タイトル:残暑見舞〜恩師への手紙マスター:周利 芽乃香

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/17 10:13

●オープニング本文


 先生、お変わりありませんか。
 まだまだ暑さの残る頃、殊に今年の夏は激暑とも言われています。
 くれぐれも御身ご自愛ください――

●図書館にて
 便箋を前に、高城ソニア(gz0347)は溜息を吐いた。
 講義のない日でも、冷房の効いた図書館は避暑がてら利用する学生や聴講生で賑わっている。ソニアもまた、空いた時間を図書館で過ごしている一人だ。
「か、書けない‥‥」
 普段から図書館には頻繁に通っているソニアだが、いつもは童話や物語が置いてある棚の周辺にいる。
 その彼女が、読書机に向かって、それも何か書き物をしていた。宿題だろうか。
「‥‥何て書けばいいの‥‥」
 解らないのではなくて書けないと頭を抱えていた。

 ソニアは最近編入したばかりのドラグーンだ。それまではごく普通の高校1年生で、一般の高校に通っていた。
 彼女の人生に転機が訪れたのは、学校で行われた春の健康診断。エミタ適合者である事がわかり、あれよあれよという間にカンパネラ学園へ編入する事になったのだ。
 能力者に関して何ひとつ事前知識を持ち合わせていなかったソニアは、人に勧められたKVを搭乗機に選び、保護してくれた能力者達に学園内を案内して貰った。そのおかげで、日常使っている場所については迷子にならずに済んでいる。
 が、まだ本格的な訓練を施されていない、まっさらな傭兵見習いであった。

 さて、今の状況はというと。
 盆を前にして、実家に帰らず寮で過ごす事に決めたソニアは、まず実家に帰省しない旨の手紙を書いた。
 時期が時期だけに故郷の知人恩人にも手紙を書こうと思い立ち、旧友に残暑見舞を書いて、それから恩師に手紙を‥‥という所でペンが止まった。
 何と書けば良いのかわからない。
 恩師――荒木先生は、ソニアがエミタ適合者だと知って随分と心配し、親身になって相談に乗ってくれた先生だ。内気で大人しいソニアが能力者になる決心を固める事ができたのは、荒木先生がいてこそと言えるかもしれない。
(「先生がいてくれたから、私は前に進めた‥‥」)
 だからできれば近況を書いて送りたい。先生を安心させたい――でも。
(「私‥‥まだスキルも取っていないのよね‥‥」)
 戦闘訓練以前の問題だった。
 頑張りますと書こうにも具体的に目標が書けず、それ以前に機密事項であれば一般人に漏らしてはいけないだろうけれど、ソニアにはその区別も付かない状態で。
「あぅ‥‥どうしよう‥‥」
 頭を抱えている、という訳だった。

●参加者一覧

最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
椎野 ひかり(gb2026
17歳・♀・HD
黒羽・ベルナール(gb2862
15歳・♂・DG
雪代 蛍(gb3625
15歳・♀・ER
沖田 護(gc0208
18歳・♂・HD
過月 夕菜(gc1671
16歳・♀・SN
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN

●リプレイ本文

『 残暑お見舞い申し上げます
  荒木先生、お元気ですか?私はとても元気です。
  新しい生活は、まだ慣れない事ばかりですが―― 』


 ――ぽふっ。
 ソニアの後頭部に何かが当たった。振り向けば見知った顔。
「覚えているなら久しぶり、忘れているなら思い出せ。道化のレインウォーカー、参上。なんてねぇ」
 飄々と見下ろしているのはレインウォーカー(gc2524)、先日学園案内をしてくれた人だ。ファイルらしきものを持っているのは資料だろうか。
「あぁ、バグア関連の資料をなぁ。しばらく見ない間に成長‥‥してないみたいだなぁ」
 レインウォーカーは机の上に広げられた紙面と反古紙を眺め、嘆息した。
「今度は何を悩んでいるんだぁ?」
「えーっと‥‥」
「いきなりで御免なさいですわ〜何かお悩みでもございますの〜?」
 隣の席で自習中だった女子生徒も話しかけてきた。
 椎野ひかり(gb2026)、実は先程から頭を抱えて悩んでいるソニアの様子が気になっていたのだ。レインウォーカーの登場を切欠に、話しかけてみようと思い立ったらしい。
「あ、私は怪しいものじゃありませんわ〜椎野ひかりともうしますわ〜」
 笑顔でのほほんと自己紹介するひかりは、怪しいというより友好的で。
「言っちまいなぁ」
「えと、そうでした‥‥あの‥‥」
 二人に促され、ソニアは以前通っていた学校の先生へ近況を伝えたいのだが文面に悩んでいるのだと話した。
 ひかりは安心させるように頷きながら聞いてやり、少し考えてこう言った。
「そうですわね〜率直にいまの状況、お伝えしたら宜しいのでは〜?」
「率直に‥‥?」
「とりあえずは‥‥友達ができましたとか〜」
「?」
「そうですわね〜私も〜友達になりたいですわ〜」
 微笑んで自身を指差すひかり。戸惑うソニアに差し出した手は暖かくて優しい。
 手紙か、とレインウォーカー。
「難しい事は分からないし教えられないけど言える事がひとつある。伝えたいことがあるならちゃんと伝えた方がいい。次が必ずあるとは限らないんだ。後悔なんてつまらない真似、したくないだろぉ」
 自分達は傭兵、戦いに赴けば明日をも知れぬ境遇なのだから、悔いないようにしろと、レインウォーカーは冗談めかしてもう一度、ファイルでぽんとソニアの頭を軽く小突いた。
 顔の強張りが解けた新入生はくすと微笑って便箋に向かい始め、見守るようにレインウォーカーは斜向かいの席に座ると資料に目を通し始め、ひかりは自習を再開した。


『 ――という事がありまして、図書館で新しいお友達ができました。
  学園を訪れる皆さんは気さくな人ばかりです。 』


 そんな様子を、本棚の片隅から眺めている影ふたつ。
「ふーん、そういうタイプ好きなんだ‥‥普通だ」
「‥‥ったく、人遣い荒いな、出遅れたじゃないか」
 見上げているのに何処か上から目線な気がするのは何故だろう。雪代蛍(gb3625)に黒い笑みを向けられた柿原錬(gb1931)は憮然として抗議した。
「まあまあ。あたしに任せなさいって」
 ぶつぶつ独白中の錬に辞書だ何だと持たせた蛍、ソニア達のいるテーブルに向かって歩き出した。
「ほ、蛍、待てって‥‥」
 慌てて追いかける錬。空き席を見つけた風を装った蛍は、そ知らぬ顔で自己紹介、相席を申し出た。
「手紙を書いてるの‥‥?あたしも‥‥ここで書いていい‥‥?」
 快諾された蛍は、ひかりとは逆側の隣席にちんまりと収まった。
 おろおろ付いて来た荷物持ちの錬は向かい側、レインウォーカーの隣に座って、ちらちらとソニアを眺めている。
「あっ、あの‥‥」
「ソニアお姉さん‥‥あのさ‥‥好きな人に手紙書く時って、どうすればいいのかな?」
 錬の声は蛍の質問にかき消された。
 好きな人に?ソニアが蛍の顔を覗き込む。
「ご家族やお友達?」
「家族はもういないんだ‥‥ソニアお姉さんも、言える事は言えるうちにしないと駄目だよ‥‥一生後悔するよ、あたしみたいにさ」
 沈痛な表情を浮かべたソニアに、もう泣いたりしてないよと蛍。
 ねえどうすればいいと思うと重ねて問われて、ソニアはどんな人なのかと尋ねた。
 ――蛍、ちょっと沈黙、次いで紅潮。
 恋人に宛てての手紙らしい。暫くして照れくさそうに話し始めた。
「‥‥それがね、年上なのにガキなんだよ。デリカシーなんて無いしさ‥‥十年も眠ってたから仕方ないけど」
 小さく頷きながら耳を傾けていたソニア、視線に気がついた。
 錬が見ている。
(「そう言えば‥‥錬さんは病弱だったと‥‥聞いた事が‥‥」)
「けど、あたし好きになっちゃったんだ」
 蛍の告白が、ソニアの中で大きな誤解となって一本に結びついた。
 知ってか知らずか、錬はソニアにアドバイス。
「今思ってる事、書くべきじゃないかな‥‥心配させるかもしれないけどさ‥‥想いさえ籠もっていればさ」
「そうですよね、想いが大事ですよね」
 錬が向けた言葉が自分経由で蛍に向いていると勘違いしたソニアは、蛍を励まして。
「うん。それじゃ書こう、また迷わない内に」
 蛍が便箋に向かう隣で、自らもペンを握る。


『 私はまだ実戦も、本格的な訓練も受けていません。
  今日は図書館で、お友達から心構えを教わりました。
  戦いに身を置く以上、物事を先延ばしにはできないという事。
  能力者の潔さを感じました‥‥でも先生、心配しないでくださいね?
  伝えたい事はきちんと伝える事は、危険と関係なく大事だと思うのです。
  振り返った時に、後悔しない為に。 』


 ぴんと背筋を伸ばした少年が図書館の入口を通過した。
 返却に訪れた沖田護(gc0208)は、真っ直ぐ返却受付へ向かうと小脇に挟んでいた本を台の上に乗せた。『能力者の自己鍛練』『次代能力者育成論』などの堅い本を借りていたようで、当人の真面目さが伺える。
 返却手続きを終えた護は受付を離れようと振り返り――ソニアと目があった。
(「勉強会かな」)
 近付いて話しかけてみれば、編入したばかりの新米ドラグーンとの事。
 護にはすぐに解った。ソニアがまだ能力者という境遇にも学園にも馴染めていないという事を。
(「ああ、8ヶ月前のぼくがいる」)
 それは護自身が通って来た道だったから。
 近付いてゆく護の姿を、読書を終えて本から顔を上げた黒羽・ベルナール(gb2862)が見つけた。
 護の進行方向を目で追えば悩んでいる様子の女の子がいる。見るとも無しに伺っていると、どうやら彼らは初対面で女の子は悩み事があるようで。
 とりあえず声掛けてみようか!
「そんなに悩んでどうしたの?俺でよければ相談にのるよ〜」
 優しい協力者が、また一人増えた。

 話を聞いたベルナールのアドバイスは明快だ。
「手紙って悩んでるとキリがないから、思ったことパパーッと書いちゃえばいいんだよっ」
「間違ってないけど、迷うから書けないんだよ」
 資料片手に見守っていたレインウォーカーが、余りの明快さにふっと笑った。先程まで書けなかった蛍はソニアの代わりにぶすっと反論し、ひかりはくすくす笑っている。
 まあまあ、と護は一冊の本を差し出した。
「一般人向けに公表できる範囲で悩んでいるなら、一般向けに流通している本を参考にするのはどうかな」
 表題には『能力者のススメ』と書かれている。能力者になる為には何が必要か、どのようにして能力者として覚醒するのか等が解りやすく説明されているガイドブックだ。
「この辺なら、書いても差し支えないと思うよ」
 ざっと流し読みし、目ぼしい箇所を見つけた護は蛍に席を譲ってもらってアドバイス。
 向かい側で複雑な表情をしている錬に近寄った蛍が、にやーっと意味ありげな黒微笑で錬をつついた。
 学生達それぞれの思惑を外側から眺めていたレインウォーカーは、のんびりと資料を繰りながら自嘲混じりに考える。
(「ボクも少しお人好しになったかなぁ?」)
 以前出会った時からまるで成長の兆しのない少女を眺めつつ――図書館でのひとときは過ぎてゆく。


『 そうそう。この学園で覚えた事があるんです!
  先生、ご存知でしたか?カレーは飲み物だったんですよ! 』


 テーブルの角っこで、赤いリボンが揺れている。
 白銀の美しい髪、小さな大食漢――最上憐 (gb0002)だ。カラー写真が涼しげな大判の本を抱えて、小首を傾げた。
「‥‥ん。学園に来て。カレーは。飲み物である事を。実感したとか。どう?」
「色々な具材が溶け合ったカレーは、万能栄養ドリンクですね」
 ご飯が付いた方が嬉しいですけれど、とソニア。まだスムーズには飲めないのだと申し訳なさそうだ。
「‥‥ん。最近。カレーを。飲む練習を。しているとか。どう?」
「どうしてもジャガイモで閊えてしまうんです‥‥修行不足ですね」
 そもそも飲み物ではないのだが、真顔でミキサー使用は邪道ですかなどと尋ねている。
 閑話休題。恩師に書く手紙の相談だった。
「‥‥ん。最近。何食べたか。書いてみては。どう?」
「最近食べた物の話?」
「‥‥ん。先生。ソニアが。夏バテで。食欲。なくしてないか。心配。してるかも」
 単に憐自身が食べ物の話を聞きたかっただけなのだが、ソニアは憐の言い分に納得して書き始めた――と、その時。

 貸出受付でメモを取っていた女の子が、ソニアと目が合うなり「うにゃーん」と鳴いた。
「にゃーん!こんにちは〜何やってるの?」
「にゃ?て、手紙を‥‥書いて‥‥」
 女の子――図書館のシステムを調べに来た過月夕菜(gc1671)は駆け寄って来ると、さっき貸出受付で開いていた手帳を再び開いて聞き取り開始。
 夕菜の勢いに押されてしどろもどろになりながらソニアが状況説明すると、夕菜の目がキラリと光った。
 今こそ夕菜の情報収集能力が問われる時!
「確か名前はソニアちゃんだよね?私のメモ帳に何か書いてないか検索してみる〜♪」
「‥‥え、か、書いてあるんですか‥‥!」
 戸惑うソニアを他所に、夕菜は検索開始!
 あった。何故あるのかは謎だが、とにかく載っていた――らしい。
「こんなのとかどうかな?『生活にも慣れ、食堂に向かう時に迷子になる事も少なくなりました』」
「‥‥ん。いいと思う。カレーの事。書くと。尚良し」
「うにゃ?食堂のオススメはカレー‥‥と♪購買部のオススメも教えて欲しいな〜♪」
 夕菜は情報収集に余念が無い。
 購買部のオススメはメロンパンという憐情報は、しっかり夕菜メモに残され、傍らではソニアが手紙を書いている。


『 食事は大切です。学園で真っ先に覚えたのは食堂の場所でした。
  おかげで食堂に向かう時に迷子になる事は殆どありません。
  まだ上手く飲めませんが、学生食堂のカレーはとても美味しいです。
  時々ご飯が欲しくなりますが、そんな時はカレーうどんを食べています。
  もちろん、他のメニューも美味しくて栄養たっぷりです。いつも美味しくいただいています。 』


 本好きのサガだろうか、便箋から顔を上げたソニアは憐が抱えていた本が気になる様子。
「綺麗な本ですね、何の本なんですか?」
「‥‥ん。夏っぽい。料理の。本。ソニアも。見る?」
 やはりと言うか、食べ物関連だった。
 ぱらりと開いたページには、セミの唐揚げの写真が。
「「「!!」」」
「これは、どう見ても成虫ですね‥‥抜け殻でなく」
「‥‥ん。密かな。ブームらしいよ」
 一同が硬直する中、憐は至って平気の様子。ぱらりめくれば蛹レシピがずらり。
「‥‥ほ、ほかにはどんな本を‥‥?」
「‥‥ん。美味しそうな。本。危なく。胃に。納めそうに。なったので。返却」
 それは危険だ。主に本が。
 憐の腹がきゅーと鳴いたのを聞いて、便箋から顔を上げたソニアが言った。
「あ、後で食堂行きましょう!おかげさまで手紙、書けました!」


『 先生、心配しないでください。私は今、幸せです。 』


 表情を見ればわかる。晴れ晴れとした顔で便箋を三つに畳んだソニアは、縦型封筒に納めるときちんと封をした。
「どうやら、満足いくものが出来たみたいだねぇ。ボクもちょっと安心したよぉ」
「皆さんのおかげです‥‥私、これから出して来ますね」
「そうですわ〜これから高城さんと学園探検という名の学園案内を皆様でしましょう〜」
 深々と礼をして荷物を纏め始めた彼女の隣で、ひかりは自習道具を片付けながら悪戯ぽく笑んだ。
「投函中に迷子になっては困りますもの〜」
「そうだなぁ、活動拠点なんだし何処に何があるのか位ちゃんと把握しておけぇ」
 冗談めかしてはいるが、皆に否やはない。
「いいですね。せっかく集まった機会は、大事にしないと」
「‥‥ん。美味しいお店。教えてあげる」
「俺はとっておきの穴場を!」
「じゃぁ私も一緒に行くよ〜♪情報集めで色々散歩する予定だったしね〜♪」
 いそいそと仕度をする中、蛍は錬に憎まれ口。
「あたしも行こ‥‥錬、置いてくよっ。まっ別に来なくて良いけど」
「僕も行くよ‥‥痛っ」
 慌てて立ち上がった錬は椅子に足を引っ掛けた。ふと下を見れば便箋が落ちている。
(「この筆跡‥‥蛍じゃないか」)
 配達人を仰せつかった錬、ぶつぶつと文句を言いつつポケットに仕舞いこんだ。

 ベルナールが案内するのは癒しの穴場。学園の屋上へ続く階段はサボるのに最適、中庭には猫だまり。
 中庭の近くでベルナールは大きな木を指差した。
「あそこの木の裏はね、猫の集まるスポットになってるんだよ!」
「にゃーん?」
 夕菜が逸早く反応した。手足早に大樹へ近付いてゆく。少し遅れて歩いている一同にもすぐにわかった。
 いた。ねこたくさん。
「皆人懐っこくってさ〜っ。もふもふの毛並みに凄く癒される!」
 寄ってきた茶トラの猫に目を細め、ベルナールはソニアの名を呼んだ。茶トラを撫でながら嘗て自身が一般人だった頃の事を話す。
 彼より先に能力者となった姉の事、姉がとても遠くの存在に感じてしまった事。
「でも手紙来たときにわかったんだ。何も変わってない、姉さんは姉さんだって」
 だから、と茶トラから目を離したベルナールはソニアの目を見て続けた。
「難しく考えなくていいと思う。背伸びする必要もない。ソニアはソニア、自然体でいて安心させてあげるといいよ」
 長毛種の猫を膝に上げていたソニアは、こく、と頷いた。
 次にやって来たのは特殊施設エリアにある教会。
 ここに来ると心が落ち着くと、ひかりはソニアに歌を捧げた。
 絆と友情を意味する歌。講堂の中を、ひかりの伸びやかな声が満たしてゆく。
(「この子、戦場に出て生き残れるのかな」)
 目を閉じ聞き入っているソニアの横顔に、護はふと思った。
 能力者の本分は戦いで、この先彼女は戦いの非情を知るだろう。必要なのは辛さに耐える強さだ。
 今はまだ、皆に頼りきりの覚束ない雛だけれど。
(「守られる側から、守る側にソニアさんが成長できるように‥‥」)
 皆で導いていこう、いつか彼女が能力者になれるように――