タイトル:【AC】リビア砂漠横断マスター:STANZA

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/04 01:05

●オープニング本文


 バグアアフリカ軍が、ついにその重い腰を上げたのは6月の半ばの事だ。人類の攻撃の手がモロッコまで届き、バリウス自らその脅威を確認したゆえのことと思われる。
 その戦力は、エジプトからの部隊と、中部アフリカからの部隊に二分されている。侵攻目標やルート、及び戦力などは一切不明であり、避けえぬ交戦を前に、その調査は必須ともいえた。


―――――


 そんな訳で、早速エジプトに向けて偵察部隊を派遣する事となったUPC欧州軍。
 しかし、そこへ至る道のりは厳しく、過酷だった。
「‥‥あっぢぃーーーーーっ!!」
 ここは、エジプトの隣国リビアの南部。そのほぼ全域を占める砂漠のど真ん中に、彼等はいた。
 先頃の作戦で解放された地域に、この国は含まれていない。競合地域ではあるが未だに危険度は高く、人が住める状態ではなかった。
 当然、拠点もない。補給基地もない。情報も、殆ど入って来ない。
 しかし、エジプトに入る為には、この国を通るしかないのだ。
 他にもいくつか、検討したルートはある。しかし地中海を通り海から侵入する事は敵も予測しているだろう。アラビア半島との境界にある紅海も、通り抜けられる状況ではない。
 そうなると、残りは陸路だが‥‥これも選択肢は限られていた。
 アフリカ大陸でエジプトと国境を接している国は、西のリビアと南のスーダン。しかし南回りはその途中にあるチャド、ニジェールと共に全てがバグアの支配地域である上に、UPCの拠点からも距離がありすぎる。
 残る選択肢はリビア一国のみ。
 だが都市が集中する海岸線は、当然の如くバグアの警戒も強い。戦って蹴散らす事も出来るかもしれないが、こちらも損失が大きくなるだろうし‥‥それに、それではこちらの狙いを読まれてしまうだろう。
 リビアを無事に突破出来たとしても、エジプトに入れなければ意味がないのだ。
「‥‥だからって‥‥」
 よりによって、砂漠の横断か。徒歩やラクダでないだけ、まだマシかもしれないが。
「そりゃ、こんなトコ奴等も警戒してないだろうし、敵がいるとしても野良キメラくらいなモンだろうけどさ‥‥」
 チュニジアのピエトロ・バリウス要塞を出て、もう何日になるだろう。
 道なき道を最初は南へ、そして後はひたすら東へ、車は走り続けた。
 空は無慈悲なまでに晴れ渡り、照りつける太陽と吹き付ける熱風が容赦なく肌を焼く。
 そして夜は一転、真冬の様な厳しい寒さに襲われるのだ。
「早く帰りてぇーーー、風呂入りてぇーーー」
 だが、道はまだ半ばにも達していない。
 別部隊がリビアの首都にちょっかいをかけ、その目を引き付けている間に、この砂漠を超えてエジプトに入り、その動向を探る‥‥それが彼等に与えられた任務だった。

 その先で待ち受けているモノを、彼等はまだ知らない――

●参加者一覧

UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
旭(ga6764
26歳・♂・AA
キア・ブロッサム(gb1240
20歳・♀・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
シルヴィーナ(gc5551
12歳・♀・AA
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
住吉(gc6879
15歳・♀・ER
エレナ・ミッシェル(gc7490
12歳・♀・JG

●リプレイ本文

「流石に暑いねー。まぁ、気負わずのんびり行こう」
 旭(ga6764)は厳しい暑さの中でも普段と変わらず、リラックスした様子でハンドルを握っていた。人も車も武器防具も、砂漠対策は万全。後はもう、なる様にしかならないし。
 しかしその隣に乗り込んだ美具・ザム・ツバイ(gc0857)は、恋する旭と一緒だというのに何故かやたらと不機嫌。
「そなたらなんでついてくるのじゃ〜、もっと空気読め、空気を〜」
 だって、砂漠で二人きりの任務を期待してたのに。何故にこうもゾロゾロとお邪魔虫が。
 いや、二人きりなんて無理なのはわかってる。でも何故、よりによって恋のライバル、シルヴィーナ(gc5551)まで参戦して来るのか。
 しかし、シルヴィーナはUNKNOWN(ga4276)と一緒に途中から別ルートを取る事になっていた。
 そこで彼が提案したルートはトリポリからガダミスを経由してセブハへ、そこからアカクス山脈とムーズック大砂丘を回って再びセブハに戻り、そこからタゼルボ、ビジマオアシスを経てムートへ至るものだったのだが。
 トリポリでは他の部隊が囮として戦ってくれているのだ。そこを通る訳にはいかない。
 そこで一行は要塞からチュニジア国内を南下、リビア国境のガダミスへ向かう事になった。ここまでは全員が同じルートだが、そこから先は別行動になる。
 それを聞いた美具さん、気分は絶望どん底デザイア状態から急上昇。ならば、旭は独り占めだ。まずは焚火を囲んでイチャつくべし。そして満天の星空を二人で眺めるのだ。
 しかし、そうして見せつけた所で‥‥ライバルが衝撃を受けた様子はない。シルヴィーナの頭の中は別の事で一杯だった。
「オアシスがあったら絶対に泳ぎますです‥‥なんだか少し楽しみになってきましたです!」
 それに、砂漠ではバイクにも乗りたいし。

 その夜。見張りに立った住吉(gc6879)は、暫し緊張を緩めて視線を天へと向ける。そこには細かなダイヤをぶちまけた様な、無数の輝きが鏤められていた。
「この砂漠を歩んだ先人達もこうやって星空を眺めて旅していたのでしょうね‥‥いやいや‥‥実に幽玄的なものを感じますね〜」
 しみじみと呟き、寒さに軍用歩兵外套の前を合わせる。
「厳しい旅になりそうですが‥‥『住吉さん』という名前である以上は今回の旅行は頑張らなければなりませんね〜♪」
 住吉さんとは日本神話の航海の神様。
 果たして神様は、この航海を成功に導いてくれるだろうか。目の前に広がるのは、海は海でも砂の海だけれど。


 その後ガダミスを出た本隊は、アルジェリア国内をリビアとの国境に沿って南下する事となった。
「値段の割りに‥‥過酷です、ね」
 自前のジーザリオに乗ったキア・ブロッサム(gb1240)は、その車内の余りの暑さに思わず愚痴を零す。
 今はまだ、車の下には道がある。砂に埋もれかかってはいても、完全な砂漠よりは乗り心地も遥かにマシな筈だが‥‥暑さだけはどうにもならなかった。
 いやいや、それは修業が足りないのだ。
「心頭滅却すれば火もまた涼い‥‥」
 そう、涼しい‥‥筈。何事も気の持ち様。涼しいと思えば涼しい。
「‥‥わけないじゃないですかー!」
 住吉がキレた。ここにちゃぶ台があったら引っくり返している所だ。
 しかし、キレようがバテようが、もう進むしかないのだ。そのうちに、この暑さにも慣れて来るだろう。多分、旅の終わり頃には。
 一方、軍の車両に便乗させて貰っているエレナ・ミッシェル(gc7490)は、この暑さもそれほど気にならない様子だった。
 運転は軍人に任せ、自分は時折窓から顔を出して双眼鏡でちょろちょろ。方位磁石で進行方向の確認をしつつ、扇子でぱたぱた。
「‥‥それにしても砂漠ってどんな生物がいたっけ? 蠍? 蛇? 蟻?」
 前方に見える、あれは何?
「‥‥ラクダ、です」
 屋根の上から声がした。
 少しでも高い所からと車両の屋根に座って前方を監視していたトゥリム(gc6022)の声だ。
 無線で連絡を受けた仲間達は、とりあえずその場で車を止めた。
 前方で道を塞いでいるのはラクダの群れ。しかし普通のラクダなのか、それともキメラなのか‥‥?
「避けた方が‥‥無難、ですね‥‥」
 キアが言った。わからないものはスルーに限る。それに道を開けさせるだけの戦いならば、やり過ごすのがスマートな対処法というものだろう。戦闘な極力避けるという点では、仲間の意見も一致していた。
 そこで一行は道を外れ、迂回路を取る事になった。
 道がない分、今度は敵の存在だけでなく路面の状況にも気を配る必要がある。トゥリムは再び屋根に上り、双眼鏡を構えた。体が小さくて運転には不向きな分、他の所で頑張るのだ。
 日焼けは気にならないが、気にならなくても紫外線のガードはしっかりと。この炎天下に晒しては小麦色の肌なんてレベルを超越して全身火傷だし。それに能力者が熱中症なんて笑い話にもならないから、水分の補給はこまめに‥‥ということで、ロッタ特製スポーツドリンクを、ごくり。
「‥‥これは‥‥」
 言葉にならない、いや、出来ない。
 しかし、どんな味だろうと貴重な水分には違いない。飲むしかなかった。最後の一滴まで。

 やがて一行は一度外れた道へ戻り‥‥いや、戻ろうとはしてみたけれど。
「道は何処ですか〜?」
 斥候として先頭を行く住吉は、進行方位と速度、経過時間により現在位置を特定する航海術を使いつつ探査の目で砂の上に目を凝らす。しかし、目に映るものは僅かな起伏を繰り返す砂地のみ。
「これじゃ大雑把すぎますかね〜」
 水平線の代わりに地平線と太陽を使った天測航法も併用している為、現在位置にそう大きなズレはないと思うのだが。やはり六分儀などのきちんとした道具が必要なのだろうか。それとも、暑さで計算が出来なくなっているとか。
「道はどうでもいいのじゃ! オアシスはまだか、オアシスはー!」
 後方の車では美具が駄々をこねている。
 砂漠横断の過酷な任務も引き受け手がないのであれば「ノブレスオブリージ」に相応しい。そう、旭と二人きりの決死の砂漠横断とか、過酷な任務での吊り橋効果を狙ってとか、そんな理由は世を忍ぶ仮の姿。本当はそんな崇高な志を抱いて任務に挑んだのだ。多分。しかし、蓋を開けてみれば思ったより盛況なのでちょいとがっかり。
 そんな訳で、いつもはストイックで真面目な美具さんも、今回ばかりは割とわがままなのだ。
「美具は風呂に入りたいのじゃ!」
「うん、見付かったら教えてあげるから‥‥ね?」
 隣で宥めすかしつつ、旭は方位磁石に付属の気圧計と睨めっこ。高度に変化がないのに気圧が変わったりすれば、それは砂嵐の兆候かもしれない。オアシスよりも寧ろ、そちらの早期発見の方が重要なのだが。
「‥‥わかった、頑張って探してみるよ」
 美具の勢いに圧され、旭は困った時の何とやら。GooDLuckで運を上げ、後はひたすら神頼み。
「‥‥ぁ」
 しかし、残念ながらそのご利益によって見付かったのは、道だった。
 ‥‥いや、その方が良いのか。そうだね。うん。
 そして再び道に乗り、ひたすら南下。この道はリビア西部のセブハまで続いている筈だった。
「暇ですねー」
 エレナが呟いた。道の上なら比較的安全だが、それはつまり何事もなく退屈だという事で。
「とりあえずみんなでお菓子でも食べましょー」
 車の中でキャンディを配りながら、目についた景色を携帯のカメラでパシャっと。暑いから全部終わらせて早く帰りたいけど、帰れないものは仕方ない。せめて思い切り楽しまなきゃ。
 そして夜には‥‥
「戦士にも休息は必要です! ってことでーみんな仲良くご飯食べよー」
 ずっと休んでた気がしないでもないけど、気にしない。
 寒いので防寒はしっかりと。体の中から温めるのには、トゥリムが差し入れたインスタント豚汁が活躍してくれた。
 交代で見張りをしながら星空の下で野宿をし、夜明けと共にまた砂漠をひた走る。
 それを、あと何回繰り返せば目的地に着けるのか‥‥そこは考えない方が良さそうだ。あと何日でオアシスが見付かるのか、も。


 一方、別行動を取ったUNKNOWNとシルヴィーナは、砂漠の真ん中を突っ走っていた。
 車とバイク、三本の轍が砂に刻まれては消える。二人はガダミス付近で仲間と別れて南東に進んでセブハに至り、今はそこから西へ進んでアカクス山脈を目指している所だった。
 やがて目的地に着くと、UNKNOWNは岩陰に車を停めて煙草に火を点ける。日除けと防塵の為の装備も、ここなら外しても良さそうだった。
 見上げれば、アカクス山脈の山と言うよりも岩の塊と言った良い様な、赤い壁。そこには太古の岩絵が残されていた。
「見に行ってみよう、か?」
「はい、行きますです!」
 傭兵仲間と言うよりは親子といった風情の二人は、岩に囲まれた渓谷へと足を踏み入れる。周囲の砂漠と比べて格段に過ごし易いこの地には、恐らくキメラが‥‥そうでなくても何かしらの野生動物が潜んでいる事だろう。UNKNOWNは覚醒し、探査の目を使いながら慎重に歩を進めた。
 その間にも、UNKNOWNは次々とカメラのシャッターを切る。奇岩や壁画が見える場所では立ち止まり、シルヴィーナにその豊富な知識を披露していった。
 その姿はまるで観光旅行。UNKNOWNは久しぶりの砂漠旅行を存分に楽しんでいた。
 砂漠では時間帯や砂の構成によって移り行く表情を切り取り、生き物の様に動く砂の目を読みながら慎重にルートを見定め、時にはちょっとしたアクシデントに見舞われ――
「これぞ、旅の醍醐味‥‥だね」
 流石、旅慣れている。
 しかし同行するシルヴィーナの方は、そうはいかない。つい張り切ってしまい、無理をしがちなその行動をセーブし、疲れを溜め込まない様に気を遣うのも彼の仕事だった。適度に休憩を取り、ついでにバイクの乗り方も指導してみたり。
 やがて空も暮れかかり、写真撮影には絶好の時間帯。
 しかし、シルヴィーナは少し落ち着きのない様子で、ちらちらと地平線の向こうを気にしていた。
「ちゃんと夜までには皆さんと合流しますですよね?」
 思い切って尋ねてみるが‥‥それは、無理。旅の終盤には合流する予定だが、暫くはこのまま二人旅だ。
 ほんの少し不安な様子を見せるシルヴィーナだったが、でも大丈夫。UNKNOWNに任せておけば、きっと何でも上手くやってくれるから。
 というわけで、UNKNOWN大活躍。夜は早めにキャンプを張って地元風の料理を振る舞い、寛ぎの一時には自慢の音楽や酒、トランプ手品などで退屈させない様に。
 ただ過保護にはせず、シルヴィーナにも交代で見張りをして貰う。
「眠っているときにキメラさんに襲われてしまっては大変です! 頑張りますです!」
 その合間には星を撮影し、その明かりを頼りに緯度と経度を測定、その結果と共に路面の状態や危険度などを黒革手帳に書き込んで行った。


 そして数日――
 連日の暑さと風呂なし生活のストレスその他諸々で上がりっ放しだった美具の不機嫌メーターが、シルヴィーナの合流で遂に振り切れた頃。
「あ、ほら、美具さん」
 旭が指差す方向に‥‥見えた。
「オアシスじゃ、旭殿、オアシスが見えるのじゃ。薔薇風呂が美具を呼んでおる!」
 蜃気楼、ではない。本物だ。ただし‥‥
「やはり‥‥敵もいます、ね」
 仕事外の事には極力時間をかけたくない、徹底した成果主義のキアが少し不満そうに言った。
 寄り道はしたくない。しかし仲間達の心は既にオアシスに鷲掴みされている。ならば、ここで一人異を唱えても仕方がないと、溜息ひとつ。
 それに‥‥このところずっと不満気味なのは、きっと暑さとシャワーなしのせい。
 そんな訳で、早速ルートを外れてオアシスへまっしぐら‥‥と思ったら。
 がっくん!
 あんまり慌てて走ったので、車が砂に嵌ってしまった様です。
「美具さんは、そのまま乗ってて?」
 優しい旭は車から降りて、豪力発現。
「ふんっ、ぬ‥‥ぉおおおぉっ」
 はい、お疲れさまです。では改めて、れっつごー。

 泉の岸辺には、様々な生き物がたむろしていた。傭兵達の姿を見て逃げるもの、そのまま知らん顔をするもの‥‥そして、向かって来るもの。
 蠍に蛇、野犬の様な姿をしたものが数頭。多くはないが、逃げたものに援軍を呼ばれると厄介だ。
「全殲滅確実を‥‥要します、ね」
 車の陰に隠れ、キアは援護射撃と狙撃眼で味方をサポート。向かって来るものには足を狙い、その動きを封じにかかる。
 前方では住吉がばっさばっさと天狗ノ団扇を振るい、砂嵐を巻き起こしていた。車の中では扇子代わりにしてたけど。
 トゥリムはライオットシールドの陰から銃撃。一日に使う錬力は5と計画を立てている為、スキルは使わずひたすら撃つ。
 そしてエレナは援護射撃を使いつつ、敵の動きを阻害しつつ足止めをしていた。それでも抜けて来たキメラには影撃ちと鋭覚狙撃で目を狙い、その隙に距離を取り‥‥トドメは誰か、お願いします。
 後はまあ、適当に皆で銃撃していれば何とかなりそうだ。

 そして速攻でキメラを片付けた傭兵達。
 美具は早速水着姿になり、デッキチェアでアハーン。そんなバカンス気分のお姫様に付き従う旭は、すっかりお世話係。
「冷たい飲み物とかあれば良かったんだけどね」
 トロピカルジュースは流石に無理。水はあるけど、冷たくないし。
 そして、一通りのお世話を終えた旭は、事もあろうにシルヴィーナに声をかけた。
「大丈夫? バイク疲れない?」
「はい、殆ど車に乗ってましたです」
 防塵処理やら冷却装置が役に立たないほど、砂漠の環境は過酷だったらしい。途中で動かなくなったバイクはUNKNOWNの車に重石代わりとして載せられていた。
「そうなんだ、大変だったね」
 背後から感じる美具の視線を華麗にスルーし、鈍感男はにっこり微笑んだ。
「そうだマッサージしてあげようか」
 その後、彼等の間に何が起きたのか、それは誰も知らない。

 一方エレナは水場に集まった仲間達の服を問答無用で引っぱがし、洗濯開始!
「さあ、脱いで脱いでー!」
 男女不問、問答無用。シルヴィーナは自分から全部脱いで飛び込んだけど。
 最初から服の下に水着を着込んでいたトゥリムもセーフ。でも、まさかこれも脱げとか言わないよね?
「乾かしてる間に水浴び水浴び♪」
 ばっしゃばっしゃ。
「仕事中だという事‥‥忘れていなければ良いのですけれど、ね」
 車で待機していたキアは、その様子を眺めながら呆れ顔。しかし、シャワー代わりにどうだと勧められれば‥‥
「‥‥ま‥‥少しでしたら‥‥休憩がてら‥‥」
 その口元が、ほんの少し緩んでいたとか、いなかったとか。


 やがて十日に渡る苦難の旅を終え、どうにかムートに辿り着いた傭兵達。
 彼等を待っていたのは、想像を絶するモノだった。