タイトル:【AP】キラッ☆と輝くマスター:風待 円

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/13 22:00

●オープニング本文


 とある公園。少し早めの桜の開花に引き寄せられるように集まる人々。──お花見シーズンである。

 ブルーシートが敷き詰められ、どんちゃん騒ぎが行われている公園の遊歩道。
 春爛漫の桜吹雪の中、春爛漫の意味が違う様なカップルが散歩中‥‥

「あぁっ猿子さんっ! あなたは何で猿子さんなんだ! 僕が犬で無ければあなたをもっと愛せるのにっ!」
「犬男さんっ! たとえあなたが犬でも私はあなたを愛しているわっ!」

 お互いの手を取り、くるくると舞う二人。そこはまるでお花畑の様に別世界。
 あははうふふとじゃれあっている二人の前に、異様な影が立ちふさがった。

「愛とは!」
「何ぞや!」

 二人の前に現れたのは、真っ白な全身タイツを纏ったムキムキマッチョの二人組み。真っ白な歯をキラッ☆と光らせ、必要以上の笑顔を二人に向けている。ご丁寧にポージング付きだ。

 ──そう、変態である──じゃなくて。

「真実の愛!」
「それは!」
「最高のナルシズム!」
「すなわち!」
「「肉 体 美 !!」」

 男達は交互に言葉を発しながら、のしのしと二人に詰め寄っていく。
 一言ごとにポージングしつつ進む姿は、さしずめボディービルダーの様。

 しかし、詰め寄る男達の前に立ち塞がり、彼女を背に守る青年。おお、かっこいいぞ。

「さ‥‥猿子さん、ここは僕に任せて。早く逃げるんだ!」
「嫌よ! 犬男さん! あなたを置いて私だけ逃げるなんて!!」

 言いつつも高速で後ずさっていく彼女。悲しきかな男の意地。

「兄さんやったね!」
「そうだな弟!」
「Hey Boy!」
「一緒に!」
「汗を!」
「「か か な い か !!」」

 どうやら男達の目には女性は映っていなかったようである。
 青年の顔に鼻息がかかる距離で、爽やかだが暑苦しい笑顔を向けた瞬間、男達の目がキラッ☆と光った。

「‥‥素敵ッ」

 ──青年は、恍惚の表情で男達の胸へ飛び込んだ。


 ‥‥という事件が多発しています。
 眉間を抑えて事件の報告をするオペレーター。うん、解るよその気持ち。
「現在、現場の公園では洗脳されたと思われる男性が多数、強化人間と思われる男達と暴れ回っているようです。彼らの暴走を止めて、拘束、鎮圧して下さい」
「尚、一般人多数が現場におり、対象も洗脳された一般人が含まれている為、武装は使用せずとの事です」

「──春になると、バグアにも変なのが沸くのね‥‥」

●参加者一覧

UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
佐竹 つばき(ga7830
20歳・♀・ER
榊 紫苑(ga8258
28歳・♂・DF
風花 澪(gb1573
15歳・♀・FC
周太郎(gb5584
23歳・♂・PN
桂木穣治(gb5595
37歳・♂・ER
時宮 緑地(gb5888
16歳・♂・FC

●リプレイ本文

「‥‥頭が痛くなるな」
 公園の惨状を見て、周太郎(gb5584)が深い溜息を漏らす。
「さっさと終わらせて、早くお花見をしましょう‥‥」
 つられる様に時宮 緑地(gb5888)も呆れ顔だ。

 周囲ではタイツ魔人に洗脳された男達が阿鼻叫喚の地獄絵図を作り上げている。

 ある者は、花見客(男性のみ)をタイツ魔人のもとへ連行し。
 ある者は、花見席へ乱入して絡み続け。
 ある者は、屋台を乗っ取り勝手に商売を始めている。もちろん、商売等にはなっていないのだが。

 そんな中、風に舞う桜に目を細めてベンチに座る黒服が一人。UNKNOWN(ga4276)だ。
 しかし、彼は騒ぎに気付く風も無く、ぺらりと哲学書のページを捲るのだった。


●二人の限界?

「フオオオオオ!! 見ろ! このセクシーな上腕二頭筋!!」
「あぁっ! すてきですぅ! 惚れ惚れしちゃいますぅ!」 

 なにやら不気味なやり取りがされている集団を見やり、風花 澪(gb1573)は露骨に嫌な顔。わかる、わかるよその気持ち。

「また、濃い相手ですね‥‥? はぁ、嫌な予感が、します‥‥」
 澪の後ろで憂鬱な表情の榊 紫苑(ga8258)も呆れ顔。

「マッチョの変態‥‥触りたくないなー‥‥フォースフィールド無いかなー‥‥」
 澪はフォースフィールドの新しい有効活用法ともとられそうな思考を取りつつ、お仕事開始。
「やっぱり相手は男なんだから、お色気で囮かな? ‥‥たとえ、僕にお色気が無いとしても!」
 グッと拳を握り締め、決意を見せ‥‥だけどやっぱり不安。榊の方を見やり、ぽつり。

「‥‥危なくなったらフォローよろしくね?」


 さて、開始されるのはタイツ魔人(弟)+洗脳gay’s数名vs風花 澪&榊 紫苑。

 先手を取ったのは澪。そっと着物をはだけて、肩を露出。
 しかし相手は無反応だ! むしろタイツ魔人(弟)のポージングショー(?)を見てウットリしている洗脳gay’sの目に入っていない!

「風花さん、相手の後ろでやっても、見えませんよ?」
 榊の冷静な突っ込みに意を決したのか、ポージングショーのステージ前に躍り出て頑張ってお色気を‥‥お色気を‥‥っ!!
 何やら痛々しい空気がその場に流れる中、澪はとにかく頑張ってみる。頑張れ、澪! 負けるな、澪!

「〜っ!!(気持ち悪いよっ! 見たくないよぅ! 視界に入ってくんな〜!!)」
 続けて泣きそうな表情で太腿を露出するが、gay’sの視線はタイツ魔人(弟)に釘付けだった。

「そろそろ、限界、ですかね?」
 色々な意味で痛々しい空気に耐えられなくなったのか、榊が行動に出た。

「とりあえず、先に、洗脳された、一般人ですかね?」
 ポージングショーがまだまだ続く中、タイツ魔人(弟)に見とれているgay’sの大半はあっけなく拘束。
 途中でポージングショーの観覧を邪魔された事に怒ったgay’sの反撃に会うが、周太郎のペイント弾射撃によって残りのgay’sも無事に拘束出来たのだった。

「ふぇぇ! 榊さ〜んっ!」
 色々な意味で耐えられなくなった澪が、榊に飛び付いて泣きじゃくる。

 ──そして、榊に起こる異変‥‥

「げ、やばっ」
 女性アレルギーの榊の全身に鳥肌が立ち、頬は引きつり、体が硬直。
 そんな事はお構い無しに、澪は榊に抱きついて泣きじゃくる。
「怖かったよー! 恥ずかしかったよー!」


 ◆榊 紫苑。タイツ魔人ではなく、味方の攻撃(?)にて戦闘不能◆


「起きろ! 起きてくれ榊さん! じゃないと、もっと酷い事になるから!!」
 その後、榊を起こす為に周太郎が奮闘したのだが、榊の頬に優しく手を当てて耳元に話しかける姿は遠目から見ると‥‥その、なんだ。


 ──周囲に薔薇が咲いている様だったという──


 そんなやり取りの間、1ステージを終えて満足したタイツ魔人(弟)が、gay’sの乗っ取った屋台に近づくと、すかさず爽やかにドリンクが差し出される。

「プロテインの牛乳割り5丁、お待ち!」


●美の主張?

『筋肉を自らの欲望の道具とするとは‥‥』
 桂木穣治(gb5595)は明らかに少しズレた怒りを胸に秘め、地響きのような効果音を体に纏わり付かせていた。その姿は膝を曲げて腰を落とせば、少年漫画に出てきそうな勢いだ。
 サイエンティストでありながらトレーニングによって鍛え上げられた体は、すらっと引き締まったセクシーボディ。 タイツ魔人とはまた違った筋肉美の追及である。

「うにゃー気持ち悪い世界ニャー」
 苦笑しながら目標を眺めて愚痴を零すのはアヤカ(ga4624)だ。
 タイツ魔人(兄)を見つけた三人は、その場で作戦を立てる。

「緑地君、アヤカさん。左右から挟み撃ちで頼む。逃げられない様にな。俺はあいつに言ってやりたい事がある!!」
 穣治の提案により散開し、タイツ魔人(兄)を取り囲む三人。

 ──ここから穣治のライブが始まった。

「真の肉体美とは実践的なトレーニングの元鍛えられたムダのない筋肉! 見せつけるだけのムキムキな筋肉など愚の骨頂だ! 第一見せ付けるにしてもだ、全身タイツ着用とは何事か!!」

 バッと服を脱ぎ捨てて褌姿になり、サイドチェストというポージングをしながら語る穣治。ナイスポージング。

 退屈したアヤカが、猫槍「エノコロ」でちょっかいを出す。
 ‥‥タイツ魔人ではなく、穣治にだ。

「筋肉の美しさをみせるならば、あっ‥‥肌の露出を高め、磨き上げた筋肉のカットをっおふぅ‥‥出してこそだろうがぁぁぁ! お、お前等は何にもわかってない!」
「ニャハハハ☆」

 若干恥ずかしそうに頬を染めながら言い切った穣治は満足そう。
 悪戯に反応があったアヤカも満足そう。
 ‥‥穣治の視線は、バツが悪そうに踊っていたが。

 そこに、タイツ魔人(兄)が歩み寄る。
 穣治の眉がピクリと動く。
 緑地の体もピクリと動く。暑苦しさにあっけに取られていたのだが。

「言いたい事はそれだけかあぁぁぁっ!!」
 タイツ魔人(兄)は吼えながら大きく腕を振りかぶり、両拳を腰前で付き合わせた。

「そ‥‥それは‥‥モスト・マスキュラー!! くっ」
 最強のポージングと言われるそれを見せ付けられ、条件反射のようにポージングで返す穣治。
 だが、それがタイツ魔人(兄)の思う壺だった。

 前かがみになって硬直させた体では、洗脳光線は回避できない!

 ──キラッ☆──

 穣治は呆けた様に立ち尽くし動かない。ちなみに、洗脳光線に合わせてアヤカが可愛らしいポーズを取っていたのは余談である。

「緑地君」
 唐突に穣治が声を上げる。
「はい?」
 穣治が返事をした緑地の肩に手をかけ、爽やかな笑みを向けてこう言った。

「一緒に汗を、かかないかっ☆」

 あとずさる緑地。踏み出す穣治。ポカポカとタイツ魔人(兄)の胸板を殴るアヤカ。そして微動だにしないタイツ魔人(兄)。

 ──公園を舞台とした、壮大な鬼ごっこが始まった──

「とりあえず、応援を呼ぶニャかね」
 逃げる緑地と追いかける穣治&タイツ魔人(兄)を眺めながらアヤカは応援を呼びに行くのだった。


●正義(?)のヒーローと詩人のダンディズム

「ふっふっふっふっふ。全身タイツなど邪道! 褌パワーを見せ付けて改心させてやる!!」

 タイツ魔人が二人、ポージングショーを再開しようとステージに向かっていた時、ヒーローは現れた。
 高々と声に出された宣言は、カラオケマイクを通しているのか、ご丁寧にエコー付だ。
 ステージ上にはこうこうとフラッシュライトがたかれ、姿はシルエットでしか確認する事はできない‥‥が。
 なにやらシルエットだけでもインパクトのある風貌である。

 そこで突如「バツン!」‥‥と音を立てて消える照明達。

 一つだけ残ったライトは鳳 つばき(ga7830)の股間を後ろから照らすのみとなった。
 そこで露になったその姿は‥‥っ!

 紙袋の上から眼鏡をかけ、首には暑苦しい程に巻かれたマフラー。そして、さらしと褌姿で仁王立ちになる少女の姿だ。
 職人の魂のこもった褌を見せ付けるかのように後ろから照らすライトは、まるで後光の様。

「悪の使徒め! 褌マスクが相手だ。かかってこい!」
 ビシィッ!っと指差す先にはタイツ魔人兄弟と、いつの間にか集まった洗脳gay’sも揃い、まるでヒーローショーの様相だ。

 ──問題なのは、双方ともに変態チックな所か。

「とうっ!」

 と、ステージから飛び降り、鳳は臨戦態勢に入ろうとする。
 散々ポージングショーを邪魔されているタイツ魔人兄弟も、流石に頭に来た様で戦闘態勢だ。

「お前は同じ臭いがするな。お前もタイツに染まれぇいっ!」
 兄弟が揃って発する洗脳光線は、鳳の頭上を掠めて通る。
「「かわした‥‥だと‥‥?」」
 洗脳gay’sがあっけに取られて見た鳳は──着地に失敗していた。

「よっこいしょ」

 親父臭い掛け声で起き上がった鳳は、着地に失敗したとは思えない素早さで技を繰り出す!
「輝け! フンドシフラッシュ!!」
 くるりと一回転し、鳳は褌に挟んでいたシグナルミラーと懐中電灯を取り出して、ミラーに光を反射させる。足を大きく開き、ポーズを取って反射させる姿は少し‥‥かなり間抜けではあるが。

「「それ、直接照らした方が早くないか?」」
 洗脳gay’sが生暖かい目で鳳に語りかける。

「突っ込むな! マナー違反だ!!」
 理不尽な逆切れをする鳳は、キーキーと懐中電灯を振り上げて抗議。
 しかし、その隙をタイツ魔人が見逃す訳も無く、洗脳光線が浴びせられる。

 ──キラッ☆──

 ところが、怒って振り回していたミラーに光線が反射。タイツ魔人(兄)の放った光線は、ポージングをしていたタイツ魔人(弟)へ。

「‥‥見たか! 狙い通り!」
 どう見ても狙い通りではないのだが、本人が言うならきっとそうなのだろう。
 強いぞ、褌マスク!! 凄いぞ、褌マスク!!

 そこで、光線を浴びて様子のおかしい弟を揺する兄を守る様に、忘れ去られていた洗脳gay’sが鳳の前に立ち塞がる。その数、ひとり、ふたり‥‥いっぱい。

「ぬはははー! フンドシバックダッシュ!」
 瞬時に己の不利を悟って行動を起こす鳳。瞬時の計算と判断力はまさにサイエンティスト。流石である。

 物凄い勢いで逃げる鳳を追いかけるgay’sの前に一人の男が居た。UNKNOWNだ。

「‥‥たまには外で読書もいいかと思ったが、なかなかに騒がしい、な」
 読んでいた本をパタンと閉じ、かけていた眼鏡を外してポケットにしまう。動作の一つ一つが洗練された大人の男の色気である。
「何事だね?」
 帽子を軽く押さえ、咥えタバコから上がる紫煙はダンディズムの象徴。
 只者ではない雰囲気にgay’sの足も止まるのだった。

「よくも! よくも弟をぉぉぉぉぉ!!」
 弟は兄に抱えられているのだが、何やら幸せそうな寝顔である。──軽く頬を染めちゃったりなんかして。
(「あぁん、おにいさまぁっv お兄様の厚い胸板に抱えられるなんて幸せすぎるっ♪」)
 とでも言いたげな様子。

 ─────一瞬、周囲の空気が止まったのを感じました(後日:T・Oさん談)

「貴様もっ! 貴様もタイツになれーっ!!」
 変わり果てた弟を見て何かが壊れたのか、タイツ魔人(兄)は無造作に洗脳光線を放つ。

 しかしUNKNOWNは微動だにせず、正面から眼光勝負に出た。
 タイツ魔人(兄)とUNKNOWNの間に、バチバチと激しい火花が見える──様な気がする。
 二人の睨み合いは暫く続くが、意外な結末で均衡は破られる事になる。

「くらえ! 必殺! フンドシクラッシャー!!」
 UNKNOWNで足止めされたgay’sを振り切った鳳が、華麗に登場。
 助走を付け、前転宙返りでタイツ魔人(兄)の顔面にヒップアタックをお見舞いしたのである。

「「げふっ」」

「──この力を使う時がくる、とはな」
 当てた方、当たった方双方の倒れる音を合図にUNKNOWNが次の行動に出た。
 タイツ魔人(兄)を抱き起こし、力強く抱きしめ、そのまま熱い口付けを──
 優しく、激しく、情熱的に。
 まるで映画のワンシーンの様な──

「「ああぁぁっ 兄さんの純情がぁっ」」
「何やってるニャか?」
「おおっ! ええどええどー!」
「緑地君ー☆」
「お断りです!」
「うぅぅ‥‥気持ち悪い‥‥」
「‥‥‥‥」

 大人の丸秘テクニックが披露されている間、地道にgay’sの拘束を続けていたアヤカをはじめとするメンバーが一仕事終えて帰ってきた。
 ‥‥のだが、何やらgay’sも交えて大騒ぎである。

 それは、ミッションスタートの時点で目にした物と良く似た光景。
 その中に傭兵が加わっている分始末が悪い。

 そこでUNKNOWNの口付けから開放されたタイツ魔人(兄)が口を動かす。

(「‥‥‥‥す‥‥てき‥‥」)
 とでも聞こえそうな顔は、まるで夢見る乙女の様。
 その顔を見て嫉妬に燃えるタイツ魔人(弟)は乙女泣きである。

「とりあえず拘束して、本部に引渡しニャかね?」
 アヤカがロープを手に確認を取ると、UNKNOWNが制し、自ら愛用の荒縄でタイツ魔人達を怪しく、それで居て美しく縛り上げて桜に吊るしていく。

「これは私が見張っているよ。皆で花見を楽しんでくるといい、よ」
 何事も無かったかの様にベンチに座り直し、眼鏡をかけてページを捲る。
 傍らにはなぜか蝋燭を置いて。

「緑地君ー☆」
「誰かー!!」 
 穣治と緑地の追いかけっこは、まだ続いていた。
 そこへ遅れてきた周太郎が現れてピリオドを打ったのだった。

「‥‥いい加減に‥‥せんかーーーーーっ! 高純度ォッ! エェミタナッコォォォォォッ!!」
 ヒーロー風味の鳳よりも、よっぽどヒーローらしい名前の攻撃を受け、穣治は撃沈。

 ──公園に、真の平和が訪れた──


●レッツお花見!

 ようやく騒動の収まった公園で、傭兵の一団がお花見を開始。
 各自かなり気合の入った準備である。
 中にはお花見が主目的の者も居ただろう。

「あー‥‥さっきはどうも‥‥ま、お一ついかがですか?」
 見事に洗脳されて醜態を晒してしまった穣治は、お詫びも兼ねて全員にお酌をして回っている。
 その中で緑地だけは顔を引きつらせて身を引いていたのは、また別のお話。

 もくもくと弁当を摘みに、恐ろしいスピードで酒を呷る榊。酔っている様子は無いが、何か嫌な事でもあったのだろうか?

「飲み物ならまかせてっ! 一杯持ってきたよ♪」
「ニャハハハ☆ 良い飲みっぷりニャね〜」

 女性陣が何かにつけて榊に近いもので、榊は生きた心地がしないのだろう。

 鳳は褌マスクではなく、年頃の少女らしい華やかな着物姿だ。
 きっと褌マスクは世を忍ぶ仮の姿。今日の業務は終わったが、またどこかで悪と戦う日々が続くのだろう。


 ジュースと酒の区別が付かなくなってきた頃、傭兵達はふと空を見上げる。
 ──そこには、夕陽に照らされた桜が、一層の鮮やかさを増して咲き誇っていた。