置された、大きな通気溝の蓋を持ち上げる。
 頼りない細い梯子に足をかけ、奥の暗闇へと、その身を溶け込ませていった。

 清潔感のある地上の病院とは違い、
 黒く冷たい空間を、UNKNOWNは歩いていた。
 タイピンのカメラとカフスのレコーダーにも、明滅する蛍光灯や重い静けさが記録されてゆく。
 兵士や研究者らしき風貌の者を、陰に隠れながらやり過ごし、
 道行く扉の数々で、システムグラスを赤外線モードに。扉の奥に人の形の熱源がなければ、
 電子魔術師を発動。書類やパソコン、接続されたUSB等目星をつけて漁ってゆく。
 手帳にマッピングを施しながら歩いてゆくと、一番大きな部屋と思わしき場所にたどり着いた。
 吸い口を捻り、煙草に似せた工具ツールで解析を試みるが、やはりカードリーダーは電子魔術師で解除する。
 挿入口を指でなぞり、隠密潜行を発動しながら、警戒して中に踏み入ると、

「これは‥‥」
 慎重に、タイピンのレンズの位置を手元であわせる。
 忙しなく動き回る機械と、所々に感じる確かな生命の躍動。
 不穏な空気、立ちはだかるであろう強大な敵を前に、UNKNOWNは臆さず、ボルサリーノの陰で、ただ不適に微笑むのだった。



「これぐらいで、すまん」
「皮肉のつもりか? 申し分がないな」
 雅がUNKNOWNから受け取ったレポートは、新発見もさることながら、
 必要な部分がしっかりと纏められたものだった。
 病院の地下に『蠢めいて』いたのは、機械と、キメラ、だと言う。
 攻め入るには、もう少し、手回しが必要かも知れない。

 沙玖が病院内の親バグア派と接触した結果、
 普通に生活している者達はいつ戦争になるやもしれない生活に不安を抱き、
 医療、軍事、交通等、一部の仕事に従事している、職を持つ者達は、親バグアが多い傾向にあると気がつかされたようだ。

 ウラキと星嵐は、港方面にも出向いていたが、
 UPCが海の方から近付いてきたということで、警備も厳しかったそうだ。
 潜入を試みても、有益な情報は得るところまでは潜れなかった。
 安全に帰ってこれただけでも、上出来かも知れない。

 各々が多角的な面から集め寄った情報は、
 必ずや、侵攻に先駆けた有力な『武器』となるだろう。