タイトル:続・まといを振るえマスター:白尾ゆり

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/12 01:27

●オープニング本文


 とある四国の港町。
 ここには食料プラントがある。特に大規模なのはレーションの材料を作っている一帯だ。
 広く使われている、というわけではないが、価格はともかく味と満足感に重点をおいた開発を行っており、一部の余裕あるグルメな戦士たちには根強い人気がある。中でも人気なのは『おふくろの味シリーズ』と『たまにはちょっと贅沢ドルチェシリーズ(紅茶つき)』だそうである。栄養は満点かつ油っぽくないというのが、女性戦士に大受け、だそうだ。
 そう馬鹿にしたものでもない。戦意の維持に食事で得られる満足感というものは大きく関わってくる。美味な食事が摂れるのなら、摂るに越したことはないのだ。

 ここ暫く、プラント近辺ではおかしな事ばかりが起きている。つい一月前にキメラが出現し町を破壊したと思えば、不審火が多発し始めたのだ。
 単なる失火などではない。放火魔の集団でも住み着いたのかと思われるほどの頻度で起きる不審火。そのあまりの無秩序さに、警察も消防も頭を抱えた。いつどこで発生するかわからない。不審人物も目撃されない。自然発火しているのかとすら思えるほどだった。
 そしてついに、能力者たちのKVによる『火消し』が要請されるほどの大火が――その時行われたKVによる、貨車を利用した豪快なバケツリレーは、目撃者の間で未だに語りぐさである――起きた。
 これは町にとっては大変な損害だったが、事件に関する情報を得るきっかけとなる。

 まずその翌日、川に大きな鼠の死骸が数体浮かんでいるのが発見された。猫ほどの大きさもあるそれは異様にやせ細っており、体毛がない。おそらく川を渡ろうとして溺れたものであろうと思われる。
 それから、以来大火災で築かれた防火帯の西側、すなわちプラント側に不審火が集中するようになったのだ。以前に比べて発火の頻度は少なくなったが、何故か食料品店やレストランなどといった、食べ物を扱う店とゴミ捨て場に被害が集中しているようだった。
 さらに、ゴミ捨て場に関しては、生ゴミが捨てられる日に限って出火が多い。

 最近プラント周辺が下水臭い。
 ゴミを荒らす猫の群れが出た。
 烏の死体が散乱して景観が損なわれる。
 動物の糞害がひどい。飼い主のマナーがなっていない。
 ペットが凄惨に殺される事件が多発している。野犬でもいるのではないか。早急に駆除してほしい。

 最近急増した、山積みの苦情の投書の前で、町長は胃を痛めていた。


 そんな中、『鼠』の死体についての報告を受けた警察は、UPCに原因究明とその排除を依頼した。
『鼠』が自然ならざる生物、キメラであることが判明したのだ。
 おそらくプラントは狙われている。早急に手を打たなければなるまい。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT
アズメリア・カンス(ga8233
24歳・♀・AA
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
梵阿(gb1532
10歳・♀・ST
水無月 霧香(gb3438
19歳・♀・FT

●リプレイ本文

 八人の能力者たちは、公民館の一室を借りて作戦の最終打ち合わせを行っていた。テーブルにはミネラルウォーターのペットボトルが何本かと、例のプラントで作られているドルチェシリーズが単品でいくつか、そしてドアには「不審火対策本部」とマジックで書かれた紙が貼ってある。
 何とかキメラの移動範囲を少し絞ることはできた。だが同時に明らかになったのは、敵の数である。何十もの飢えたキメラがところかまわず火を放ちながら走り回っているのだ。
「厄介なもんだな。言ってみれば町中を火種が走り回ってるようなもんじゃないの、これは」
 新条 拓那(ga1294)は今までの火災に関する情報が書き込まれた地図を指先で叩いた。
「なんだか奇妙なキメラですね」
 とコピーした地図を配りながら石動 小夜子(ga0121)。
 稲葉 徹二(ga0163)は早速地図に更に資料から得た情報を書き込みつつ、「仕事を飯のタネとは言いますが、本気で飯が無くなったら洒落になりませんからなあ」などと言う。
「士気にも影響するので食料プラントは死守しないとね」
 緋室 神音(ga3576)は地図に記されたガソリンスタンドにマーカーを入れた。一昨日この近辺でもボヤ騒ぎが起こっているのだ。
 新条が呟く。
「下手をすると交代制で持久戦かな‥‥」
「大雨の後ちうのが少し厄介ですな。下水が溢れて潜伏したキメラが表に出てるやも」と稲葉。
 アズメリア・カンス(ga8233)は町に流れる川を指先でたどる。
「確かに、探さなければならない範囲が広がっている可能性もある‥‥切実な問題ね。大きな事態が再発する前に対処しないと」
 ヒューイ・焔(ga8434)の顔は暗い。
「相手がネズミだっていうのが気に入らないな。ドブネズミは90%駆除しても3ヶ月で元通りになる位の繁殖力があるらしい。そいつがベースになっていたら、根こそぎ倒さないと無駄ってことになる」
 怒りに震えているのは水無月 霧香(gb3438)だ。憎きキメラは抵抗力を持たない哀れな動物たちを食い殺し、あまつさえ食料を奪おうとしている。
「鼠ごときが調子に乗りよって‥‥許さへんで」
 彼女は机に置かれたドルチェの包みを一つ取ってかじった。優しい甘みが上品で、保存食とは思えないほどだった。
「あ、これおいしいわあ」
「それ狙ってたのに‥‥」
 梵阿(gb1532)がこっそりしょんぼりつぶやいて、最後の監視カメラの位置に丸を付ける。
「この範囲はカメラで確認できるそうだ。儂がカバーしよう。できる限り集めた情報を統合する、連絡を頼む」
「相手の数が多そうですから、町の方のご協力をいただきたいですね。対策部の方にお願いしておきましょう」と石動。
 緋室は持ってきたミネラルウォーターを指先で叩いた。
「いつ敵が発火するか分からないわ。水を持ち歩いた方が良さそうね」
 稲葉はテーブルのペットボトルに手を伸ばす。
「これは持って行っても差し支えないでしょうか」
 新条は用意のいいことに水筒を手にしていた。
「俺は給湯室を借りてこよう。キメラへの嫌がらせくらいにはなるかも知れない」
「では行こう。ドルチェを‥‥」
 梵阿は思わず漏れた大部分の本音を咳払いで誤魔化す。
「‥‥じゃない、人々の平穏を守るために」

 八人はそれぞれ町へと散っていった。キメラといえども相手は鼠、一般に鼠撃退に使用される超音波鼠撃退機や毒餌を使用することにした。撃退には至らなくても行動制限をかけられるかも知れないからだ。
 焔は確保した道具を手に、まずガソリンスタンドへと向かう。すると、近所のごみ捨て場に撃退機を仕掛けている緋室と出会った。
「スタンドの百メートル圏内でカメラがないごみ捨て場は三箇所ね」
 彼女は地図を手に言う。
「一箇所は近所の人に見張りと毒餌を頼んでおいたわ。‥‥問題はもう少し西にあるここね。撃退機は仕掛けてきたけれど、建物の隙間だから鼠の発見が遅れそうよ」
「わかった、俺も気をつけておく」
 焔はガソリンスタンドを見上げた。ここに万一キメラが現れたら大火再びということになるだろう。何としても防がなければならない。
 遠くから不審な鼠撃退への協力と注意を呼びかけている声が聞こえてくる。キメラはあくまでも『凶暴な鼠』ということになっているようだ。

 稲葉は異臭が報告されたプラント北部で聞き込みを行った。何人かの証言で、特に臭いがきついとされる一帯を絞り込むことができた。
「能力者さんが鼠退治? それはまた‥‥」
 何かを勘ぐろうとする男性に、稲葉は興味と恐怖を煽らぬよう、丁寧に不審な鼠を探していること、この近辺での異変があれば教えて欲しいことを伝える。男性は彼が差し出した地図の一点を指す。
「このブロックでありますか」
「そう、臭いが特に酷いんだ。時々得体の知れない物も転がっていたりするし、まったく物騒だよな」
 男は最近その近辺でボヤ騒ぎがあったことも教えてくれた。幸いすぐに火は消し止められたが、例によって犯人の姿はなかったという。
 街の出火ならばまだしも、プラントが狙われると厄介だ。稲葉は足早にその地点へと向かう。

『石動殿、北側の下水は終了だ。儂は公園を回ってカメラの監視に戻る』
「私は裏路地の設置を続けますね」
 石動と梵阿は、とくに糞害が多かった公園、裏路地、下水の出入り口に鼠撃退機を仕掛けて回っていた。
『一匹たりと逃がさん。甘味の恨みを思い知るが良い』
 通信機の向こうから梵阿の含み笑いが聞こえてくる。
「毒餌、罪もない動物たちが食べてしまってはかわいそうですね」
 石動はつぶやいて、撃退機のスイッチを入れた。

 小学校の見回りと撃退機の設置に来ていた新条は、給食のスープ缶周囲で背から火を噴く鼠を発見した。カーテンに火の粉を撒き散らし、キメラは廊下を走ってゆく。小学校は大騒ぎとなった。
「火鼠だか何だか知らないけど、火をつけるなら集めた落ち葉くらいにしろっての! それなら焼き芋にだって使えるんだから」
 駆け抜けざまに燃え始めたカーテンに水筒の水を浴びせ、彼はツーハンドソードを抜いた。教師があわてて子供たちを教室へ入れて扉を閉める。しかしすばしこい鼠は逃げ惑う人間たちの足元をすり抜けてゆく。
 新条は一瞬身を低くし、叫んだ。
「どいてっ!」
 迫力に押されて後ろにすとんと尻餅をついた男の子のすぐ目の前で、新条の姿がぶれて消えた。次の瞬間、廊下の端で振り下ろされた刃がキメラを一刀両断。途端、死体が燃え上がる。
 新条は水筒の水をキメラにかけながら、近くにいた教師に水を持ってくるよう指示した。
 それは子供たちにとっては『悪いやつと戦うカッコいいヒーロー』の出現に他ならなかった。新条は小学校から出るのに一苦労する羽目になる。

 連絡を受けて、カンスは厳しい表情で手にした毒餌を見下ろした。
「罠には効果がないかもしれないということね‥‥」
 キメラが死と同時に燃え上がったこと。そして既に超音波撃退機を設置済みだったにもかかわらずキメラが現れたこと。敵は想像よりも強かだ。
 ‥‥戦う場所はやはり水場が近いほうがいいようね。
 彼女はコンクリートに固められた川べりを見回した。ここは場所としては悪くないが、敵が水を恐れない場合逃げ道がいくつか発生してしまう。もう少し別の場所も見てみる必要がありそうだ。

 焔はショッピングモールの料理店で聞き込みを行っていた。厨房裏でメモを片手に店員の話に耳を傾ける。
「なるほど、他には‥‥」
 店員の一人が悲鳴を上げた。彼女が指した方から煙が上がっている。武器を手に駆け寄ると、重ねられたダンボールの隙間から焦げ臭いにおいがし、三匹の大きな鼠が飛び出してきた。一見猫のようにも見える大きさの、体毛のない‥‥キメラだ。
「近寄らないで、危険です! 水の用意を!」
 焔の体周囲に覚醒を意味する黒い霧が発生する。ダンボールの山にひと蹴りし、これ以上キメラが隠れている様子はないのを確認してからきびすを返す。
「標的三体発見! ショッピングモール東二件目裏から西へ逃走中! 俺は住民の避難を優先しつつ追跡、ショッピングモールを抜け次第攻撃を開始する、応援頼む!」

『カンス殿、頼めるか』
『行けるわ』
 稲葉は自分の位置を確認して声をかけた。
「こちら稲葉。梵阿さん、そのポイントならば自分が近い」
『いや、待ってくれ‥‥稲葉殿、道路を挟んだ側にコンビニがあるのは分かるか。こちらからではよく見えんのだが‥‥妙な動きをする動物がいた気がするのだ』
「‥‥あれですな」
 稲葉は手持ちの水の蓋をゆるめ、コンビニに近寄った。いつでも武器を抜けるよう身構えたままでごみ箱に手をかける。
 一度揺すると、何かが鉄板にぶつかる音がした。一瞬息を詰めて軽い足音が向かう方向を見定める。
「‥‥そこだ!」
 蛍火が光を放ち、飛び出したキメラの体をコンクリートに叩きつける。ガン、と音を立てゴミ箱が大きくゆがみ、更に一匹が飛び出した。稲葉が撒いた水に一瞬ひるんで迂回して逃げ去ってゆく。この街中で銃は使えない。稲葉は舌打ちをして地面で震えているキメラに止めを刺し、すぐさま地を蹴り追う。

 緋室は食料品店でキメラと睨み合っていた。かなり大きな個体だが、骨と皮ばかりにやせ細りミイラのようだ。緋室の背に虹色の光が広がる。唇がかすかに動き、覚醒の言葉を刻む。
「アイテール‥‥限定解除、戦闘モードに移行‥‥」
 緋室は店の隅に用意してあった防火用水のバケツを取り、キメラに思い切りぶちまけた。キメラはキィッと悲鳴のような声を上げると、水滴をはじき飛ばし飛びかかってくる。緋室は微かに身を沈めて、二振りの月詠を交差させ振るった。
「夢幻の如く、血桜と散れ――剣技・桜花幻影【ミラージュブレイド】」
 同時にキメラは身を震わせて何かしようとした。だが背から白い煙が出、わずかな火の粉が飛び散った、次の瞬間空中で血袋となり四散する。

 カンスが設定したのは川べりの駐車場だった。身を隠すに適当な監視小屋があり、万一敵が発火したとしても被害が広がりにくい。更にキメラがよく通る道となっている。
 予定よりてこずりはしたが、キメラが食物を異常なまでに強く求めることは確実、この場所に餌を撒いてキメラを一網打尽にする計画に変更はない。
 彼らは集合し、餌を仕掛けて気配を殺し待ち続けた。
 やがて数匹が集まってきて餌を食い始めた。うち一匹が早々に食事を切り上げて去ろうとした。
 このまま逃がすわけにはいかない。しかしまだ集まった数が少なすぎる。今仕掛けるのは得策ではない。カンスが攻撃すべきかと迷ったとき、水無月が、自分が追うと合図をしてその場を離れた。

 水無月は駐車場から十分離れたところでわざと姿をさらす。キメラは脱兎のごとく逃げ出した。毒は全く効いていないというわけでもないのか、ごく希によろけている。だが死に至るほどではないようだ。
 キメラを見失い、監視カメラのサポートで再び見つけ、何とか追跡し、彼女はとうとう古い物置にたどり着いた。キメラが一度扉に頭をぶつけて中へ逃げ込んでゆく。壁のあちこちに焦げ目があった。
 物置の中からはひときわ強い異臭‥‥腐臭が漂っていた。彼女は眉を寄せて口元を押さえ、そして目を見開いた。そこにあったのは、キメラが食い散らかした無数の動物の残骸だったのだ。吐き気がこみ上げてくる。だがそれはすぐに怒りに取って代わった。耳の奥で鳴り響く鼓動が急き立てるように早くなってゆく。
「ふわふわしとる可愛い動物達を食べまくりおって‥‥」
 痩せこけたキメラが数匹、弾丸のように飛びかかってくる。水無月は奥歯を噛み、氷雨を握って逃げ道を断つように振るった。
「あんたらにやる慈悲なんて少しも無いで、往生しいや!」

 駐車場に集まったキメラはガツガツと餌を貪り食い、時折背から煙のようなものを上げる。その食欲は異常で、いつまで経っても食うのをやめない。
 カンスは、キメラが数十を数え集まってくるのがやんだと判断すると、素早く距離を詰めた。それが合図となる。待機していた能力者たちは一斉にキメラを取り囲んだ。
 死角をすり抜けようとしたキメラは、梵阿の指摘で逃げ場をふさがれ、焔の剣から放たれた衝撃波に引きちぎられた。
『ハメルンの笛吹き男の登場だ。儂らの笛は、容赦無く責め追い立てる音色だがな』
 キメラたちは背から炎を吹き上げる。が、石動と新条が水をたたえたタンクを倒してキメラの集団に水を浴びせた。
「大人しくお縄についてもらおうじゃないか、火付け鼠さん達。これ以上の狼藉は、俺ら火消しの傭兵が許さないよ?」
 弱まる火勢が揺らめく中、カンスの腕を黒い炎が駆け上がる。逃げ出そうとしたキメラの行く手を阻み、地をはしった刃は数匹を跳ね飛ばした。
 能力者たちの一斉攻撃がキメラを次々と破壊し、炎がはぜる。
 一匹が火球となりながらも、死の縁を駆けて課せられた使命を果たそうとする。
 カンスの月詠が大きく弧を描き頭上からキメラを地面に叩き伏せた。
「一匹たりとも逃がさないわよ」
 漆黒の炎が、火焔の鼠を焼き尽くしていった。

 キメラの殲滅作戦が終了して数時間後。
 プラントはごく一部が一般向けに公開されていた。石動はここが狙われた理由が分かるかも知れないと来たのだが、公開部分を見る限り、このプラントは普通の食料生産用だった。
 プラントでは一通りの行程が簡単に紹介されており、ちょっとした休憩所では試食までできるコーナーがある。石動と新条は並んで腰掛け、説明を読むでもなく眺めていた。
「付き合っていただいてありがとうございます、拓那さん」
「いいんだ、ここの事は気になっていたし、美味しい食事は大好きだから」
 新条は微笑んで、手にしていたバーを石動に手渡した。
「小夜子ちゃん、これも美味しいよ」

 そんな和やかな二人とは反対側の通路で、ドルチェシリーズの紹介映像にべったりと貼り付いて涎を流す少女が一人。
「‥‥はふぅん」
 ほとんど保護者風の水無月は、苦笑して梵阿を促した。
「なあなあ、せっかくここまで来たんやし、なんか食べていかへんか、きっとおいしいで!」
 梵阿の背がぴんと伸びる。
「わ、わ、儂は新作ブリュレ味を食べに来たわけではっ! あくまでプラントの無事を確かめるためにだなっ!」
 水無月は失笑をこらえた。
「ブリュレな? ほな、試食コーナーの見回りに行こか」

 作戦行動が終了した後、石動とカンスは街を見回った。数匹の生き残りと骨と皮ばかりになった死骸を発見したが、それだけだった。
 以後、不審火は数件を最後にぱたりとやんだ。キメラがドブ鼠並みの繁殖能力を持っていたら、という焔の危惧は杞憂に終わったのだ。何故か不気味なほどあっさりと、火鼠は完全にその姿を消してしまったのである。

 こうして、連続発火事件は幕を下ろしたのだった。