●オープニング本文
前回のリプレイを見る 長崎県・壱岐島。
ここでは今、目覚めた悪魔が大地を蹂躙するかのごとく、闊歩していた。
鹿児島県・甑島列島と大分県・深島にて、潜んでいたヘルメットワームが起動し、攻撃をしかけてきた事件があった。
それは、地中に直接ヘルメットワームを埋め込み、潜伏をカモフラージュするというバグアの作戦だった。深島にて最初の事件が発生し、能力者たちの手によりそれを撃退。そしてその際、発見されたバグアの秘密基地より、甑列島と壱岐島の両方にも何か関連があるだろうと予測されていた。
続き、甑列島にて同様の事件が発生。能力者たちの活躍により、ヘルメットワームが地中に直接埋められている事を確認。UPCはその報告に従い、地下に埋められていた多数のヘルメットワームを掘り起し、回収・破壊した。
そして、これらの事から以下のように推測された。
バグアは、深島、甑島列島、そして壱岐島の三方にヘルメットワームを埋蔵させ、時期を見てそれらを起動。三方から九州を直接攻撃する意図を有していたのではないかと推察。聖書に登場する群生の悪魔・レギオンのごとき、多数の兵士を潜伏させておき、いきなり出現させ不意打ちをかけようという魂胆だったのだろう。
しかし、何らかの原因で、深島のそれのみが早めに起動。そこから、この作戦があらわになってしまった、と。
壱岐島にて、UPCの調査部隊は改めて捜索していた。
甑島列島で判明した、ヘルメットワームを直接地中に埋没させ、有事に起動するというからくり。おそらくは、残されたこの壱岐島にも同様のシステムが組み込まれているのだろう。ならば、起動する前に発見し、それを止め破壊せねば。
が、眠れるレギオンは、再び覚醒してしまったのだ。それも、最悪の状態になって。
甑島列島の件から、UPCは地下に直接埋められているヘルメットワームの捜索を開始し、その結果。島東側の海底に多くのヘルメットワームが発見された。
発見された数十機の小型ヘルメットワームに関しては、そのすべてが起動前の破壊に成功。内陸部に調査の手を伸ばそうとした、その矢先。
外部から、バグアが襲撃してきたのだ。
バグアの攻撃部隊は、壱岐島の南西、百合岳に陣取り、そこに駐留しているUPC軍をおびき寄せていた。
が、彼らの目的は別にあった。UPCの目を引き付けている最中に、バグアの別動隊が壱岐島中心の角上山へと向かって行ったのだ。
角上山の中腹にはバグアの基地が、そしてそこには、壱岐島に埋蔵されているすべてのヘルメットワームを逐次起動させ、戦線へと送り込むシステムが内臓されていた。
別動隊の存在を知ったUPC部隊は、攻撃を加え、基地ごとシステムを破壊。事態は収拾するもの‥‥と思っていたが。
システムは止まらなかった。否、完全には基地は破壊されていなかったのだ。
そして、暴走したシステムが、基地周囲に埋蔵されていた三十機のゴーレムを起動。地中より現れたそれは、周囲のUPC軍へと無差別攻撃を開始した。
そして、百合岳のバグアもまた、最後の置き土産を残していった。
終結したUPC軍の集中攻撃によって、随伴していた小型ヘルメットワーム、母機である大型ヘルメットワームもまた、撃墜することができた
が、それには強力なヘルメットワームを積載しており、撃墜されると同時に起動し‥‥UPCへと襲撃したのだ。
それは、恐竜を模した強力無比なヘルメットワーム‥‥Rex Canon。十体のレックスキャノンの砲撃と爪、牙により‥‥集結していたすべてのUPC軍は全滅してしまった。
いや、それだけでなく、味方であり主人である筈のヘルメットワームに対してすら容赦ない攻撃を加え、血祭りにあげてしまったのだ。
現在、壱岐島本島の中心部には、三十体のゴーレムが、角上山の東側を警戒するように立ち、周辺に近づくものを攻撃している。
そして、レックスキャノンもまた、百合岳を完全に制圧し、同じく近づくものすべてに対し無差別攻撃を仕掛けてくる。
遠距離からのミサイル攻撃などを仕掛けたものの、それら全てはゴーレムまたはレックスキャノンの攻撃により落とされ、無駄に終わってしまった。当然、戦闘機や爆撃機などによる攻撃も同様。
このまま、壱岐島を放置しておくわけにはいかない。目覚めてしまった悪魔を倒さねば、壱岐島をバグアから取り戻したことにはならない。
「すぐに、能力者たちを招集するんだ」司令官が命じた。
「先の二件と同様、危険なヘルメットワームが多数起動し、徘徊している。これらを何とか殲滅しない事には、壱岐島を取り戻したことにはならない。深島や甑島列島と同じように、壱岐島の危険も取り除かねば」
かくして、君たちは再び、いや、みたびの招集となった。
だが、これが最後だろう。これ以上眠れるヘルメットワームの危険を、放置するわけにはいかない。
出撃準備を整え、君たちは戦場となる壱岐島へと心を馳せた。
●リプレイ本文
「つまり、ゴーレム三十機と、レックスキャノン(RC)十機。それぞれを正面から、各個順番に叩くと?」
提出された作戦立案を見て、司令官は提出者‥‥イーリス・立花(
gb6709)へと問うた。
「はい。基地が暴走しているのなら、まずそこを完全に叩けば、ゴーレムの活動は停止すると思われます。停止せずとも、空陸の両方から攻撃すれば、ゴーレムの殲滅は可能。殲滅後、RCを攻撃し破壊します」
「‥‥しかし‥‥この戦力差を埋められるのかね? こちらはナイトフォーゲル八機。相手はゴーレム三十機に、しかも他に小型・中型ヘルメットワームが出現する可能性もある。それらとは別に、RCが十機‥‥正直、不安なのだが」
「大丈夫です」
イーリスは、言葉を続けた。
「今回のメンバーには、ナイトフォーゲルの陸戦を得意としている者がおりますし、ナイトフォーゲル自体の性能も高いです。成功の確率は、十分にあるものかと」
「ふむ‥‥」
しかし、司令官の憂いた表情は晴れなかった。
不安だったのだ。大群に対し、少数精鋭で正面から立ち向かう戦法は、場合によっては効果的であり、能力者たちならばそれは十分に可能。
だが‥‥敵戦力を削がずにそのまま交戦するのは、かなり危険ではなかろうか。ネズミも大群となったら、大きな獣も骨にできる。高い攻撃力と性能を備えたナイトフォーゲルといえど、三倍以上ある戦力差を埋められるのか。
それに、陸戦を得意とするメンバーないしはその機体が攻撃を受け、潰されたら?
ではあるが‥‥それらの不安を口にしたところで、彼らの足を引っ張るのみ。ならば言うべき事は一つ。
「‥‥わかった、君たちに任せよう」
『‥‥応答せよ。こちら、UPC司令室。全機、搭乗機体およびパイロットの姓名を名乗れ』
「‥‥こちら、ナイトフォーゲルACS−001HパピルサグII、『Nachtgriz』。パイロット名、イーリス・立花。感度良好。現在異常なし」
「ナイトフォーゲルK−111改。パイロット名、UNKNOWN(
ga4276)。同じく、異常なし」
「GSF−2200GRガンスリンガー改、『Schwalbe・Schnell』。パイロット名、奏歌 アルブレヒト(
gb9003)。異常ありません‥‥」
「ES−008−2ウーフー2、『ホワイトシャーベット』。パイロット名、八尾師 命(
gb9785)、順調です〜」
「KM−S2Pスピリットゴースト・ファントム、『ジャックランタン』。パイロット名、ジャック・ジェリア(
gc0672)。現在のところ、問題は無いぜ」
「XF−08Bミカガミ、『ブルーゴッデス』。パイロット名、神棟星嵐(
gc1022)。システム、オールグリーンです」
「A−1DロングボウII、『ミサイルキャリア』。パイロット名、BEATRICE(
gc6758)。同じく異常なし」
「EF−006ワイバーンMk. II、『ハウンド』。パイロット名、クラフト・J・アルビス(
gc7360)。準備OK、いつでもいけるぜ」
天空を駆ける、雄々しき八騎士。向かうは、長崎県・壱岐島。討つべきは、かの島を占領したバグアの兵器。
『‥‥機体及びパイロット能力者を確認。‥‥諸君らの活躍に期待する』
敬礼している様が見えるようだと、イーリスは思った。
レーダーに、壱岐島が映った。じきに、肉眼でも判別できるだろう。
「皆、行くわよ!」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
奏歌、UNKNOWN、ジャック、神棟、そしてイーリスが降下する。クラフト、命、BEATRICEは、そのまま空中にとどまり‥‥上空を旋回した。
五機のナイトフォーゲルは、島の東海岸へと徐々に近づきつつあった。イーリスは頭の中で、何度目かのシミュレーションを繰り返す。
RCは後回し。ゴーレムとRCとを別々に叩く。
私たち陸戦部隊五名は、島の東側から接近。陸上よりゴーレムへと向かい、攻撃。
ゴーレムを陽動し、空戦部隊三名が北西から壱岐島内陸・角上山に接近。内部のシステムを破壊する。これで、ゴーレムは止まる筈。
止まらなかったら? その時はその時だ。
『イリ姉‥‥12時の方向から、多数の熱源接近‥‥』
奏歌からの連絡内容が、自機のレーダーにも反応する。
散開し、各機は降下、変形と同時に着陸した。
『‥‥全員、降下を確認。あんたは大丈夫か?』
UNKNOWNからの連絡に、イーリスはパビルサグの腕を上げつつ答えた。
「大丈夫よ。さあ‥‥行きましょう!」
そう、此処も仕留めれば、それで終わり‥‥いえ、終わりにしなければ!
鋼鉄の騎士たちが、森林地帯をのし歩く。前方をUNKNOWNのK−111、続きジャックのジャックランタン。そしてその後方を離れつつ、イーリスのパビルサグに、奏歌のSchwalbe・Schnell。そして神棟のブルーゴッデス。
UNKNOWNの機体には、巨大拳「雷雲」が装備されている。この拳で殴りつければ、たとえ木だろうが岩だろうが、問題ではない。
更に、ジャックが搭乗するジャックランタンは、真スラスターライフルに四連キャノン砲、ガドリング砲と兼ね備え、万全の装備。
「‥‥ゴーレム、十機を確認。敵射程距離内に突入。敵行動パターン、分析‥‥」
まだ、距離はある。接近戦に持ち込み、こちらの攻撃を放てば‥‥。
が、ジャックの考えより先に。
「‥‥回避! プロトン砲だ!」
前方より、プロトン砲の砲撃が放たれた。ジャックの警告により、五機とも何とか回避はできたものの、きわどいところ。
直後、やはり前方より再び熱源が。それがK−111を狙い、木々を、岩を貫く。
『‥‥連中、随分と玩具を持っているな』
UNKNOWNのぼやきが、通信機を通し聞こえてくる。
『‥‥こちら神棟。援護します』
「ああ、頼むよ。こっちはもう一発喰らいそうだ」
ブルーゴッデスの高分子レーザー砲「ラバグルート」の銃口が光った。敵ゴーレムに届いてくれ‥‥と、ジャックはコックピット内で祈ったが、それはかなわなかった。
「‥‥射程距離は、向こうが上か?」
思ったより、接近戦に持ち込むにはてこずりそうだ。別動隊のシステム破壊に現状打破を委ねるしかないかと、ジャックはもどかしさとともに考えていた。
クラフト、命、BEATRICEの空戦部隊三名は、もどかしさを覚えつつ何度も空中を回避していた。
が、地上からは数機のゴーレムが陣取り、移動式対空砲のごとく砲撃して寄せ付けない。
「動くスナイパー、再来〜‥‥などと、軽口は叩けそうにないな‥‥っと!」
彼らが相対している敵ゴーレムは三機。内一機は、長距離砲撃用のプロトン砲を、残り二機は中距離狙撃用のフェザー砲を装備。それらが角上山北西部より対空砲撃していたのだ。
クラフトはハウンドを幾度も回避させ、何とか当たらずにはすんでいるが、このままでは状況打破は出来ない。
『‥‥こちら、BEATRICE。お二人で、なんとかプロトン砲を引き付けられませんか‥‥? 数秒だけ持ちこたえれば、その隙に「燭陰」を打ち込めます』
「ちょっとばかり難しそうだが‥‥必要なら、やるしかないかな」
『私も〜、やります〜!』
クラフトの言葉とともに、命のホワイトシャーベットが先行した。
低空飛行で、角上山山腹へと接近する命。プロトン砲の死の砲口が、命へと狙いをつける。が、素早く動くホワイトシャーベットの狙いをつけるのは難しいようで、その砲口が小刻みに動いているのがわかった。
プロトン砲が放たれる。狙われた白き氷菓子は、即座に急旋回し、その一撃を回避した。
「RCじゃあなくても、あんなんに当たったら痛いからねー」
クラフトのハウンドが挑発するように、莫迦にするようにして動いた。猟犬の名を持つナイトフォーゲルは、続きフェザー砲を放つゴーレムの攻撃すらもかわし続ける。
が、それも限界。これ以上は持ちこたえられそうにはない。
『‥‥まだ、ですかーっ!』
「‥‥いきます!」
命の問いに、BEATRICEが応答するのをクラフトは聞いた。
数秒後。ミサイルキャリアより放たれた「燭陰」が角上山に着弾し‥‥それが、炎の地獄を作り出した
「!」
敵の攻撃と思ったイーリスだが、すぐにその誤解を解く。
角上山、山腹。ないしは基地が存在すると思しき地点に、BEATRICEのミサイルキャリアからの攻撃が命中、撃破したのだ。
それが証拠に、ゴーレムの動きが止まっている。
「‥‥いいわ、予想通り!」
解決が見えてきた。作戦第一段階は成功。すぐ次の段階へ‥‥RCの殲滅へと進もう。
だが、イーリスがナイトフォーゲルを変形させようとした矢先。
『‥‥イリ姉』
奏歌からの連絡が、イーリスの機体に入った。
『‥‥三時の方向、島の北部上空に‥‥小型および中型ヘルメットワームらしき機影を確認。数‥‥十機前後』
「‥‥なんですって?」
『‥‥こちら、UNKNOWN』
UNKNOWNからも連絡が入った。すでに先行しているため、この位置から彼のK−111は見えない。
『‥‥動きを止めたゴーレムが、再び動き出した‥‥うわっ!』
「どうしたの? 応答して!」
『‥‥問題ない、予想外の方向からの攻撃を受けた。ゴーレムに接近し、ジャックと一緒に八機ほどぶちのめしたが‥‥』
やつらの新手が、現れやがった。
彼の口から、聞きたくない言葉がイーリスの耳に入ってきた。
「新手? どっちの方向から?」
『角上山北部からだ。元の三十機は、俺たちから見て正面に散開してるが、真横からの攻撃は予想外だったぜ』
まさか、RC?
いや、ちがう。百合丘は壱岐島の南西。仮にRCが壱岐島へ渡航して攻撃したとしても、わざわざ島の北側に回り込んでから攻撃するとは、考えにくい。
となると、考えられるのは‥‥当初に確定していたゴーレムとRC以外の戦力だろう。
『‥‥あの、大変ですー‥‥』
その空中班の命から、連絡が。のんびり屋の彼女らしくない、緊張感を感じさせる口調。
『島の西側、半城湾より小型・中型ヘルメットワームが歩行し、上陸するのを確認しましたー‥‥過去に確認された、アームズオプションという
タイプかと』
「‥‥数は?」
『‥‥十機、いえ‥‥それ以上はいるかと思われますー』
『‥‥イーリスさん、どうしましょう?』
不安そうな神棟の声が、イーリスの耳に響く。
ゴーレムは、まだ二十機以上が健在だろう。そして、百合丘にはまだ討つべきRCが、手つかずで十機。
しかし、それらの他に、新たに出現したゴーレム数機と、小型・中型ヘルメットワーム数十機とを相手にしなくてはならない。
『‥‥戦力差を埋められるか?』
出撃前に問われた質問に、なぜ自分は「大丈夫」などと答えられたのだろうと、イーリスは歯噛みしつつ思った。
「くっ!」
UNKNOWNは、先刻から苛立ちを止められなかった。
先刻‥‥BEATRICEの攻撃成功後にゴーレムが停止した時には、勝利を確信した。
しかし‥‥再起動し再稼働したゴーレムを見て、その確信が打ち砕かれるのを実感した。
「くそっ‥‥離れるたぁ、味な真似をしやがって!」
そして再起動したゴーレムは、距離を取り‥‥遠距離から攻撃を仕掛けてきたのだ。まるで‥‥UNKNOWNの戦法を覚え、警戒し、それに対処しているかのように。
それでも無理に接近し、その鉄拳でまた一機のゴーレムを叩く。が、出現した三機が中距離から狙撃し、接近を許さない。
『‥‥まずいな』
ジャックの連絡が入る。が、その声の中にいつもの軽妙さは無い。余裕もない。
『‥‥十一時の方向から、新たなゴーレムを三機確認。‥‥まだ増えそうだな』
確かに、それはまずい。というか‥‥最初に潰した以上に、敵機の数が増えてるのはどういう事か。
「‥‥システムをぶっ潰したら、別のシステムが動き出したとでも言うのか? そいつが、まだ埋まっていたゴーレムやヘルメットワームを起動させたとでも?」
それを考察する暇は無い。ゴーレムどもが、一斉にフェザー砲を放ってきたのだ。
地面をえぐり、岩を砕き、木々を薙ぎ払う。UNKNOWNが先刻K−111で行った戦法を、今度は連中が逆に砲撃でやり返してきたのだ。反撃したくとも、距離がありすぎる。そして敵は、接近戦を警戒し近づこうとしない。
多勢に無勢、四面楚歌、絶体絶命。反撃の余地は‥‥無い。
「‥‥」
自分の奥歯を噛みしめる音を、UNKNOWNは聞いた。
「うわーっ!」
クラフトは、己の機体が落下するのを何とかして食い止めようとしていたが‥‥その努力は無駄に終わった。直撃は受けずに済んだが、それでも機体のバランスを崩すことまでは防ぎきれない。
増加したゴーレムの対空攻撃、同様に出現した多数のヘルメットワーム。それらに、たった三機でどう対処しろと言うのか。
‥‥数が多すぎる。この状況で、出現したヘルメットワームをRCの射程距離に誘導し、同士討ちさせるなど行えるわけがない。
地面に墜落して、クラフトのハウンドはようやく動きを止めた。
機体損傷は軽微で、戦闘続行可能。しかし‥‥戦局の好転は不可能。
ハウンドのセンサーが、周囲を見回す。
クラフトは見た。ミサイルキャリアとホワイトシャーベットもまた、自機と同様に墜落しているのを。
「‥‥くっ。砲撃が強くなってきたわね」
UNKNOWNとジャックとを救出しに向かおうとするも、イーリス、奏歌、そして神棟はその場に釘づけにされていた。
出現した新たなゴーレム。それらが今、彼女らへと攻撃を仕掛けてきたのだ。
『‥‥イリ姉、熱源反応!』
「!」
奏名の警告が無ければ、イーリスのパビルサグはプロトン砲を回避できなかったろう。
先刻に二機を倒したが、まだ五機が残っている。
『‥‥こちら、神棟。一時の方向にゴーレム三機‥‥更にもう二機を確認!』
疲れ切った仲間の声が、コックピット内に響いた。
やがて、イーリスの口から出てきたのは、認めたくない事実。
「作戦‥‥失敗。‥‥撤退しましょう」
「君たちはよくやった、気に病むことは無い」
司令官は、能力者たちの見通しの甘さを罵倒しなかった。むしろ、気遣いを込めた言葉をもってイーリスらを迎えていた。が、今は逆にそれらの言葉と気遣いが、彼ら全員の罪悪感と敗北感とを刺激してしまっている。
全員がかろうじて帰還。現在、司令官の前で報告し終えたところで、司令官は、皆のナイトフォーゲルを修理・整備している事を付け加えた。
「機体に大きな破損は無かった。じきに整備は終わるだろう」
だが、と、彼は言葉を続ける。
「‥‥今や状況は、更に悪化している」
ゴーレムの数は増加。周辺の海底からも小型・中型ヘルメットワームが出現。それらは壱岐島へと布陣を張りつつある、との事。
「‥‥しかし我々も、これで終わらせるつもりは無い。追加の任務依頼をすることになるだろう。そして、その時こそ成功させなければ。さもなくば‥‥」
今回の敗北など、比べ物にならない被害がもたらされるだろう。
惨めさとともに漂う沈黙が、その事を皆に思い知らせていた。