タイトル:覚醒したレギオン:一話マスター:塩田多弾砲

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/14 22:13

●オープニング本文


 九州。大分県、深島。
 海中公園にも指定された、美しい海が広がる島。かつては集落が存在し、わずかであるが人が住んでいた。平和だったころには、ダイビングスポットとして観光客が訪れ、美しい海の散歩を楽しんだものだった。
 バグアが襲来した後、ここは当然ながら戦場と化した。貴重なサンゴ礁は破壊され、森の木々は焼かれ、大地は爆発と爆裂で醜くえぐれ吹き飛んだ。
 地球そのものにつけられた傷痕のように、深島は傷をつけられた。

 だが、昨今の戦況回復から、深島には「見えてきた」。
 生命の兆しが、命が根付く兆候が、改めて見えてきたのだ。UPCをはじめとする、多くの人々の尽力あってこその結果だが、それ以上に深島自身が回復を望んでいる‥‥と、そう思う者も少なくなかった。
 その望みをかなえんと、復興活動に携わる者たちは、より一層の努力を誓い、活動していた。

 深島には、かつてはバグアが駐屯していたし、キメラもまた持ち込まれていた。が、数回行われた調査の結果、危険性はゼロと判断されていた。バグアの兵器や軍事施設はすべて破壊されているか撤去されており、キメラも死後数年経ったもののみ。島内部に危険なものなど、残っていない。
 その時点では、そう思われていた。

「味噌‥‥だったっけな。この島の名物は」
『深島かまど白みそ』を思い出し、UPC隊員・衛川はため息をついた。
 彼は祖母が作ってくれた魚介の味噌汁と味噌田楽を思い出し、つばを飲み込む。ばあちゃん。料理がうまかったが、それを食べることはもうできない。バグアの襲撃を受けて、家ごと吹っ飛ばされたからだ。
 深島を、再び美しい自然があふれる島にして、また名物の味噌が作られるようにする。衛川はそうすることが、祖母への手向けと考えていた。
 幸い、これ以上トラブルは起こりそうにはない。平和を取り戻し日常が戻ってくるのも、時間の問題だろう。
 島の自然環境研究施設跡で、彼は一休みしていた。
 調査班によると、ここ周辺はすでに数回ほど調査が行われたが、全く何も発見されていないという。安心してひと眠りできる場所と判断されている。
 ならば、仮眠を取ろう。ここしばらく働きづめで、疲れがたまっている。幸い今は休憩時間。同僚に休むことを伝え、彼はあてがわれた一室で寝袋に潜り込んだ。
 
 大音響とともに、彼は目を覚ました。
 それとともに、鼻へと強い臭いが漂ってくる。
「‥‥? これは‥‥?」
 この濃密にして、嗅いだことのある臭い。これは‥‥血の臭い!?
 優れた兵士とは言えないが、それでも衛川は訓練を受け、わずかではあるが実戦経験もある。戦闘準備を整え、彼は部屋を飛び出した。

「バグア? どうして‥‥?」
 外には、数機のヘルメットワームが飛んでいた。小型のものだが、十数機が確認できる。
 どこか別の場所から飛来したのか? しかしそれならば、UPCが迎撃するはず。
 この島に、基地があったのか? いや、すでに何度も調査が行われ、基地は見つからなかった。
 いや、今はそんな事を気にしている場合ではない。早く仲間と合流し、逃げないと‥‥。
「うっ‥‥!」
 仲間との合流は、必要ないことがすぐに判明した。死体が転がっているのを目撃したのだ。それも一つや二つではなく、数十人もの死体が。
 ざっと見たところ、全員やられてしまったようだ。不幸中の幸いと言うべきか、自分一人だけが仮眠をとるため、部屋の中に引っ込んでいたのが幸いしたのだろう。
 早く本部へ連絡を入れないと。この襲撃を伝えたのちは、生き延びて島を脱出しなければ。
 だが、無線機のある場所へと駆け出した途端。彼の前に『歩行脚を装着した』ヘルメットワームが出現した。
「あれは!? アームズオプションとかいうやつか?」
 以前に衛川は読んでいた。歩行脚とマニピュレーターのアタッチメントを装着したヘルメットワームが出現し、猛威を振るったという記録を。
 ここ最近、その目撃記録もなく、工場も破壊されたと聞いていた。だが、まだ残っていたらしい。
 そいつは衛川の目前に迫り、その腕を振り上げた‥‥!

「衛川隊員は、宇土崎付近の海岸で発見された。幸い、係留されていたUPCのモーターボートを発見し、それで島から脱出したらしい。が、攻撃を受けて負傷したらしく、それがもとで運ばれた病院先で死亡してしまった」
 死亡する直前、瀕死の衛川が口にした証言。彼が所持していたデジタルカメラに映っていた、ヘルメットワーム・アームズオプションの姿と全滅したUPC部隊の惨状。それらから、深島にバグアの基地、または部隊が存在する事は間違いないと判断し、UPCは今回の事件を認識した。
「そこで、君たちに依頼したい。まず間違いなく、深島にはバグアの秘密基地が存在しており、部隊はそれに遭遇し命を落としてしまったものと思われる。‥‥奴らの基地を発見し」
 一呼吸おいて、司令官は君たちへと言葉をつづけた。
「‥‥攻略せよ。攻略が不可能ならば、破壊しても構わない。しかし、今回のこの事件。何かこれだけでは済まない予感がするのでな。少しでも情報が欲しい。やってくれるな?」

●参加者一覧

金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
追儺(gc5241
24歳・♂・PN
メルセス・アン(gc6380
27歳・♀・CA
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
クラフト・J・アルビス(gc7360
19歳・♂・PN

●リプレイ本文

 深島の上空を飛び回る、数機のヘルメットワーム。
 島の動植物は、その邪悪なる甲虫が飛ぶごとに、恐れおののいているかのよう。
 だが、その恐れを切り裂く剣を携え、ナイトフォーゲルが天を切り裂き馳せ参じた。其はまさしく、天より舞い降りた聖なる騎士団。
 騎士団を迎え撃つため、まるで巣を守る兵隊アリのように、ヘルメットワームがどこからか出現。ナイトフォーゲルへと向かって迎撃行動にうつりはじめた。
「こちら、美具・ザム・ツバイ(gc0857)。各機応答せよ!」天空はもとより、宇宙すらも凌駕する機体‥‥ナイトフォーゲルHF−042・天のコックピットから、炎の剣士が仲間たちへと連絡を入れた。
「こちらクラフト・J・アルビス(gc7360)! 感度良好!」闇の狩人が駆る猟犬は、迷彩色のEF−006・ワイバーンMk. II。
「BEATRICE(gc6758)、異常なし」ミサイルを愛する白銀の令嬢が、A−1D・ロングボウII‥‥長弓の操縦席より返答する。
「メルセス・アン(gc6380)、システムオールグリーン。戦闘準備完了」ナイトフォーゲルPD−020S・パラディンに乗るは、美しき黒髪の美女。
「こちら、追儺(gc5241)。同じく異常なし」たくましくも頼もしきグラップラーの愛機は、XGSS−03A・シコン。
「八尾師 命(gb9785)です〜。レーダーに反応ありました〜」金の瞳と黒髪の、ゆったりした雰囲気をまとう美少女が返答する。ES−008−2・ウーフー2が、敵機をとらえたらしい。
「こちらイーリス・立花(gb6709)、まだ肉眼では見えないけど、こちらのレーダーにも反応あるわ」ACS−001A・パピルサグのコックピットより、応答があった。
「金城 エンタ(ga4154)です。敵機数は10。まだ増えそうです。どうしますか?」F−108改・ディアブロ、女装の美少年が搭乗する機より、美具へと返答が来る。
「決まっている」
 臆することなく、迷うことなく。美具はそれに答えた。
「作戦通りだ。みんな、いくぞ!」

 空中を舞うヘルメットワームは、さながら巨大化した雲霞、または蠅や藪蚊の様。フォルムは天道虫かカナブンを思わせる形状ながら、飛行の軌跡は夏場にうっとおしく飛び回る羽虫に似ていた。
 深島に接近した八機のナイトフォーゲルは、上空を何度か旋回するも、ヘルメットワームは確認できなかった。
 が、地上を探索しようと、六機が地上型活動型へと変形し、降り立ったところ‥‥蜂の巣をつついた時のように、ヘルメットワームがわらわらと出現したのだ。
「んじゃ、サクっといってみっか。‥‥あらよっ!」
 クラフトのワイバーンMk. IIが、突進する槍兵のように、獲物に突撃する猟犬のように、空中を突き進む。砲撃を仕掛けてくる数機のヘルメットワームへ、ワイバーンMk. IIが火を噴いた。
 ショットオブイリミネート、搭載された強力なKV用ショットガン。それが、ヘルメットワームを落としていく。一機落とすたびに、二機が追随するが、それすらもクラフトは撃ち落とした。
「いざ、参る!」
 ロングボウIIのBEATRICEもまた、空を切り裂き敵へと肉薄する。スラスターライフルより放たれた一撃が、ヘルメットワームを貫き引導を渡していった。一機、また一機と、確実に敵の機体が減りつつある。
「‥‥くっ」
 だが、彼らの心に楽観が生じることはなかった。
 数機を落としたら、すぐに増援が駆け付ける。それらも片づけたら、さらにまた増援が来る。
「‥‥っと、きりがねえ。思ったより数が多いときたもんだ」
 危機的状況をごまかすかのように、彼はわざとおどけた口調で呟いてみた。だが当然ながら、ヘルメットワームはそんなつぶやきなど解さない、解するつもりもなかろう。
 二機のヘルメットワームが、ワイバーンの後ろにぴったりとついた。幻惑するかのようにぐるぐると回転しつつ、ワイバーンへと迫る。
「って、おいおい! 二対一はねえだろうが!」
 深島の上空、巧みな操縦でヘルメットワームの追随をかわすクラフト。しかし、まるで執念めいたしつこさで食いついてくる。BEATRICEのロングボウが救援に駆けつけようとするも、彼女の機体の前には四機のヘルメットワームが出現し、行く手を阻んでいた。
「‥‥っくしょう、こっちは猟犬だぞ? 犬は獲物を追うものであって、追われるってのは何の冗談だ‥‥あわわっ」
 敵の攻撃をかわし続けたクラフトだが、それも無限にかわし続けられるものではない。攻撃を回避した拍子に、きりもみ状態になって失速してしまったのだ。
「しまっ‥‥た!」
 バランスを欠きつつ、降下するナイトフォーゲル。
容赦のないヘルメットワームの攻撃が、ワイバーンのコックピットを貫き、クラフトの命をも貫いた。
 ‥‥という幻想を抱きかけた瞬間。地上からの光弾が二発、ヘルメットワームへと襲いかかった。
「!? 助かったぜ! 持つべきものは、頼りになる仲間ってとこだな!」
 それを認めつつ、クラフトは操縦桿を引いた。レバーが重たいが、なんとか機体の態勢を立て直し、空へと舞いあがった。

 地上からは、人型に変形したディアボロ‥‥エンタのナイトフォーゲルが、クラフトの援護射撃を行っていた。
 周囲には、やはり変形した仲間たちのナイトフォーゲルが、敵機を迎撃するために周辺に散開し、同じく援護射撃を行っている。
「‥‥どうやら、クラフトさんは大丈夫みたいですね」
 けど、まだ安心はできないと、エンタは心の中で付け加えた。たしかにワイバーンとロングボウの二機は、よくやっている。
 しかし、自分たちの目論見は外れつつある。その事を、エンタは認めざるをえなかった。
「まいったな。やられたら、次から次へと増援を送り込んでくるとは‥‥」
 無線から、メルセスの声が聞こえてくる。彼女もすでに、アームズオプションのヘルメットワームを数機、ナイトフォーゲル・パラディンが携えた機槍「ゲルヒルデ」で血祭りにあげていたのだ。
しかし、敵は退却する様子を見せない。「逃げない」のだ。さらに事態は悪いことに、地上にも十数機のヘルメットワームが迫りつつあると、レーダーが感知し知らせていた。
「あの〜‥‥十時の方向より、ヘルメットワームの新手がやってきました。数は‥‥六機です〜」
 ウーフー2に乗る八尾師の声にも、焦っているかのような印象を受けた。
当初に皆で立てた計画は、『数機をわざと見逃し、帰還する後を追い、基地の出入り口を探し出す』といったもの。
 だが、やつらは退却するどころか、数が減るとすぐに増援を繰り出してくる。今のところ、交戦しているヘルメットワームはすべてが小型・中型のものばかり。だが、一機の戦力は大したことがなくとも、それが数多く集まると厄介だ。
 たとえるならば、ハチやアリといった小さな敵が、群れを成して迫ってくるかのよう。数匹をひねりつぶしたとしても、すぐに新手がやってくる。
 判断を誤った。『攻撃を受けたら撤退するだろう』といった予想は、見事なまでに外れてしまったのだ。
「‥‥見通しが、少しばかり甘かったか」
 いまいましげな美具のつぶやきが、天のコックピット内に響いた。

 数刻後。
 八機のナイトフォーゲルは、襲撃してきたヘルメットワームすべてを撃破。島に、かりそめの静寂が戻った。
 そして、次の任務‥‥。この島のどこかにある筈の、基地への出入り口捜索に、皆は従事していた。

 海中を、イーリスのパビルサグが周回している。他のみんなは、空中から島を探索していたが、入ってくる連絡は芳しいものではない。
「‥‥もしも、秘密の出入り口があるとしたら‥‥」
 それは海中ではないか。少なくとも、地上よりかは見つかりにくい。
 そして、しばらくが経過し‥‥何も見つからず、イーリスはパビルサグの機首を水面に向けた。
 が、数秒の差でそれを思いとどめた。
「こちら、イーリス! 発見しました! 場所は‥‥深島西部、通称『もっこく鼻』付近の海底です!」
パビルサグの現在位置から、そう離れていない。そこから先刻のヘルメットワームが、出撃するのを感知したのだ。

 三機のヘルメットワームが向かってきたが、イーリスのパビルサグの敵ではなかった。
 そして、美具の天、追儺のシコンがかけつけ、その洞窟内部へと侵入。ナイトフォーゲルは、暗い海底洞窟を進んでいた。
「やはり、水中に出入り口を作っていたか」と、美具。
「他の皆は?」
 問いかけるイーリスに、追儺が答えた。
「地上で待機している。後は俺たちが内部に侵入して、情報を頂くだけだ」
 やがて、海底洞窟が終わり‥‥イーリスの目前に、光と空間が開けた。

『こちら地上班、現在もっこく鼻で待機中。そちらの様子は?』
 メルセスの声が、無線機を通じて美具、イーリス、追儺へと届く。
「こちら美具、問題はない。現在ナイトフォーゲルで、バグア秘密基地内に侵入している」
 変形した天で、基地内部を歩き回る美具。しかし、内部には人の気配はなく、動くヘルメットワームも見当たらない。
「どうやら、天然の洞窟を利用したものらしいな。深部は人工的に掘り進んだもののようだが‥‥」
「‥‥自動迎撃装置らしきものも、見当たらないようですね‥‥」
 追儺とイーリスもまた、注意深く周囲を見回す。どうやらここは、ヘルメットワームの格納庫と発進口らしい。
 格納庫は、さらに奥へと続いていた。さらに奥へと進むと、人間サイズの小さな通路があちこちに通じている。このままでは、これ以上先に進むことはできないだろう。
「こちら、美具。これからナイトフォーゲルを降りて、徒歩で内部の調査に当たる」
『了解しました〜。気を付けてくださいね〜』
 八尾師の声が、緊張した空気を少しだけ、ほんの少しだけ和らげた。

「‥‥当然だとは思うが、人の気配、バグアの気配も無いな」
「ああ。‥‥しかし、この妙な空気はなんだ? 気に食わんな‥‥実に、気に食わん」追儺の言葉に続き、美具が言った。
 そう、先刻から嫌な予感がしてならない。それが何かわからず、気に入らない。
 三名の能力者‥‥追儺に美具、イーリスは、廊下を通り抜け、コンピューターの端末が並ぶ部屋に入った。
 やはり、ここも人気はない。端末を起動させてみると、どうやらまだ電源はつながり、端末も生きているようだ。
「‥‥ふむ、どうやら島の三方に、こういう出入り口があるようだな。そして、島の奥の王でつながっているか」
 モニターに、深島の地図が映し出される。西側のもっこく鼻以外にも、東南部と北西部に、ここのような地下基地の出入り口があるようだ。
「どうやら、情報を持ち帰ることはできそうだな。あとは、ナイトフォーゲルでこの基地をぶっ壊すだけか」
「ええ。でも、何もないのならこのままでも問題はないんじゃないかしら?」
 PC内の情報を、追儺は持参したCPUメモリへとコピーする。イーリスの言葉に、追儺は悩むように目を閉じた。
「ふむ‥‥確かにそうだが。しかし‥‥」
 美具の嫌な予感が、ますます強くなってくる。確かにこの基地には、バグア人もいなければ、ヘルメットワームもない。こうやって中に入り込んだのだから、徹底的に内部を調べてから破壊しても、遅くはないだろう。
 なのに‥‥ここをこのままにしておくべきでないという、根拠のない不安が強く感じられてならない。
 追儺とイーリスの二人もまた、なんとなくその不安を感じ取っているように見える。
 目に見えぬ、不安な気持ちと戦い始めた、その刹那。
「「「!?」」」
 周囲に轟音が響き渡った。続き、モニターにはカウントダウンを刻んだ数字が。
「これは‥‥警告音?」
「何か‥‥やばいぞ!」
「追儺、情報は手に入れたか? なら‥‥脱出だ!」
 美具は言い放ち、駆け出した。そのすぐ後を、追儺とイーリスが追う。
「こちら美具! 地上班応答せよ!」
『こちら地上班、どうした?』
「すぐに逃げろ! どうやら我々は、自爆装置のスイッチを入れてしまったらしい!」

 数秒で、もときたつうろを駆け抜け、数秒で、ナイトフォーゲルに乗り込みハッチを閉める。
 先刻の不安が的中した。さらに数秒が経ち、海底洞窟を過ぎて、再び外海へと現れる。
 が、それはカウントダウンが終わった時。ちょうど、数字がゼロになったその時。
 基地内部から、強烈な爆発が起こった。それは周辺を光と爆風とで包み込み、周辺へと衝撃を放ったのだ。近くにいた美具は、追儺とイーリスの二人が、ともに巻き込まれることを感じ取っていた。

「う‥‥ん」
「気が付いたか?」
 美具が目を覚ますと、そこには年配の男が一人。心配そうに美具をのぞきこんでいる。司令官だ。この任務を持ってきた張本人。
 司令官を前に、美具は訪ねる。
「助かった、のか?」
「ああ、今は病院のベッドの上だ。大丈夫、他の皆も一緒に救出し、別室で休んでいる」
「ナイトフォーゲルはどうなった? 一緒に吹っ飛んだか?」
「いや、ナイトフォーゲルは回収して、修理をしておいた。大丈夫、すぐに修理は完了するよ」
 どうやら全員無事、ナイトフォーゲルも無事な様子。それを聞いた後で、美具は体を起こした。
「それで、何かわかったのか?」
 彼女の問いかけに、司令官はかぶりをふった。
「いや、ほとんどわからずじまいだった。ただ、持ち帰ったデータには、『鹿児島県・甑島列島』、および『長崎県・壱岐島』についてのデータがあった。おそらく、これらの島にも何かがあるのだろう」
 何かがある、だとしたら「何か」とはなんだろう。
「ともかく、今回はご苦労だった。おそらく、まだこれは終わりではないだろう。データを解析し、それぞれの島を調査したあとで‥‥改めて、新たな依頼を頼みたいと思う。それまでは、待機していてくれ」
 そう言って、司令官は立ち上がり、部屋を後にした。
 はたして、何が待っているのか。不安に駆られつつ、美具はため息をつくのだった。