タイトル:Fort Discoveryマスター:墨上 古流人

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/03/27 14:53

●オープニング本文



 インドはカーティヤワール半島、北部。
 半島と大陸との付け根、アラビア海が流れ込む終点に、ポートオブナブレーキーという、港町がある。
 UPCが押し上げた前線により、確保してからしばらく経ったこの街も、少しずつ人の手が加えられ、
 地元の漁師や運送業等で活気付く元の街の雰囲気を取り戻しつつあった。
 少し違うことと言えば、海に接する重要な拠点として、しっかりと構える軍部の施設と、
 漁船と共に、フリゲートが並んでいる事だろうか。

「風情も何もあったもんじゃないけど、戦争中にそんな事いってられないわよね。むしろこのギャップに萌えると言う、前向きなイマジネーションを要求してみようかしらっ」
 窓の外の、そんな状況を眺めながら、柚木 蜜柑が部屋の中の者たちへ言う。
 ここはUPCが設営中の、海軍拠点内部、ブリーフィングルーム。
 打ちっ放しのコンクリートと、粗雑に『放りこまれただけ』のような机と椅子、
 ドアの向こうでは、殺伐と、そして忙しなく動く人の喧騒が響いている。
 目の前のインサートカップに淹れられた、温かいチャイの香りだけが、唯一心を和ませる事が出来るのかもしれない。

「インドって海に囲まれてる国じゃない? だから、カレーばかりイメージ先走るけど、海鮮料理も豊富なのよね‥‥」
 話しながら、段々と遠い目をしていく蜜柑。
 ドアの外で、鉄棒でも落としたような大きな音が聞こえてから、はっと我に返る。
 素敵な港町での潮風を浴びながら、優雅にワインとシーフードを頂くお仕事じゃなくてゴメンね、と、
 片目をつむって手を合わせてから、スクリーン代わりの簡素な白い布に、半島周辺の地図が映し出される。
 
「とんでもなく無茶な、だけど、大打撃な電撃作戦のおかげで、手堅い武装をしていたジュナガドと、そこへの補給の要だったドラジは、制圧出来たわ、ありがとねっ」
 半島の、UPC戦力を示した青いラインが、少し鋭角に伸びて、ジュナガドとドラジへ伸びてゆく。

「さて。皆はここに呼ばれて来てくれた訳だけど、見てわかるとおり、ここをちょっとした拠点、半島攻略の礎にして、また作戦を展開していく訳だけど‥‥」
 びしっ、と赤いペンを傭兵達に向けてから、直接、地図の映じられた布に赤く太いラインを描いてゆく。

「今ラインを引いた、この半島の上部の海は、流れ込んでるアラビア海ね。今から行う作戦は、この港町から海軍勢力を浮かべて、沿岸の敵拠点を陸との挟み撃ちにする、というものよ」
 ぽつぽつ、と大小様々な点を増やしてゆく蜜柑。

「当然、敵もこの海域を取られるとまずい事ぐらいはわかってるだろうから、簡単に来させない為の網ぐらい張ってるハズよ。今、耶子が偵察に行ってくれてるわ」
 藍風 耶子本人と、少数偵察部隊の詳細なデータが次々と映し出されてゆく。

「おさらい程度に言うけど、敵の海対応兵器は、水中ゴーレムを始め、ビッグフィッシュやアースクエイク何かもいるのに対して、私達人類側は、バグア達が陸や空メインの侵攻だったから、海の兵器に関してはほとんど対抗、成長しきれてないの。だから比べて、私達の方がかなり不利なのは、事実よ」
 ユニヴァースナイトシリーズも、大規模作戦などで出払い、こちらへの要請など出来るはずも無く、この作戦は進められていくようだ。

「だからこそ、地の利と知略で、勝らなきゃならない。この海、絶対押さえるわよ。この海のラインを進む事が出来れば、半島をローラーかけるように攻めて行く事が出来る。半島攻略も目の前だからねっ」
 目に力を込めて真剣に力説する蜜柑の懐から、短い電子音が流れる。
 一言断ってから通信端末を開けば、静かな空気を破る、元気で幼い声が、部屋にも聞こえるほどの大きさで聞こえてきた。

『こちら偵察部隊ですー♪ やっぱり、近くまで敵サンも出てきてるみたいですよー。今から戻りますので、戻り次第作戦立てましょー♪』
「そう、ご苦労様。こっちも一通りは話終えたところよ。気をつけて戻ってきてねっ」
『はーい♪ 楽しみですよー、一糸まとわず、お船でずらーっと並んで行くのです!!」
「‥‥一糸乱れず、かしら?」

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
白蓮(gb8102
18歳・♀・PN
エレシア・ハートネス(gc3040
14歳・♀・GD
一ヶ瀬 蒼子(gc4104
20歳・♀・GD
ツバサ・ハフリベ(gc4461
14歳・♂・FC
キロ(gc5348
10歳・♀・GD

●リプレイ本文


 水鏡の反射する陽の光に、鋼色の塊が照らされる。
 何種もの砲門を構え、ミサイルを装填し、KVを抱えた艦隊は、
 静かにゆらぐアラビア海の波間を、押しつぶすように進んでいた。
 無機質な畏怖を、潮風に乗せて漂わせるその内部では、
 忙しなく、小さな人々が動き回っていた。

「えぇ、それはこちらに。その後、ソナーブイは幾つ曳航して頂けますか確認を」
 一ヶ瀬 蒼子(gc4104)が、電子端末を小脇に挟み、整備のクルー数人と動き回っていた。
 寒くないだけはるかにマシね、とは彼女の談だが、忙しなく動く彼女の額には、しっとりと汗が浮かぶ。
 実は、インドは5月いっぱいまでかけて、今一番暑い時期なのだ。
 大規模作戦の場所と比べ、寒暖激しいが、はたしてどちらがマシだろうか。

「ん‥‥よろしくお願いします‥‥頼りにさせてもらいます‥‥」
「おう、ヨロシクな! 沈みそうになったら、あんたにしがみつかせてもらうぜ!」
 弾薬の詰まった箱にもたれて談笑する兵士達へ、エレシア・ハートネス(gc3040)が律義に挨拶する。
 普通のKV乗りよりも、いささか快活なノリで返すのは、海の男と言うものなのだろうか。
「ん‥‥藍風‥‥今回もよろしくね‥‥」
 視線を下にやれば、耶子が既にまふまふとエレシアに飛びついていた。
 そんな二人の前に、いつの間にかちょこん、とキロ(gc5348)が立ち、

「この中で、空中対応となる人には、前に出ないようにお願いしたいのじゃ」
 と切り出して、兵士達の注目を集めた。 
「代わりに、キロが前に出てガンガン戦うのじゃ。ミサイル誤射もしたくないしの。傭兵が落ちても代わりはいるけど、インド対応のUPCの人達の代わりはいないから、無理して欲しくないのじゃ」
 ぺこ、と頭を下げて、心の底からお願いする少女。
 だが、数秒後に彼女の耳に飛び込んできたのは、承諾の意とはとても取れない、豪快な笑い声だった。

「はっはっは、面白ぇ事いうな、嬢ちゃん」
 ぽふぽふと、一人の男が、キロを子供扱いして頭を叩く。
「な‥‥っ。真剣なお願いなのじゃ! 皆の為を思って‥‥」
「そいつぁな、お前があと10年経って、枕元で囁くお願いでも、聞いてやれねぇよ」
 笑いの余韻を背にしながら、男達は口々に言った。
「男でも、女でも、ガキでもジジイでも、戦場に立っているならそれは等しく戦士だ。 護るものを背にして立つ以上、俺達が欲しいのは、優しさでも労わりでも無くて、戦い抜く勇気なんだよ」
「そうそう、危険を冒す者が勝利する、って、有名な言葉もあるしな」
「俺達ゃあ、俺達自身の手で戦争に終止符を打たなきゃならねぇ。でねぇと、戦争が俺たちに終止符を打ちにくるんだよ」
 男達の、想像以上に命を賭すると言う事へあっけらかんとした意識に、キロはぽかんと少し拍子が抜けてしまう。
「ま、そういうこった。ガキのケツ尾ける趣味はねぇ。本当に危ねぇって時じゃなけりゃ、並んで戦わせてもらうぜ?」
 たらふくミサイル兵装を積み込んだ、隣のパビルサグをただ存分に暴れさせたいだけか、
 それとも、本当に心配をしていたのか、それは男達の知る定かではないが、
 キロの言葉は、少しだけ、男達の生還の礎となった。

「皆さん、そろそろ正式に発令が出ますが、出発です」
 発令室へ繋がるエレベーターから、新居・やすかず(ga1891)が降りてきて告げれば、
 自分もリヴァイアサンのハッチへ滑り込み、閉鎖。起動手順をこなしてゆく。
 レバーとAIを軽く操作し、火器管制、通信、海図を呼び出し航法、全ての確認、完了。

 海へ潜るKVの周りには静かに注水が始まる。
 そして、カーゴハッチが開き、吹き込んでくる潮風に逆らうように外へ出て、KVが並んでゆく。
『幸運を祈る!』
 管制からの通信の後、カタパルトが爆音を響かせ、KVを加速させる。
 肺を潰されそうなGを浴びながら、翼は風を切っていった。



『こちらオロチA。第一村人を発見した、データを送るぞ』 
「敵の数は‥‥多いですね。出来れば、ビッグフィッシュは叩いておきたいですけれども」
 艦隊が静かに唸らせるエンジン音を傍で聞きながら、イーリス・立花(gb6709)がデータリンクを確認する。
 空、海、数多くのキメラの反応の群れは、点が集まり既に一枚の面のようだ。
 こちらの存在に気付いたゴーレムが一体、攻撃態勢を取ってこちらに砲口を向けている様がモニタに映し出される。
 そんな画面を拳で軽く小突く。馴染みの願掛けの後、イーリスは操縦桿を握りなおした。
 直後、急潜行。押し込むように操縦桿を操作すれば、Gの勢いで全身の血が昇っていった頭上を、ゴーレムのミサイルが突き抜ける。
 態勢を立て直し、兵装はそのまま、ガウスガン。
 モニタの中央に捉え、トリガー。
 水泡のラインを引きながら、実弾が敵へと飛び込んでゆく。
 ゴーレムが回避行動を取ろうと下を向くと、やすかずのリヴァイアサンが放ったガウスガンの弾と共に、胸部を穿たれてしまった。
 敵に弾をばら撒き狙いを自分に引き付けるイーリスの固定砲台らしい作戦と、
 深度差を利用し、距離を開けて十字砲火を狙っていたやすかずの狙いに、ゴーレムはあっけなく落とされてしまった。

『先行班の交戦を確認。艦隊へ向けてキメラが多数接近中』
 母艦の通信室が各KVへ連絡。艦隊は比較的纏まった、相互に援護の出来る距離で航行していた。
『藍風さん、よろしくお願いしますねっ』
「はーい♪ 海のおがくずにしてやるですよー」
 母艦の甲板に立つ耶子が、一緒に防衛に付いた白蓮(gb8102)から通信を受け取る。
 火力が強いから、という単純な理由で耶子に見初められた竜牙が、牙の如く機刀を構えると、甲板を蹴った。
 高度計、スピードメーターが暴れるように数値を刻んでるうちに、ロック鳥、翼竜、鮫型、次々とキメラの命を葬ってゆく。
 振り返って軽く跳躍。甲板に飛び込んできたゴーレムを、水面に叩き落すように刀を振るう。

『お任せですー♪』
「了解ですっ」
 まだ傷の浅いゴーレムが、激しい水飛沫を上げて白蓮のリヴァイアサンの前に落ちてきた。
 勢いに煽られるゴーレムが、銃口を向け、苦し紛れに発砲。
「威勢がいいですねっ、それが命取りではありますがっ」
 システム・インヴィディアは既に計算を終えていた。揺らめく蒼い燐光を突き破るように、ツインジャイロが突き出される。
 螺旋の猛撃にその身を貫かれると、砕かれたゴーレムのパーツが、くるくると辺りを漂っていた。
 
 空では、いたるところで爆発音が響き、黒煙が複雑な路地の様に入り乱れている。
 エレシアの駆るパピルサグが、CWに近づいては引き、引いては別の角度から突撃していく。
 CWの数こそ少なかったが、それを守るように付随するキメラが、肉の弾幕と化して彼女の機体を襲っていた。
 ひどい振動が体を揺らし、次いでCWの引き起こす頭痛に、小さなうめき声が漏れてしまう。
 コクピットのガラスを、猛禽型の爪が掠めてゆく。
 咄嗟に操縦桿を右へ。
 深く刻まれた白い軌跡が、キメラの爪の鋭さを物語っていた。
 センサー、レーダーを駆使し、取り込めるだけの敵情報を、機体へ。
 眼前の鳥キメラを見据えトリガーを引けば、ツングースカの猛攻に羽と身が崩されてゆく。
 CWまであとどれほどか。リロードをしながら位置を確認すると、
 前方に少しずつ、空の隙間が出来ているのに気付く。

『ふふっ、風のKV乗りと自称でもしておくと気合入るかな?』
 ツバサ・ハフリベ(gc4461)のリンクスが、後方からライフルでエレシアの道を作るように敵を狙撃していた。
 自身もCWを狙い撃つべく、一つ一つ確実に、必要な分だけ敵をスマートに撃墜してゆく。
 飛行をしながらの狙撃こそ、中々難しいものだが、 
 空は嫌な予感がする――それを信じて上がってきたのだ。空起動の中、姿勢をどうにか意地し、
 例え一瞬だろうと、敵影がレティクルに重なる瞬間を逃さず、トリガーを引いてゆく。
 エレシアはどこまでいっただろうか。
 レーダーを見れば、キメラの壁に空いた穴を、120mmの弾で突き破りながら進んでいった。
 サブモニターに最大望遠で進路を映し出す。透き通るような壁が、一瞬映る。
 黒い砲身を真正面へと向け、行ける所まで近づいてゆく。
 画面の殆どが埋まったところで、発砲。
 リンクスの鋭い軌道が、キメラの群れの隙間を真っ直ぐ突き抜け、
 ツバサが捉えたCWを貫く。
 そして群れを抜けたエレシアが、撃てるだけの弾を撃ち込み、旋回。
 粉々にその身を砕かれたCWの破片が、辺りに降り注ぎ、霧が晴れるように頭痛が引いていった。

「‥‥ん。海面に敵影がある‥‥攻撃には気をつけてね‥‥」
 回避行動を取っていたエレシアが、コクピット越しに大きな影を確認する。
 共闘していたS−01とクノスペにも連絡し、共に警戒を促した。




「アースクエイク、来ます!」
 蒼子がリヴァイアサン内で叫ぶ。
 視認したEQが、海底から大きな口を開けて蒼子に近づいてきた。
 どうにか機体を切り返し、行く先を見れば、イーリスのパピルサグがゴーレムへの弾幕を止め、
 重い体をどうにか振り回して回転。
 飲み込まれる事は免れたが、擦れる肉壁に機体を酷い振動が襲う。
 機体を揺らす水流を起こす程、無理やり体をうねると、
 再びKVへ牙を向け、突撃してきた。
 蒼子は兵装を水中用粒子砲『水波』に変える。
 照準に捉えられるかどうかというサイズが、次第に大きくなった所で、発射。
 次弾の装填が終わった旨を画面上で知らされ、更にもう一発。
 EQの表皮が粒子の砲撃で焼きつけてゆく。
 AIがアラートを鳴らすギリギリまで引き寄せてから、エンヴィー・クロックのマイクロブーストを発動、回避。
 EQの体の横に舞い出ると、機体の横にある胴体へ、知覚の爪を突きたてる。
 自身の勢いで体にラインを引いてゆくEQ。
 その様子を、距離を保ったやすかずがコクピット内から見ていた。
 兵装を多連装魚雷『エキドナ』へ変え、ターゲット、
 EQの体をなぞるように、24の細かいレティクルが長く並び、ロック。
 そして得物へ群がるハイエナのように、沢山の魚雷が手負いのEQへと飛びかかっていった。
 爆発の靄が晴れた後、EQが懸命にもがくように、その体を海底へと潜めていくのが見えた。
 イーリスは海底が落ち着くのを見ると、一度艦隊へと合流しようと海面へと機体を向けた。
 
 眼前では、激戦が繰り広げられていた。
 傭兵達が侵入を許していたキメラの中には、カジキマグロのような棘を備え持つ、
 艦体に穴を開ける等、艦への攻撃に特化したキメラが幾らか紛れ込んでいたようだ。
 幾ら数が多いとはいえ、キメラ程度なら後ろに回しても、というスタンスで戦うべきではなかったようだ。
 そして、激しい轟音の後、目の前にサイレントキラーの残骸が落ちてくる。
 激しい着水に、コクピットのガラスが、飛沫と瓦礫で覆われる。

『おっきな亀さん登場ですー。キメラは抑えておきますので、なるべく早く帰って来てください―』
「それは、行け、という事でしょうかっ」
 白蓮とイーリスが、艦隊に接近したタートルワームのデータを耶子機から受信する。
 イーリスが駆け付け、艦隊へ立ちはだかるよう前に立つと、ガウスガンを正面から浴びせてゆく。
 だがタートルワームは怯まず、砲身の一つを白蓮へと向けた。
「やらせません!」
 ガウスガンのリロードを捨て、ブラストシザーズを展開。
 レーザーが甲羅に着弾と同時に、発砲。水面を暴れさせる程の衝撃。
 白蓮のコクピット脇を、一瞬何かが過ぎったと思えば、一寸拍後、シートが背中を叩きつけるような衝撃。
 後方で炸裂した弾の威力を、物語っていた。
 イーリスのブラストシザーズが砲身を逸らさなければ、危うかったかも知れない。
 次の着弾を考えてやる暇もなく、ブーストを展開し突撃。

「その隙、致命的ですよっ」
 突きあげるようにタートルワームの首を捉える、ツインジャイロ。
 生々しい手応えと同時に、砲撃が止む。
「護衛艦、魚雷の支援をお願いできますか!」
『了解した。周辺の味方機は直ちに退避せよ』
 イーリスが艦隊へ支援を要請すると、艦では注水作業が始まった。
 SESこそないが、ここまで削れば充分だろう。
 出来る事は任せ、二人は艦隊の護衛を継続しに戻った。


 空の削れた戦力の後方には、数機のBF、そしてそれを護るように、タロスが立ちはだかっていた。
「広いー海も空も〜キロのもの〜♪ カカカッ、一人ミサイルパーティーで敵をやっつけるのじゃー」
『つれないね。 来賓のいないパーティーは寂しくないかい?』
 邪魔をするキメラ、ゴーレムも減り、後は、大きなものを、落とすだけ。
 実にシンプルな局面で、キロがテンションをあげれば、ツバサが援護態勢に入り通信を飛ばす。

 キロがミサイルのスイッチの上で指を躍らせていると、タロスが紫色の光を収束しだした。
 操縦桿を倒し、機体を横に持っていく。プロトン砲を回避したと同時に、懸架していたミサイルポッドを解き放つ。
 ハルバードで幾つか切り払われるが、既に次のミサイルがターゲットの探知機を照射している。
 パネルで複数標的を選び、続け様にGP−7ミサイルポッドが撃ち込まれると、油断していた他の敵も
 プラズマミサイルの餌食となる。
 だがそれでも爆煙から飛びだし、掴みかかるような挙動でキロのパピルサグへとタロスが迫る。
 急ぎブラストシザーズへ兵装を変えようとしたところで、タロスの駆動部にミサイルが突きこまれ、
 キロの目の前で、回転し、不自然な態勢で投げだされていった。

『招待状は、これでいいかな?』
 ツバサが余らせたミサイルを、ここぞと狙い叩きこんだ。
 キロは軽く笑んでから兵装を選び直す。

「最後はやっぱり、派手にいくのじゃ♪」
 300発全てのミサイルが、一度に発射された。
 点火されたミサイルは、最後には900の炎の尾を引きながら、
 超高速でBF、タロス、その場にいる全ての敵へと飛び込んでゆく。
 絶景かな、と喜ぶキロの前、霧が晴れると、背を向けて遠ざかるBFが見えた。
 周りのキメラをクノスペに任せ、エレシアがロック。

「ん‥‥もう遅い‥‥」
 UK−11AAMの11発のミサイルが、BFの背中を突き破り、爆発。
 内部の誘爆に耐えきれなくなったBFは、黒煙を上げながら海面へと落ちていった。



 敵影が落ち着いた所で、策敵をする。
 敵勢力は幾つか撤退を許したものの、
 周辺に関しては脅威の排除に成功したようだった。

「あ、帰ったらインド料理にも期待じゃ。基本通りカレーじゃなカレー♪」
『了解した。我々には、本場の海軍にして本場のカレーで、君達を迎える準備が出来ている。操縦桿をスプーンに持ち替え、速やかに帰還せよ』