タイトル:すごいツリーマスター:STANZA

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/09 04:22

●オープニング本文


 某国某所、結構な人口密度のある町のど真ん中に、それは聳え立っていた。
 高さはどれくらいか、詳しい数字は忘れたが、なんでも最上階の展望台まで通じる内部の螺旋階段は6340段もあるらしい。まあ、普通はわざわざ階段で上ろうなどという奇特な人はいないだろうが‥‥直通エレベーターが故障でもしない限りは。
 ともあれ、ものすごぉーく高いので「すごいツリー」と安直に呼ばれるその塔は、連日の様に物見高い観光客で賑わっていた。


 しかし――その日、塔に異変が起きた。
「おい、ありゃ何だ!?」
「塔の天辺に‥‥何か、いる?」
 遙か高みにある塔の先端を見上げ、指を差す人々。肉眼ではゴマ粒程度にしか見えないが、双眼鏡を向けてみると‥‥
「ゴリラ?」
 塔の天辺、アンテナの様な細い部分に、巨大なゴリラっぽい生き物が背を丸めてしがみついている。なんだか某有名映画を思い起こさせる光景だが、美女同伴ではない様だ。
「何してるんだ、あれは?」
 その言葉が聞こえる筈もないが、巨大ゴリラはそれに応える様に、のそりと上体を起こした。と、やおら両の掌で自分の胸を叩き始める。所謂ドラミングという奴だ。

 ――ぼんぼこぼこぼこどんどこどん!

 周囲の空気を震わせて重低音が響く。普通のゴリラが出す音よりも、かなり低い様だ。
 普通のゴリラは威嚇の為にこの音を出すらしいが、あの巨大ゴリラもそうなのだろうか。あんな誰も近寄れない様な場所に陣取って、何を威嚇していると言うのか‥‥

 しかし、それは威嚇などではなかった。
 ぼんぼこぼこぼこどんどこどん、頭に響く怪音波。
 ぼんぼこぼこぼこどんどこどん、ぼんやりほわほわ、良い気分になってきた。
 これは新手の精神攻撃か。でもいいや、気分が良いから。ちょっと踊ってみようかな。

 ふらりふらり、人々が塔の周りに集まって来る。
 ふわりふわり、腕を柳のように振りながら、塔の周りを回り始める。
 さあ、輪になって踊ろう。
 塔を祭のやぐらに見立て、盆踊りの始まりだ。

 目の光を失った人々が、まるで無重力状態の様にふわふわと揺れながら歩く。
 それは、端から見れば陽気な盆踊りと言うより幽鬼の葬列の様な。

 ぼんぼこぼこぼこどんどこどん、ドラミングは続く。
 塔の真下に広がる広場は、あっという間に人で埋め尽くされた。
 その人波が、流れるプールのように同じ方向に流され、ぐるりぐるりと回り続ける。
 これで呪文でも唱え出せば、怪しい宗教団体の呪いの儀式だ。


 誰か、何とかして下さい!
 このままでは折角の観光名所が‥‥!

●参加者一覧

西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
リュウナ・セルフィン(gb4746
12歳・♀・SN
ビリティス・カニンガム(gc6900
10歳・♀・AA
御名方 理奈(gc8915
10歳・♀・SF

●リプレイ本文

「にゃ〜高いツリーなりね〜」
 高い高い塔の下で、リュウナ・セルフィン(gb4746)が空を見上げる。
 今回の標的であるゴリラキメラが居るというその天辺は、どう頑張って背を逸らしても、西島 百白(ga2123)の背によじ登っても、全く見えなかった。
「‥‥面倒なところに‥‥面倒な‥‥」
 背中に貼り付かれたまま、百白が溜息をつく。
 上空からは、空気を震わせ魂を揺さぶるビートが絶え間なく降り注いでいた。
 ――ぼんぼこぼこぼこどんどこどん!
「やっべ! イカすドラミングじゃねーか!」
 リズムに合わせ、ビリティス・カニンガム(gc6900)が足先でタップを踏む。
「あははっ、面白いゴリラさんだねー」
 御名方 理奈(gc8915)は無邪気に手を叩いて喜んでいた。
「でもキメラだし、やっつけちゃおうね♪」
 そう、のんびり聴いている訳にはいかなかった。しかしその為には、この高い高い塔の天辺まで上る必要があるのだ。
「にゅ? どうやって上に上るなりか?」
 リュウナが入口の掲示を見る。
「エレベーターは使えないなりか‥‥」
 残るは階段か、外側の壁登りか。
「‥‥どっちも‥‥面倒だな‥‥」
「よし! プランBで行くのら!」
 既にゲンナリしている百白の背中で、リュウナが元気に言い放つ。
「‥‥で、プランBって何なりか?」
 壁登りだよ、壁登り!
「にゃ! 壁登りなりか! 楽しそうにゃ!」
「‥‥面倒‥‥だな」
 ボソっと呟く百白。
「面倒は‥‥嫌いなんだ‥‥」
 と言いつつ、しかし面倒見は良さそうだ。それに、本気で面倒臭がっている訳でも‥‥多分、ない‥‥筈。
「にゃーにゃーひゃくしろ、命綱って必要なりか?」
「‥‥知らん」
 多分いらないと思うけど。なに、落ちたって死にはしない‥‥多分。
「先に‥‥行かせてもらう‥‥」
 背中に貼り付いたリュウナを降ろして、百白は真っ先に上り始める。
「よし! どこぞのクモのヒーローみたいに上るなりよー! オー!」
 自分で言って、自分で答えたリュウナが後に続いた。だってきっと、百白は「おー!」なんて言ってくれないから。
「こんな高ぇタワーをフリークライミングなんて、ぞっとしねえな」
 遙かな高みを仰ぎ、ビリティスが首を振った。だが、連戦して消耗するよりは良いだろう。
「ほら理奈、先に行きな」
 体力のない仲間を先に行かせようと、ビリティスが促す。自分は殿を務め、遅れる事のない様に注意を払うつもりだった。しかし‥‥
「うっわー近くで見ると超高いねー、体力持つかなー」
 などと言いながら壁に取り付いた理奈の姿をふと見上げたビリティスの目が、まん丸に見開かれた。理奈が着ている超ミニのシャツワンピ、その下には‥‥ない。あるべきものが、ない。
「‥‥っておい! お前またパンツ穿いてねーのかよ!」
「え? あははは、うん、パンツ穿き忘れちゃった☆」
 悪びれもせず、恥ずかしがる事もなく、てへっと笑う理奈。いつもの事だから、気にしないのだ。
 仕方なく、暫くはそのまま登り続けたビリティスだったが‥‥ぴっちぴちの肌色が目に眩しい。いや、そっちの趣味は全くもって無いんだけど。
「あーもう気が散る! やっぱ後に付いてこい!」
「はーい。じゃあ後からついていくね♪」
 しかし‥‥
(‥‥ビリティスちゃんもスカートだからパンツ丸見えなんだけどー‥‥そうだっ)
 理奈の頭に、何かが閃いた。取り出したのは超機械「魂鎮」。その先端を‥‥
 ――ぷすっ!
「カンチョー!」
「‥‥あんぎゃーーー!!」
 尻を突かれて、ビリティスは壁に貼り付いたまま飛び上がった。
「あはは、大成功ー!」
「てめえ、なんて事しやがる! ‥‥後で覚えてろよ‥‥」
 ビリティスの額に青筋が浮いている。これはちょっと、やりすぎたかも‥‥?
「‥‥はい、真面目にやりまっす!」
 そんな賑やかなお子様達を横目で見ながら、終夜・無月(ga3084)は軽々と登って行く。ただひたすら黙々と、うっかり手足を滑らせる事もなく、障害物も華麗に乗り越え、途中のネットも難なくクリアし、どれだけ登っても疲れた様子を見せず‥‥
 この塔、そんなに簡単に登れるもの‥‥だったっけ?
「にゃー! 高いなりー! スゴいなりー! フニャー! 風がー! フニャー! ニャー!」
 風に煽られ、リュウナの体がフワリと浮き上がった。足が離れ、両手だけで壁に掴まる。その姿は小さな鯉のぼりの様だ。
「フニャー!」
 ああ、手が! 手が離れる! スカイダイビングの用意なんて、してないよ!
「!?」
 がしっ!
 その襟首を、百白の手がしっかりと掴んで引き戻した。
「‥‥面倒を‥‥起こすな‥‥」
 助かった。
「えへへー、ひゃくしろ、ありがとうなのにゃー」
 そのまま、近くのネットの上で一休み。
 後に続いたビリティスと理奈は、ネットの下側に両手両足でぶら下がっていた。その姿はまるでナマケモノ‥‥いや、子豚の丸焼き?
 そのまま外周の縁まで移動し、上へ這い上がる。
「ほら、手ぇ貸すぜ」
 先に上がったビリティスは、危なっかしい様子の理奈に手を貸して引っ張り上げてやった。
「ありがと、ビリティスちゃん。ふぁー、疲れたぁー!」
 理奈はネットの上に手足を広げて寝っ転がった。下から吹き上げる風がスースーと気持ち良い。ちょっとスースーしすぎる気が、しないでもないけど。
「ねえねえ、一休みしよー!」
 仲間から向けられる微妙な視線をものともせずに、荷物から取り出したスポーツドリンクをごっくん。
「まだ登り始めたばっかりじゃねえか」
 そう言いながらも、ビリティスは理奈の隣に腰を下ろして額の汗を拭った。体力はそれほど使っていない筈なのに、どっしりとした疲労感が背中にのしかかっている様な気がする。
 持参したドリンクと菓子を仲間と分け合い、一息ついたビリティスの目の前で、理奈の超ミニワンピが風に捲れ上がった。
 そうか、妙な疲労の原因はこれか‥‥。

 その後もネットの上で定期的に休みながら、傭兵達は塔を登る。
 最初は悪戯を仕掛ける元気があった理奈も、今はビリティスの隣でただひたすらに手足を動かしていた。
「まったく‥‥面倒だな‥‥コレは‥‥」
 こめかみを僅かにヒクつかせながら、百白がボソリ。しかし、まだ半分。先は長い。
 ――ぼんぼこぼこぼこどんどこどん!
 腹に響く重低音は、少しずつ強く、はっきりと聞こえる様になってきた。しかし、それさえも彼等の耳には入らない。聞く余裕がない。指先が痺れ、手にはマメが出来、膝はガクガクと震え‥‥
 覚醒してしまえば楽に登れるに違いない。だが、それではいざという時に練力切れの恐れがある。そう、彼等の目的はただ塔を登る事ではない。この塔を制覇し、その証として頂上に紫紺の優勝旗を立てる事‥‥、‥‥いや、違う。なんだっけ。あれ、意識が朦朧として来たよ‥‥?
 しかし仲間達の意識が風に飛ばされまくる中で、終夜だけは平然と、平常心を保っていた。
「美しい‥‥」
 敵から身を隠す様にして最上部の回廊に座り、そこからの眺めに暫し見入る。塔の姿そのものも美しいが、ここから見える景色も素晴らしい。が‥‥頭上から降り注ぐ無粋なドラミング。
「と‥‥教えても無駄の様ですね‥‥」
 本物のゴリラは高い知能と繊細な心を持ち合わせた生き物だが、このキメラからはその片鱗さえ伺う事が出来ない。
 さて、この美しい風景に余りにも不似合いなこのキメラ、さっさと片付けてしまいたい所だが‥‥ここは仲間の到着を待ってから。いくら己の力量に自信があっても、単独行動は禁物だ。特に、こんな足場の悪い場所では。
「ふにゅ〜、やっと天辺なりか〜。疲れたのら〜!」
 暫く後、回廊の縁からリュウナが顔を覗かせた。
「にゃ! ボス発見にゃ!」
 そうだ、こいつを倒しに来たんだっけ。
 その背後から飛び上がる様に姿を現した百白は、着地の体勢を整える間も惜しむ様にSMG「ターミネーター」を構えた。
「‥‥」
 ――ドガガガガ!
 果てしなく続く壁登りのイライラが頂点に達していたのだろう、敵の姿を視野に入れるや、ろくに照準も定めずに乱れ撃ち。そしてヒトに近い姿を認めた今、その瞳が青く染まり始める。
「‥‥面倒な場所で‥‥面倒な事しやがって‥‥」
 最早、仲間との連携など頭の隅から蹴落とされ、奈落の底に真っ逆さま。
「楽に逝けると‥‥思うなよ?」
 ゴリキメラのドラミングが止まる。
『グオオオオ!』
 吠えた。
「‥‥ガルルルル!」
 百白も負けじと吠え返す。何だか「猛虎vs巨大ゴリラ、密林の王者決定戦!」みたいなタイトルを付けたくなってきた。しかし、これはタイマン勝負ではないのだ。
 敵の死角から、理奈が練成弱体をかける。そこを狙って、ビリティスが背後から‥‥あれ、届かない。相手の背が高すぎる。
「それなら‥‥こいつを喰らいやがれ!」
 ゴリキメラの後頭部を狙って飛び上がり、ソニックブームを放つ。当たった部分から、血の混じったゴワゴワの剛毛が飛び散った。これなら急所に当てられる。しかし、飛び上がったビリティスの体は上空を渦巻く風に煽られ、着地点がずれる。
「‥‥っ!?」
 床がない。慌てて両手をばたつかせ、ビリティスはどうにか回廊の縁にぶら下がった。
「あ‥‥あぶねえ‥‥っ」
「ビリティスちゃん、大丈夫!?」
 攻撃を喰らったら、どころか‥‥喰らわなくても落ちる危険がある。気を付けなければ‥‥って、気を付けてどうにかなるものでも、ない気はするが。
「下は見ない、下は見ない‥‥」
 援護ポイントを探してそろそろと移動を始めたリュウナが、呪文のように唱える。その膝が、ちょっとだけ震えていた。
「リュウナ・セルフィン! 黒龍神の名の元にボスゴリラの殲滅を行います!」
 漸く足場を決めて、スナイパーライフルを構える。ビリティスも状況を見て、得物を長弓「淡雪」に持ち替えた。
 背後からの援護は任せ、百白と終夜は正面から挑む。
 姿勢を低く保ち、振り回される長い腕をかいくぐって、百白は相手の懐に飛び込む。
「ガウ!」
 紅蓮衝撃を発動し、ジャイアントクローを突き立てた。
「さっさと‥‥朽ち‥‥果てろ‥‥」
 終夜は豪力発現を発動し、更に瞬天速も駆使して相手との距離を一瞬にして詰める。それを追って太い腕が迫るが、終夜はするりと抜け出した。一瞬後、いつの間に攻撃を加えたのか、キメラの胸元から鮮血が迸る。
 一度下がって再び距離を詰めると、手にした聖剣「デュランダル」が閃いた。いつそれを振るったのか、わからない。手にしている事さえ気付かない程、それは終夜の体と一体化していた。太い腕が一本、赤い糸を引きながら宙を舞う。
『グアアアッ!』
 キメラが吠えた。残った腕を闇雲に振り回し、終夜に迫る。
 だが、その腕を狙って理奈が超機械「魂鎮」 で攻撃を加えた。煩そうに腕を払うが、リュウナが強弾撃で強化したライフルの弾がその分厚い皮膚を貫く。二発、三発、狙い澄ました攻撃がキメラの腕に吸い込まれて行った。
 その隙に、終夜は相手の足に斬り付け、怯んだ所に拳を叩き込む。巨大な体がグラリと揺れた。
 ‥‥ここで倒して大丈夫なのだろうか。倒した後で落ちたりしないだろうか。こんなものが落ちたら、下にいる人達は‥‥? そう考えていたリュウナの目の前で、バランスを失った巨体が崩れ、仰向けに倒れて行った。
 背後に居たビリティスが、潰されては堪らないと慌てて避ける。
「‥‥落ちる‥‥っ!?」
 しかし、ゴリキメラの巨体は回廊に引っかかり、止まった。
『グァ、グウゥ‥‥ッ』
 まだ息はある。
「‥‥とどめ、です‥‥」
 終夜のデュランダルが陽の光に煌めいた。百白の体が炎の様な真っ赤なオーラに包まれる。リュウナはライフルを構え、ビリティスはその頭部に狙いを付ける。
 理奈がこれで最後となる練成弱体をかけた次の瞬間、全ての攻撃が集中し――
「ガアアアァァァァァ!!!」
 百白が吠える。それは、勝利の雄叫びだった。

「やったあ! ゴリラさん退治、成こ‥‥」
 無事に討伐が成功した事を喜ぶ理奈だったが、その背に何やら冷た〜いものを感じて凍り付いた。
「‥‥ビリティス‥‥ちゃん?」
「お仕置きタイムだぜ! 覚悟しやがれ理奈!!」
 ‥‥がしっ!
 理奈の体を横抱きに抱え、ワンピースの裾をぺろんと捲る‥‥までもなく、既に丸出しではあるが。
 しかし、仲間達はそれを横目で見ながら既に移動を始めていた。
「よし! 終わった! 危ないから早く移動するのら!」
 覚醒を解いたリュウナはいつもの口調に戻り、重くなってきた体を百白に預けた。
「にゅ〜、ひゃくしろ〜オンブしてほしいのら〜」
「‥‥面倒‥‥だな‥‥」
 などと言いつつも、百白はリュウナを背に引き上げる。
「では、戻りましょうか‥‥」
 終夜が促した。あの二人は後から追いかけて来るだろう。勢い余って落ちさえしなければ大丈夫だし、その頃には階段も安全な場所になっている筈だ。
 こんな事もあろうかと借りておいた扉の鍵を使い、リュウナを背負った百白と終夜は階段を下りる。途中の踊り場には、ボスが倒された事など露とも知らない子分達が暇そうにたむろしていた。
「逃げるなよ? ‥‥まだ‥‥狩りの途中‥‥なんだから‥‥な?」
 にやり。得物をグラファイトソードに持ち替えた百白が不敵に笑い、終夜は涼しげな表情のままに歩を進める。
 状況をこれっぽっちも把握出来ていない子分達の中を、二つの風が駆け抜けて行った。
 後に残るは、死屍累々。
 普通に階段を下りるのと何ら変わらない速度で地上に到達した二人の耳に、遙か高みから聞こえる軽快なリズム。
 ――ぺんぺんすぺぺんすぺぺんぺん!
「これがビリティス流ドラミングだぜ!」
「痛ーい! ごめんなさい、もうしませんからー! うえええん! びえええん‥‥!」
 風に乗って、そんな声が聞こえる。
 つい先程まで怪音波に踊り狂っていた人々も、今は目を細めて、ほんわかと塔の上を見上げていた。
 ――ぺぺぺんすっぺん!
 その軽快な音は、塔の周囲に平和が戻った証拠だった。多分、きっと。