タイトル:【輸送】タイガを越えてマスター:加藤しょこら

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/26 23:16

●オープニング本文


●UPC欧州軍・本部
「ええ、お願いします。得た戦果は確実に活用しなければなりません。はい、輸送には細心の注意を払います」
 電話の向こう側の相手の問いかけに何度か頷くと、受話器を置くピエトロ。

 欧州攻防戦、その戦いはイタリア半島をバグアから奪い返すという結末を持って終わり、人類は初めてバグアから失地を奪還することに成功した。
 だが、その反面スペインの大半がバグアの手に落ち、フランス南部まで彼らの手に落ちたとなれば、少なくとも地図上においての戦果は諸手を上げて喜べるほどのものではない。

「せめて鹵獲した機体くらいこちらの好きに使わせてほしいのだがな。戦果というものは山分けしたくなるものらしい」
 UPC本部から欧州軍に告げられた命令は、鹵獲した機体のラストホープ島への輸送であった。
 研究施設が整っており、各メガコーポレーションの支社も豊富に揃っているというのが表向きな理由である。

「ここに置いておくよりは安全‥‥というのが本音であろうがな。確かに、保管している場所がばれてしまえば、光学迷彩がついた機体の襲撃など防ぎようがない」
「巨大なKV格納庫を持つラスト・ホープ島は世界一強固な要塞です。ファームライドであろうとシェイドであろうと、そう簡単に手は出せないでしょう」
 自嘲気味に笑うピエトロと、今回の作戦の意義を説明するブラッド。性格はどちらかといえば似た二人であったが、表情に差が生まれるのは立場の違いからだろうか。

「ブラッド、作戦の指揮は君に任せる。‥‥情報が漏れていないなどという過信は禁物だ。多数のダミーと共に、最大限の警戒を行なって輸送任務を遂行するのだ。‥‥命令が下された以上、いかなる犠牲を払ってでも」

●モスクワの密談
「鹵獲機体の輸送だと?」
 UPC北方軍・作戦室に集まった将官が怪訝な表情をしている。
「今回はラストホープに移送されるようです」
 ドイツに派遣されていたプチロフ社のエージェントは、西側の戦況について語る。
「どこも苦しいというわけか‥‥それは我々も同じ事」
 少し考えると将官の一人、イワノフが口を開く。
「‥‥協力は仕方あるまい。ガリーニンもくれてやる。しかしだ、少しは我々の役にたってもらおう」
 イワノフは少しなげやりな口調で言うと、モニターに映されたユーラシア大陸地図を左から右へとなぞる。大陸の中央部はバグアの侵入を許したことを意味する赤色で塗られている。イワノフが示した案はその競合地域を突破するというものだった。
「偵察を兼ねるわけですな。上手くゆけば大ロシアの役にも立つだろう」
 ガリーニンの最高速度はマッハ0.7程度である。最高速で飛び続けてたとしてももカメラは映像を捉え続けるだろう‥‥飛び続けている限りは。

●研究所の良心
「なぜ呼ばれたか、分かるか?」
 未来科学研究所副理事のジョン・ブレストは無意識に頭髪に手をやると、静かな口調でリーフを問う。
「いえ、私にはなんのことだか‥‥さっぱり」
 ぱさりと乾いた音がした。机上に置かれた紙片の最後の欄には9桁の数字が並んでいた。
「クルメタル社からの請求書だ。この書類によるとハイエラ君が責任者ということになっているようだな」
 リーフの額にいやな汗が流れる、確かにサインをした。しかし、あれは何事もなく終わったはずだ。
「‥‥しかしだ、特別の計らいでこの任務受けてくれるならば、チャラにしてくれるそうだ。どうする? ハイエラ君」

●参加者一覧

ツィレル・トネリカリフ(ga0217
28歳・♂・ST
ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634
28歳・♂・GD
醐醍 与一(ga2916
45歳・♂・SN
ファルティス(ga3559
30歳・♂・ER
ミハイル・チーグルスキ(ga4629
44歳・♂・BM
夜柴 歩(ga6172
13歳・♀・FT
櫛名 タケル(ga7642
19歳・♂・FT
緑川 めぐみ(ga8223
15歳・♀・ER

●リプレイ本文

●出発地モスクワ
「さ、今から十数時間。コイツには普段より気張ってもらわないとな」
 ファームライドの襲撃に懸念を抱きながらもツィレル・トネリカリフ(ga0217)はガリーニン207Cに視線を移す。ガリーニンからは本来前線に運ばれる筈だった大型戦車『バチューシャ』が降ろされ入れ替わりに厳重に封印されたコンテナが積込まれる。
「悲しみはたくさんいらない‥‥みんなの笑顔の為に」
 こんな戦いに少しでも早く終止符を打てるのならと、ナレイン・フェルド(ga0506)は思う。たとえ戦いに勝利しても犠牲者の数だけ‥‥いや、その何倍もの悲しみが生み出される。
 兵器は暴力を産みだす装置である。暴力を内包する外形は見る者に情熱を感じさせる。ある者にとっては死と隣り合わせの儚さやもの悲しさを感じさせる。
 ガリーニンには21門の連装レーザー砲を始め、多数の対空兵装が搭載され、どんなKVにも勝る防御力と攻撃力を備えている。回避と言う言葉はガリーニンの辞書には無いが。
「リーフ君、できたら頼むよ」
 ミハイル・チーグルスキ(ga4629)はリーフ・ハイエラに軽く言う。
 リーフはその提案を快く引受ける。何故ならば、ガリーニンの火器を有効に活用するには最適の選択であったからだ。ミハイルに笑みを返すと一行の元を立ち去る。事務手続きとガリーニン搭乗員との打合わせの為だ。
「さて、ウラジオストックまでの長丁場。何が起こるかわからんからな。整備は念入りにしておかねば」
 醐醍 与一(ga2916)は自身の機体の整備に余念が無い。未知の領域の冒険に対し理解できる手だてを講じる姿勢は重要だ。バグアによる分断後にユーラシア大陸の横断飛行が行われた記録は伝えられていない。
 ツィレルはガリーニン整備の手伝いを申し出るが、これは丁重に断られる。航空機の整備とは定められたチェック項目に従って行われる。万一整備不良が発覚した場合は原因が追及され、整備不良が発覚すれば故障箇所を担当した者が責任を追求される。‥‥リーフのように。
「これまた随分と‥‥きついマラソンじゃのう」
 夜柴 歩(ga6172)は言葉とは裏腹に、困難への挑戦心に溢れている。困難を打ち破った者だけが正しく成長するものであり、困難をチャンスと見る事が出来る者しか頂点は目指せない。
「中身はなんだかわからないっすが、重要なものらしいっすね」
 櫛名 タケル(ga7642)は軽い調子に見せながらも、任務達成への意欲を見せる。
「え〜? 今回は無数のダミールートを使っての鹵獲機の輸送作戦らしいのです。上手く行けば将来いいことがあるかもしれませんね」
 緑川 めぐみ(ga8223)が未だ見ぬ未来を夢見て言う。確かに、困難の先にある夢は人に希望を与える事もある。
「これだけダミーを出すって事は、お偉方も相当な襲撃を想定してるってことだな」
 ジュエル・ヴァレンタイン(ga1634)が笑って言った。
 ロシアの秘密警察の鋭い眼光がめぐみとジュエルの2人に向けられていた。一般に知らされていない筈の軍機を口にする事はスパイ行為と同義と言える。本人にそのつもりが無くとも敵側のエージェントの耳に入ればスパイ行為をほう助したことになる。
 ガリーニンの乗組員達と共に一行の元に戻ってきたリーフの額に嫌な汗が流れる。無線で報告を入れる秘密警察のプレッシャーはただ事ではない。これ以上余計な事をすれば離陸すらさせてもらえない可能性もある。
「どうあっても、こいつを送り届けなければならないな」
 全員逮捕の可能性があるとも知らずに、ファルロス(ga3559)が散っていった戦士達の事に思いを馳せ、決意を新たにする。なんとしても成功させるのだと。
 ガリーニンから燃料チューブが外され、整備兵が離れてゆく。補給と改修・整備が完了したのだ。
 間もなくして、ツィレルの提案した飛行ルートが承認され離陸の許可が出る。
 懸念は杞憂に終わったらしい。

●東へ
 鈍足のガリーニンが先に離陸し、数分の後に傭兵達のKVが離陸を開始する。
「この子と一緒に空を飛ぶのは、はじめて‥‥頑張らなきゃ、BlueRose出るわ」
 最後に離陸したナレインだ。アンジェリカが午前の日差しを受け白鳥のように輝く。
 九機のKVは三機ずつのチームを組み、ガリーニンの前方、左右を取り囲む隊形をとり東を目指す。
 各機体は希望通りのカラーに塗り上げられている。北欧の空にとけ込むような色合いが美しい。
 モスクワは北緯55度、東経38度付近、ウラジオストックが北緯43度東経131度付近。
 ツィレルの提案を整理するとモスクワから少しずつ緯度を上げキーロフを通過。真っ直ぐにウラル山脈を越えた後、北緯64度付近まで北上。シベリア中央部の北緯60度付近に広がるバグア支配地域を避け東進。バイカル山脈を目印に南下しウラジオストックを目指すという内容であった。
 編隊の予測平均速度と地球の自転の影響から飛行中は常に昼間が続く事になる。
「祖国を上から眺めるというのも奇妙な気分だね」
 ミハイルの言葉には祖国への深い愛が込められている。
 バグア軍の先鋒はモスクワ東部の都市キーロフを包囲する動きを見せている。万一、キーロフが落ちるような事があれば首都モスクワも危険に晒される。
 キーロフを過ぎるとガリーニンは速度に上げる。巨大な八基のエンジンから轟音が響く。
「フライトリーダーより各機へ、おいでなさったようだ」
 ファルロスが告げる。合計4機のヘルメットワームが2機ずつ左右に分かれて接近してくる。
 刹那、ジュエルの放ったスナイパーライフルの弾丸がヘルメットワームに命中し体勢を崩させる。一方、ナレインの放つスナイパーライフルはかすり傷しか与えることが出来ない。
「!」
 被弾を示す警告ランプが灯る。右翼から接近したヘルメットワームが放った光弾が与一の機体に命中したのだ。驚くべき事にダメージはかすり傷程度と言って差し支えない。続いてツィレルの機体も被弾を許すが‥‥。
「義勇兵のKVは化け物か?」
 ガリーニンの砲手達が驚嘆の声を上げる。ヘルメットワームの攻撃をものともしない機体の抗堪性は確かに信じがたいものがある。
 ツィレルの放つ突撃仕様ガドリング砲の猛烈な弾幕がヘルメットワームを捉えると、前進してきた与一が高分子レーザーを放つ。
「兎の牙は鋭くは無いが‥‥こういう使い方も出来る!!」
 機動力を活かして前進した歩が前方から迫ってくるヘルメットワームに試作型G放電装置の光弾を放つ。僅かなダメージしか与える事が出来なかったが、敵の支援を分断するには充分だった。たちまち被弾を重ねた1機のヘルメットワームが煙を吐いて墜ちてゆく。
 一方左翼から接近を試みたヘルメットワームに向けてめぐみが試作型G放電装置のプラズマを放つ。こちらもかすり傷しか与えることが出来ない。其処に真っ直ぐに伸びるミサイルの煙。ミハイルの放ったホーミングミサイルがヘルメットワームを捉える。
 4機のヘルメットワームの内2機が瞬く間に撃墜され、残る2機も南へと逃げ去ってゆく。
 一行の戦闘力は通常のヘルメットワームの性能を凌駕する面も多い。故に、最初の戦いは一方的な勝利に終わる。
「また来たぞ!」
 今度は2機のヘルメットワームが接近してくる。ファルロスが放ったスナイパーライフルD−02の弾丸により大きく後ろに弾き飛ばされる敵機。
 小競り合いの後、2つの煙の筋が地上に向かって墜ちていった。
「長時間の飛行だからあまり派手に飛べないと思っていたけど、何とかなりそうですね」
 めぐみが楽観的に言う。
「また、おいでなすった!」
 ファルロスが叫ぶ。
「しつこい人は嫌いよ!」
 度重なる襲撃は機体の燃料だけではなく、能力者自身の『練力』を着実に削ってゆく。ナレインのレーザーが敵を爆砕する。
 ウラル山脈を通過する前後でに4回の戦闘が発生した。
 前進し北緯64付近のタイガ・ツンドラ地帯に入ると敵機の迎撃が少なくなり、給油活動を行う時間の余裕が生まれる。距離の割に燃料の消費は大きかった。
 ここまで7機ものヘルメットワームを撃墜する戦果を上げるも、弾数の少ない兵装を中心に選択していた者はこの時点で全弾薬の半分程度を使い切っていた。

 競合地域とされているシベリアの針葉樹林やツンドラ地帯の殆どが上空から見る限り、無人地帯と化していた。故にバグア軍が常に攻撃を仕掛けてくる訳ではない。
 但し森の中や地上にキメラが潜んでいる可能性は否定できない。
 また、行程の中で地図上に存在する鉱山や街など施設の上空に接近すると、確実にヘルメットワームが迎撃に昇ってくる。さらにいくつかの地図に記載の無い都市の存在も明らかになる。それがバグアによって建設されたものか旧ソビエト政府によって建設された閉鎖都市であるかは知る術は無い。

●囚われの赤い星
 ガリーニンから伸びたホースが機体から切り離される。最も燃料の消費が激しかったタケルの機体に最後の給油が行われたのだ。
 バイカル山脈の北東。目的地のウラジオストックまで、残り2000km余。
「今回はフォーゲル(渡り鳥)の本領発揮ってとこか?」
 競合地域に入ってからも、ジュエルの変わらぬ軽い口調のおかげで一行の緊張はほぐされていた。
 既に、装弾数の少ない兵装の弾薬は使い果たされており、僅かにバルカン砲やスナイパーライフル、滑空砲などの実弾兵器と、温存を意識したミサイルが残っているだけだ。
 ガリーニンの対空兵器は未だ健在である。護衛機への誤射を避けるためと弾幕防御は無駄撃ちであると断じたリーフの射撃指示のためだ。ガリーニンの機体にも損傷が見られるが飛行には支障が無い。
 度重なる空戦によりタケル、めぐみ、ファルロス各機のダメージの蓄積は7割を超える。ナレインのアンジェリカの損傷も少なくは無い。損害が軽微だと言えるのは与一の機体のみであった。

「もうっ! しつこすぎるわよ!」
「またおいでなさったぞ!」
 ナレインの疲れ切った叫び。ファルロスの警告が続く。
 大陸内陸部を飛行する動きにバグア軍はその意図を計りかねていた。迎撃機は拠点の防衛を目的とした行動をとるばかりで、組織的な追撃は無かった。
 南下を始めたことは編隊がウラジオストックを目指している意図を明確に示す事になる。

 ウラジオストック北北東約400km。間もなく人類の勢力圏。極東の激戦区一つだった。既に消耗も激しく対策を立てる余裕も無かったかも知れない。
「F−15?」
 前方から4機編隊のジェット機が近づいてくる。速度はマッハ3に近い。KVよりも遙かに高速なそれは確かに戦闘機のようだ。ウラジオストックからの出迎えだろか? 疑念がわく。
 刹那、ミサイルのロックオンアラートが響く。
「何故? 味方が?」
 後にその機体は人類が40年前に作り出した世界最速の戦闘機あることが判明する。正確にはバグアに捕獲されたミグ25改戦闘機だ。
「‥‥ええい、律儀な奴らめ!! こういう時ぐらいはサボらんか!!」
 歩が残弾を気にしながらバルカン砲のトリガーを引く。火線が戦闘機を捉えると赤色に輝く障壁が現れた。
「バグアだ!」
 ミハイルが叫ぶ。迷わずトリガーを引く。
 P−115滑空砲の砲弾が一撃で戦闘機を微塵に砕く。
 4機のうちの2機が撃墜され、ミサイルを撃ち尽くした残りの2機は西の方角へ消えてゆく。
「私達の目的は護衛だからね。無茶はしない、私にも待っている女性(ひと)がいるのだから!」
「きた! 迎撃して!」
 めぐみの悲痛な叫び、弾を使い果たした彼女は逃げることしかしかできない。
 突破できない可能性が高い。リーフは一縷の望みを賭けて、モールスでSOSを打電する。
 ウラジオストックまで残り200km。人類との支配地域との境界の激戦区だ。4機のヘルメットワームの背後から数十機の戦闘機が現れる。細長い胴体に三角形の翼が特徴的な機体。後にそれがバグアに改造されたミグ21フィッシュベッドであることが分かる。
 フォースフィールドという防壁を手に入れた戦闘機は‥‥想像以上に手強い。
「ヘルメットワームさえ殺れば! いくっす!」
 タケルにはまだソードウィングしか残されていた。ヘルメットワームを目指して速度を上げてゆく。
「早まるな! タケル!」
 制止する声は届かない。
 助けになればとミハイルの放った砲弾がヘルメットワームの体勢を大きく崩させる。このチャンスにタケル機が突入する。刃と化した翼がヘルメットワームの機体を真っ二つに引き裂く。
 数機の戦闘機とヘルメットワームを道連れにタケルの阿修羅は墜ちてゆく。
 既に人類の支配地域に入っている筈だった。
 ピィーー!!
「いやっ! 何なの?」
 ロックオンアラーが響く。複数のミサイルがエンジンノズルに吸い寄せられるように殺到すると‥‥爆発した。機体の後ろ半分を失ったアンジェリカが真っ逆さまに墜ちてく。
「ナレインさん! タケルさん!」
「ど畜生が!!」
 状況を打開できない。敵の攻勢に耐え続けるツィレルが苛立つ。
 多勢に無勢。尽きる弾薬。防ぎきれない攻撃にガリーニンは傷を深めてゆく。
「ハイエラ中尉! レーザー射撃システム使用できません!」
 射撃が薄くなったガリーニンに敵機が群がってくる。
「残っている電力は全て操縦系統に回しなさい!」
「4番エンジン大破!」
 弾幕が弱まったガリーニンに上空から敵戦闘機が殺到し弾丸の雨を降らせる。後方からはミサイルが追ってくる。2つめのエンジンが爆発し高度を下げはじめるガリーニン。
「なにっ!」
 此処までガリーニンの援護もあり、能力以上のがんばりを見せてきたファルロス機の命運が尽きる。刹那、紫色の光線に十字に貫かれた岩龍がガラスのような鋭い破片を散らしながら落下してゆく。
「我もようつきあってるの」
 絶望的な状況の中、歩の放つ弾丸がヘルメットワームを捉える。
「やるじゃないか嬢ちゃん! おっと前方から新手だ」
 ジュエルが軽口を叩く。上空の敵機群が弾丸の雨を降らせる。彼の機体もまた火を噴く。主翼が剥がれ制御を失ったまま落下してゆく。
 ガリーニンの盾となり雨のように降る弾丸にも耐えながら‥‥与一は狙い澄ました一撃を放つ。砲弾が命中した瞬間、ヘルメットワームはバラバラに砕け散った。

 突然2機のヘルメットワームが北西へと後退を始める。他の敵戦闘機も追随するように後退を始めた。
 前方の戦闘機は‥‥ウラジオストックから駆けつけた救援部隊であった。

 ガリーニンは胴体着陸により大破、空港の施設を破壊するも輸送の任務に成功。
 撃墜されたファルロス、タケル、ジュエル、ナレインの4名が現地の当局に保護された時には意識はなかった。覚醒出来ないほどに疲労に加え、撃墜の激しいダメージを受けての生還は正に奇跡であった。