●オープニング本文
前回のリプレイを見る「鹿児島県・甑島列島」「長崎県・壱岐島」
これらは、バグアの基地があると目された地点。
一か月以上前、大分県・深島にてとある事件が発生していた。そこに知られざるバグアの基地が存在し、その内部から未確認のヘルメットワームが大量に出現。UPCの部隊に大打撃を与えた‥‥という事件。
この事件を重く見た当局は、能力者たちへ深島の調査・バグア秘密基地の攻略を依頼した。
その任務に成功はしたものの、情報を入手した時点で基地は自爆。
その際に入手した情報によると、基地は深島の他に前述の二点がある‥‥という。
すなわち、甑島列島に壱岐島。だがUPCは、前回の事件後に該当する島を徹底的に調査したが、そのどちらからも脅威となるものは発見できなかったのだ。
いや、バグアの地下基地自体はあった。地中の金属反応を探知し、そこから掘り起こしたところ‥‥基地があった。
が、内部には危険性のある機械装置、のちに何らかの脅威になるマシンの類は一切が発見されなかった。すべてが機能停止しており、脅威になるとは考えにくい。なにより、規模もそれほどない。
ヘルメットワームも、基地内にはあった。完全にバラバラになり、起動などしそうにない残骸が2・3機あるのみだが。
周辺海域の海底も探索したが、やはり何も無い。かつて住民が建造した建造物もまた存在するが、それらも軍事的に転用できるものとは思えない。民間の研究機関による天体観測施設や、TVやラジオ、無線などあらゆる電波を受信・発信するための通信放送施設。あとは、微生物・クロマチウムを研究する生体工学研究所があるくらい。クロマチウムはこの上甑島の湖「貝池」以外では、地球上にはバルト海沿岸部でのみしか発見されていないので、科学界において重要な施設と言える。
それらには、バグアの手が入ったあとが見られる。が、そのすべてが戦争においては役に立たない無用の長物。そのため、一ヶ月近くかけて行われた調査は、さしたる発見もなく終了となった。
だが、調査終了後。甑島列島より、新たな脅威が確認されたのだ。
ヘルメットワームが発見され、それが動き出したのだ。
甑島列島は、大きく分けて三つの島で構成されている。
上甑島、中甑島、下甑島の三つの島を中心として、その周辺に散らばる小島。それらの総称が、甑島列島。
かつてはブリにキビナゴを中心とした水産が盛んで、また魅力的かつ特徴的な景観の観光地として有名であった。
バグアと戦争しているため、今は住民は退避しているが、かつては三つの島すべてに、百人から千人単位で住民が生活していた。
UPCは、調査終了後に折からの避難民の希望で、この居住区を整備する任務に就いていた。壊れた家屋は新たに作り直し、失われた文化遺産は、可能な限り修復する。
そう、この列島には貴重な遺産が数多く存在しているのだ。
だからこそ、残されたものをできるだけ大切に保存し、後世に残したい。UPC復興部隊は、瓦礫や、崩れた岩や樹木の片づけ、そして清掃などを行っていた。
しかし、その数日後。
SOSの緊急連絡が入った。
復興部隊に何が起こったのか。UPCはすぐに部隊を編成し救助に向かい‥‥。
そこで、信じられぬものを見たのだ。
『こちら、甑島救助部隊第三班。上甑島にバグアのヘルメットワーム発見! 数は3機! 今、映像を送る!』
救助部隊のヘリからの映像が、ヘルメットワームの姿を映しだした。そこにあったのは、まぎれもなくバグアが有する悪魔の兵器の姿。空中を飛び回るそいつらに攻撃を受け、ヘリは撃墜された。
「‥‥いったい、何が起こったんだ? あの島には、バグアの基地やヘルメットワームは存在しなかったんじゃあないのか!?」
「わかりません! 徹底的に調べ、海底にも地下にも、それらしい基地や施設は無かったんですよ! 発見された基地も小規模で、内部施設は全て機能停止している状態でした! その周辺も、幾度となく調べました!」
叱責した部下からの言葉を聞いて、司令官はかぶりを振った。確かに前回、地下の知られざる基地の空間があったことから、その点にも気を付けて調べる‥‥という事は徹底していた。金属探知機を用い、地下基地を発見したのは事実だし、その地下基地以外の場所も調べ、何もない事を何度も確認したのだ。自分自身も現場に赴き、その点は確認した。
地下に、基地は無い。発見した基地は、役に立たない。
ならば、どこから湧いて出たのだ?
わずかな部隊の生き残りによると、海中や地中、山の中から湧いて出てきたというが、ならば今までの調査はどうなのだ? 仮に調査隊が無能だったとしても、金属探知機は地下のバグアの基地を実際に見つけ出し、その内部にヘルメットワームが存在していない事を確認していたというのに。
それに、どこにヘルメットワームが隠れていたにしろ‥‥そいつらを起動させたのはどこのだれで、どうやったのだ?
わからない。わからないことがあまりに多すぎる。
だが、それでも行うべきことは行わなければならない。
「というわけで、またも君たちに依頼する事になった」
司令官・大高は、やつれたような顔つきで君たちに懇願した。
「現在、甑島列島の上甑島に、ヘルメットワームが集結している事が明らかになった。また以前と同様に、無人で動いているかどうかまでは定かではないが‥‥島内部のどこかに、指令を中継する施設があると思われる」
甑島列島の周辺には、基地は見当たらないし、バグアの部隊もまた確認されていないという。
「超長距離から電波による指令を下していると思われるが、仮にそうであったとしても必ずどこかに、ヘルメットワームをコントロールする中継ポイントとなる施設があるはずだ。そうでないと、これまで大量のヘルメットワームを一度に操作するのはかなり困難になるはずだ」
既存の施設は、上甑島に三つ‥‥天体観測所にTVの通信放送施設、そして生体工学研究所。これらの周辺や地下も確認したが、脅威は無かった、という。
「もっとも、地下基地発見を優先したため、どこか調査に取りこぼしがあるかもしれんが。ともかく、参加者の半分は島に潜入し、どこかにある中継点の発見と破壊工作に従事してほしい。残りは‥‥ナイトフォーゲルでの総力戦だ!」
君たちへと、司令官は改めて頭を下げた。
「任務を承諾するなら、すぐに取り掛かってほしい。‥‥何か質問は?」
●リプレイ本文
少しばかり前に、大分県深島のミッションに参加した四名。彼または彼女は、あの時の不安と悪い予感とが、再び胸中に湧き上がるのを実感していた。
能力者たちの立てた作戦。簡単に言えばそれは、四名がナイトフォーゲルで当座のヘルメットワームを倒し、四名が甑島列島の各地点を調査。基地または施設を発見し、そこを殲滅または破壊。
かくして、四名の四機、ナイトフォーゲル四機が天空に舞っていた。
「‥‥こちら、奏歌 アルブレヒト(
gb9003)。ヘルメットワームを確認‥‥これより迎撃行動に入る。‥‥各機応答せよ」ナイトフォーゲルEPW−2400ピュアホワイトを駆るは、美しき白銀の長髪を持つ美少女。
「BEATRICE(
gc6758)、戦闘準備完了‥‥」眼帯風のモノクルを装着した、白き美女の愛機はナイトフォーゲルA−1Dロングボウ2。
「クラフト・J・アルビス(
gc7360)。異常なし。さあ、行くぜ!」赤き瞳と銀髪の青年。彼の持つ力は、EF−006ワイバーンMk2。
「終夜・無月(
ga3084)、感度良好。ナイトフォーゲルXF−08Bミカガミ、システムオールグリーン」美しき白銀の髪と、紅玉のような瞳の若者は、その視線をモニターに、ないしはそこに映るヘルメットワームに向けていた。
ヘルメットワームは、通常タイプ。翼を広げずに空を飛ぶ甲虫のように見える。その機体は前部に、何やら折りたたまれた装備が装着されていた。数は三機。
そいつらが、ナイトフォーゲルへ砲撃する。すんでのところでそれを交わした四機は反転し、攻撃開始した!
小型の光線砲で、終夜のミカガミへと一機目のヘルメットワームが砲撃してきた。が、巧みな操縦で終夜はそれを回避する。追ってくるヘルメットワームを、まるで誘い込むようにして終夜は飛び続けた。
もうすぐ、追いつかれる。‥‥と、素人だったらそう思うだろう。しかし、彼の戦闘論理はそのような絶望の答えを導き出さない。
刹那。
「もらった!」
ヘルメットワームに、別方向からの攻撃が命中。アルビスの乗機、ワイバーンMk2のショットオブイリミネートが、ミカガミを追っていたヘルメットワームを撃ちぬいたのだ。
「‥‥得点、1」
心の中で、終夜はカウントする。
二番目のヘルメットワームが、BEATRICEのロングボウ2へと襲いかかった。が、海上を飛び、海岸上空を飛翔するロングボウ2の動きには、ヘルメットワームは明らかに反応しきれないでいる。
「‥‥発射」
反転したロングボウ2のD−03ミサイルポッドより、ミサイルが放たれる。それはヘルメットワームの周辺で爆発し、目くらましするかのようにきりきり舞わせた。
「もらった!」
その隙に、奏歌のピュアホワイトが襲いかかった。レーザーガンの一撃が、ヘルメットワームを貫き、引導を渡した。
「得点、2!」
得点3となるべき一機は、空中で反転すると‥‥前部に装着していた何かを展開した。それはクワガタムシの顎のようにも、いきなり生えた双角のようにも見える。
それは、一対のドリルだった。それを回転させつつ、ヘルメットワームは体当たりせんと突撃してくる。奏歌のピュアホワイトへと、まがまがしい螺旋が迫ってきた。
「‥‥遅いぜ」
が、螺旋は砕かれる。終夜のミカガミ、ないしはその機体が搭載していた高分子レーザーライフルが火を噴き、得点3を撃墜したのだ。
爆発し、空に奇妙な花を咲かせるヘルメットワーム。それを見つつ、奏歌は地上の仲間へと連絡を入れた。
「こちら奏歌‥‥。ヘルメットワーム三機の撃墜を完了‥‥イリ姉、あとはお願いします‥‥」
「こちら、イーリス・立花(
gb6709)。感度良好。カナ、引き続き上空の警戒、お願いね」
調査班の一人、イーリスが、奏歌の連絡を受け返答する。
「それじゃあ、また調査を始めましょう〜♪」八尾師 命(
gb9785)が、穏やかな口調で言った。
彼女とイーリス、そして迎撃班のアルビスとBEATRICEとは、前回のミッションに参加しており‥‥不十分な前回の結果を快く思っていなかった。
今回は、なんとしてでも成功させたい。二人の新参者‥‥青き髪の美青年、神棟星嵐(
gc1022)と、金髪のハーフ美少女、犬彦・ハルトゼーカー(
gc3817)にも、彼女たちの思いが強く伝わっていた。
「んじゃ、行くか! どこに何があるのかわからんけど、行くしかないだろ。女は度胸! 行動あるのみ!」犬彦が、鼓舞するように鼻息荒く促した。
「‥‥ふむ」
星嵐は、調査し終えた。そして、調査の結果、判明した事実があった。
「‥‥この残骸は、本当にただの残骸‥‥動き出す事などあり得ませんね」
上陸地点から、当初の調査地点である通信放送局の地点の中間部。そこに、UPCが調査し、問題ないと思われた施設が存在していた。
そして、向かう途中で四名はそこにたどり着き、再調査したのだが。
「残骸は残骸、残っているのは外殻の装甲ばかりで、内部は機関部はじめほぼ空。これが動き出すことなど、万が一にもないでしょうね」
「そうだな、ウチもその意見に賛成」
「そうですね〜‥‥施設の方も、確かに何もありません‥‥」
犬彦と命もまた、星嵐の意見に同意する。持ち込んだ装備を用い、可能な限りの調査を行ったものの‥‥隠されているような何か、見落としているような何かは見つからなかった。
「‥‥埃のかぶり方も不自然ではないし、隠れた通路や隠し扉などもなし。逸脱したケーブルも機械装置も皆無‥‥」
タクティカルゴーグルで、なお追加調査するが、星嵐の鋭い視線はそこに何かを発見せずに終わった。バイブレーションセンサーも、反応は無い。
軍のそれと同様の調査結果に。ここは、何もないのか?
「変色したような痕跡も無し、生物兵器らしきものの使用痕跡も同様‥‥となると‥‥」
「こちらは、本当に何もない、と判断すべきでしょうね〜」
星嵐の言葉に、おっとりした命が付け加えた。
「なら、とっとと次に行くか。次も外れじゃあなければいいんだけどな」
犬彦が、カラ元気とともに促す。が、皆の気持ちは不安がうずまいていた。
通信放送施設に向かうにしても、そこもまた、ここと同様に何もなかったら?
ひょっとしたら、遠く離れた観測所や、あるいはクロマチウムの研究所が目指すべき目標じゃあないのか?
己の第六感が働いてくれればと思うが、確証が持てない。このような頭を使う戦いは、正直苦手。戦うべき相手とどう戦えばいいのか、そもそも戦う相手がどこにいるのか。それらがわからぬことには、戦いようがない。
「‥‥こちらイーリス。カナ、聞こえる?」
『はい、イリ姉‥‥。よく聞こえます‥‥』
イーリスが、無線機にて奏歌へと連絡を入れる。
「発見した施設内を再調査するも、空振りだったわ。私たちはこれから、当座の予定通りにTVの通信施設へと移動する。そちらも、何か気づいたら連絡してね。交信終了(オーバー)」
『こちら、奏歌‥‥了解しました‥‥』
「‥‥さて」
イーリスとの連絡を終え、奏歌は島の上空を飛びつづけた。
彼女の考えは、クロマチウムがバグアにより改造され、ナノマシン化してるのでは‥‥といったもの。
しかし、どうもその線は薄そうだ。現在、それらしい熱源も何もなく、微生物による変色などの変化も無い。少なくとも、件の施設ではそのような変化などはないという。
コックピットでも、サーモグラフィはそれらしい熱源の感知はしていない。
「‥‥自己再生する、生体部品と思ったけど‥‥考えすぎ、でしょうか」
ロングボウ2のコックピット内で、BEATRICEもまた考えにふける。
「‥‥あのヘルメットワーム‥‥最後の一機は、奇妙な装備をしていた‥‥」
前部に、折り畳み式のドリルを装着していた。それで特攻を仕掛けるも、幸い撃墜できたが。
「ヘルメットワームとしては、変わった点は見られなかった。あれはいったい‥‥」
疑問が、彼女を支配する。が、考えても謎は解けそうになかった。
疑問に思うのは、アルビスも同じ。彼は終夜とともに、生体工学研究所にてナイトフォーゲルを着陸させ、自分なりに調査をしていた。ワイバーンMk2を変形させて降り立つと、歩き回ってみる。
何もなし。むしろ研究所は破壊され、見る影もない状態だった。
終夜は、すぐ近くを旋回している。彼の方もまた、敵の接近は無いとの事。
「‥‥んー、姉ちゃんだったらよくわかるかもなあ‥‥」
そう思ったが、直感的に『ここは違う』という感覚を覚えてもいた。
「やっぱり、ここは関係ない? だとしたら‥‥バグアの連中はどこに?」
通信放送施設。
そこに向かった犬彦は、思っていた。
「今度こそ、当たりであってくれよ‥‥」
四人パーティの前に立ち、やがて前方にその建物が見えてくる。
が、頼みとしている『勘』が、途端に警鐘を鳴らし始めるのを知った。
「隠れて!」
彼女らが木の陰に隠れるのと、その獣が迫ってくるのは、まさに間一髪。
それとともに、なにやら人影もあった。
いや、それは人影ではない。
「‥‥バグア!」
どうやら、当たりのようだ。数はそれほどないようだが、二〜三名のバグアが数匹のキメラを連れて、こちらへと向かってくる。キメラは犬程度の大きさで、さほど強力なタイプではなさそうだ。
「どうやら‥‥当たりのようですね〜」
間延びしているが、真剣な口調で、命ははっきりそう言った。
イーリスと星嵐もまた、命に同意する。
バグア兵は、あちこちに視線を向けていたが‥‥やがて何事かをキメラに命じると、握っていた鎖を外した。
「まずい!」
星嵐が言うまでもなく、皆はそれに気づき、戦闘態勢を取った!
斬。
イーリスの直刀「蛍火」が、キメラ・アタックビーストを切り裂き、沈黙させる。
ついで、星嵐の機械刀「凄皇弐式」‥‥刃亡き刀の刃が発生し、アタックビーストを切り捨てる。超濃縮レーザーブレードが、アタックビースト数匹を地獄に送り込んだ時点で、彼は一息をついた。
が、その様子をバグア兵士は目撃し‥‥攻撃することなく、放送施設へt戻っていく。
「おおっと、逃がさん! おとなしくあの世に‥‥いっとけ!」
が、バグアの命を奪う死神が、犬彦という名の美しき死神が先回りしていた。
天槍「ガブリエル」の穂先が一閃すると、それはバグア兵の命を奪い取り、犬彦に勝利をもたらした。
バグア兵の身体を刺し貫く感触が、柄を伝わり犬彦の手に伝わっていた。
しかし、バグア兵はまだ存在していた。通信施設内部に入り込むと、内側から扉を閉める。
そして、四人が向かおうとする直後‥‥地鳴りがした。
「こ、これは?」
イーリスの困惑が、次第に焦りを生み出した。
そして、それとともに‥‥。
今、彼女らがいる地点から、施設との間。そこからヘルメットワームが出現し、空に浮かびあがったのだ。
悪魔のマシンは、二機、三機と出てくる。その前部には、二連でドリルが取り付けられており、空中に飛び出した以降はドリルを折りたたみ‥‥収納した。
バグア兵が、遠くからあざ笑うようにこちらを見下ろしているのが、なんとなくではあるが四人に伝わってきた。
「まずいわね‥‥逃げるわよ!」
イーリスの意見に、誰も異論などない。そのまま、彼女の言う通りに方向転換し‥‥逃げの一手を打った。
「カナ、皆! 聞こえる? ヘルメットワームおよびバグアを発見! 場所はTV通信施設! 急いで!」
雑音がひどいが、通じただろうか。
いや、通じてもらわねば困る。さもなくば‥‥おしまいだ。
散り散りになり、山道を走って逃げるイーリス。そして皆。
だが、相手はマシン。そして、徒歩の彼らが逃げられるわけがない。
あと少しのところまで迫られ‥‥助かった。
地上歩行型に変形した、ピュアホワイトの攻撃が、ヘルメットワームを破壊したのだ。
それだけでなく、駆けつけた他のナイトフォーゲルもまた、次々にヘルメットワームを撃墜していく。
撃墜されたヘルメットワームの爆発が、周囲に響き、轟いていった。
「それでは、諸君。報告してくれるかね」
UPC本部にて。司令官が、能力者たちに問いかける。
「もちろんです」と、イーリス。
あの後に、イーリスらは施設内に入り込み、襲撃してきたバグア兵を返り討ちに。そのバグアは、有していた手榴弾で自滅したものの‥‥どういう計画を遂行していたかの確認は為された。
「あれから、俺たちは念のためにと周辺も確認しました。で、その結果判明しましたが‥‥結論から言うと、島内部にまだヘルメットワームは残っていたんです」
終夜が、まず報告した。
「残っていた? 発見できずにいたのなら、どこに残されていたんだ?」
「地下、ですよ。もちろん、地下にも基地はありましたけど、基地にはヘルメットワームは無かったんです。では、どこにヘルメットワームが潜んでいたかというと‥‥」
「‥‥地中に、直接埋められていたんですね〜」
終夜の言葉を引き継ぎ、命が答えた。
「‥‥つまり、八尾師くん。こういう事かね。我々はヘルメットワームが潜んでいたとしたら、地下基地にて格納されていたと考えていたが‥‥それは、全く関係なかった、という事か」
「そうです〜。地中に埋まっていたヘルメットワームは、特殊素材‥‥セラミックやプラスチックなど、非金属性でなおかつ強固な素材を用いていたため、金属探知機が聞かなかったんですね〜」
「では、TVの通信放送施設をのっとったのは?」
「地中のヘルメットワームを起動させ、操作するためです」今度答えたのは、イーリス。
「簡単に説明すると、こういう事ですね。バグアは基地を作らず、地中にヘルメットワームそのものを埋めていた。が、それらは我々地球軍が油断した時に用いる、バグアの軍勢。作戦開始時に、電波を発信し起動させ、地中から出現。軍事作戦に用いると」
「そういう事か。ドリルがついていたのは地中に潜るため。地中からいきなり出現し不意打ちするとは、まさに予想外の事だからな」
恐ろしい兵器だと、司令官はつぶやいた。
「現在、地中のヘルメットワームは起動せずにそのままです。適切に処理するべきでしょうね。ですが‥‥」
イーリスの声が、重苦しいそれに。
「ですが、最初の深島の時に得たデータ。それによると、ここ甑島列島ともう一つ、『長崎県・壱岐島』にも何かがある‥‥との事でした。となると‥‥」
そうだ、壱岐島にも何かがあると、前回の任務にて情報を入手してある。となると、そちらに注意を向けねばならないだろう。
「‥‥ご苦労だったな。諸君、今はゆっくりと休むとよい。後でまた、次の‥‥そして、最後の任務を与えたいと思う」
解散したが、それでも皆は、次に、そして最後にどうなるのか、不安を禁じえぬ想いだった。